「リバプール、懐かしさを感じました」、『BACKBEAT』加藤和樹インタビュー(上)

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

ビートルズの創成期を描いた舞台『BACKBEAT』が、2019年5月25日(土)から6月9日(日)まで、東京芸術劇場プレイハウスにて上演されます。当初、5人編成だったビートルズのベーシストで、メジャーデビュー前に21歳で夭折したスチュアート・サトクリフ役を戸塚祥太さんが演じ、学生時代からのスチュアートの親友で、彼を敬愛していたジョン・レノン役を加藤和樹さんが演じます。4月上旬に加藤さんにインタビューし、作品について様々な角度から伺いました。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

――台本を読ませて頂きましたが、すごくおもしろいですね。事実に基づいた物語ですが、テンポもいいなと思いました。

勢いのある作品だなと思いますね。場面展開も多くて、めまぐるしいです。昨日ビートルズメンバーと夏子さんで全体で本読みをして、そこからビートルズ周りの演奏シーンの当たりを全曲やりましたね。戸塚さんはいなかったんですが。

――稽古場にあれだけのバンドセットがあるというのがこの作品ならではですね。

そうなんです。常にありますから。

――まず、この作品のオファーを受けて、ビートルズの創成期を描いた作品というのは、率直にいかがでしたか?

「とんでもないことをやるな」と思いましたね。

――ジョン・レノン役をやるというのは?

無理、無理、無理って。正直、無理だと思いました。だって、ジョン・レノンですよ(笑)。みんな知っていますし、イメージというものがすごくあるし、そんな伝説のバンド、伝説の人物をやるなんて。今までも実在の人物を演じることはありましたが、ここまでインパクトのある人物を演じることはなかったですし、ミュージカルで歴史物をやっても、実在したかわからないような人物が多かったので。

――『レディ・ベス』のロビン・ブレイク役や、『1789-バスティーユの恋人たち-』のロナン・マズリエ役のような。

イメージは大事にしながらやりたいと思っていますが、さち子さんもおっしゃっていますが、10代のころの、まだビートルズになりたての彼らの物語なので、世間一般の人たちが知っているマッシュルームカットのビートルズではなく、若さのあふれる、とてもエネルギッシュな彼らの姿を僕らは今回切り取って演じるので、そういう意味では、ある意味自由がきく部分はあるのかなと思っています。

――どのくらいジョン・レノンについて調べましたか?

ジョン・レノンというよりは、ビートルズやあの頃の時代を知るために、さち子さんと上口耕平と一緒にロンドンのリバプールやビートルズミュージアムに行って、彼らが演奏していた場所、キャヴァンやガスパ、お墓参りにも行って、彼らの足跡をたどりました。もちろん、彼らがどういう道筋をたどってきたかというのは、知れば知るほどキリがないんですよね。

<取材協力>
ヘアメイク/江夏智也(raftel)
スタイリング/立山功
グレージャケット¥44,000、Tシャツ¥17,000、パンツ¥38,000、靴¥86,000
以上全て(The Viridi-anne tel 03-5447-2100)

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、加藤和樹さんが演じるジョン・レノンの人物像や歌い方について、トータルで20曲ぐらいあるという曲について、実際に訪れたリバプールについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。5月17日(金)掲載予定のインタビュー下では、スチュアートを演じる戸塚祥太さんについて、インタビューした時期に実施されていたツアーについて、加藤さん自身の音楽活動などについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■(ジョン・レノンは)一番世の中に対して怒りを感じていた

■バンドのグルーヴ感は、もう生まれつつある

■ジョンの歌い方は、すごく暴力的で、本当に喉を潰すんじゃないかと思う

■(リバプールでは) ただひたすら音楽を聴いていたり、眺めていたり

<舞台『BACKBEAT』>
【東京公演】2019年5月25日(土)~6月9日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【兵庫公演】2019年6月12日(水)~6月16日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【愛知公演】2019年6月19日(水) 刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール
【神奈川公演】2019年6月22日(土)~6月23日(日) やまと芸術文化ホール メインホール
公式サイト
https://www.backbeat-stage.jp/

