2021年3月30日(火)に銀座ヤマハホールで『麻実れい芸能生活50周年記念コンサート 三重奏~Rei Asami Trio~』を、4月4日(日)に宝塚ホテルで『麻実れい芸能生活50周年記念ディナーショー 三重奏~Rei Asami Trio~』を開催する麻実れいさんのインタビュー、後半です。ひとつのものをクリエイションしていくなかで大事にしていること、2020年に出演した『アナスタシア』について、歌について、今後について、そして、年を重ねてそれぞれが旅立っていくけれども、旅立っていったらまた絶対に会えると思うというお話などをしてくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
――出会った方々と、ひとつのものをクリエイションしていくなかで、一番大事にすることや、人とコミュニケーションをとるなかで一番残るものは何ですか?
最初のジャイルス・ブロックという演出家から、『マクベス』の稽古中に、江守(徹)さん相手に喧嘩してほしいと言われました。なんで喧嘩なんかするんだろうって。でもそういう稽古をしたことがないから、どうしていいかわからなかったんです。とにかく夫婦喧嘩をしろと。夫が約束を破った設定があって、取っ組み合いになるまでやって、その時に演出家が「OK、わかった」と言ったら、私もわかったのね。
宝塚でも丸15年芝居はしていましたが、男から女を演じる事の緊張と不安で自分のなかで緊張していたんだと思いますが、ひとりで勉強していたんです。台詞もひとりで、自分のところばかり。そうすると、稽古場で、いざお相手と台詞を交わす時に、相手まで台詞が届かないんです。「ちゃんと届かせろ。届いたら向こうの言葉をしっかりキャッチして、その時に何を感じたか、何を感じるかで、それをまた相手に届けろ。わかった?」とジャイルスが言った時に、わかりましたと。それがやはり、大きくて、ジャイルスじゃなかったらできなかったと思います。
デヴィッド・ルヴォーが先だったらできなかったと思う。デイヴィッドは若いし、これからという、火が点く始めの頃でしたが、ジャイルスは、確かナショナルシアターの演出家だったので、そういう意味では育て方がお上手だったんじゃないかなと思います。メイキャップの方法、いろいろなこと、なぜ舞台に出てくるか、舞台に出てくるには理由があるだろう、それとなぜ引っ込むか、引っ込んだらそっちでなにがあるか、ということですね。
レディ・マクベスは、夫からの手紙を読んでいる時に、シェイクスピアって難しいけれど、普通の家庭環境で考えてみようと思ったんです。夫がちょっと立場が上がるような気配を感じたら女房としては押すよね、と考えたらいいんじゃないかと。夫が帰ってきて、とにかく夫がいろいろなことを言う、そうすると女房のほうが燃えてしまう。それで、もうすぐ王がやってくるからふたりで部屋へ行こうと。「引っ込んでからなにをすると思う?」と聞かれても、なにをするかなんてわかりゃしませんよね。そうしたら、「ものすごく動物的なセックスが始まるだろう、興奮しきっているふたりだから」と。
『桜の園』では、稽古が始まる前に、「並んでいる長椅子にみんな座って」というんです。「半端じゃない、すごく広大な桜の園だから、駅から馬車に乗って延々と自分たちの邸宅まで時間がかかる。ここでいろいろなことを感じながら、話しながら行ってくれ」と。舞台に出ていないところがあって物語が始まるとか、そういうことを教えてくれて、考えることができるようになったんです。この主人公は、なんのために出てくるのか、どういう生き方をしたのか、周りの交際している人たちはどんな人たちなのか、そういう風に考えると、すごく面白いです。
――毎回新たな気づき、聞いて知ることがたくさんあるんですね。
そうなんです。教えてくださった素晴らしい方たちと出会い、そこでしっかり土台ができたので、若いデヴィッドが来ても、(ロバート・アラン・)アッカーマンが来ても、なんとか処することができたのかなぁと思います。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、2020年に出演した『アナスタシア』について、歌について、今後について、そして、年を重ねてそれぞれが旅立っていくけれども、旅立っていったらまた絶対に会えると思うというお話などをしてくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。などインタビュー後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■ミュージカルは華やかじゃないとね。『アナスタシア』には素敵な人たちがいっぱい
■『アナスタシア』『斑女』『ドクター・ブルー』。コロナ禍でもこれだけできたのは感謝
■演出家が「麻実さんのファルセットが好き」と。今回のコンサートでも使ってみようかな
■与えられた時間を大事に、そしていつか終わる。旅立ったら、また会えると思う
<『麻実れい芸能生活50周年記念コンサート』>
【東京公演】2021年3月30日(火) 銀座ヤマハホール
公式サイト
https://www.umegei.com/schedule/896/index.html
<関連リンク>
麻実れい|アーティスト|梅田芸術劇場
https://www.umegei.com/system/productions/detail/1
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■ミュージカルは華やかじゃないとね。『アナスタシア』には素敵な人たちがいっぱい
――若い演出家や共演者の方々は、途上の人であり、まだ悩んでいたりすると思いますが、一緒にやってどういう風に見えますか?
