シーエイティプロデュースによる、世界に通用する日本発のミュージカルを育てていくプロジェクト。2019年11月15日(金)にプレビュー公演が始まり、11月30日(土)に本公演が開幕するミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』の脚本・演出を務める西川大貴さんのインタビュー、後半です。西川さんのこれまでについて伺いました。ミュージカルとの出会いや、どんなきっかけで創作活動をするようになったのか、今後目指すことなどを語ってくださいました。
――西川さんご自身のお話をお伺いさせてください。幼少期からタップダンスで活動されていて、ミュージカル『アニー』など大きいミュージカル作品にも出演されていたということですが、幼少期のタップもしくはミュージカルに出るようになったきっかけは何ですか?
元々は、体操教室と水泳教室に通っていたんです。体操教室にエアロビなどのクラスがあるじゃないですか。そこにタップダンスがあって、カタカタ鳴っている靴が楽しそうだなと習い始めたら、そのクラスがなくなってしまって。もっと続けたくて、ちゃんとしたタップダンス教室に通い始めたんです。そこに2000年の『アニー』に出演した子が通っていて、2001年のオーディションから男の子が初めて出演できるようになり、先生に勧められて受けました。「ミュージカル」という単語を一度も聞いたことがない状態でオーディションに行って、言われるがままにタップを踏んだら出ることになり、「ミュージカル楽しいな」と思うようになりました。ミュージカルが楽しいというよりは、皆でわいわい、歌って踊れるのが楽しかったんです。
――日常生活のなかに、ミュージカルがふっと入ってきたわけですね。
そうです。だから、学校よりも、もっと楽しい学校という感じでした。
――なるほど。ミュージカルを観て好きになったではなく、気づいたら入っちゃった。でも全部がつながっていますよね。体操教室に行って、タップの教室に行ってという人生のなかで、そこで大きな選択をしたわけではないということですよね。
ないですね。だから、逆にちゃんと仕事としてやっていくとなったときに、結構葛藤はありました。
――仕事にすることは、いつ決めたんですか?
正直にいうと徐々にです。「なにやってるんだろう」「辞めたほうがいいんじゃないか」など、周りが大学のことをいろいろ考えているときや、就職のタイミングもそうですが、徐々に、徐々に確信を深めていったという感じです。「これが仕事になっていくのかな」「もう切り離せないものになっているな」と。それまでは、学業が仕事でしたから、年に1本しかやっていない時期も長かったんです。やっていくなかで、「仕事にするんだろうか」と思うことは結構ありました。だから、これで仕事にしようと決めたといえる明確なタイミングはないですね。『ボーイフロムオズ』で、初めて(V6の)坂本昌行さんと一緒にやりましたが、大人の作品に出たときに、子役のミュージカルとは全然違うんだと思い、感じたものがありましたし、レミゼ(『レ・ミゼラブル』)に出演したときなど、ポイント、ポイントで思いました。あとは、マイナスの意味で引っ張られた作品もあります。「こんなつまらないミュージカルをやるなら、やめよう」と思った時期もありました。
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■大学で劇団を作って、大学2年生でレミゼに出て、脚本は年に1本のペースで
■思うことは日常的にある。でも、そこから先のストーリーを考えるのは苦行
■(プレビューが2種類なのは)クリエイターも含めて「失敗していきましょう」と
■(ツイッターのハッシュタグは #愛ボク )。あらゆる声を参考に、勝算あるギャンブルを
<ミュージカル『(愛おしき) ボクの時代』>
【1stプレビュー公演】2019年11月15日(金)~11月18日(月) DDD青山クロスシアター
【2ndプレビュー公演】2019年11月23日(土祝)~11月26日(火) DDD青山クロスシアター
【本公演】2019年11月30日(土)~12月15日(日) DDD青山クロスシアター
公式サイト
https://www.bokunojidai.com/
<関連リンク>
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https://www.taikinishikawa.me/
西川大貴 twitter
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■大学で劇団を作って、大学2年生でレミゼに出て、脚本は年に1本のペースで
――創作活動は、いつ頃からやり始めたんですか?
中学校のときに、ほかの部活に入るのが面倒だったので演劇部に入っていたんですが、中学校と高校が同時に活動するシステムだったんですよ。
――6年制だったんですね。
僕が中学2年生のときに、上の代がもう高3だったんです。その間がいなかった。中3になったら、自分が一番上の学年になってしまったから、台本を自分が書くしかなくて。その結果、普通のお芝居なのに突然タップシーンが出てくるような訳のわからない舞台になってしまいました(笑)。僕らが一番上の学年なので、当然演出もすることになって、中3から高3までやりました。大学に入っても劇団を作って脚本や演出はやっていて。レミゼに出た時に、出演していた役者の方から劇団をもっているから脚本書かないかと言われて。だから、演劇部の中3からの流れですね。
――やむにやまれず作り始めたのがきっかけなんですね。
脚本だけは、唯一自分からアピールとかアプローチしたことがないんです。だから、なぜ役者のときに、そうやってうまく進まないんだろうと毎回思います(笑)。
――役者のときに、うまく進まない?