<関連リンク>
『BACKBEAT』公演詳細(ステージゲート)
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2019/backbeat/
加藤和樹 Official Web Site/ASSIST
http://www.katokazuki.com/
加藤和樹 twitter
https://twitter.com/kazuki_kato1007

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加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

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■(ジョン・レノンは)一番世の中に対して怒りを感じていた

――きっと情報もたくさんありますよね。

今回はビートルズの創成期に焦点を当てているので、ジョン・レノンの生い立ちや、彼が10代のころに何を感じたのかなどを描いています。ビートルズとして、世界的にメジャーになってからというのは、作品のなかであまり触れてはいないですね。

――若いころのことも調べると、結構いろいろと出てくるものなんですか?

出てきます。これまでに思っていた印象と全然違いました。ジョンは温厚で、“ラブ&ピース”という静かなイメージでしたが、そうではなかった。彼が一番世の中に対して怒りを感じていたり、一番おちゃらけていたりするんです。そんなイメージが全然なかったですね。今でいうなら、破天荒な人間なんだなというのを知ったんです。今回台本を読んでいても、気分に波がある人でしたし、すごく身近に感じることができました。

――偉人みたいになっていたものがリアルに、人間として感じられた?

同じ10代というか、仲間たちと「イエーイ!」という感覚だったんだなって。

――確かにこんなにキュートな人なんだなと思いました。

みんなかわいいんですよ。言い方は悪いかもしれませんが、やはりガキなんですよ(笑)。でも、そんな彼らが何を求めて、どうぶつかり合って、それぞれの道をどう歩んでいくのか。スチュとの関係性、ポールとの関係性、そこまで深い愛があったんだ、お互いメンバー間でそういうことを思っていたんだとか、やはり僕らが知りえなかったことも描いているので、そういうメンバー同士の関係性などは、改めて知ることがすごくたくさんあります。観る方々も、多分ビートルズに対して思っていた印象と全然違うものだと思うので、すごく新鮮な舞台になると思います。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■バンドのグルーヴ感は、もう生まれつつある

――アーティストであることが彼らのアイデンティティーだと思うのですが、加藤さんご自身もアーティストとして活動されていて、そういう意味で共感するところはありますか?

やはり人を見抜く才能が彼にはあったと思うんですね。それは音楽的なものだけでなく、その人がもつ力。スチュは決して演奏が上手くなかったと、いろいろと言われていますが、何よりも彼は人間としての魅力があったからこそ、ジョンは彼をどうしてもメンバーに入れたかったし、自分の側に置いておきたいと思ったんだと思います。でも、彼の才能に嫉妬したりもするし、すごく愛がある人なんだなと思いましたね。

――スチュアートをリスペクトしているけれど嫉妬するところや、その思いを表現できないのがかわいいですよね。

本当に恋人に言いたいことを言えないやつで、「中学生か!」と思うくらいの、そういう素直になれないところは若さだなって思いますね。

――そんな若さは、ご自身でも記憶にありますか?

あります。僕らもバンドが集まって、リハーサルをし始めると、やはり男同士が集まれば中学生くらいに戻るんですよ(笑)。やたらボディータッチが多かったり、変なテンションで「ウェーイ」ってやったり。僕らはもう30代で、もう結構なおっさんなんですが(笑)、それでもみんなが根底に持っている“男の子”みたいなところが出てくると思うんですね。

――ミュージカルの現場と、音楽の現場では、驚くくらいにみなさん変わりますね。あの無邪気さは何だろうと。

楽器を演奏するってことで無心になるし、みんなが無我夢中で模索している感じって、学生がギターを始めて持って、バンドで「せーの」で音を出したときの高揚感に似ていて、そういうのがすごくあるんですよね。そういう意味ではバンドのグルーヴ感というのは、もう生まれつつあるし、それは絶対的にこのお芝居、ビートルズにとっては大事なものなんですよね。みんなが本当にがむしゃらになって演奏する。決して上手くないけれど、エネルギーはある。若さにあふれているというところが、今回僕らが見せたいところ。完璧なビートルズを目指すわけではないんです。未完成で、荒々しくて、すごく暴力的で、でも、どこか繊細で、愛おしいビートルズを今回描ければと思います。

