「背中を押してくれた両親に感謝しています」、昆夏美インタビュー(下)

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

ミュージカル『ロカビリー☆ジャック』が2019年12月5日(木)から12月30日(月)まで東京・シアタークリエで上演されます(福岡、愛知でも上演されます)。作・作詞・楽曲プロデュースを森雪之丞さんが、演出を岸谷五朗さんが、作曲を斉藤和義さん、さかいゆうさん、福田裕彦さんが手掛けるオリジナルミュージカル。主演は屋良朝幸さんです。シンガーのルーシー・ジョーンズを演じる昆夏美さんにインタビューしました。下では、昆さんのミュージカルとの出会いやこれまでについて伺いました。

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

――後半は、昆さんご自身についてもお伺いしたいのですが、小さい頃はどんなお子さんでしたか?

よくお遊戯会などで、母がビデオを撮ってくれたんです。それを大人になってから見返したら、誰よりも歌って、誰よりも踊っているのが全部私なんです。どのホームビデオ見ても、絶対歌っていて、振り付けはほかの子と同じなんですが、動きが大きい(笑)。でも、そのときは本能的な感覚のほうが大きい気がします。

――積極的、引っ込み思案など、性格的にはいかがでしたか?

引っ込み思案ではありませんでしたが、そんなに目立ちたがり屋でもなかったと思います。人前でピースをして目立つような子とか、歌ったり、体で表現したりして、自分を出す子がいるじゃないですか。そういう感じのお調子者だったわけではありませんね。

――ミュージカルをやりたいと思ったときの、きっかけの作品などはありますか?

今も上演されていますが、幼稚園の頃に観た『美少女戦士セーラームーン』のミュージカルです。最初はビデオで観ていて、6、7歳くらいになると舞台を観に行ったりもしました。大山アンザ(現・ANZA)さんがやっていらっしゃったときです。ANZAさんはエポニーヌもされていましたが、「このお姉さんたち楽しそう」という気持ちがどこかにあったんです。でも、そのときはまだ、ミュージカルというものを知らなくて、観て一緒に歌ったりしていました。それから、劇団四季を観たりして、好きなものが全部揃っているのがミュージカルで。私がやりたかったことはミュージカルだと思ったのは、小学校3~5年生くらいのときで、それから地域の劇団に入りました。

――ちなみに、『美少女戦士セーラームーン』は、お母様が連れていってくれたとか?

いや、なぜなんでしょう。その入りがわからないんですよ。気づいたときには観ていて、ずっとその歌を歌っているんですよね。そういう記憶と、母の話と、証拠のビデオがあるんです(笑)。

<取材協力>
ヘアメイク:五十嵐友美
スタイリング:津野真吾(impiger)
衣装協力:GOLDY、RPKO

※アイデアニュース有料会員限定部分には、中学3年生の時に進路変更を決意した経緯、大学時代に『ロミオ&ジュリエット』でデビューした時にロミオ役のおふたりと交わした会話や、これまでに出演した『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などについても話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

普通に夢見ていた大学生が「ジュリエット役の昆夏美です」と言うことに。本当に青春だった

■ロミオのお二人が「僕らのほうが緊張するよ」と。期待を背負っているから。今、すごくわかる

■当時の22歳の自分では、28歳の自分がマリウスに対して抱いている感情は、生まれなかった

■レミゼは忘れて(笑)、全く違うテイストの『ロカビリー☆ジャック』を楽しんでいただけたら

<ミュージカル『ロカビリー☆ジャック』>
【東京公演】2019年12月5日(木)~12月30日(月) 日比谷シアタークリエ
【福岡公演】2020年1月11日(土)~1月12日(日) 福岡市民会館
【愛知公演】2020年1月16日(木) 日本特殊陶業市民会館ビレッジホール
公式サイト
https://www.tohostage.com/rockabilly_jack/

<関連リンク>
昆夏美 東宝芸能 オフィシャルウェブサイト
https://www.toho-ent.co.jp/actor/1059
昆夏美 Twitter
https://twitter.com/khooon3

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昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

普通に夢見ていた大学生が「ジュリエット役の昆夏美です」と言うことに。本当に青春だった

――児童劇団のころから今となると、もう15年を越えていますよね。その間で、昆さんにとって印象深い出来事はありますか?

