「ターニングポイントになる作品」、『いとしの儚』鳥越裕貴インタビュー(上)

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

舞台『いとしの儚』が、2021年10月6日(水)から10月17日(日)まで六本木トリコロールシアターで上演されます。ロクデナシの男・鈴次郎と、鬼がこしらえた女・儚(ハカナ)の、美しく儚い100日間の愛の物語。扉座の横内謙介さんによって生み出され、20年以上愛され続けて来た作品で、石丸さち子さんの演出で新たに上演されます。アイデアニュースでは、鈴次郎役の鳥越裕貴さんにインタビューしました。上、下に分けてお届けします。インタビュー「上」では、出演の依頼を受けて感じたことや、脚本を読んで感じたこと、石丸さんは「愛の擬人化」だと思っていることなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月6日(水)午前11時0分掲載予定のインタビュー「下」では、この作品で演じる鈴次郎役について、共演する原田優一さんについて、ご自身のこれまでの出演作品を振り返って、これから目指すものなどについて話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

<あらすじ>
三途の川で、青鬼(久ヶ沢徹)が、あるロクデナシの男の話を語る。その男の名は件(くだん)鈴次郎(鳥越裕貴)。女にも金にもだらしない博打打ちで人間のクズ。人間としては最低だが、博打の神さまに気にいられ、博打では負け知らず。ある時 鈴次郎は、人間に化けて賭場に来ていた鬼シゲ(辻本祐樹)と勝負になり、「絶世の美女」を貰えることになった。その美女は、鬼シゲの知り合いの鬼婆(原田優一)が、墓場の死体を集めて、ついさっき生まれて死んだばかりの赤子の魂を入れて作った女。ただし、この女は100日間抱いてはならない。魂と体がくっつくのにきっかり100日かかる。抱かなければ人間になれる。抱いてしまうと水になって流れてしまう。女は「儚」と名付けられた。人の夢、儚し、のハカナ。そうして始まった鈴次郎と儚(鎌滝恵利)の、歪な100日間の物語。鈴次郎のライバル、ゾロ政(中村龍介)との戦いが、2人の運命を更に狂わせていく…。

――出演が決まった時に、どんなことを感じましたか?

る・ひまわりさんとご一緒させていただくのが久し振りでしたので、話を振ってくださるのが嬉しかったです。る・ひまわりさんの年末公演では、いろんな小劇場の役者さんからミュージカルの方まで、なかなか共演できない方と共演させていただくことがあり、すごくお世話になりました。その分、何か返したいですし、またここで成長させていただきたいと思っていたので、声をかけてもらったことが嬉しかったです。

また、この作品の台本を見た時に、本当に心が温まりましたし、ほろっと泣けて、マネージャーと「いいですよね」と話していました。以前、荒井敦史君が演じていた時にどうしても行けなくて残念に思っていたんですが、この話をいただいたので、何かちょっと運命的なものを勝手に感じました。

そして、これまでに、『熱海殺人事件』『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』で山崎銀之丞さんがされていた大山金太郎役を演じたのですが、自分の中で銀之丞さんを超えたい意思もありました。『いとしの儚』のお話が来た時に「あれ? これも銀之丞さんがやってる」と、勝手に縁を感じてしまい、「これは絶対やりましょう」と言いました。すごくウキウキしながら「お願いします」と言った覚えがあります。

――横内さんの物語のどこに魅力を感じましたか?

ファンタジーがあるからこそ、より人間味を感じられるというか。僕は今年30歳になりましたが、“儚い”という言葉を、30歳の大人になってから、改めてその意味を見つめ直した時に、「すごいタイトルを付けたなぁ」と感じました。令和に入って、いろんな現実が進んでいる中で、「忘れてはいけないことなんじゃないかな」と、この戯曲を見て思いました。それはもっと広まらなければと思いますし、何か置いてきてはいけないものを置いてきていると、気付けるような気がしています。

――私も台本を読ませていただいて、どんどん引き込まれました。

徐々に世界観にすごく引き込まれて、気付いたら感情移入していました。また、儚を演じる鎌滝(恵利)さんと話していて、女性目線で見ると、印象も変わってくるんだろうなと思いました。今は、稽古をやってみたからこそ分かる難しさ、作品の中に入った時の難しさに面食らっている感じですね。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、鳥越さんが『いとしの儚』にどのように取り組んでいるかや、石丸さんは「愛の擬人化」だと思っていることなどについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。10月6日(水)午前11時0分掲載予定のインタビュー「下」では、この作品で演じる鈴次郎役について、共演する原田優一さんについて、ご自身のこれまでの出演作品を振り返って、これから目指すものなどについて話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■ちゃんと作品の枠組みを全部知ってから台詞を入れて行かないと、深くに行けない