――観ている方も完璧なものより、ちょっと欠けていたり、尖っていたものって、気になるし、引っかかったりします。お話を伺っていると、それは知っている感情で、「あれをやれば出来そうだ」というプランみたいなものがあるのかなと。

何となくは見えていますね。昨日、音を出してシーンをやったときに感じました。ただ、やはり技術的なことや、見せ方の部分では、「こうした方がいい」というものがあるので、それはさち子さんの元で、これから作っていかなければいけないですね。演奏するときは、芝居として演奏しなければいけないので、そこは難しいところではありますよね。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■ジョンの歌い方は、すごく暴力的で、本当に喉を潰すんじゃないかと思う

――演奏シーンが多いですね。

多いですよ。トータルで20曲くらいあります。

――英語のナンバーをこんなに歌うんだと衝撃でした。

全然歌詞が入ってこないです(笑)。もちろん1回目は歌詞を読んで、内容も把握して歌うんですが、それでも発音やノリなど、やはり難しいものはありますね。普段、自分がやっている音楽とは全然違うものですし。

――どうやって覚えているんですか?

日本の歌だと聴いているだけで覚えられるんですが、英語の歌詞は聴いているだけじゃ覚えられないですし、スラングみたいになっているところもありますし、そこは文字として見て、耳で聴いてと、全神経を使わないと体に入らないんですよね。そこが今回、僕が一番苦戦しているところですね。

――どのくらい期間をかけていますか?

年が明ける前から聴いています。それでも、やはり全部暗記は出来ていないですね。

――以前、グリーン&ブラックスの収録で英語ナンバーを歌ったときに、ツイッターか何かで大変だったとおっしゃっていましたよね。

言っていましたね。結局、口に出して、口に英語の感じを覚えさせないといけなくて。普段使わない言葉だから筋肉も違うんですよ。口の形も違いますし、口の中の形も違います。ジョンの歌い方は、すごく暴力的で、本当に喉を潰すんじゃないかと思う歌い方だから、そこが難しいところではありますね。決してきれいには歌ってはいないんです。

――その歌い方を毎日やらないといけませんね。

大変ですね(笑)。

――ジョンの歌い方に寄せていくんですか?

寄せるというか、感情が伴ってくれば、自然とそうなるんです。もちろん、最初に練習しているときは形から入りますが、これが芝居で、どんどん自分の中にジョン・レノンが入ってくると、それが自然になってくると思います。とはいえ、使っていく喉のポジションも、普段と全然違うので、まずそこに慣らしていかないと。ミュージカルとも全然違いますし、その間、自分のポジションに戻していくのは難しそうだなと思います。

――あるナンバーを急に歌えと言われても、「この公演中は無理」と聞きますね。

ありますね。その喉になっちゃいますからね。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

■(リバプールでは) ただひたすら音楽を聴いていたり、眺めていたり

――実際に訪れたリバプールはいかがでしたか?

最高でした。街が決して美しいという感じではないんですが、どこか懐かしい雰囲気があって。日本でいうと、神戸や横浜のような港町の雰囲気です。そこら中にかもめが飛んでいるし。かもめを見たら、リバプール来たなと感じますね。ありがたいことに天気にも恵まれて、街の雰囲気がすごくよかったですね。のんびり、ゆったりしていて、ここから伝説が始まったんだなと。普通の港町にいた子どもたちだったんだなと思いました。

――10代を演じるならば、よりその若さを感じますね。

やはり彼らもそこで生きていたので。

――演じる上でも大きく影響するでしょうね。

懐かしさを感じたというのは、自分がこの作品をやるからというのも、もちろんあったと思うんですね。何もなくて行ったら、「ここなんだ」くらいで終わると思いますが、やはりジョンや作品の縁が自分たちの中にいるから、すごく感慨深いものがありましたね。

――石丸さんと上口さんとは、一緒にどんな時間を過ごされましたか?