私は子役でやっていたわけではないので、歴が長いだなんておこがましいのですが、私が趣味でやっていた児童劇団で、どうしてミュージカル役者を目指そうと思ったのかについては分岐点があります。中学3年生まではずっと趣味感覚で児童劇団に入っていて、進路を決めるときに公立高校に行こうと思って、受験のための学習塾にも通っていたんです。でも、中学3年生のときにミュージカルコースがある音楽高校があると知って、両親に進路をガラッと変えたいと言ったんです。塾に何年も通ったのに、音楽高校に行くためには音楽の塾に行かないといけない。お金もすごくかかるし、大変なことがあるのに、「あなたがやりたいのなら、そこに行きなさい」と言ってくれて背中を押してくれたんです。だから、本当に感謝しています。

――反対されても、おかしくないですもんね。

そうです。「音楽高校ではなく、普通の高校に行きなさい」と言われると思ったのですが、後押ししてくれて、「自分の好きなことをやりなさい」と言ってくれた両親に本当に感謝しています。高校のミュージカルコースでミュージカルを学ぶならば、絶対にミュージカル女優になろうと思いました。両親の後押しと決断、専門のことを学びにいくという自分の進路を無駄にしたくないと思い、中学3年生のときに進路はミュージカル役者になろうと決めていたんですよね。

――絶対進路はそこだと決めたきっかけは、あったんですか?

ずっと趣味でやっていましたが、趣味って大好きなことじゃないですか。だから、捨て切れなかったんだろうなと思います。

――大人になってからだと自分で決められますし、責任も自分で負えますが、逆にその時点で進路を決められたのがすごいなと思います。

両親の「いいよ」という言葉が自分の決断の後押しになったと思いますが、あの時に選んでよかったなと思います。公立高校に行っていたとしても、ミュージカル女優になるかもしれないし、趣味で観劇を楽しんでいたかもしれません。中学3年生のときの進路で、ミュージカルが趣味から自分の夢に変わったのが大きいですね。

――2011年に『ロミオ&ジュリエット』でデビューされましたが、ちょうど稽古場に取材に伺ったときに、昆さんと(フランク)莉奈さんを、城田(優)さんが盛り上げていらした姿を覚えています。

普通の大学生だったんですよ。事務所に入ったのも、その年の4月でした。5月にロミジュリのオーディションを受けて、その次の日に合格して、6月にパンフレット撮影をして、7月に製作発表をして、8月に稽古が始まって、9月が本番だったんですよ。全部覚えていますね。

――怒涛すぎて覚えていないこともあると思いますが、リアルに覚えているんですね。

今までの自分の人生では考えられないことが、毎月あったんです! 普通に夢見ていた大学生が、舞台で観ていた方たちとご一緒できて、製作発表では「ジュリエット役の昆夏美です」と喋らなくちゃいけない。そのすべてが新しくて。やはりロミジュリは、私のなかで本当に青春でした。1つのものに死に物狂いで向き合って、朝から晩までそのことしか考えていなくて、でも、それがすごく楽しくて。本当に「神様、今日もありがとう」って毎日思っていたんです。幸せな半年間でした。

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

■ロミオのお二人が「僕らのほうが緊張するよ」と。期待を背負っているから。今、すごくわかる

――その幸せな半年間から衝撃を受けたことはありますか?

