電力小売自由化、原発に反対するにはどこから買えばいいの?

「パワーシフト・キャンペーン」のホームページより=画像化・橋本正人

2016年4月1日からの電力小売自由化を前に、「原発に反対する立場から考えると、どこの電力会社から電気を買えばいいの?」と思っておられる方も多いと思います。アイデアニュースは広告を一切掲載していないこともあり、気兼ねせずに本当のことを書くことができますので、紹介させていただきます。

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

2016年3月3日に、兵庫県川西市のアステ市民プラザで「エレパワ★お勉強 電力小売り自由化」と題された講演会が開かれました(主催 エレパワ★お勉強@川西能勢)。講師は、特定非営利活動法人「気候ネットワーク」主任研究員の豊田陽介さん。約2時間にわかって行なわれた講演の中から、筆者の橋本が「なるほど」と思った部分を紹介します。

講演する豊田陽介さん=撮影・橋本正人

講演する豊田陽介さん=撮影・橋本正人

そもそも電力小売自由化は何のために行なうのかということの説明の中で、一番「なるほど」と思ったのは、小売自由化で電力供給が不安定になるということはなく、むしろ電力供給が安定するということでした。豊田さんが上映したスライドの中の下のものを見ていただければ良く分かりますが、2003年度以降、主要先進国で、電力の小売自由化を進めたために停電時間が増えたということはありません。このグラフで、1国だけ飛びぬけて2010年度に停電時間が急増しているのが日本で、これはもちろん2011年3月11日(2010年度)に発生した東日本大震災による福島原発事故によるものです。小売自由化を進めてきた主要先進国の電力供給が安定し、自由化が進んでいない日本で原発事故が起きて大停電が発生した。そういうことも今回の電力小売自由化の背景にあるということが、よくわかりました。

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

ただ、小さな電力会社が小売りをはじめたら会社倒産などで電力が供給されなくなるなどの心配はないのでしょうか。これについては、「安定供給」の責任を送電会社が負うことにより、もし一部の発電会社からの電力が止まったら、別の電力会社から電力を利用者に提供することで安定供給を保つ仕組みになっているので、発電会社が倒産しても停電の心配などは無いということでした。

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

ちなみに、電力会社の切り替えは、とても簡単で、4日~2週間程度で終わるとのことです。

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

では、どこから買えば良いのか。まずは「価格.com」や「エネチェンジ」などの比較サイトが浮かびます。ただ、これらのサイトでは電気料金の比較は簡単にできるものの、掲載されているのは大手の電力会社などがほとんどだということと、どの会社の電力を買えば原発反対に役にたつのかよくわからないという問題があります。

スライドの一部を指さす豊田陽介さん=撮影・橋本正人

スライドの一部を指さす豊田陽介さん=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

どの電力会社から買えば良いのかがわからない原因のひとつは、電力会社に「電源構成に関する情報開示」が義務付けられていないことがあります。そこで、市民団体などで作る「パワーシフト・キャンペーン」などが、電力会社へのヒアリングなどを実施し、どの会社が良いのかを調べているとのことでした。パワーシフト・キャンペーンのホームページに(⇒http://power-shift.org/)、「パワーシフトな電力会社一覧」が掲載されています(⇒http://power-shift.org/choice/)。

「パワーシフト・キャンペーン」のホームページより=画像化・橋本正人

「パワーシフト・キャンペーン」のホームページより=画像化・橋本正人

  • パワーシフト・キャンペーンが重視する点
  • 1. 電源構成や環境負荷、などの情報を一般消費者開示していること
    2. 再生可能エネルギーの発電設備(FITをふくむ)からの調達を中心とすること
    3.原子力発電所や石炭火力発電所からの調達はしないこと(常時バックアップ分は除く)
    4. 地域や市民による再生可能エネルギー発電設備を重視している
    5. 大手電力会社と資本関係がないこと(子会社や主要株主でない)

パワーシフト・キャンペーンの運営団体の運営団体は、「eシフト」「市民電力連絡会」「国際環境NGO FoE Japan*事務局団体」「認定NPO法人環境市民」「認定NPO法人気候ネットワーク」「電力改革プロジェクト」「首都圏反原発連合」「太陽光発電所ネットワーク」「北海道グリーンファンド」で、ほかにも2016年2月時点で40団体が賛同団体となっています。⇒運営団体・賛同団体の一覧はこちら

豊田陽介さんが上映したスライドより=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドより=撮影・橋本正人

豊田さんが上映したスライドで「市民・地域電力会社設立の動き」として名前を挙げていたのは、この下の画像に出ている生協系、自治体系、再エネ系の各社でした。

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

豊田陽介さんが上映したスライドの一部=撮影・橋本正人

パワーシフト・キャンペーンのホームページには、「パワーシフトな電力会社一覧」として、供給予定エリアや家庭向け供給開始時期などが紹介され、ロゴマークが詳細データにリンクしています。「パワーシフトな会社一覧」は、⇒ここをクリック

