2017年11月26日開幕の舞台『管理人』に出演する溝端淳平さんインタビュー、後半です。有料会員限定部分では、デビューから10年を迎えた今の思いや、2016年に亡くなられた蜷川幸雄さん、松本雄吉さん、平幹二朗さんへの思いなどについて伺いました。
ーー共演者のおふたりについてお伺いさせてください。特に一緒にお芝居をする温水(洋一)さんはいかがですか?
この役は温水さんしかいないと思いますね。日に日にデーヴィスに近づいていらっしゃると思います。絶妙なチャーミングさと、絶妙な憎たらしさと、救いようのない感じを演じるのが上手だと思います。一緒に芝居させてもらって楽しいですし、勉強になりますし、胸を借りています。
ーー忍成(修吾)さんと温水さんおふたりの芝居もご覧になっていますか?
はい。拝見していて、難しいだろうなと思っています。僕は衝撃的に現れて、衝撃的なことをはじめるという意味で言えば、それを成立させるのは難しいですが、ふたりがゴミ屋敷に入ってきて、物語をはじめるところもまた難しいだろうなと思いました。不思議な出会いの、不思議なふたりなので、その空気感や距離感が、この作品のひとつの肝だなと思います。
ーー忍成さんの芝居はいかがですか?
忍成さんもぴったりの役だと思います。ミステリアスなところや、柔らかい雰囲気と、内に秘めている何かがアストンにぴったりです。
■生で観客の前で芝居をするのは大変ですが、それが楽しい
ーー溝端さんご自身についてもお伺いさせてください。今年はデビュー10周年なんですね。この10年早かったですか?
早かったですね。最初の1~2年ははじめてのことばかりでしたから長く感じましたが、5年過ぎてからがあっという間でした。
ーー映像作品にたくさん出演される中、舞台にもほぼ毎年出演されていますが、そのモチベーションや舞台の魅力についてはいかがですか?
もちろん生で観客の前で芝居をするというのは大変ですし、ものすごくエネルギーも必要ですが、それが楽しいんですよね。同じ作品でも、毎回感情が違いますし、お芝居はいくらでもやり方があるというか、何万通りもあるんだなと思わせてくれます。どれだけお芝居していても、もうちょっとこうした方が良かったんじゃないかと、答えが見つからなかったり。1~2カ月間、その役のことを考え、セリフを何千回と言って積み上げて壊し、また積み上げて壊すことが出来るのは舞台だけだと思うので、自分の身になると思うことが一番かもしれません。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、デビューから10年を迎えた今の思いや、2016年に亡くなられた蜷川幸雄さん、松本雄吉さん、平幹二朗さんへの思いなどについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■シアタートラムでやれるのは、とても贅沢で、楽しみでしかない
■死の直前まで演劇に打ち込まれた方々とお仕事が出来たのは財産
■今日出来ても明日出来ないかもしれない。ギリギリのところでやっている
■どうしようもない3人の『管理人』は、今だからこそやるべきだと
<舞台『管理人』>
【東京公演】2017年11月26日(日)~12月17日(日) シアタートラム
https://setagaya-pt.jp/performances/201711kanrinin.html
【兵庫公演】2017年12月26日(火)、12月27日(水) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
http://www1.gcenter-hyogo.jp/contents_parts/ConcertDetail.aspx?kid=4290112355&sid=0000000001
<関連サイト>
溝端淳平 オフィシャルウェブサイト
http://www.mizobatajunpei.com/
PROFILE 溝端淳平
http://www.evergreen-e.com/profile/?pid=mizobata_junpei
- 「芝居をしているときが一番生きている感じがする」、溝端淳平インタビュー(下) 2017年11月21日
- 「やればやるほど、間の意味がわかる」、舞台『管理人』溝端淳平インタビュー(上) 2017年11月20日
- ノーベル賞作家ハロルド・ピンターの『管理人』、溝端淳平ら3人芝居 11月26日開幕 2017年11月14日
- 上田久美子の戯曲『バイオーム』、中村勘九郎主演、花總まり、古川雄大らで6月上演 2022年4月16日
- 2017年以前の有料会員登録のきっかけ 2018年10月28日
- 「今やっていることを確実に面白いものにしたい」、池田純矢インタビュー(下) 2018年4月10日
※溝端淳平さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは12月4日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■シアタートラムでやれるのは、とても贅沢で、楽しみでしかない
ーー『ムサシ』あたりから、ご出演されている舞台をほぼ拝見させて頂きました。
ありがとうございます。
ーー大きい舞台に出演される印象が強かったですが、『管理人』はシアタートラムですから、とても密な空間になりますね。
ものすごく楽しみです。本当は、どんな作品でも100人ぐらいの空間でやれたらいいなと思うんですよね。大きい芝居の良さももちろんあります。『ムサシ』のように立ち回りがある作品は大きい空間でも見せ方があると思いますが、ちゃんと後ろまで届いているかなと思うこともあります。大きな劇場で、大きな声を出して、後ろまで届いていたと言われたらもちろん嬉しいです。『管理人』のような作品を、シアタートラムでやれるというのは、とても贅沢なことですし、楽しみでしかないですね。観にきてくれる方がひとりでもいてくだされば、死ぬ気でやるだけです。
ーー手が届くような距離で見られるような芝居が好きなんですね。
もちろんそれぞれの良さはありますが、個人的には好きです。すごくいいですね。
■死の直前まで演劇に打ち込まれた方々とお仕事が出来たのは財産
ーー昨年、蜷川(幸雄)さんと、松本(雄吉)さんがお亡くなりになりましたが、一昨年、おふたりの演出作品に続けてご出演されていた溝端さんは、今どんな思いを持っていますか?