役者のときは、「こういう作品に出たい」「こういう毛色のものにチャレンジしてみたい」など、やりたいポジションがあっても、なかなか進まないのに、脚本は1本書いてへとへとになっておわっても、「西川くん、脚本書いているんでしょ? やろうよ」と、声をかけてもらえる。
――なるほど。
「脚本家です」と言ったことはないのですが、なんだかんだ年に1本はずっと書くペースが続いています。ここ1年くらい書いてないなと思っていて、自分のなかでふつふつと考えているときに、『ゴースト』でダレン(・ヤップ)と話したり、プロデューサーの江口さんから話を頂いたりして今回の話になりました。
――脚本を書いてみないかと求められるんですね。
書きたくてというより、浮かんでメモしたりすることは日常的にやっていますが、「よし、暇だから脚本を書こうか」とはならないです。へとへとになるので、そんなに簡単に書けないんです。だから、脚本が圧倒的に、自分のなかでしんどいですね。
■思うことは日常的にある。でも、そこから先のストーリーを考えるのは苦行
――脚本は0から生み出す作業ですよね。きっと演出や演じる仕事とは違うだろうと思うのですが、その0から1の種は、普段はどうやってされているんですか?
先ほどの断片ですね。断片は皆さんあると思うんです。「今、荷物重いな」「雨だるいな」など、そういう断片を集めたときに、ひとつの断片がポエティックになっているときもあれば、種が5~6個集まったときに、「なにか1個曲っぽくなったな」「こういう話があったらおもしろいよな」とか。「こういう舞台があったらおもしろいよな〜」と感じることの才能は、あると思うんです(笑)。それだけあってもしょうがないんですけど。
――種探しですね。
そう。断片的なアイデアが思いつくことは日常的にある。でも、そこから先のストーリーを考えるのは苦行でしかないです。だから、種さがしだけでおわる仕事がないかなと思っています。作品の最初1ページ分だけを考える、って仕事があったらそこそこ稼げると思うんですけど(笑)。
――それは、目をつける才能があればこそ、ですもんね。
あと、すべてのポジションにちょっとずつちょっかいを出すっていう役職もいいな。キャスト、音楽、振付、脚本、演出。これ僕たぶん、向いていると思うんだけどなぁ。
――なるほど。それで全部が少しずつよくなる、みたいな。
でも真面目な話、海外の演劇の現場にはそういうポジションが当たり前にあったりするみたいですからね。少し違いますが「ドラマターグ」であるとか。今後どこかの現場で「ちょっかい役」でクレジット入れてくれないかな(笑)。
――新しい肩書きですね。今回ダレンさんがされるスーパーバイザーのような?
でも、そうだと思うんですよね。
――ちょっかい役=スーパーバイザー(笑)。
脚本を読んで脚本家に文句を言って、演出を見て演出家に文句を言って、俳優を見て俳優に文句を言って、音楽家に「音楽が……」という風に。
――作品をブラッシュアップさせる仕事という感じでしょうか。
そうですね。今わざと「文句」と言いましたが、ダレンは決して文句などでは無く、非常に効果的なアドバイスをいつもくれます。ダレンが自分で言っていたのですが、「演出家としてではなく自分が第三者としてこの作品に関わっているからこそ、言えることがきっとあると思う」と。まさにそうなんですよね。作品を理解した上で、毎日現場にいてある意味視野が狭くなっているクリエイター陣とは違う角度からの意見が言える人。この役職、良い作品を作る上で必要だと思うんです。
■(プレビューが2種類なのは)クリエイターも含めて「失敗していきましょう」と
――先程「脚本を生むのが一番大変」とおっしゃっていましたが、この先、演じることも書くことも演出することも、すべてきっと進んでいくと思いますが、今後についてどういう風に考えていますか。
本当は1年のうち、出来る限りたくさんの時間をクリエイティブな現場に費やしたいと思っています。ポジションはどこでもいいので、クリエイティブな仕事に関わっていられるようなアーティストでいたいというのが、自分の目標です。そういう現場に、少しでも多く関わらせていただけるような人になれたらと思います。そして「(愛おしき) ボクの時代」に関しては、トライアウトを経て次のステップに繋がっていくように、そのために今なにをすべきか日々考えています。例えば楽曲に関しても、今回生楽器はピアノのみですが本来フルバンドが入る想定で作曲されていますから。そこまで考えて次に繋げることが目標なので、そういった意味では「まだまだ先は長い、焦るな自分」と言い聞かせてます(笑)。
――「ここで結果を出そう」と意気込んでしまうと、逆によくないこともありうる。
