「裏切りになってしまう。でも…」、オレノグラフィティ インタビュー(下)

オレノグラフィティさん=撮影・NORI

2020年12月17日(木)から12月20日(日)まで本多劇場で上演されるミュージカル『グッド・イブニング・スクール』の音楽担当で出演者でもあるオレノグラフィティさんのインタビュー、後半です。稽古の様子やミュージカルの楽曲を創ることについてのお話のほか、「劇団鹿殺し」卒業や新宿梁山泊『唐版 犬狼都市』出演などについても伺いました。

オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

――キャストもスタッフもやるというのは、劇団時代からやっていらしたわけですが、違いはありますか?

劇団時代は、ずっと毎日顔をあわせて稽古をして、脚本もわりとギリギリに貰うことが多かったので、出演の稽古しながら歌を作るみたいな日々で、演出プランも「こうしたい」というものが徐々に出てきたりするので、途中で変わったりもするんです。たとえば一つのM(音楽のこと)を創る時に、修正回数がわかるように番号を入れてMファイルを更新していくんですが、Mファイルのタイトルが16で「16回修正してるんだ」という曲が出てきたりするんです。だから、ひたすら修正をかける作業が劇団時代は多かったです。でもその創意工夫のおかげで、すごく研磨されてダイヤモンドのようにいいものができていくというイメージでした。

――今は、どうですか?

「パトカン」の場合は、個々が好き放題やってできたものが4つ集まって、一つの形を成すというイメージです。「研鑽とか研磨は各々やってください。その4つの山をうまく組み合わせます」というのが、プロデューサーや演出家さんの仕事で、原田さんと鯨井Pがそれをやってくれて「心さんとオレノさんは好きに創って。口は出すけどあとは任すから」みたいな。自立型ユニットが4つあって各々動いている感じです。

――自立型ユニットが4つ。

「それを持って来るなら、これもやってもいい?」 みたいなのがすごく多いです。「そうくるなら、これどうですか?」みたいな感じで誰も否定する人間がいないんです。これは良くないよ、とか、これは面白くないよ、というのではなく「いいと思う。それなら俺はこの札切りたい」って。いまは「じゃあこのカードを切らせて」みたいなのがだんだんと貯まっていって、すごく建設的な話が多いです。

――稽古に入られていかがですか?

メチャメチャ楽しいです。心さんとも「こんなに稽古場が楽しいこと、これまであった?」って話しをしていて。

――楽しいと感じるポイントはなんでしょう?

僕の音楽を体現してくださる方たちが、みんな自由なんです。でも、自分もその中で自由に遊べるというか。どれだけ遊んでも、最終的に原田さんが「はいオッケーです」って、大きく包み込んでくださるイメージ。皆さんスキルの高い方ばかりなので、基礎的な部分で「この音外れてます」とか、「ここをもっとこうしたいです」ということよりも、もっと自由に、好きに歌を表現してますという段階で、あとは演者としてどう絡んでいくか? みたいなところに持っていけているのが楽しいです。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、ミュージカルの楽曲を創ることについてのお話のほか、「劇団鹿殺し」卒業や新宿梁山泊『唐版 犬狼都市』出演などについても伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■ミュージカルなので、いくらハモっても重唱させてもいいのは楽しい

■「鹿殺し」を辞めると裏切りになってしまう。でもやっぱり、試したい…

■(『唐版 犬狼都市』出演)憧れのテント公演、本当にエキセントリックでした

■音楽のエネルギーですべてをチャラにしてくれる『グッド・イブニング・スクール』

<ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』>
【東京公演】2020年12月17日(木) ~ 12月20日(日) 本多劇場
公式サイト
https://www.marv.jp/special/pat_company/

<関連リンク>
PAT Company 公式 Twitter
https://twitter.com/stage_project_4
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オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

※ここから有料会員限定部分です。

■ミュージカルなので、いくらハモっても重唱させてもいいのは楽しい

――ミュージカルの楽曲を創ることについてはいかがでしょうか?

楽しいです、すごく。意外と、これまでと変わらないかもしれません。「鹿殺し」時代もミュージカルと銘打ってはいなかったんですけど、音楽劇だったので。ミュージカルっぽさで言うと、いくらハモってもいいのと、いくら重唱させてもいいということが、札として切れるのはすごく楽しいですね、今。

――手札が増えた?

増えました。高音をお願いしてもいいとか、難しいリズムをお願いしてもいいとか、手札としては増えましたね。だから自由にやっています。「鹿殺し」時代が不自由だったわけじゃないんですけど、僕は劇伴(げきばん)は役者さんに合わせたものじゃないと絶対にいけないと思っていて、いい歌が必ずしもいい劇伴ではないと思っているんです。たとえば、その方にフィットする服じゃないと、絶対にいいものにならないから。そういう意味で、どの服でも着こなせる方が多いので、どの服着せようか迷うというのが、うれしい悩みです。

オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

■「鹿殺し」を辞めると裏切りになってしまう。でもやっぱり、試したい…

――「鹿殺し」を今年3月に卒業されました。

いつかは、なのかなという気持ちもありつつ、一生骨を埋めるのかなという思いもあったんですけど…。

――なにかきっかけが?

