民族衣装に身を包んだ若いダンサーたちが、ケルト音楽の演奏に合わせて空を飛ぶように軽やかにタップを踏んだり、それとは打って変わってモダンな衣装でタップの靴音だけでリズムを力強く刻んだり、多様な踊りを見せる『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』。2018年6月から始まる待望の日本公演に先立ち、『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』でリードダンサーを務めるアメリカ人のマリッサ・ウルスターさんに話を聞きました。
――マリッサさんは、5歳で「トリニティ・アイルランド・ダンスアカデミー」でダンスを始めたそうですが、きっかけは?
アメリカの私が育った街でアイリッシュ・ダンスの大きなフェスティバルがあって、姉と一緒に行ったんです。彼女がすぐに「トリニティ・アイルランド・ダンスアカデミー」に入り、ダンスを習いはじめて、帰宅すると私に教えてくれました。私も姉の真似をして踊ってみたらすぐに好きになったんです。それで、姉に続いてアカデミーに入りました。
――マリッサさんはアイルランドとはご縁があったのですか。
私の母の遠い先祖にアイルランド系の人がいます。
――マリッサさんは現在22歳で、ストリートダンスが世界中で大流行りしている時代に育っていますが、ほかのダンスに浮気することはなかったのですか(笑)。
私は子どものころ、とても不器用で運動神経が良くなかったので、両親がバレエを習わせました。バレエとアイリッシュ・ダンスは共通点が多くあり、方向転換するのは簡単でした。だから、浮気もせずにアイリッシュ・ダンス一筋ですね(笑)。
――マリッサさんは、ソロダンサーとして、アメリカ地域大会で優勝し、全米トップ10に進出。チームダンサーとしては、アイルランドとスコットランドの世界選手権で金メダルを獲得しています。競技用のダンスはリズムの正確性や技に加え、衣装や化粧、脚の色までも審査されると聞きました。
審査員はダンスやテクニックのみに集中して審査するべきですよね。アイリッシュ・ダンスが有名になってスペクタクル性を求められるようになると、皆、キラキラと輝く衣装を着たり、髪やメイクに凝ったり、きゃしゃな脚に見せようとしたりし始めたんです。でも、カンパニーによって違っていて、「トリニティ・アイリッシュ・ダンス」はもっと自然なルックスで、皆が持っている力強さなどを重要視しています。
――競技用のダンスをするときと、今回の来日公演などショーのためのダンスでは、心の持ちようは違うのでしょうか。
違いますね。競技用は、審査員と自分のために賞をかけて踊ります。カンパニーでは、ダンスが意味するもの、一つひとつの演目の整合性を考えながら踊ります。私は、競技用よりもカンパニーで踊るほうが合っていますね。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』に女性が多い理由や、音楽ある時のダンスと音楽がない時のダンスの違いなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月19日掲載予定のインタビュー「下」では、メンバー同士でどうやっていい関係を作っているかや、リズミカルなダンスとアクロバティックなダンスの使い分けなどについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■私たちのカンパニーでは「female empowerment(女性に力を)」をスローガンに
■音に関しては、つま先と踵で出す二種類の音があります
■クラシックとなった演目に加え、日本の観客のために新作も披露します
<『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』>
【兵庫公演】2018年6月17日(日)14:00開演 兵庫県立芸術文化センター
【浜松公演】2018年6月20日(水)19:00開演 アクトシティ浜松
【東京公演】2018年6月23日(土)13:00開演/17:30開演(2公演)東急シアターオーブ
【横浜公演】2018年6月24日(日)14:00開演 神奈川県民ホール
【福岡公演】2018年6月26日(火)19:00開演 アクロス福岡
【熊本公演】2018年6月27日(水)19:00開演 熊本市民会館
【埼玉公演】2018年7月1日(日)15:00開演 ウェスタ川越 大ホール
【名古屋公演】2018年7月3日(火)18:30開演 日本特殊陶業市民会館
公演オフィシャルサイト
http://trinity-japantour.com/
- 「自分は強く、自信を持っていると示す」、マリッサ・ウルスター インタビュー(下) 2018年5月19日
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■私たちのカンパニーでは「female empowerment(女性に力を)」をスローガンに
――『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』は、18歳から26歳のダンサーが所属し、男性はわずか二人です。女性が多いのは何故でしょう。
アイリッシュ・ダンスはもともとは女性のためのダンスだったんです。だから、女性が男性より多いんです。それに、私たちのカンパニーでは「female empowerment(女性に力を)」ということをスローガンに掲げています。女性も男性と同じように力強くて、独自でステージに立てる能力があり、意義のある舞台を作ることができる。そういう思いを込めています。
■音に関しては、つま先と踵で出す二種類の音があります
――過去の『トリニティ・アイリッシュ・ダンス』の公演を拝見して、アイルランド音楽に乗せてタップを踏む作品と、音楽なしで靴音だけが会場に響き渡る作品の両方が楽しめました。それぞれ、どういう風に意識して踊られていますか。
音楽がないときは、自分でリズムを作り出し、自分たちが刻む靴音で音楽を奏でるようにしています。音楽があるときは、伝統的な踊りをする場合が多いので、その伝統に従い、集中して踊るだけですね。音楽なしで踊るときは、観客が、私たちが奏でる音楽により耳を傾けてもらえればと思っています。
――アイリッシュ・ダンスの靴音はどの音もすてきに聴こえます。マリッサさんにとっては、どういうときに、「いい音を出した」と思うのでしょうか。
難しい質問ですね(笑)。音にかんしては、つま先と踵で出す二種類の音があります。いつ叩いても同じ音に聞こえますが(笑)、あえて言えば、パターンやタイミングですね。音楽があってもなくても、床にどう響くかも大切です。それが全部うまく組み合わさったときはすごくうれしいですね。
■クラシックとなった演目に加え、日本の観客のために新作も披露します
――今回の来日公演はどういう内容になりますか。
カンパニーにはクラシックとなったいつもの演目に加え、日本の観客のために新作も披露します。私が大好きな演目「ソールズ」はとてもリズミカルな作品で、音楽がなく、タップの靴音で始まります。足の動きやタイミングがとても複雑で難しく、メンバーそれぞれが難易度の高い技に挑戦します。また、タップの刻むリズムと音、それに相反する音のない静けさとのコントラストも楽しんでもらえるはずです。とてもエンターテインメント性が高い作品ですね。