今パッと思い浮かぶのは、ロミオのお二人に「本番、緊張する」と私が言っていたら、「僕らのほうが緊張するよ」と。「少しずつキャリアを積んでしまって、こういうものを見せてくれるだろうというお客さまの期待を背負ってやらなければいけないけれど、いい意味で莉奈とチャンコン(昆)は、なにをやってもいいんだから、それは大きな強みだよ」と言われたときに、当時はその意味が分からなかったんです。経験もないからどうしようと思っていましたが、新しい子たちが入ってくるようになると、あのとき言っていたことは本当だなと身に染みています。自分が徐々に年齢を重ねていって、状況も一番年下から中堅とまではいきませんが、自分よりも年下の子が入ってきたりすると、すごくわかるなと感じますね。

――今年の『レ・ミゼラブル』のエポニーヌにしても一番年上でしたもんね。来年の『ミス・サイゴン』のキムもそうですか?

高畑(充希)さんと同じ歳なんですよ。よく取材で「昆さんは経験者ですが」と言われるんですが、そういう風に言われてしまうような立場になってしまっている。そこに追いつかなければと。

――今年の『レ・ミゼラブル』をいろいろな組み合わせで拝見するなかで、一番先輩である海宝さんマリウスと昆さんのエポニーヌの、“マリプロ”“エポプロ”がすごいなと感動しました。歌はもちろんすごくて感動するのはわかっているのですが、今回は歌っていない部分で心がもっていかれたんです。

本当ですか? うれしい!

――たとえば「プリュメ街」で、マリウスがコゼットを見つけて舞い上がっているときの、横にいるエポニーヌの姿。「恵みの雨」で、マリウスが歌っているときのエポニーヌなど。ガツガツもっていかれました。

ありがとうございます。観てくれている方、いらっしゃるんですね(笑)。

――観ています、観ています!

舞い上がっているマリウスを観るよなと思っていたんです(笑)。

――マリウスを観ようと思っていても、昆さんのエポニーヌを観てしまう。おそらく観客の皆さんも感じていらっしゃるんじゃないかと。

本当ですか!

――北海道公演でおふたりが千秋楽だった回の「恵みの雨」は特にすごかったです。ちょっと尋常じゃない感じがしました。いわゆるミュージカルは歌で表現しますが、その歌の間の演技は、ご自身でどう思っているのかお伺いできたらと。

よく歌っていないときに、その人の価値というか、(胸を指しながら)ここが出るというじゃないですか。私もそうなんだと肝には命じているんですが、気持ちが繋がって点と点が繋がっていたら、この線はおのずと切れることがない。基本的に1公演1公演全力でやっていますが、人間なので、すごく集中しているときと、少し散漫になってしまっているときも正直あります。集中しきっているときに、自然な流れを自分で体感しちゃうと、やはり繋がっているんだなと自分のなかで腑に落ちて、公演後に冷静になって考えたりします。確かにあのシーンは、「今日は新しい感情になったけれど、どうだったかな」と帰り道で反省するんですが、やらなければいけないことではなく、自分が自然に興味をもって考えたりすることが繋がっていければいいなと思っています。海宝くんと2015年からずっと一緒にやっていて、今や同級生みたいな感覚なんですが、やはり彼にはすごく助けられて、エポニーヌとして演じやすくしてくれていたなと感じています。三者三様のマリウスに対して自分のエポニーヌとしての気持ちが全然違うんです。もちろん、演出家の方につけていただいた演出は変わりませんが、エポニーヌにもいろいろな感じ方があったんだなと思ったりします。

――4演目にして思うことなんですね。

「飽きないの?」と言われたりすることもあるのですが、多分『レ・ミゼラブル』に出たことがある人は誰も飽きたことがないと思うんですよ。というのも、私は目の前に立っている彼らが涙を流したり、目が本気で語っていたりするのを間近に見ているから。役者同士で心が動かされて、その場に生きているんだなと思いますね。

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

■当時の22歳の自分では、28歳の自分がマリウスに対して抱いている感情は、生まれなかった

――すごいと思う役者さんって、もちろん映像のようにアップでは観えないですが、舞台で観ていて目の奥が違う気がします。

わかります。

――それを今回は、昆さんからすごく感じました。

本当ですか? すごくうれしい最上級の褒め言葉です。でも、自分も観ていて目をパッと引くのは、目の奥で語っている人だなと思います。自然に目がいきますよね。それは自分も観劇好きとして、そう思います。

――別に意識して観劇しているわけではなくても、そう感じますよね。ご自身では何か変化を感じますか?

