ロクデナシの男・鈴次郎と、鬼がこしらえた女・儚(ハカナ)の、美しく儚い100日間の愛の物語。2021年10月6日(水)から10月17日(日)まで六本木トリコロールシアターで上演される舞台『いとしの儚』に鈴次郎役で出演する鳥越裕貴さんのインタビュー、後半です。鈴次郎役について、共演する原田優一さんについて、コメディからシリアスの幅が大きい演出になっていること、ご自身のこれまでの出演作品を振り返って、これから目指すものなどについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
――鳥越さんが演じる鈴次郎役についてお聞かせください。
ギャンブル好きのクズですね。周りに友達もいなければ親もいないんです。親父はどこかに行ってしまい、母親は鈴次郎が殺してしまいました。僕の中での鈴次郎は、母が自分を抱いてくれなかったから殺したというのが、可愛いと言うとおかしいんですが、その純粋さを感じます。どうして目の前にいる母親は自分を抱いてくれず、他のよく分からない男たちには体を売っているのか。鈴次郎を汚れさせたくないから、抱かずにいてくれたのかなと思うんですが、その時は多分、純粋に「何で?」と、自分への愛がないと思ってしまい、殺してしまう鈴次郎の純粋さがあると思うんです。
そういう出来事があって、いろんなもので自分の周りをカバーして、誰も寄せ付けず、ガードを作る鈴次郎に、儚という、生まれて初めて自分のことを好きだと言ってくれて、寄ってきて、抱きついてくれる存在が現れた。でも、そのガードが固すぎで信じられないんです。鈴次郎に過去の苦しみがあるからこそ、儚の純粋な愛でさえも、また鈴次郎のガードを固めてしまう。物語の最後に、儚の言葉や顔を思い返して、覆い被さった黒いガムテープみたいな粘着質なものをすっと溶かして気付く。人が気付く時って、すごいことだなと、この台本を読んで思うようになりました。それに気付けたのは、自分にとっても人として「いいものを知れた」と思っています。
鈴次郎の純粋さと、まっすぐな儚の愛が、こんなにも純粋なものを生むんだよ、それをみんな忘れているよと、その気付きを皆さんに知っていただけたら、この作品をやる意味はあると思います。こういう鬱蒼としている、何かあったら引きずり降ろそうとする見苦しい世の中から、その気付きがひとつ人生の中で増えるだけでハッピーになるかなと思います。お客さんがこの作品を観られてよかったという気付きも得られるように届けることが、僕らの使命だと思います。「気付くこと」が、この作品を読んで思ったことですね。
――儚に出会っていなければ、大事なことに気付かないわけですものね。もしかしたら博打に勝ち続けたら、人生がそのままだったかもしれませんね。
そうですね。それさえ知らなければ、そのままでいけていたものを、途中で揺さぶられている自分に気付き、「お前はもうだめだ」とまた改めて気付く。このうねりと言いますか、すごく波のある人生ですが、やはりその「気付き」がひびきます。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、共演する原田優一さんについて、コメディからシリアスの幅が大きい演出になっていること、ご自身のこれまでの出演作品を振り返って、これから目指すものなどについて話してくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■楽しみにしているのは、原田優一さんのメドレー。実際に稽古場で見て、面白すぎ
■20代後半ぐらいから、幅を広げて濃くして。そこをちゃんとやっていかないと
■客席に座ってセットを見て、照明、音、空気感だったり…、やっぱり舞台が好き
■本当に儚い『いとしの儚』。来てくださるありがたみを感じ、精一杯の演劇を
<舞台『いとしの儚』>
【東京公演】2021年10月6日(水)~10月17日(日) 六本木トリコロールシアター
公式サイト:
https://le-himawari.co.jp/releases/view/00956
<スタッフ・キャストなど>
作:横内謙介
演出:石丸さち子
出演:鳥越裕貴、鎌滝恵利、辻本祐樹、中村龍介、原田優一、久ヶ沢徹
<チケット>
全席指定8,800円(税込)
イープラス:
https://eplus.jp/sf/detail/3473520001
ぴあ:
https://w.pia.jp/t/hakana2021/
問い合わせ:
info@le-himawari.co.jp
主催:る・ひまわり
https://le-himawari.co.jp/
<関連リンク>
鳥越裕貴 公式サイト:
https://torigoeyuki.com/
鳥越裕貴 Twitter:
https://twitter.com/torippiyo2
六本木トリコロールシアター 公式サイト:
http://tricolore-theater.com/
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■楽しみにしているのは、原田優一さんのメドレー。実際に稽古場で見て、面白すぎ
――今回楽しみにしていることはありますか?