そうですね……やっぱり悲しいというか、寂しいですよね。また成長した姿を見せられるように頑張りたいと思っていましたが、ただただ、悲しいというのが一番です。でも、最後に、死の直前まで命を燃やして演劇に打ち込んでいらっしゃったおふたりと一緒にお仕事出来たというのは、自分のなかで財産だなと思い、糧にして頑張るしかないと思っています。でも、松本さんも維新派の方々がいらっしゃいますし、蜷川さんは(吉田)鋼太郎さんが受け継いで、蜷川さんの思いを持ち続けてくれている人がたくさんいますから。先日も稽古場を見に行ったんですが、写真が置いてあって、蜷川さんがいるみたいでしたね。
ーーそうだったんですね。
『こんばんは、父さん』で共演させて頂いた平(幹二朗)さんも昨年亡くなられましたし、一緒にお仕事させて頂いた巨匠達がみんな逝ってしまわれました。蜷川さんの周りのスタッフさん達が、追うように逝かれているんですよね。蜷川さんが向こうで芝居をやろうとしているんじゃないかなって(笑)。
■今日出来ても明日出来ないかもしれない。ギリギリのところでやっている
ーーどういう舞台作品に惹かれて、出演したいと思っていますか?
あまりやりたくないとは考えないようにしていますが、やりたいのは悲劇にしても喜劇にしても、お客さんがざわつくぐらいのものに出たいというのは目標にしています。鳥肌が立つというか。僕は鋼太郎さんを尊敬していますが、鋼太郎さんの芝居を見ていると、お客さんが前のめりになっていく空気感があるんです。その空気感を出せる俳優さんになりたいと思いますね。
ーー『ビリー・エリオット ~リトル・ダンサー~』はご覧になりましたか?
観ましたよ! 鋼太郎さんのミュージカルも凄いなと思いましたし、子役の子達も凄かったですよね。あとは『NINAGAWA・マクベス』でマクダフ役をやっていた鋼太郎さんも素敵でしたね。
ーー今後目指すことは?
お芝居の面白さや難しさを先輩方に教えて頂いて、自分でも少しはそれをわかってきた実感があるので、だからこそ続けていって、もっと苦しまなければダメだろうなと思います。追いたくなる先輩方がたくさんいるので、追いかけて行きたいですし、特に最近自分で思うのは、20代はまだ序章でしかないなと。30歳、40歳になって、やっと色々わかってきたり、本当に面白くなってくるだろうと思います。先輩に聞いても、30代半ばを過ぎたらすごく芝居が楽しくなったとおっしゃいますね。今は自分自身でも苦しいものだと感じるところもありますし、ずっと苦しさはあるんでしょうが、この先にもっと違う楽しみや発見がたくさんあるだろうと想像しています。
特に舞台の芝居をしているときが一番生きている感じがするんです。今日出来ても明日出来ないかもしれない、一歩踏み出しの足が違うだけで大丈夫かなと思ったり、声がいつもと違うだけで焦ってしまう。そのギリギリのところでやっていて生きている実感があるんです。だからこそ芝居をやりたいと思いますね。特に難しい芝居を今後もやれたらと思います。年に1本、毎年ちょうどいいハードルを与えてくださっているので、ピンターは高すぎるかもしれないですが(笑)。アーサー・ミラー(『るつぼ』)も、寺山修司さん(『レミング』)も高すぎたかな? 次は再演で、井上ひさしさんの『ムサシ』をやらせて頂きます。
ーー結構難しい作品を攻めていますよね。
そうなんですよね。舞台を中心に活躍されている方は別として、20代後半の俳優のなかでは、多くの舞台をやらせて頂いているかもしれませんね。
■どうしようもない3人の『管理人』は、今だからこそやるべきだと
ーー最後に『管理人』を楽しみにされてる皆さんへメッセージをお願いします。
受け取り方は様々だと思います。でも、皆さんが思っている以上に、ハロルド・ピンターの作品は難しいだけでなく面白いです。荒廃した部屋での、どうしようもない3人の芝居は、今だからこそやるべきだと思いますし、今の日本にも通じる所があるな、とも思います。しかも、森さんが新しく作る、新しいハロルド・ピンターですし、劇場でしか感じることが出来ない空間も体感できると思います。ぜひ楽しみにお越し下さい。
※溝端淳平さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは12月4日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
昨日のインタビューに続き、とても読みごたえがある内容で、濃密な空間で舞台『管理人』のお芝居をされていらっしゃる淳平君を観劇するのが、ますます楽しみになりました!
蜷川さんや松本さん、平さんと言った演劇界に偉大な功績や影響を与えた方々とのお芝居が、少しずつ淳平君の身となり力となっていっていらっしゃることだと思います。
今回の森新太郎さんの演出での舞台『管理人』ではどんな姿を魅せて下さるのか、期待でいっぱいです。
楽しみにしています!!