「こういうミュージカルを観てほしい」『ブラッド・ブラザーズ』ウエンツ瑛士(上)

エドワード役 ウエンツ瑛士さん=撮影・岩田えり

正反対の環境で育った双子の数奇な運命を描いたミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』が2022年3月21日(月)に開幕し、4月3日(日)まで東京・国際フォーラムホールCで上演されます。本作はその後、愛知・刈谷市総合文化センター アイリス大ホール、福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール、大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されます。

アイデアニュースでは、双子を演じる柿澤勇人さん(ミッキー)につづき、ウエンツ瑛士さん(エドワード)にインタビューしました。ウエンツ瑛士さんのインタビューを、上、下に分けてお届けします。「上」では、稽古の中で感じるエディ役を演じる上での難しさについて、物語の舞台であるイギリスに留学されていたときに感じたことを踏まえて話してくださった内容や、柿澤勇人さんの魅力について、「ミュージカル」のイメージについてご自身が感じていること、今回の『ブラッド・ブラザーズ』でも、そのイメージを少し変えていきたいと思っていることなどを紹介します。

「下」では、ウエンツさんがミュージカルに初めて出演されたときのこと、『天才執事ジーヴス』で振付を担当されていた前田清実先生との出会いが、ミュージカルへ取り組むなかでの転機となったこと、はじめて2幕後半からラストまで通したときに柿澤勇人さんの手から伝わってきた気持ちや、『ブラッド・ブラザーズ』への思いについて力強く話してくださった内容などを紹介します。

エドワード役 ウエンツ瑛士さん=撮影・岩田えり
エドワード役 ウエンツ瑛士さん=撮影・岩田えり

(※このインタビューは3月初旬に行いました)

ーー稽古をされていて、どのような手応えや難しさを感じていらっしゃいますか?

身体的な難しさは課題だなと思っています。まず、エディの子供の頃を、7〜8歳、14歳、18歳と演じますが、年代ごとの「子供らしさ」の表現です。そして「裕福に育った」という、日本にはなかなかない、イギリスならではの階級、身分の違いという部分を、自分の体に入れつつお客様にもわかりやすい見せ方をするとなると、これもまた難しいと思っています。

ーー子供らしさや階級の違いの表現について、演出をされる吉田さんから、具体的に言われていることはありますか?

やりながらいろんな形を試しています。「リアルではそういう動きだよね」という部分と、東京でいえば「東京・国際フォーラムホールC」という劇場でやるにあたって、登場した瞬間にわかるバランスがあるので、その塩梅に、鋼太郎さんらしさが一番出るんじゃないかと思います。「リアルにやること」だけでは伝わらないこともたくさんありますから。ドラマ性があるかどうかというところを探っています。

ーー本作では、エドワードとミッキーの子供時代が多いのも見どころのひとつだと思いますが、子供を演じるということについては、いかがですか?

自然と街にいる子供を見るようになりましたね。いつも稽古場終わりに、1時間ぐらい歩いて、熱を冷ましながら帰ったりするのですが、保育園や幼稚園から出されて、「まだ帰りたくない」とわめいている子供や、喧嘩してパパにすごく怒っている子供とか、いろんな子供たちに出会います。感情をそのまま、何の隔たりもなく、すっと出せる力がすごいなと思いますし、泣いた後は、5秒後ぐらい経てばもう寝ていたりするんですよね。もしかすると、泣き方よりも、その使い切った感などに、子供っぽさが出るのかなと思いながら、日々見ています。

ーー子供は、行動する上で後先考えていないですよね。

人生というものをまだわかっていないですからね(笑)。

ーー階級の違いの表現も難しいとのことでしたが、イギリスに留学されていたときに、実際に階級のことなどを感じる体験はありましたか?