パワーシフト・キャンペーンのページ内に掲載された「パワーシフトな電力会社一覧」より=2016年3月18日現在、画像化・橋本正人

パワーシフト・キャンペーンのページ内に掲載された「パワーシフトな電力会社一覧」より=2016年3月18日現在、画像化・橋本正人

「パワーシフトな電力会社一覧」は、⇒ここをクリック

では、実際問題として、この日の講演を聞き終えた筆者の橋本は、自宅の電気の購入先として、どこの会社を選んだのか。そして、その会社を選んだ場合、電力料金のシミュレーションはどうなったのか。アイデアニュース有料会員向け部分で紹介させていただきます。

<ここからアイデアニュース有料会員向け>

■筆者の住所地で電力を購入できる「パワーシフトな会社」は?

■自宅の電気料金がどう変わるかシミュレートしてみました

■解約の条件は?

■ここに決めました

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■筆者の住所地で電力を購入できる「パワーシフトな会社」は?

筆者の橋本は兵庫県宝塚市内に住んでおり、現在は関西電力から電気を購入していますが、パワーシフト・キャンペーンのホームページで<関西>として出ていたのは、「泉佐野電力」だけでした。しかも「家庭向け供給開始時期」は「検討中」。これでは申し込むことはできません。そこで、<全国>として出ている3社を見てみました。「エヌパワー」は来年(2017年)4月予定なので、あと1年ほど待つ必要があります。「生活クラブエナジー」は、関東圏以外は2016年10月なので、これもしばらくおあずけ。最後の「Looop」は、2016年4月「申込受付開始!」とのことで、関西で現時点(2016年3月18日現在)で「パワーシフトな会社」に一番乗りしたいなら「Looop」しかないことがわかりました。

「Looopでんき」のホームページは、こちら ⇒https://looop-denki.com/

■自宅の電気料金がどう変わるかシミュレートしてみました

まず、「Looopでんき」のホームページから、個人宅用の「低圧のお客さま」選び、右上の「計算しよう」ボタンを押してみました。

「Looopでんき」のホームページの低圧のお客さまページ(https://looop-denki.com/low-v/)より=画像化・橋本正人

「Looopでんき」のホームページの低圧のお客さまページ(https://looop-denki.com/low-v/)より=画像化・橋本正人

省エネを熱心にしている方々に説明すると「そんなに使ってるの!」と怒られるのは必至ですが、我が家(2世帯住宅)の1階の電力料金は従量電灯Aで1月分が1,113kWhで、35,072円でした。これをシミュレーションに入れると…。

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

「Looopでんき」にすると「年間で48,390円お得です」と出ました。

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

月別の電気料金比較のシミュレーションも出ました。すべての月について、現状より安くなっています。

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

「Looopでんき」のページで橋本宅の電気代をシミュレート=画像化・橋本正人

ちなみに、我が家の2階は、夜間に電力を良く使うタイプの「はぴeタイム」契約にしているのですが、この「Looopでんき」のシミュレーションには、契約種別として「従量電灯A」と「従量電灯B」しかなく、「はぴeタイム」料金との比較をすることはできませんでした。

■解約の条件は?

電力小売自由化で気をつけなければいけないのは、安くなると言っても、携帯電話などの料金のように「2年しばり」や「解約金」などがあって、将来、他の会社に変更しようとするとお金がずいぶんかかる場合もあると聞いていたので、「Looopでんき」の「よくあるご質問」のページ(https://looop-denki.com/low-v/faq/)を見てみると、契約は1年契約の自動更新で、契約期間内に契約を解除しても解約金は発生しないと説明されていました。

「Looopでんき」のホームページより=画像化・橋本正人

「Looopでんき」のホームページより=画像化・橋本正人

■ここに決めました

ということで、私は関西電力から「Looopでんき」に変えることを決心しました。ただ、我が家は2世帯住宅で電気メーターが2つある構造になっているのが以前から気になっていて、電気メーターも1つにしたいと思っていたので、「Looopでんき」の問い合わせ窓口(https://looop-denki.com/contact/)に電話して、「別料金で良いのでそういう工事もしていただけますか?」とたずねました。電話対応は良い感じの人でしたが、「こちらで調べてお返事します」ということで、電話番号を伝えました。たぶん、今はものすごく問い合わせが混んでいるので、かなり長期になることを覚悟しつつ返事を待っています。

実際には、4月にあわてて電力会社を変えるよりは、少し様子を見てどこの電力会社が良いのかを見極めてから変更した方が良いかとも思いますし、「パワーシフト・キャンペーン」からメールで情報を受け取ることができる「パワーシフト宣言」(http://power-shift.org/declaration/)に登録しておくなどして、良いところが出てきたら変えるというのが一番だとは思います。(私はせっかちなので、まず変えるという風にしてしまいそうですが)

みなさまの電力会社選びの参考になれば幸いです。

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