さち子さんがすごくビートルズが好きで、前に行っていたそうなんです。さち子さんの案内でいろいろ行って、説明してくれて、僕と耕平はそれをとにかく自分の体の中に吸収していこうとしていました。作品を作るうえで、その思いを共有できることは、すごく大切ですよね。キャヴァンに行っても用もなく、ただひたすら音楽を聴いていたり、眺めていたり、あの空間にいるだけでも、すごくタイムトリップした感じにはなりましたね。めちゃくちゃ狭いんですよ。クラウド自体は広いんですが、演奏するところが、「あそこに5人も入れる?」というくらい狭い。

――もうぶつかり合うくらい?

キュウキュウですよ。カスバなんか本当に天井も低いし、ジョンもこうやって(小さくなって)弾いていましたからね。

――なるほど。実際の場所に行くと、そういうことも体感できる。

信じられないことが結構ありましたね。「こんなところで?」って。でも、やはりその時代なんだろうなって。ここから始まったんだと考えると、彼らもあの歳で最初から成功していたわけではないですし、努力で毎日6時間演奏していて、雑魚寝で5人並んで寝て、どさ回りみたいなこともやっていたわけですから。

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

加藤和樹さん=撮影・岩村美佳

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“「リバプール、懐かしさを感じました」、『BACKBEAT』加藤和樹インタビュー(上)” への 12 件のフィードバック

  1. ダンボ より:

    岩村さんの撮った加藤さんのお写真が好きです。
    後半もこれから拝読します。

  2. PEKO より:

    今日からいよいよ始まりますね!記事を読んでより楽しみになりました。兵庫迄、お預けですが早くみたいです。

  3. アキコ より:

    ビートルズを舞台でと聞いて、どこまでのめり込めるか躊躇していた部分がありましたが、このインタビューを拝見して切り口の違いに俄然興味が湧きました!

  4. りかりん より:

    ビートルズというあまりにビッグな存在を今までにない新しい角度から表現してくれる舞台BACKBEAT。いつも必ずこちらの期待をはるかに上回る演技や歌で驚かされてきた加藤和樹さんがジョン。今回も全力で向き合っておいでの様子がつぶさにわかるインタビューありがとうございました。後編も楽しみにしております。

  5. バジリコ より:

    最後まで興味深い話ばかりでした。
    私も当然BEATLESの曲は知っているし、自分の中に大体のグループやジョン・レノンに対するイメージもありました。
    でも今回のインタビューを読んで、BACKBEATではそのイメージとは全く違う姿を観ることになるんだと覚悟みたいなものができた気がします。
    舞台がより楽しみになりました!
    素敵なインタビューをありがとうございました。
    後編も楽しみにしています。

  6. ちゅーた より:

    加藤和樹さんのお芝居、観る毎にいいな!
    って実感します。
    インタビュー記事を拝読して、更に舞台を観てみたくなりました。

  7. ゆい より:

    いつも楽しく興味深く読ませていただいています。
    私は加藤和樹さんのファンなのですが、舞台上演の際よくインタビューしていただいていつも掲載が発表されると楽しみに待っております。
    岩村さんのインタビューの切り込み方も知りたかったところが多く、また写真もキメすぎてない表情を毎回切り取ってくださるので嬉しいです。
    後編の更新も楽しみにしております。

  8. りい より:

    素敵な記事をありがとうございました。10代の荒削りな頃のビートルズが楽しみでなりません。後編も楽しみにしています。

  9. ピーチ より:

    加藤和樹さんの誠実なお人柄や作品が仕上がる空気が感じられました。お写真も全部素敵です。

  10. ぴーちりーふ より:

    いつも、素敵な記事、写真をありがとうございます。毎回、掲載を楽しみにしております。読み応えがあり、観劇がいっそう楽しみになりました。後半の記事も楽しみにしております。

  11. きゃら より:

    BACKBEATについてはビートルズ自体にあまり知識がないのですが誰もが知るビートルズの創成期を垣間見れる舞台、それもストプレながら20曲も生演奏する舞台ということで期待が膨らんでいます。
    和樹さんがどんな風にジョン・レノンという役に向き合うのか楽しみでなりません。
    このインタビューを見て、益々そう思いました。

  12. kyo より:

    加藤和樹さんが、ジョンレノン役を演じるにあたっての想いや、リバプールで感じた気持ちなどを知ることができ、大変読み応えのあるインタビューでした。掲載されているお写真もどれも素敵です。
    後半も楽しみにしております。

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