「生まれてきたことに意味があると信じて」、サヘル・ローズインタビュー(下)

サヘル・ローズさん=撮影・NORI

2021年10月27日(水)から10月31日(日)まで、東京・博品館劇場で上演される舞台『グッドピープル』にケイト役で出演するサヘル・ローズさんのインタビュー、後半です。今回、演出の鵜山仁さんに「自分の肌の色でさせてください」と相談した理由、個人の活動として難民キャンプなどを訪れている意味、いわゆる孤児だったサヘル・ローズさんが日本の児童養護施設の子供たちを支援する中で、子供たちに伝えていることなどについてもお聞きしました。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

――再演の話を伺ったときは、いかがでしたか?

前回できなかったことを成し遂げたい、見られなかったケイトと出会いたいと思いました。どの芝居でも納得したことはないですし、納得したらこの仕事をやる意味がなくなっちゃうのですが、特にこの作品は必死に食らいついている状態で、いつになったら「楽しい」に変わるのか、ただただ必死です。でも必死にならないとやれないと、多分全員思っていると思います。芝居が終わる度に、みんなで「今日を生きた!」言っています。本当に毎回が千穐楽みたい。こんなの初めてです。

――エネルギー消費が半端ないから、1日1回公演なのでしょうか?

2回あったら死にます、本当に。それだけのエネルギーなので、観に来てくださる方も、観るエネルギーを十分貯めて来て欲しいです。絶対に飽きさせないです。対話劇なので、結構すごく細かい表情を皆やっていたりするので、後ろに座って観た方がよく「前に行きたかった」っておっしゃるので、皆さんの表現を、前の列で細かく観て欲しいなと思います。

今回の自分の中での大きな課題は肌の色です。初演のときは、なるべく観てわかりやすいように、肌の色を濃い目にして欲しいと鵜山さんから言われていたんですが、やっぱりそれに対して批判的な声もありました。私はケイトとして生きる上で、誰よりも彼女を理解しています。だから今回は鵜山さんに、私が自分の表現と自分の言葉をちゃんと粒立てれば、観てくれる人は、ちゃんと私を黒人と見てくれるはずだと思うので、その演劇の力を、持っているエネルギーを信じたくて、できたら普通の自分の肌の色でさせてくださいとご相談しました。

鵜山さんも「いいよ、やってみようか」っておっしゃってくださって。やっぱりお芝居の持つ力を信じたいし、お客様を信じたい。それが大事な気がして、今はそれが自分の中での挑戦でもあります。

――この作品は笑って観ながら、泣けそうな気がします。

面白いけれど、テーマは凄く深いです。最初は笑いなんですけど、後半泣いている方が結構いらっしゃって。特に最後沈むんですけど、一番最後のシーンで一気にまた「明日があるな」と思えるんですが、でもあれって実は何も解決していなくて。結局夫婦問題も一見楽になってるけれど解決していない。マーギーだってちゃんと仕事が見つかってるわけでもなくて。

なので結局、人って毎日が「試練」だということを伝えたいし、本当に “Good People” って何だろう? と。ケイトも自分を “Good People” だと思っているけれど、きっとマイクもマーギーもそうだと思うんです。台詞に「あなたは “Good People” よ」とか「あなたはいい人じゃない」というのがあって、じゃあ、本当にいい人ってこの作品の中で誰? って。わりと皆お互い、誰かが助けを求めたときに、相手を拒絶してるんですが、でも一番最後に「いい人って、これか!」って。この作品の中であなたの持つ “Good People” を探して欲しいです。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、個人の活動として難民キャンプなどを訪れている意味、いわゆる孤児だったサヘル・ローズさんが日本の児童養護施設の子供たちを支援する中で、子供たちに伝えていることなどについて話してくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■弱者の声を届けるには、表現をしている人たちが声を上げることが一番の近道

■私もいわゆる孤児だった。生まれてきたことに意味があるから、信じて生きて欲しい

■相手が途中で投げ出したとしても、ちゃんと包み込めるくらいの人になりたい

■お客さまが来てくださって舞台は生まれる。『グッドピープル』を大人にして欲しい

<『グッドピープル』>
【東京公演】2021年10月27日(水)~10月31日(日) 博品館劇場
公式サイト
http://www.nlt-pro.nlt.co.jp/goodpeople2021/

<CAST>
戸田恵子(マーギー)、長谷川初範(マイク)
サヘル・ローズ(ケイト)
木村有里(ドッティー)、阿知波悟美(ジーン)
小泉駿也(スティーヴィー)

<関連リンク>
グッドピープル公式 Twitter:
https://twitter.com/nlt_pro_stage
サヘル・ローズ公式 Twitter:
https://twitter.com/21Sahel
サヘル・ローズ公式 Youtube:
https://t.co/orSbpU9NtO?amp=1
サヘル・ローズ公式 Instagram:
https://t.co/VAXATx4Mzl?amp=1

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※サヘル・ローズさんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2021年11月23日(火)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

※ここから有料会員限定部分です。

■弱者の声を届けるには、表現をしている人たちが声を上げることが一番の近道

――個人の活動についてもお伺いしたいのですが、世界を回って、難民キャンプなどで支援をなさっていますね。

コロナで今は動けていないんですけれど、難民関係のキャンプは、ヨルダンとイラク、あとバングラデシュのストリート・チルドレンのケアをさせてもらっておりまして、カンボジアは大人の女性たちが働く環境を作ることや、インドネシアでは、大学に行きたい女の子の教育のサポートをしています。自分が助けてもらって今があるので、本当にやりたくて、あくまで個人でやっています。