留学の際には、上流階級の方とお食事をさせていただくこともありました。そういう方々は、そもそもパブなどにも行かないですし、その他の人々とは生活圏もまったく別なんです。

そしてまず、イギリスでは階級によって言葉の発声や喋り方が違うんです。挨拶しただけで、その人がどのくらいの身分にいるのかがわかりますが、日本語で訳したときにはそれができないので、どう見せようかと。

僕は、日本で『ブラッド・ブラザーズ』を拝見したことはなかったのですが、英語のサントラを聴いたとき、エディが歌う歌の最初の一小節目の「How can I」の発音の仕方で、「この人はすごく上の階級なんだ」とわかるなと思いました。日本語では同じ箇所を、「君は例えば」と歌うのですが、そのひと言だけでは、「上の階級の人なんだ」ということはどうしても伝えられないです。

また、イギリスでは育ちが上流階級だというだけで、上の者が下を差別することもありませんでしたが、身分の高さを伝えようとしすぎると、日本語では、鼻につく感じになってしまうかもしれません。イギリスでの経験をふまえて、個人として想うことはあれど、解決の糸口にはまだ結びついていないかなという感じです。

ーー稽古の中で、柿澤さんと具体的に話し合っているところはありますか?

今のところ、役柄についての話はあまりしていないのですが、マスクで稽古をしていることもあり、お互いの目を見て、もらえるものをもらって、しっかり渡していくことを丁寧にやりましょうと話しています。

まだ、お互いのセリフが馴染んでいないところがたくさんあるんです。エディはミッキーに、ミッキーはエディに、お互いにすごく憧れを持っているのだと思っています。ただ、育ちに差があるので、エディは素直に「すげぇ」と言えるけれど、ミッキーは「すげぇ、嬉しい」と思っていてもあまり表現せずに、「お前が好きならばやれば」という感じなんです。

表現の仕方は違っていますが、根っこは双子で、元々持っているものは一緒ですし、思うことはすごく近いんです。「このふたりはお腹の中で一緒だったんだ」というふうに、ふたりが繋がっていくと面白いかなと思っています。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、柿澤勇人さんの魅力について、「ミュージカル」のイメージについてご自身が感じていること、今回の『ブラッド・ブラザーズ』でも、そのイメージを少し変えていきたいと思っていることなどインタビュー前半の全文を掲載しています。3月28日掲載予定のインタビュー「下」では、ウエンツさんがミュージカルに初めて出演されたときのこと、『天才執事ジーヴス』で振付を担当されていた前田清実先生との出会いが、ミュージカルへ取り組むなかでの転機となったこと、はじめて2幕後半からラストまで通したときに柿澤勇人さんの手から伝わってきた気持ちや、『ブラッド・ブラザーズ』への思いについて力強く話してくださった内容など、インタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■口数は少ない柿澤くん。でも「この人に付いていこう」とみんな思う。そこが彼の魅力

■「ミュージカルは気持ちが高まった時に歌に入るんでしょ」みたいなイメージを変えたい

■もう少しリアルに近く、エンタメ性もあるものをミュージカルで作れたらいいなと思う

■「観てくださーい!!!」という感じではなく、少しトーンを下げて喋っている番宣

<ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』>
【東京公演】2022年3月21日(月)~4月3日(日) 東京国際フォーラム ホールC
【愛知公演】2022年4月9日(土)・10日(日)刈谷市総合文化センター アイリス大ホール
【久留米公演】2022年4月15日(金)~17日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【大阪公演】2022年4月21日(木)〜24日(日)梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/bb2022/
https://www.cubeinc.co.jp/archives/theater/bb2022

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ミッキー役 柿澤勇人さん(右)、エドワード役 ウエンツ瑛士さん(左)、リンダ役 木南晴夏さん=撮影・岩田えり
ミッキー役 柿澤勇人さん(右)、エドワード役 ウエンツ瑛士さん(左)、リンダ役 木南晴夏さん=撮影・岩田えり

※ここから有料会員限定部分です。

■口数は少ない柿澤くん。でも「この人に付いていこう」とみんな思う。そこが彼の魅力

ーー今回、おふたりがガッツリ組んでお芝居をされることが、観客としても楽しみですし、おふたりからも楽しみにされていると伝わってきます。いま、稽古場で実際に芝居をされる中で、いかがですか?

