マスコミ編集講座(1):取材交渉、写真撮影、記事執筆のコツと著作権

橋本が使っているカメラとレンズ=撮影・橋本正人

アイデアニュースをご愛読くださっているみなさま、あけましておめでとうございます。アイデアニュース編集長の橋本正人です。2016年がみなさんにとって、みなさんの愛する人や動物たちにとって、世界にとって、素晴らしい1年になりますように。

橋本は、大学を卒業してから産経新聞社で写真記者・記者を4年間経験した後、朝日新聞社に移り、記者・紙面編集者・デジタル編集者を25年間つとめてきました。その経験をもとに、この記事では、マスコミの取材はどのように行われて、交渉・撮影・執筆にはどういうコツがあるのか、また「適法な引用」と「違法な盗用」の違いなど著作権についての説明をしたいと思います。

橋本が使っているカメラとレンズ=撮影・橋本正人

橋本が使っているカメラとレンズ=撮影・橋本正人

もちろん今の日本のマスコミには、良いところもあれば悪いところもあり、「マスコミ内側から見たマスコミの裏側」的な部分も書いて行きたいとは思いますが、マスコミで長く編集にたずさわった者として、みなさまが文章を書いたり、人に話を聞いたり、写真を撮ったりする時に役立つノウハウ的なものを書くなかで、マスコミの内情などもお伝えできればと考えた次第です。

<ここから先、有料会員向け部分(約5000字)の見出しです>
■取材交渉の仕方
■企画書の書き方と実例
■インタビューのコツ
■良い写真を撮るには
■「引用」と「盗用」と著作権
■動画に透かしをつける方法
■良い文章とは
■見出しのタブー
■ご感想・質問はこちらから

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■取材交渉の仕方

まずは、取材交渉の仕方ですが、ふつうマスコミの記者は、お役所などに設けられた「記者クラブ」に所属しています。そこでは毎日、記者向けの発表があり、また資料の「投げ込み」(記者に報道資料を配布すること)もあります。だから、じつは記者たちは、何もしないでも役人らから「これを書いてね」と言われて取材しているのがほとんどで、自分から取材交渉をして書くということはあまりないのです。

「記者クラブ」には、マスコミが団結して権力者に対峙するという良い面もありますが、既得権益の上にあぐらを書いている感じの記者も多く、役人が持ってくる資料を読みながら「これはどうなってるんだ」と上から目線で質問する尊大な人が、あふれています。

「記者クラブ」はとても閉鎖的で、全社一致でないと新たな加盟を認めないところが多く、1社でも反対したら新しい会社は入れないので、結果的には既存メディアだけが役人からの発表を独占する形になっています。「記者クラブ」の弊害を言い出すとキリがないので、このぐらいにとめておきますが、では、記者クラブに所属しないフリーランスの記者は、どのようにして取材しているのでしょうか。

私は、記者歴の最後の方は新しい部門であるデジタルの担当者だったこともあり、既存の記者クラブとは関係なしに、自分で取材先に交渉してOKをとりつけ、企画書を送って取材する活動を実践していました。

取材交渉のコツは、相手方にとってどんなメリットがあるのかを考えて交渉することです。当たり前のことですが、お金を出して取材を受けてもらうならともかく、お金を出さずに取材をOKしてもらうためには、相手方に取材を受けるメリットがなければダメです。

たとえば、最近新しい本を出して宣伝したがっている人なら、本の宣伝になると思えば取材を受けてくれるでしょうし、数か月後に舞台公演をひかえている人なら、舞台を多くの方が観にこられるように、インタビューを受けてくれる可能性があります。

自分が記事化したい対象は何か、そしてその取材をするために相手方にどういえば、受けてくれるか、それをまずは考えることです。そして「こうしよう」と思ったら、取材相手が所属している組織の「広報担当者」に電話でアポイントをとって取材の内容を説明し、それから企画書を書いて担当者に送り、「広報担当者」が取材対象に企画書を転送してOKが出れば、取材開始となります。

こうした手続きをとることは最初は大変ですが、いったん信頼関係ができると、次第に広報担当者側から「こんな話があるんだけど書きませんか?」と連絡がくるようになります。そうすれば次々と情報が入ってくるので継続的な取材ができるようになります。

■企画書の書き方と実例

先にも書いたように「記者クラブ」で取材している記者は、取材のために企画書を書くことをあまりしませんが、私は記者クラブとは関係なしに企画書を書いて取材を申し込むスタイルを良くとっていました。私はその際、企画書をA4の紙1枚に収まるように書いていました。深い意味はありませんが、長い企画書は書いても読まれないと考えたのと、企画書は「契約書」のようにトラブルを避けるために作るものなので、必要事項をコンパクトに書くだけで良いと考えていました。