若いから熟してはいないし、場数も少ない。ですが、やはり「この人たちはすごく大きくなるだろうな」って。
――わかりますか?
わかる。すごく魅力的ですし、へこたれないし、素敵な時は「素敵よ」って言います。やはり変化をちゃんと伝えてあげる。私は、彼らにしてみたら上級生ですが、こうしろああしろとは絶対に言わないんです。それは、演出家がちゃんと立っているから。ひとりの人の言葉に絞ってあげないと、どうしていいかわからなくなってしまう。素敵よと伝えなくとも、きっと大きくなるだろうなと思いますし、その若さに刺激も受けます。
――『アナスタシア』がちょうど1年前にありましたね。
本当に、綺麗でしたよね。
――久しぶりのミュージカル出演でしたよね。
30年ぶりくらいでしたね。『蜘蛛女のキス』からそれぐらい離れていました。若さって良いなと思ったのは、私はシングルキャストだったから、トリプルキャストの方々とは、稽古を3回やらなくちゃいけない。私は変わらず、相手が変わるんです。この疲れは予定外だなと思いましたが、それだけ私は稽古をさせてもらえるわけだから、ありがたく思いました。今は、ミュージカル界には素敵な人たちがいっぱいいるんだなと思って、びっくりしてしまいました。プレイ(芝居)の場合は、現実的な、若い子にしてもしっかりしていて、華やぎというよりも芯みたいなものを感じることが多いですが、ミュージカルはやはり主役は華やかじゃないとね。とても華やかで、製作発表の時に、目がちらちらしてしまいました。
――製作発表で、「ミュージカル界には、こんなに素敵な人たちがたくさんいらっしゃるのか」と仰っていましたね(笑)。
スタイルは良いし、稽古場でも一生懸命でした。そして、やはりアメリカで作った作品であり、全てにアメリカ人スタッフが入って、全てアメリカのものを使い、役者だけが日本人でした。衣裳も、本当に生地が高価なものだから、無駄遣いはできない。鬘ひとつにしても素晴らしいんです。私が演じたマリアおばあちゃんの髪がありますよね。あこや貝みたいな。
――あこや貝(笑)。
この髪の毛が一番高価で、「このぐらいの値段がするからアイロンはかけないでくれ」とヘアーさんに言っていましたが、本当にお年寄りの髪の毛を用意してくださったみたいです。被っていて、すごく皇后を作りやすかったですし、なんて幸せなんだと思いました。
■『アナスタシア』『斑女』『ドクター・ブルー』。コロナ禍でもこれだけできたのは感謝
――今振り返ると『アナスタシア』はいかがでしたか?
『アナスタシア』は、もちろんみんなオーディションでしたが、みんなミュージカル界の方々で、音楽大学や音楽学校を出た方がたくさんいらして、私なんて音が取れないと困ってしまうから、役を降りようかなと思いました。四重奏の時に、みんなはちゃんとバーンと歌っているのに、自分は歌えなくて途中で沈没したりして。そうしたら、歌唱指導の方が「麻実さんの声が聞こえてきましたよー! 頑張ってくださーい!」と言ってくれて、音を取ってもらったんです。それで頑張って、家で四六時中聞いていたら、音が取れるようになりました。
あの苦しみは二度としたくないから、公演が終わってからも、ずっと歌をやっていたんですが、『斑女』が入ってきたので、歌は置いておいて、今は『斑女』の台詞を覚えようとか、ずっとその「置いておいて」が多くて。でもやはり、50年間とても幸せでしたが、このコロナ禍においても、『アナスタシア』は10日間はできましたし、『斑女』も実際に集まった稽古は2週間弱ぐらいでしたが、それでも日生劇場という大好きな劇場に立てました。スタッフの方たちも久しぶりのお仕事だったので皆さんすごく嬉しそうでした。
これでまた終わりかなと思ったら、『ドクター・ブルー』のお仕事を頂きました。中止公演もありましたが、これはしょうがない、みんなで頑張ろう、最後まで行こうねと言って。それもまた幸せです。コロナ禍でこれだけできたのだから、本当に感謝感謝だなと思います。 これからは普通に、少しずつ始まっていくのでしょうが、ライブに関わるの人たち、例えばオーケストラの方たちやスタッフ、大道具、小道具全ての方たち、私たち役者とか、動けないということはそこでストップしてしまうんです。そう考えたら、上演できることは、なんて幸せなんだろうと思う。
■演出家が「麻実さんのファルセットが好き」と。今回のコンサートでも使ってみようかな
――先ほど『アナスタシア』を終えて、歌をやめないようにしたと仰っていましたが、今度のリサイタルで、その歌は繋がっていくのではと思います。歌は、宝塚で歌い始めた頃から今に至るまで、どんな風にお付き合いされてきたんですか?
