佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021 喜歌劇『メリー・ウィドウ』が2021年7月16日、兵庫県⽴芸術⽂化センター KOBELCO⼤ホールで開幕し、7月25日まで上演されます(全8公演)。7月13日に開かれたゲネプロを取材しましたので、独自撮影の写真と合わせてレポートします。この日のゲネプロに出演したのは、ダブルキャストのうち、高野百合絵、折江忠道、高橋維、黒田祐貴、小堀勇介、小貫岩夫、大沼徹、泉良平、志村文彦、押見朋子、森雅史、鈴木純子のみなさん。シングルキャストは、香寿たつき、桂文枝、鳥居かほり、高岸直樹、吉岡美佳、佐藤洋介のみなさん。指揮は佐渡裕さん、演出・日本語台本担当は広渡勲さん、舞台装置の担当はサイモン・ホルズワースさんです。
作品は、ニエグシュ役の桂文枝さんが登場して始まります。まだ下りたままの幕には地図が映し出され、物語の背景や人間関係が説明されます。オペレッタの舞台はパリ。第一幕は、ポンテヴェドロ(架空の小国)の公使の館で、国王陛下の誕生日の祝賀会が行われています。
幕が開いて私たちが目にする舞台は、巨大なピアノ。装置からも自然にメロディがあふれ出て聴こえてくるようです。オーケストラは、兵庫芸術文化センター管弦楽団の皆さん。兵庫県立芸術文化センター専属のオーケストラで、オーディションで選ばれた若手演奏家を中心に構成されています。本日のキャストも若手の方が中心。フレッシュなメロディーが、会場いっぱいに響き渡ります。
盛大に催されている宴の裏では、公使のツェータ男爵が気を揉んでいます。莫大な財産を相続した未亡人のハンナ・グラヴァリが、もしも外国人と結婚してしまったら…。ポンテヴェドロの財産が国外へ流れてしまい、国は破産してしまうでしょう。ツェータ男爵は、彼女とかつて恋人同志だったダニロと結婚させようと策を練ります。
再会したハンナ(高野百合絵さん)とダニロ(黒田祐貴さん)。二人は意地を張り合い、なかなか歩み寄ることが出来ません。
もう1組のカップル、ポンテヴェドロ大使ツェータ夫人ヴァランシェンヌ(髙橋維さん)とフランス人青年カミーユ・ド・ロシヨン(小堀勇介さん)の恋の行方も気になります。人妻とパリジャン。いわゆる「不倫」の関係です。
客席とオーケストラピットの間には「銀橋」と呼ばれるステージが設置されています。宝塚歌劇を意識したもので、舞台空間に奥行きを与える演出が効果的でダイナミックでした。男性陣が揃って「女・女・女…」と歌う場面では、女性陣が揃って銀橋の上で踊り歌います。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021 喜歌劇『メリー・ウィドウ』のルポの続きと独自撮影の写真5カットを掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■ハンナの「ヴィリアの歌」、高野百合絵は一人ひとりに語り掛けるように
■ダニロの愛を確信したハンナを中心に歌い踊る第二幕のフィナーレは圧巻
■第三幕、香寿たつきが白づくめの男装で登場、嬉しいサプライズも
■20分以上の「グランドフィナーレ」。高岸直樹・吉岡美佳の華麗なバレエも
<佐渡裕芸術監督プロデュースオペラ2021 喜歌劇『メリー・ウィドウ』>
2021年7月16日(金)~7月25日(日) 兵庫県⽴芸術⽂化センター KOBELCO ⼤ホール
公式サイト
http://www.gcenter-hyogo.jp/merrywidow/
<出演>
【7月16日(金)、18日(日)、21日(水)、24日(土)公演】
ハンナ・グラヴァリ:高野百合絵
ミルコ・ツェータ男爵:折江忠道
ヴァランシエンヌ:高橋維
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:黒田祐貴
カミーユ・ド・ロシヨン:小堀勇介
カスカーダ子爵:小貫岩夫
ラウール・ド・サンブリオッシュ:大沼徹
ボグダノヴィッチ:泉良平
プリチッチュ:志村文彦
プラスコヴィア:押見朋子
クロモウ:森雅史
オルガ:鈴木純子
【7月17日(土)、20日(火)、22日(木)、25日(日)公演】
ハンナ・グラヴァリ:並河寿美
ミルコ・ツェータ男爵:片桐直樹
ヴァランシエンヌ:市原愛
ダニロ・ダニロヴィッチ伯爵:大山大輔
カミーユ・ド・ロシヨン:樋口達哉