楽しいですよ。柿澤くんは爆発力があって、演技に対してまっすぐ向き合っていて、エネルギー量もすごいです。ふたりでやっていますが、物語的な観点からも主演はミッキー役です。柿澤くんは、口数は少ないですが、彼の座組みを引っ張る力、彼の稽古のお芝居ひとつで、みんなの気持ちが動かされています。

ステージに立って稽古をはじめ、演じるなかで、「この人に付いていこう」とみんなが思うんです。そこが、彼の一番の魅力なんじゃないかと思いました。彼が大好きでずっとやりたかったという、この作品、このお芝居を、何とか彼のために成功させたいと思っています。

■「ミュージカルは気持ちが高まった時に歌に入るんでしょ」みたいなイメージを変えたい

ーーウエンツさんが出演されているミュージカルを、いくつか拝見する中で、すごく自然にミュージカルの中にいらっしゃるなという感じがしたんです。ウエンツさんは、ミュージカルに対してどのようなことをお考えですか?

僕はミュージカルが大好きですし、歌でしか表現できない役柄のキャラクターもあると思っています。「ミュージカルは気持ちが高まった時に歌に入るんでしょ」みたいなイメージを、少しでも変えていきたいですね。このイメージを払拭できるように、あくまで台詞に音が乗っているということを理解してもらえるように演技をすることを、ずっと自分の中で課題にし、心掛けています。

■もう少しリアルに近く、エンタメ性もあるものをミュージカルで作れたらいいなと思う

でも、そうしようとすると、バランスが難しくて。そもそもミュージカル作品は、物語が日本の話でもなかったりすることも多いので、リアルに演じすぎても面白みがないなと。そのバランスの取り方は、演出家さんによっても、作品の質によっても全然違うのですが、もう少しリアルに近く、それでいてエンタメ性があるものを、ミュージカルで作れたらいいなといつも思っています。

今回は、鋼太郎さんを筆頭に、柿澤くん、幼なじみでリンダを演じる木南(晴夏)ちゃん、そして、堀内(敬子)さんや一路(真輝)さんら、錚々たるミュージカル界にずっといらっしゃった方々との、いい感じのバランスのコラボがあるので、「ぜひ、こういうミュージカルを観てほしいな」と本当に思っています。今も番宣にたくさん出ているのですが、なかなか5秒でこれは伝えられないなと(苦笑)。

■「観てくださーい!!!」という感じではなく、少しトーンを下げて喋っている番宣

ーーそうですよね。

「観てくださーい!!!」という感じではなく、いつもよりは少しトーンを下げて喋ることで、「ミュージカルって、こうだよね」というイメージを少しでも払拭できたら。

いずれにせよ、今回作り上げている『ブラッド・ブラザーズ』は、このコロナ禍で塞がってしまっている心に、少しでも穴を開けて、こちらから元気やいろんな想いを注入できる作品だと思っています。

ミュージカルのイメージを変えていくのは、地道な活動にはなると思いますが、まずはこの作品を通して届けていきたいですね。

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“「こういうミュージカルを観てほしい」『ブラッド・ブラザーズ』ウエンツ瑛士(上)” への 1 件のフィードバック

  1. にゃーちゃん より:

    ウエンツ君のミュージカル対する思いが知れ、とても読み応えのある記事をありがとうございます。
    ウエンツ君からいつも素敵な世界を観せてもらってます。
    ブラッドブラザーズも何度も観ましたがとても心打たれました。素晴らしかった。
    もっともっとウエンツ君の魅力を
    たくさんの人に知ってもらいたいです。

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