世の中の問題提起や、弱者の声を届けるには、表現をしている人たちが声を上げることが一番の近道だと思うんです。外国だったら、チャップリンもそうですが、ビリー・アイリッシュやアンジェリーナ・ジョリーなどのネームバリューのある人が、みんなちゃんと社会にコミットしているんです。日本の場合は、スポンサー問題やいろんなことがあって、考えてはいても言えない方が多くて、表現者の中でも静かにやってらっしゃる方がたくさんいらっしゃるんです。

もちろん静かにやることも正解です。でも私が見える形でちゃんと提示することによって、見せることで何かしたいなと思ってる人たちに、こういうやり方もあって、こういう支え方もあるんだよ、って提示ができる。だからこそ、自分の名前に力をつけたいと思っています。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

■私もいわゆる孤児だった。生まれてきたことに意味があるから、信じて生きて欲しい

それと同時に、自分の過去のいろんな経験を無駄にしたくなかったんです。いろんな引き出しを持ってるつもりなので、それをいろんな表現の中で別人格になれることで、サヘル・ローズが初めてオフモードになれるんです。私はお芝居してるときって、オフなんですよね。自分の休日だと思っていて。

――お芝居をしているときは「サヘル・ローズ」がオフ。

舞台に出た瞬間に別人格だから「サヘル・ローズ」じゃなくていいからです。一生懸命何かいろんなこと考えなくても、別人格でいられるから、その瞬間だけ「サヘル・ローズ」は休んでくれているから、その意味ではすっごい気が楽なんです(笑)。自分のエネルギーをチャージするために表現は必要だし、自分のメッセージを社会に伝えるための電波塔として、自分の名前に力を付け続けることも必要です。

私は日本の児童養護施設の子供たちのケアもしているんですが、その子たちの中には、私の生い立ちのことを知ってくれている子いる。私も親はもともといなかったし、いわゆる孤児だったけれども、こうやって誰かが見てくれる。私たちは生まれてきたことに意味があるから、無駄な人生はないし、ちゃんと信じて生きていって欲しい。

もちろん私も、いろんなことが日々日常、未だにあるけれども、苦しみがあった分だけ幸せも絶対くるし、ただ苦しんで無駄にはならないということを提示したくて、そのための「サヘル・ローズ」でいたいと思っています。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

■相手が途中で投げ出したとしても、ちゃんと包み込めるくらいの人になりたい

――支援をされる際に、心にとめていることはありますか?

一生懸命やっているときは無我夢中で「その子のために」と思うんですけど、でもやっぱり思い通りにならなかったり、その子がそれを途中で諦めたり、投げ出したときに「ここまでやってあげたのに」と思うことがあると思うんです。でもそれは親子の仲でもあることで。親が一生懸命働いてお金を出して、でも子供のときって無駄にすることがある。

でもそれって結局、私たちが「したかったからしている」はずなのに、いつの間にか「してあげたんだから」に無意識に変わってしまうことがあるんですよね、私がしたくてやっているのに。相手がやってと言った訳じゃない。自分がしたくてやってるんだったら、相手がもし途中で投げ出したとしても、それを「そっか。じゃあ、次こうしてみようか」と大きな心でちゃんと包み込めるくらいの人になりたいなと思っているんです。

支援も、みんな絶対に思い通りにならないということを意識に入れて欲しいです。でも、サポートをしているその気持ちは相手に伝わっているし、そのことによって相手が変わっていることは事実なんです。やりたいことを途中で投げ出したとしても、誰かが信じてずっと見てくれている、1人じゃないんだと思ってもらえる、そのエネルギーが大事なことだと私は思っているので「やりたいからやっている」が一番大事。「やってあげてるからじゃない。私がやりたいの」という気持ちを忘れないことだと思っています。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

■お客さまが来てくださって舞台は生まれる。『グッドピープル』を大人にして欲しい

――最後にあらためて、舞台『グッドピープル』をご覧になるお客さまに、メッセージをお願いします。

一見「どういうストーリーなんだろう?」と思われると思うんですけれど、過去から現在に至るまで、社会全体で何も変わっていないということを知っておいて欲しい作品です。階級の差や、貧しさのあまり自分の子育てができない、家賃が払えない、離婚問題や夫婦関係のギクシャクしたこと、肌の色が違うことによる差別。いろんなことがこのストーリーの中で、今現在起きていることと全て通じ合っています。

1人家庭の方もそうだし、子供が孤独だったり、そういう意味ではすごく身近な作品だと思うんです。この作品を見て一緒に笑って泣いて怒って欲しいし、きっと出てくる登場人物に自分があてはまる人も出てくると思うので、対話劇だからこそ、その言葉の一つ一つを拾って見て欲しいです。

そして持ち帰ったときに、ぜひ家族と会話をしてみて欲しいです。このお芝居は結論が出ないからこそ友人と観てみてください。帰りのカフェで、皆さんが話すことは、絶対にたくさん、山盛りだと思います。この作品から与えられた、あらゆる疑問や難題や質問を、皆さんだったらどうクリアしていくか? 皆さんがこの立場だったら、マーギーやケイトだったらどうするか? と、自分をちょっとそこに重ねるだけで、もしかしたらいろんな発見があると思うので、楽しんでいただきたいです。

本当に息が抜けない瞬間が続くと思うので、その緊張感を楽しんで欲しいですし、やっぱり舞台はお客さまが来てくれないと生まれてこないんです。お客さまが来てくれて、初めて舞台は生まれてくると私たちは感じるので、ぜひそれを見届けて欲しいですし、この産声を毎回聞いて欲しいです。そして持ち帰って、この作品を皆さんが大人にしてあげて欲しいなと思います。

サヘル・ローズさん=撮影・NORI
サヘル・ローズさん=撮影・NORI

※サヘル・ローズさんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2021年11月23日(火)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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