原田優一さんのメドレーです(笑)。「原田優一ショー」ですね。めちゃくちゃ楽しみですし、実際に稽古場で見て、優一さんの顔芸しかり、動きだったり、面白すぎです。そこまでコメディーの幅も広がるからこそ、自分たちが芝居をちゃんと落とすというか。幅がすごくある作品だなと思いました。
――脚本を読んだ感じだと、シリアスな演出なんだろうかと思いきや、そうじゃないんですね。
全然違うと思います。石丸さんはそれをしない。こういう時代だからこそ、行くとこはバーッと行こうと。だからこそ、コメディからシリアスの幅が大きい分、引き戻しは大変だなと思いました。自分たちがちゃんとベースを作って落とし込まなければと感じています。
――いろんな感情を揺さぶられた結果、最終着点に着くことになるんですね。
多分お客さんは、ジェットコースターに乗る感じですね。ここで来るの、うわあ、上がった、下がった、止まった止まった、どうする!? みたいな。
――感情のジェットコースターを体感するんですね。
脚本を読むだけであんなに引き込まれるんですから、これを体現してやったらすごいだろうなと思います。だからこそ始まりのシーンは、石丸さんが丁寧に作っていました。ジェットコースターに乗ってしまえば、あとは流れに任せて楽しんでいただけたらと思いますね。
■20代後半ぐらいから、幅を広げて濃くして。そこをちゃんとやっていかないと
――アイデアニュースに初めてご登場いただくので、ご自身のことを伺いたいのですが、2.5次元作品や、可愛らしく見られるような外見の印象と、お芝居が好きな演劇青年の印象があります。求められることや、表面的な部分と中身を表現したり見せたいという部分など、30歳を迎えられて、ご自身の中ではどんな意識がありますか?
20代前半は、先輩にも甘えて、後輩には「おうおうおう!」みたいな感じで、とりあえず元気に行こうと、関西人のキャラで、元気よくやっていたんですが、そこからいろんな役や現場も経験して、別に無理しなくてもいいなと思うようになりました。25歳を過ぎてから、ある先輩に「鳥越も他の人に気を遣わなくていいよ」と言われたんです。自分でも分かっているんですが、ここまでこれでやってきたから、気を遣っているつもりはないんですが、気にしてしまうんです。それを、最近そぎ落とした感じがします。とりあえず自分の時間を使うというか。今の状況だから、そうなれたのかなというのはありますね。
――お仕事を始められた頃は、同世代の人もたくさんいる中で、どう生きていくかの戦略のひとつだと思っていたんですね。
そうですね。元気にしていたら、他には、「きゃっきゃ」とやっている人はいないから、自分の関西弁という強みもあるし、いけるかなと思ったんです。そうしていたら、案の定元気な役をいただくんですが、たまにしゃべらないシュッとしてる役とかをいただくこともあり、徐々に、幅ができることはいいことだなと。その幅をどれだけ広げて、濃くしていくか。20代後半ぐらいから、そこをちゃんとやっていかないと生き残れないだろうし、使ってもらえないだろうと。年相応、年齢より上の役を求められることも増えるだろうと思いました。
――幅を広げていく中で、いただくお仕事とかも、いろんなものがありましたか?