カスカーダ子爵:水口健次
ラウール・ド・サンブリオッシュ:晴雅彦
ボグダノヴィッチ:ジョン・ハオ
プリチッチュ:三戸大久
プラスコヴィア:清水華澄
クロモウ:河野鉄平
オルガ:板波利加
【全日出演】
シルヴィアーヌ:香寿たつき
ニエグシュ:桂文枝
エマニュエル:鳥居かほり
オペラ座のエトワール:高岸直樹
オペラ座のエトワール:吉岡美佳
パリのジゴロ:佐藤洋介
[合唱]ひょうごプロデュースオペラ合唱団
[管弦楽]兵庫芸術文化センター管弦楽団
<スタッフ>
[音楽]フランツ・レハール
[台本]ヴィクトル・レオン/レオ・シュタイン
[指揮]佐渡 裕(兵庫県立芸術文化センター芸術監督)
[演出・日本語台本]広渡勲
[装置]サイモン・ホルズワース
[衣裳]スティーヴ・アルメリーギ
[照明]沢田祐二
[振付]川西清彦
[合唱指揮]矢澤定明
[訳詞]森島英子
[衣裳補]小栗菜代子
[演出助手]飯塚励生
[振付助手]大畑浩恵
[映像]三浦景士
[舞台監督]幸泉浩司
[プロデューサー]小栗哲家
[制作]兵庫県立芸術文化センター
こちらは、兵庫県立芸術文化センターの公式YouTubeチャンネルに掲載されている2008年の上演シーンを紹介した動画です。
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■ハンナの「ヴィリアの歌」、高野百合絵は一人ひとりに語り掛けるように
全編が名曲づくしの「メリー・ウイドウ」。第二幕の舞台はパリのハンナ邸。第一幕の翌日の出来事です。
この幕のハイライトの一つでもあり、ハンナの最大の聴かせどころでもあるのが「ヴィリアの歌」。物語の筋とは直接関係は無いものの、このシーンでは、お客様のみならず、舞台上のキャストの全ての皆さんがハンナを見つめ、その美声に聴き惚れてしまいます。まさに劇場が一体となる、最高に素晴らしい瞬間を味わうことが出来ます。高野百合絵さんは、一人ひとりに語り掛けるように、この歌を聴かせてくれました。
■ダニロの愛を確信したハンナを中心に歌い踊る第二幕のフィナーレは圧巻
ツェータ男爵の妻ヴァランシエンヌは、人妻でありながら、パリのプレイボーイ、カミーユとの秘密の恋を楽しんで(?)います。東屋での密会中、男爵に踏み込まれる寸前で、機転を利かせたハンナがヴァランシエンヌと入れ替わり、カミーユと共に登場するので、男爵はびっくり仰天。そしてハンナは、なんとカミーユとの婚約を皆に発表してしまうのでした。内心はハンナを愛しているのに自分の心に素直になれないダニロはショックを受け、憂さ晴らしに「大好きなマキシム」へと出掛けて行きます。ダニロの愛を確信したハンナが中心となって歌い踊る第二幕のフィナーレは圧巻でした。明るく軽やかなメロディーの中に、それぞれの思惑が交錯するのを感じます。
■第三幕、香寿たつきが白づくめの男装で登場、嬉しいサプライズも
第三幕。香寿たつきさんは、白づくめの男装で登場。嬉しいサプライズで会場を湧かせます。コロナ対策で声援を送ることが叶わない今、シアターショップで購入することが出来る特性の「ブラボーバンダナ」の存在が嬉しいです。
第二幕の翌日のハンナ邸。室内はマキシムそっくりに飾られ、踊り子たちも揃っています。この夜会には、踊り子のいでたちをしたヴァランシェンヌ他、領事たちの妻も加わっていて、オペレッタは最高潮に達します。
オペレッタの最後、ダニロとハンナはついに結ばれ、ツェータ男爵とヴァランシェンヌも元のさやに戻ります。すべてがハッピーエンド、めでたしめでたし…。ところが、佐渡版は他とは違いますとばかりに、カーテンコールが終わった後に、更に「グランドフィナーレ」へと続くのでした。
■20分以上の「グランドフィナーレ」。高岸直樹・吉岡美佳の華麗なバレエも
「グランドフィナーレ」は、時間にして何と20分以上。オペレッタの後にまたオペレッタが見れるというほどのボリュームには大満足でした。それぞれの見せ場が繰り返して披露されるだけでも充分ですが、華麗なバレエも見られるのは贅沢です。東京バレエ団で数々の主役を務めた高岸直樹さんと吉岡美佳さんのバレエを、オペレッタの後に堪能することが出来るとは。筆者はン十年オペラを見続けていますが、ここまでファンサービスに溢れた作品に出会う機会はなかなか無いものです。7月25日まで上演がありますので「コロナ禍の憂さを、愛と笑いで吹き飛ばしたい!」という方にはおススメです。