自分ができているかはわかりませんが、やはりエポニーヌに関しては、本当にこんなことを言ったらおこがましいのですが、4回やってきただけの自負がある。自信ではないですが、エポニーヌを少しでも理解しようと毎回、毎回努力した歴史があるというのは、自分でも感じているので、正直1回目に参加したエポニーヌの「恵みの雨」では、あまり腑に落ちなかったんですよね。「おい」って感じなんですが(笑)。

――(笑)。

そのときは全力でやっていて、理解しているんですが、浅いというか。2回目も同じで、2017年の3回目から全く変わったんですよ。「恵みの雨」ってこういうことかなと、腑に落ちて、2年後の今年2019年もまた新しいものを見つけて、終わりがないなと思いました。でも、それが『レ・ミゼラブル』の奥深さで、観客の方に32年間愛され続けた理由であり、魅力なんだなと感じます。

――そういった大きな作品を何度も繰り返すなかで、先ほどロミジュリの話もされていましたが、ご自身の歴史のなかにも刻まれていくような役でしたか?

20代は本当にエポニーヌとともに、22歳から28歳まで、ずっと2年ごとに演じさせていただきました。自分の人と成りが影響してしまうこともあって、22歳の幼い自分では今の28歳の自分がマリウスに対して抱いている感情は、生まれなかったですし、反対に、22歳のときのように素直にするのは難しいですね。エポニーヌに対してのアプローチの仕方は、年齢によって変わったと思います。同じ役をずっとさせていただくこともなかなかないですし、それがエポニーヌでよかったです。私の人生のなかでかけがえのない役で、経験ですね。

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

■レミゼは忘れて(笑)、全く違うテイストの『ロカビリー☆ジャック』を楽しんでいただけたら

――そのキャリアを経て、今度はミュージカル『ロカビリー☆ジャック』ですね。新作になりますが、今までのキャリアを含めても、あまりなかったような作品で、ビジュアル的にもレミゼとは違う世界ですが、新しい作品にむけてメッセージをお願いします。

役者の仕事をさせていただいていると、いろいろな役になれますし、「この作品ではこの役者さんはこうやっていたけれど、次にこういう役をやるんだ」というのはお客さまも楽しみだと思いますし、やらせていただいている私たちも楽しみなんだと、ミュージカル俳優になって気づきました。演じる方も楽しんでやっているんだなというのが、役者の魅力のひとつでもあるので、もうレミゼは忘れていただいて(笑)。

――忘れていただく(笑)。

全く違うテイストなので、逆に振りやすいかもしれないですね。『マリー・アントワネット』でマルグリットをやったあとに、レミゼでエポニーヌとなると、似ていたみたいで。

――フランス革命で戦うところなどが似ているかも。

フランスで、貧乏で、戦ったり、信念を持っていたりというところも、ちょっと似ていますね。『ロカビリー☆ジャック』はそのような役ではないので、レミゼを引きずることはないですよとお伝えしたいです。また新しい私たち、新しい『ロカビリー☆ジャック』を楽しんでいただけたらと思います。2019年最後の作品ですし、年末年始はロカビリーで(笑)。

――それで楽しく2020年を迎えると。

そうですね。幸先良いと思うので、是非よろしくお願いします!

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

昆夏美さん=撮影・岩村美佳

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“「背中を押してくれた両親に感謝しています」、昆夏美インタビュー(下)” への 1 件のフィードバック

  1. のこ より:

    マリウスを観ようと思っていても、昆さんのエポニーヌを観てしまう…という感覚が私にもあったので、読んでいてレミゼのことも色々と思い出すことができました。
    昆さんの歌声も演技も本当に魅力的だと思っています。
    その経験を経ての新作、期待しています!

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