はい。幅広くやらせていただいて、ありがたいなと思います。
■客席に座ってセットを見て、照明、音、空気感だったり…、やっぱり舞台が好き
――シフトをするという意味で、記憶に残る役や芝居はありましたか?
自分の役者人生でターニングポイントになった作品と考えると、『弱虫ペダル』と、高円寺でやらせてもらったストレートプレイの『竹林の人々』、『改竄・熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』、そして今回の『いとしの儚』ですね。
――2.5次元作品と、いわゆる芝居作品とが並んでいますね。
ねもしゅう(根本宗子)さんの『プレイハウス』という作品もそうでしたね。初めてパルコステージさんでやらせてもらったんです。アイドルの方が主演の舞台で、脇というか「ちゃんとお芝居でお願いします」という立ち位置をいただいたので、すごくプレッシャーはありましたが、めちゃくちゃ楽しかったです。すごくいろんな人が観に来てくださって、ねもしゅうさんが、岩井秀人さんに「2.5次元の子?」と聞かれた時に、「彼は2.5次元に出ているけれど、2.5次元とは違います。こっち側です」と言ってくださったのが嬉しくて。2.5次元作品にも、2.5次元をやっているつもりで出ていないので。今ではそういう言葉ができましたが、そこで戦ってきてたから。そういう方々に言われた時に、嬉しくて、やっていてよかったと思いました。だからこそもっともっと頑張って、食いついていかなきゃいけないな、と思いました。
――生き残らないと、という世界だと思うんですが。
でも、焦ってはいないんです。焦っても仕方がないですし、自分にできることは手一杯です。僕は30代後半くらいで、徐々にちゃんと地に足つけて、進んで行けたらいいなと思っています。
――コロナ禍で、今どんなことを感じていますか?
作品も観に行きづらくなりましたが、作品で知ることも気付くこともありましたから。観に行くことの罪悪感みたいなものが出てきた時に、「何なんだろう」と思ったんです。悪いことをしている感じになってしまうこの感覚はいやだから、最近は観に行かないようにしているんです。本心ではめちゃくちゃ行きたいんですが、迷惑はかけられないですしね。早くこの状況を抜け出したいんです。だから手一杯自分の出る作品は、そんな中に観に来てくれた人に、「観に来てよかった」とせめていい気持ちで帰ってもらえるようにしないといけないと、このコロナ禍になって思うようになりましたね。
――そうすると、インプットができない状況ですか?
配信映像や、ネット番組でいろいろ作品を見るくらいしかできないですが、やっぱり舞台が好きですからね。客席に座って舞台セットを見て、照明だったり、音だったり、感じるものだったり、空気感だったりが、やっぱり好きなので。気軽に行けないのはつらいですが、そんな中で上演できることはありがたいですし、観にきてくださるお客さんもいるわけですから。せめて僕たちが精いっぱい何かを届けられたらいいなと思います。
■本当に儚い『いとしの儚』。来てくださるありがたみを感じ、精一杯の演劇を
――読者の皆さんに方にメッセージをお願いします。
この劇場でこの期間でしかできない『いとしの儚』に、時間を縫って危険を犯して来てくださる……危険というか、難しいですが……そのありがたみを感じています。だからこそ、精一杯の演劇を届けて、何かを持って帰っていただいて、何か気付きを皆さんに持って帰ってもらえたらいいなと思いますね。本当に儚いですね。
※鳥越裕貴さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月5日(金)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
前半、後半と読み応えたっぷりな胸が熱くなるインタビューをありがとうございました。聞いてみたかったことや知りたかったことで、何度も読み返しています。演劇愛あふれる魅力的な鳥越くんの想いを知れて嬉しかったです。いとしの儚を劇場へ観に行く予定なのでワクワクが高まりました。なかなか劇場へ足を運べない今だからこそ、改めて感謝をもって精一杯受け取ろうと思いました。またアイデアニュースさんで鳥越くんの記事が読みたいです。