■「こうだからこうしてみよう」「今違ったよね」と詰めをされたい自分がいる

■石丸さんは愛の擬人化。人間の感情をちゃんと出して、抑えたりしない

■始まる前から、役者としてのターニングポイントになるであろう作品だと分かっている

<舞台『いとしの儚』>
【東京公演】2021年10月6日(水)~10月17日(日) 六本木トリコロールシアター
公式サイト:
https://le-himawari.co.jp/releases/view/00956

<スタッフ・キャストなど>
作:横内謙介
演出:石丸さち子
出演:鳥越裕貴、鎌滝恵利、辻本祐樹、中村龍介、原田優一、久ヶ沢徹

<チケット>
全席指定8,800円(税込)
イープラス: 
https://eplus.jp/sf/detail/3473520001
ぴあ:
https://w.pia.jp/t/hakana2021/
問い合わせ:
info@le-himawari.co.jp
主催:る・ひまわり
https://le-himawari.co.jp/

<関連リンク>
鳥越裕貴 公式サイト:
https://torigoeyuki.com/
鳥越裕貴 Twitter:
https://twitter.com/torippiyo2
六本木トリコロールシアター 公式サイト:
http://tricolore-theater.com/

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鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■ちゃんと作品の枠組みを全部知ってから台詞を入れて行かないと、深くに行けない

――具体的にその難しさを感じているところは?

この何年かはとにかく早く台詞を覚えるスタンスでやってきたんです。ちゃんと作品の枠組みを全部知ってから台詞を入れて行かないと、より深くに行けないのも分かっているんですが、なかなかできなくて。「稽古が始まるからとりあえず台詞を入れなければ」と、なっている自分がもどかしく、できていない自分への悔しさもあったりします。

――それは石丸さんの稽古にそういう特徴があるんですか?

特にそうかもしれないです。深く深く入っていく方だからこそ、流せないというか。「今日は1回目だから、ちょっとふわふわした状態でいけるかな」と思うと、それではいけなくて、最初からもっと深く深く入っていかなければいけないんです。それは、枠組みが分かっていなければできないことで、台詞を入れてある程度ストーリーを分かっていればできるということではないので、改めて役者として進歩しなければいけないと思っています。

――台詞をとにかく覚えるということをしてしまうと、何が起きるんですか?

この作品に組まれている伏線や、のちに響いてくるものを取りこぼしている、その数が多くなってくるんです。稽古前に、石丸さんから「この状況なので、いつ何が起こるか分からないから、早く仕上げたい」とみんなに連絡が来たのですが、何があっても初日を開けられるように、最初の段階からハイスピードで稽古しています。追いつけるように、石丸さんのパワフルな活力に負けないように、こちらがもっとパワフルに行かないといけないなと、稽古数日ですごく食らってます。

――深めることとスピードの両立をしなければいけないんですね?

とにかく早く準備をして、もっと楽にこの世界に入れるようにしたいなと思っています。

――それは、心の反射神経みたいなものですか?

そうですね、追われているものじゃなく、その場にちゃんと入ることができるようにしたいなとは思いますね。この世界観にもっと普通に入れるくらいの、リラックスした状態でいけるようにしたい。

――スピードに付いてくことと、物語に深く入るというのは、どの作品でも稽古初めには必ず起きることですか? それとも今回が違う?

言い訳にはなりますが、ちょっと何年か振りに少し忙しい時期が来ていたんです。『いとしの儚』は片手間にできない作品ですから、より悔しい部分もあります。

――例えば、この作品だけにすべてを注ぎ込めたら、もっと集中できるかもしれない?

それを逃げ道にしている自分もいやなんです。石丸さんはまっすぐな愛を持っているからこそ、僕も愛を出さなければいけないのに、石丸さんの愛に負けているから、ちゃんと自分が整理して、しっかり追いついて追い越す。そのぐらいの勢いで行かなければと思っています。

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

■「こうだからこうしてみよう」「今違ったよね」と詰めをされたい自分がいる

――石丸さんとは、昨年中止になった作品のリモートで稽古されていましたよね?