結構複合的な理由がたくさんあって、これだからということではないですが、でもやっぱり、新しい所でいろんなことを試したいというのがすごく、ひとつ大きな理由でした。劇団がイヤになったわけではなくて、どちらかというと、いま自分の人生の中で、停滞している空気を打破したい思いがありました

――自分の人生の停滞している空気を打破したい。

このまま居ると、たぶんもう、自分の表現活動が前に進めないんじゃないかという気がして、劇団という枠組みにとらわれずにやっていきたいというのがひとつあったんです。もちろん劇団をやりながらでも、できることではあったんですけど、身ひとつで表現者たちの波に飛び込んでいきたいという欲求の方が勝ってしまって。元々はもう少し早く発表しようと思っていたんですけど、やっぱり劇団をずっと応援してきてくださった方々がいらっしゃって、その方たちに対して僕が辞めるという事は、ある種の裏切りになってしまうというのがあったので。今コロナ禍で、みんなが舞台観たいのに観られなくて、自分の人生もどうなるか分からないという時なので、できれば発表したくないなと思っていたんですけど、劇団側としても「これを発表しないと前には進めないよ」という話になったので、3月末の発表になりました。

――身ひとつで表現者たちの波に飛び込んでいきたいと。

劇団や事務所に入っていると、友達の依頼を受け辛い状況があるので、フリーになりたかったというのもあるんです。自分がどんなに面白いと思っている作品でも「ごめん、ギャランティーが」という話になると、やっぱり誰かに泣いてもらわなきゃいけない。フリーの場合は、自分が割を食えば作品に参加出来るというのがすごく大きくて。そして、先行投資といいますか「今回はお仕事というよりも、友達づきあいで音楽を作ります。でもゆくゆくはみんなでもっともっと大きな興行をしていこうね」という夢を、劇団だけじゃなくていろんな人と見れるというのがすごく、大きな理由ではありました。幸運なことに「フリーになったのなら、一緒にやろう」と言ってくださる方がたくさんいるので、本当にそのご縁を大事に、好きな方と好きなことを一緒にやっていくというのを大事にしていかなければなと思っています。

オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

■(『唐版 犬狼都市』出演)憧れのテント公演、本当にエキセントリックでした

――先日まで、新宿梁山泊さんの『唐版 犬狼都市』にご出演でした。

憧れのテント公演で、本当にファンタスティックでエキセントリックでした! 「ハリー・ポッター」みたいに、ある日小人に連れられて行ったら、ホグワーツ城に来ちゃった、みたいな(笑)。

――テント公演は憧れだったんですね。

自分たちで全部やっていて、凄かったです。下北沢の空き地に、本当にサーカスみたいなテントを「せーのッ!」って、大きな3、4メートルのテントの骨組みを立てて。

――自分たちだけでテント設営を?

役者だけでやるんですよ、本当に。「みんなでとにかくいちからやろう」って、テント建てて天幕張って。そこから中に舞台を造って、トラス造ってあげて、そこに照明吊って、客席はイントレで、足場を鉄骨で作って。そしてやっと「ハイ! 場当たり始めますよ」という感じで。だから3日か4日の間は、もう仕込みしかしてなかったです。全部手作りでできるのは、それを長年続けていらっしゃった金 守珍さんのノウハウがあるからです。ずっとテント公演と共に生きてきたっていう、唐十郎さんの戯曲と共に生きてきた方の重みというのは、半端じゃなかったですね。「鹿殺し」時代も『百千万』(2004年、2005年、2008年)という作品をやっていて、テント公演に憧れた作品で、テントに見せるために王子小劇場(花まる学習会王子小劇場)の壁に全部ブルーシートを貼って「テント」という体をとったんです。いつかテント公演をやりたいね、と言ってたんですけど、思いもよらない形で辞めてからすぐに叶って複雑な心境です。

――また是非。

そうですね。またテントに帰ってきたいと思います。

オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

■音楽のエネルギーですべてをチャラにしてくれる『グッド・イブニング・スクール』

――最後に、ミュージカル『グッド・イブニング・スクール』をご覧になるお客さまへのメッセージをお願いします。

『グッド・イブニング・スクール』は、とにかく元気が出る作品です。僕はミュージカルが苦手だった時代もあったんですが、でも原田さんやバッチ(相葉裕樹さん)とお会いしたりして、ミュージカルの良い面、この問答無用のエネルギーというのは、ある種、本当にテント公演と似ていて、『グッド・イブニング・スクール』自体も、音楽でガツンと殴りつけるというか、音楽ですべてのことをチャラにしてくれる、そのエネルギーがすごくある作品になっているんです。決して後ろは向かない作品というか、登場人物たちの闇を、すごくポップに書いていて、今このしんどい時期にこそ、ぜひ見ていただきたいです。今、僕たちが演劇をやる意味ってなんだろうと考えた時に、こういう作品で、自分たちも元気になれるし、みんなも元気になれるという作品をやり続けることが、今における僕の、一番のモチベーションになっている作品ですので、騙されたと思って観て欲しいです、ホントに! メッチャ元気ないなとか、今日はちょっとストレス溜まってて、お芝居見る元気ないわとか、難しい話はちょっと観られないという人に程、本当にソシャゲでガチャ回すぐらいの勢いで観て欲しいです。軽く「今日はNiziUのダンス見たいな」とYouTube 見るぐらいのつもりで、フラッと配信で観てくださってもいいですし、フラッと本多劇場にいらしてくださってもいいです。本当にフラッと来てください。パッと演ってますから!

オレノグラフィティさん=撮影・NORI
オレノグラフィティさん=撮影・NORI

※オレノグラフィティさんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2021年1月14日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「裏切りになってしまう。でも…」、オレノグラフィティ インタビュー(下)” への 1 件のフィードバック

  1. よーこ より:

    自立型ユニットが4つ、という表現にとても納得しました!自由に各々がやりたい表現を追求していけるのも、皆さん確かな実力があり、そしてそれをお互いに尊重しあえているからこそなのですね。
    そういう互いへのリスペクトが、カンパニー全体の楽しくあたたかい雰囲気を生んでいるんだなあと感じました。とっても素敵なことですね!
    そんな方々が作ったミュージカルなら、絶対に見る人もハッピーな気持ちにさせてもらえるだろうなとワクワクしています。

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