最初は姉が宝塚の音楽学校かなにかの時に、私が自分の家で歌っていたのを、テープに録っていて「ターコ、はいこれ、あなたの声よ」って。聞いたらひどい音痴なわけです(笑)。これはいけないなと思って、音楽の先生に師事したり、同期にすごく歌が上手い子がいて、彼女にみてあげるよと言ってもらったり。
宝塚は音楽学校だけあって、新曲の時間が多くて、先生と生徒が1対1でやるんですが、クラスの場合は、周りがみんないるんです。私が「ソ~♪」と言うと先生が「いいえ」って。「ん~♪」とか言うとまた「いいえ」。そしたら1番の同期がみてあげると言ってくれたんです。また、1番重鎮の先生がいろいろ心配してくださって、他に音楽指導を受けたりもしました。
あとは、やはり責任として歌わなければいけないから、現場で頑張ったら、どんどん声が出るようになって、やはり卒業時にはすごく張りのある良い声が出ていましたね。
退団後はストレートプレイに行ったので、もちろんミュージカルもありましたが、最近は歌っていなかったんです。でもやはり、いただいたら繰り返し繰り返し稽古をする。そうすればなんとかなりますし、それぞれの作品で歌唱指導の方がついてくださるから、それでまた少しずつ元に戻っていきます。
ただ年齢的に、若い時の、壮年期の声は到底無理ですね。ならば、ファルセットに変えてみようと思いました。そうしたら、『ドクター・ブルー』で2曲も歌わなければいけなくて。
――声楽家の役ですよね。
そうなんです。『You Raise Me Up』と、ユーミン(松任谷由実)さんの難しい歌で『ノートルダム』を歌いました。ギリギリ初日までに自分でなんとかしたんですが、ファルセットの声がすごくきれいだから、その声を大事にしたほうがいいよと言われました。演出家が「麻実さんのその声が好きなんだ」と言ってくれて、私のファルセットの声って、ちょっと使えるのかなと思いました。
だから、今回のコンサートもファルセットを使えるところは使ってみようかなと思っています。なんでも経験を勉強の場と思って諦めないことにしています。そうすると、なんとかついて行けるかなと。
――そうすることで新しい声が見つかるんですね。ファルセットは今までは、武器になるとは思っていませんでしたか?
そうですね。芝居のなかで、例えば「あなたの戦いは始まったばかり」と言って、『ノートルダム』の「いつまでも〜♪」と歌に入るときに、普通のトーンで歌うと音差が苦しい。そこの場面は霊になっているので、ファルセットの声を使ったほうが人間離れしていて良いかなとか。現場で学ばせていただいています。
■与えられた時間を大事に、そしていつか終わる。旅立ったら、また会えると思う
――そうやって新しいものが見つかるというのは、きっと楽しいですよね。
楽しいですね。自分ができないから、何度も音をもらって、何度も練習して。演出家には最後の最後まで「なんで私に歌わせるんですか」って怒っていましたが(笑)。でも彼には彼の、私の声を使いたいという思いがあったらしいんです。人生って、全てが勉強じゃないかな。芝居も経験が活かされますし、すべてお勉強だと思います。
――若い世代の方にお話を伺うと、将来の目標や夢を語ってくださいますが、私自身も20代、30代の時と思うことが変わってきたなと実感しています。麻実さんが、今、この先に楽しみにしていることや、ひとつひとつのことを、どんな風に考えているか伺えたら嬉しいです。
『アナスタシア』の時に、若い子たちみんなと私もいたのですが、演技指導の方が「自分が若く戻ったら何になりたい?」と、みんなに聞くんです。私にも「どうしたい? なにをしたい?」と聞くので、「もうこの年だから、あとは死ぬのを待つばかり」って言ったら「Oh,no!」ってすごく笑っていました(苦笑)。
でも今はこんな状況なので、本当に1日も早く、1秒でも早く、コロナが収束することを願ってやみません。なんでもなかった普通の生活が、こんなに素敵で、こんなにありがたいものだと改めて感じました。ここをみんなで乗り切ったら、私は現実として、これから先何十年も生きられるわけがないから、自分らしく、悔いを残さないように、これからの社会状況のなかで、やはり自分というものをきちんと立たせて生きていけたらいいかなと思います。
そして、この年になると、本当に10年があっという間だということがわかったんです。これは年老いて感じたことなのね。若い人は、1日1日が結構ゆっくりじゃないですか。昔は「10年ひと昔」なんて言葉がありましたが、10年前は昨日みたいな感覚なんです。70代から80代なんかあっという間に終わっちゃいそうだから、やはり与えられた時間を大事にします。
そしていつかは終わるということが来るのだから、年を重ねると、生きていることにとても感謝をしますし、またそれぞれが旅立っていく。旅立っていったら、私はまた絶対に会えると思うから、誕生するという意味に感じる。だから、与えられた今を大切に、そしてその次の世界も、どうなるか見えないけれど、楽しみにしたいなと思います。
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インタビューのお話しを読んで、コンサートのトークの内容を思い出して余韻に浸っています。これまでの舞台が今日に明日に繋がる……その道を颯爽と歩く姿が格好良くて素敵です!