はい。その前には、猫の映画の朗読劇で演出家として入ってくださっていたんです。いつかはまたご一緒したいなと思っていたところで、昨年はリモートの稽古だけになってしまいました。

――過去の2回で、石丸さんの印象は?

久し振りにお会いする演劇熱がすごい方です。僕は人間観察も好きなのですが、今回ようやく石丸さんとがっつりやらせていただけて嬉しいです。石丸さんからも「とり(鳥越さん)とがっつりやって、とりが味わったことのないことを味わわせたい」と言われているので、すごく楽しみですし、そこに立ち向って行く体力はちゃんと持っておかなければと思っています。

――多くの演出家とご一緒されている中で、石丸さんは何が一番違うと思いますか?

演劇熱だと思います。もちろん他の方もあると思いますが、より表に見えるというか。表にも見えるし、心の底にも見えるし、溢れすぎているという感じですね。やはり、ああいう方がこの業界にずっといてくださるのが、本当に僕らにとっても、これから出てくる子たちにとっても、なくてはならない存在だと思います。僕も昭和っぽいからかもしれませんが、だめなら「だめ」とちゃんと言われたいし、よかったら「いい!」と言われたい。はっきりとした良し悪し、「ここをこうしてみよう」、「こうだからこうしてみよう」、「今違ったよね」という詰めを、されたい自分がいるんです。石丸さんも体力がいると思いますが、役者を野放しにしないで、負かすくらいのパワフルさでされているから、もう本当に愛おしいです。『いとしの儚』の演出が石丸さんと聞いた時は、「間違いないじゃん!」と思いました。あの愛があればこの作品は成功するし、だからこそ僕らも負けないぐらいの愛を持って立ち向わないといけない、と決まった瞬間に思いました。

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

■石丸さんは愛の擬人化。人間の感情をちゃんと出して、抑えたりしない

――私もこの作品に、石丸さんの愛が加わったら最強じゃないかと思いました。

僕は愛の擬人化が、石丸さんだと思っています。皆さんが思っている愛よりも濃く深い。綺麗な真っ赤じゃない。濃い赤だけど綺麗。すごく赤が似合うんです。演劇で制服があるとするなら、背中にでっかく「愛」。さらに、小さく「愛、愛、愛、愛、愛」みたいに書いてある。本当に愛が具現化したらああいう方になるんだろうなと思います。

――石丸さんとご一緒した方は、皆さん大好きになりますね。

そりゃそうですよ! 僕らも人間ですが、石丸さんは人間の感情をちゃんと出して、抑えたりしないんです。石丸さん自身が、“儚”なのではないかと思ったりしますね。今日も稽古場で、儚役の代わりに演じて見せてくれて、「ジブリかな」と思うくらいすごく綺麗な目をされたんです。朗読劇と、叶わなかった公演と、今回3回目ですが、演劇をやっている上で、僕の人生で出会えてよかった人のうちのひとりですね。

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

■始まる前から、役者としてのターニングポイントになるであろう作品だと分かっている

演劇だけじゃない、人としての素晴らしさというか、僕が演劇人じゃなかったとしても、石丸さんと出会っていたら何か得るものは絶対あるし、それをすごく感じさせてくれる人だなと思います。みんなに愛を振りまいて、みんながハッピーになっていく。ご本人にとって、それはいつも通りのことだから。恩着せがましくないし、当たり前のことをしているだけなんです。その当たり前のことが素晴らしいと、こちらは感じられる。すごく面白い人と出会ったと思います。

――幸せな稽古期間ですね。

その期間でどれだけ自分が食いつき、愛を得るか。始まる前から役者としてのターニングポイントになるであろう作品だと確実に分かっているので、どれだけ全力を注げるかですね。

鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳
鳥越裕貴さん=撮影・岩村美佳

※鳥越裕貴さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月5日(金)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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“「ターニングポイントになる作品」、『いとしの儚』鳥越裕貴インタビュー(上)” への 2 件のフィードバック

  1. りん より:

    素敵な記事をありがとうございました!この記事からも、実際に観劇した作品からも鳥越さんの演劇への熱がひしひしと伝わってきました。

  2. ねこねこ より:

    素敵な記事をありがとうございます。
    公演が始まる前にこのインタビュー記事を拝読し、作品を観る日を楽しみにしていました。演劇自体も本当に素敵で、このインタビューを思い返しながら、鳥越さんの想いを感じながら噛み締めて観劇させて頂きました。
    この素敵な記事と素敵な作品に出会えて幸せです、ありがとうございます!

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