【企画】 〇年〇月〇日から〇で上演される〇「〇」に〇役で出演される〇さまのインタビューを、ウェブサイト「アイデアニュース」で取り上げたいと思います。

【掲載媒体】 「アイデアニュース」の無料ページと記事末尾の有料会員(月額300円)向け部分

  • アイデアニュース  https://ideanews.jp/backup/
    インタビューの例  https://〇

【取材日時】 〇月〇日(〇)に、〇で

【取材内容】 ごあいさつや媒体説明などに〇分、撮影に〇分、インタビューに〇分の合計〇分間をいただければと思います。

【プレゼント】  読者プレゼント用に〇をお願いいたします。〇とあわせて、抽選で〇名にプレゼントします。

【掲載日程】 インタビューから約〇日後に掲載します。

【点検】 使用する原稿・写真は、有料会員向け部分を含めて、いずれも掲載前に点検いただきます。

【リンク】 記事末尾に以下のページへのリンクを設置します。記事ページのURLは後日お伝えしますので、可能であれば記事掲載をご紹介いただければ幸いです。

  • 〇オフィシャルサイト http://〇

■インタビューのコツ

インタビューのコツについては、私がライターの方々によくお願いしているのは「オウム返し」を使って欲しいということです。こちらが聞きたいことを1つ尋ねて、それに相手が答えて、次に別の質問をして、それに答えて……という形で続く「1問1答」方式のインタビューは、私が一番嫌いなものです。だって、面白くないからです。

1問1答で聞くならインタビュアーなんて、必要ありません。ロボットがいれば十分です。そうではなくて、何かを尋ねた時に相手が答えたなかで、自分が「???」と思ったところについて相手に聞かないと、話がつながりません。だから、相手が何か聞きなれないことを言った時に、「〇〇って何ですか?」とか「えっ? 〇〇なんですか?」という風に、相手の言葉をそのまま聞き返す「オウム返し」を使って欲しいと、いつも説明しています。

「1問1答」方式だと、相手は自分が答えたことを聞いてくれていないのと同じなので、面白くないし、会話が盛り上がりません。「えっ? 〇〇なんですか?」という風にオウム返しすると「そうなんですよ。〇〇なんです。というのも……」という形で、話がつづいていきます。

でもって、オウム返しを繰り返していると、話はどんどん本筋からそれてゆきます。でも、えてして、本筋からそれた話こそ、面白いものなのです。予想していた答えから離れた話には、新しい発見があり、読者が「そんなこと聞いたことない」と面白がってくれる内容が続々と出てきます。

上司から「これと、これと、これだけを聞いてこい」と言われて、「はい、はい」とそれだけ聞いてくるようなサラリーマン記者の書いた記事は、本当に面白くないものです。そういう記者は、取材現場にいて、何か珍しいことが起きても、カメラを構えることすらしないものです。そんな取材をしていたら、会社の机の上で考えたこと以上の内容が書けるはずはありませんし、現場で起きている事実を伝えることもできなくなってしまいます。

■良い写真を撮るには

写真を撮るには、ある程度のテクニックが必要です。写真は少なくとも一眼レフで「マニュアル」で撮影すること。ピントが合う奥行きを決める「被写界深度」という概念を理解すること。できるだけ明るいレンズを使って、絞りを開けて、被写界深度を狭くして、ピントが合っている部分以外はボケるようにして、狙いがはっきりした写真を撮ること。それだけ守れば、かなり「プロっぽい」良い写真が撮れます。

最近は一眼レフでも安くて良いカメラが出ています。これから買おうと思っている人がいるなら、キヤノンの「EOS Kiss」がお勧めです。マスコミの記者はニコンのカメラを使っていることが多いですが、広告媒体やフリーランスの人はキャノンを使っていることが多く、私は事件現場などを取材している時はニコンを使っていましたが、フリーランスのフォトグラファーらと芸能人を撮影することが多くなってからキャノン派になりました。

■「引用」と「盗用」と著作権

記事を書く際には「著作権」について、きちんと理解していることが不可欠です。適法な「引用」であれば、著作権を持っている人にことわらずに文章などを使うことが認められます。人の文章を勝手に使うことが認められるというと不思議に思われるかもしれませんが、一定の枠内でそれを認めないと、何も書けなくなってしまうからです。