出来ることが限られちゃうと思いますね。もちろん今回も今できるベストを、と考えていますが「無難な成功を取るならこれ」というのは頭の中に、すぐ浮かぶんです。80点を取るのなら、変なアバンギャルドなことはしなければいいから。かーくん(加賀谷一肇)や(桑原)あいと話しながら、今の段階で「ここまで決める」「ここは、まだ泳がせよう」というところが出てきています。
――具体的にお伺いしたいことがあるのですが、プレビュー公演期間が2回あって、その間にクリエイションする期間がありますよね。そこではどんな風に作り上げて行かれるんでしょうか。
役者には先日伝えましたが、プレビューの場はクリエイターも含めて「失敗していきましょう」と考えています。もちろん「適当に失敗していいや」という意味では全くなく、勝算があるギャンブルが出来る。とりあえず乗りでやってしまうという意味ではなく、失敗してもいいから勝算があるんだったら、ギャンブルしてトライしてみようということが出来る。やってみて、「やっぱり違ったな」と思ったら、そこでその候補を消して、本公演に臨めるというのがプレビューの一番いいところだと思います。それを踏まえて、プレビューとプレビューの間の稽古期間に、なにか大幅な動きの変更があるかもしれないし、なにかギャンブルをして成功した種があったら、そこを膨らませる作業にするかもしれない。ある程度、うまく進んでいるのであれば、よりクオリティをあげる作業にあてるかもしれない。プレビューで大幅に外見が変わるのか、中身が変わるのか、どうなるのかはわからないですが、明らかに稽古を経て、プレビューを経て、なにかが育っていくので、変わっていくんだろうなとは思います。
■(ツイッターのハッシュタグは #愛ボク )。あらゆる声を参考に、勝算あるギャンブルを
――観客の声なども参考にされますか?
もちろんです。たとえば、アンケートでこういう声があるというものがあれば、それは取り入れるかもしれません。多数決じゃないから、多い声を絶対取り入れるとかではないですが。あとは「この場面では拍手を取りたかったのに、意外と拍手は来なかった。ここでは拍手がないと思ったのに、拍手してくれる人がいた」「自然とここでは観客の体が動いていた」「無理やり乗らせちゃっているな」など、そういった客席の体温も参考にして、修正の材料にしていきたいなと。
――客席で作っている側も体感できることが、プレビュー公演を行うことであると。
あると思います。そういう無言の声ではないですが、具体的な声だけではなく、観劇していただくことだけでも作品を一緒に作っていただいていることになると思うんですよね。もちろんツイッターでハッシュタグをつけて正直な感想も発信してほしいです。
―― #愛ボク ですね。
そういうあらゆる声を参考しながら、いろいろ模索しながら作っていきます。本公演に入ったからといって、そこからは演出の変更がなくなるということではなく、今回は全部含めてトライアウトです。その一環としてスウィング制度を導入していて、どこに投入するかなども含めて、失敗を恐れずに、勝算のあるギャンブルをしていきたいと思います。(注:「スウィング」は海外の演劇シーンでは非常に重要とされている役割で、キャストが急なアクシデントや故障などによって、本番に出演しないことが最善だと判断された場合に、代わりに出演する俳優のこと。複数のポジションをいつでも演じられるように稽古しており、いつどの役を演じることになるか分からないため、スキルを持った俳優でないと務まらない)
――そうですね。スウィングチームがいることも、すごいですもんね。実はスウィングがいる公演はありますが、クレジットが出なかったりしますね。
それこそ100回、200回公演をやるときには絶対スウィングは必要です。ダブルキャスト、トリプルキャストを楽しめるという目的、役者さんを観に行くという公演と、作品のクオリティを楽しみに行く作品と、両方あっていいと思うんです。それこそ、「今日は邦画が見たい」「今日は洋画が見たい」と気分次第で選べるように。そういう意味では、今回初めての作品ですし、ダブルだと稽古時間は倍かかるので、シングルでやってスウィングがしっかりサポートをするのが、この作品には絶対合っていると思いました。そのスタイルを確固たるものにするためにも、スウィングの投入は積極的にやっていきたいと思います。稽古場もスウィングのための時間を確保したり、どういうやり方が日本に合っているのかも模索している最中です。あらゆる意味でトライアウトな作品、新たな作品の第一歩をぜひ観にみてください!
※西川大貴さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは12月14日(土)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。