「引用」として認められるためには、(1)出典を書くこと(2)改変しないこと(3)引用した部分よりも自分の文章の方が多いこと、の3つの条件が必要です。「〇〇さんの著書・〇〇によると」などと引用元の出典をきちんと書くことと、内容を勝手に書き換えないこと、そして自分の文章が主で引用が従であることが必要です。

最悪なのは、人の文章を少しだけ変えて、さも自分が書いたようにして出典も書かずに使うこと。これは「盗用」となり、訴えられれば必ず負けます。人の文章を使う時は、きちんと出典を書いて、正確に引用してください。

写真や動画については、出典を書いたからといって「引用」と言うことはできません。基本的には、他の人が利用することを明確に著作権者が認めている写真や動画以外は、使わない方が安全です。必要な写真や動画は、自分で撮影するようにしましょう。

■動画に透かしをつける方法

自分で撮影した写真をウェブサイトなどに掲載する場合は、自分の名前などを写真の隅に「透かし」(ウオーターマーク)として入れておけば、勝手にコピーして使用されていた場合などに、警告して削除を求めることができます。「透かし」がなくても、自分の写真を勝手に使われていたら文句は言えますが、「透かし」があれば権利を主張しやすいですし、不正使用の抑止にもなります。

動画についても同じですが、YouTubeには動画をアップする時に「透かし」を入れる機能があり、それを使えば動画が共有で拡散されても自分の作品だとわかるので、便利です。YouTubeに「透かし」を入れるには、次のようにします。

再生リスト→自分のチャンネルを選ぶ→動画の管理→チャンネル→ブランディング(→すでに透かしが入っている場合は「削除」で今のロゴを消す)→新しいロゴ画像を入れる→表示タイミングを動画全体にする→更新

■良い文章とは

良い文章が何なのかというのは、そう簡単に言えるものではありません。小説家などは「文体が命」と言われることもあり、文章には個性があり、個性を出すべきだと私は思っています。新聞記者は、それぞれの会社の「決まりごと」に従って書いているので、あまり個性的な文章は書きませんが、それでも最近は署名記事が当たり前になってきたので、個性的な文章を書くことも、ある程度は認められてきています。

新聞記者が書いている文章の決まりごとは、市販されている共同通信社の「記者ハンドブック」に出ています。多くの新聞社は、このハンドブックのルールに従って記事を書いています。朝日新聞社など会社独自のルール本を作って記事の体裁を決めている会社もありますが、細かい点は別として、だいたいは共同通信の記者ハンドブックと似た内容となっています。

フリーランスの記者は、そういうルールに従う義務はないので、自由に書けば良いと私は思っていますし、アイデアニュースでは「ご自分の好きなように書いてください」と言っています。ライターにとって「文体は命」だからです。ただ、あまりに漢字が多くて、文章が「真っ黒」に見えるものは読みにくいので、私は好きではありません……。

■見出しのタブー

新聞社では、記事は「記者」が書きますが、見出しは「編集者」がつけます。というのは見出しの大きさは記事の価値判断につながるものですし、文字数によって見出しの大きさや形も変わり、レイアウトも違ってくるからです。

新聞社の見出しには「幽霊見出しはダメ」という一般的なルールがあります。「幽霊」つまり実態がない見出しはダメということで、本文に書かれていないことを見出しにしてはいけないという意味です。逆に言えば、本文を良く読んで、一番面白いと思ったところを見出しにすれば良いということになります。

新聞の見出しには「ダイジェスト」的な役割があるので、本文を読まなくても見出しさえ読めば記事の内容がわかる見出しが良いとされますが、ウェブサイトになってくると少々事情が変わってきます。というのも、見出しだけで内容が完全にわかってしまうと、見出しをクリックしてくれないために記事ページが開かれずに終わってしまうことがあり、いわゆる「ひっかけ見出し」的な、内容がよくわからないような見出しをわざとつけることが時々あります。しかし「ひっかけ見出し」は、読者の信頼を裏切ることにつながりかねないので、できるだけ避けた方がよいと思います。

■ご感想・質問はこちらから

ということで勝手に偉そうに書いてきましたが、マスコミの編集作業のイロハ的なことをご紹介しました。

「ここをもう少し詳しく書いて欲しい」あるいは「これは、こうではないか」など、ご感想、ご質問、ご希望などがございましたら、以下のフォームでお送りください。次の機会に説明したいと思います。長文を読んでくださり、ありがとうございました。今後とも、どうかよろしくお願いいたします。

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