ミュージカル「グランドホテル」が、ロンドン気鋭の演出家トム・サザーランドによって演出される。GREENチームとREDチームのダブルキャストで上演され、違う結末のふたつの物語が描かれると話題だ。両チームに出演する大山真志さんに、稽古での違いや面白さ、大変さなどを伺いました。上・下、2回に分けてお届けします。
――稽古は佳境ですか?
これからラストシーンを作っていく予定です。GREENチームとREDチームで違う結末を迎えるので、どう作っていくのか楽しみにしているところです。
――先日の公開稽古を拝見したのですが、キャストは全員ずっと舞台上にいるんですよね?
見られている意識がずっと続くのは、気持ちが切れないので大変ですね。意外と前に出て芝居をしている時よりも、椅子に座って待っているときの方が大変です。
――両チームに出演されている大山さんに、その違いや面白さなどを伺いたいのですが。
全然違うものになっていますね。同じことをやっているんですが、ダブルキャストの方たちの演技プランが全然違っていたりするので、自分も出演しているのですが、客観的にみると、最初の稽古から全然違う方向に向いていたんだと感じました。GREENチームとREDチームで同じことをしているのも多いのですが、同じ作品をやっている気がしないんです。そういう面白さがありますね。
――稽古はどんな風に進んでいますか?
チームごとに稽古をする日と、どちらも同じような内容の時は交代しながら一緒にやることもあります。
――両方に出ていて、切り替えは大変ですか?
ようやくできてきた状態です。ちょうど昨日、GREENチームのときはこうして、REDチームのときはこうすると、スタッフさんたちと話して整理したので、やっとバラバラだったパズルが組合わさってきて、ひとつの作品というものが見えてきました。
――ご自身が大きく違うことはありますか?
僕が演じるズィノヴィッツという役は、傾きかけた繊維工場会社のプライジング社長に、頼りにされている弁護士です。プライジング役のGREENチームの戸井(勝海)さんとREDチームの吉原(光夫)さんでは演技プランも違うので、僕も芝居の受けを変えています。こうやってセリフが返ってくるからこういう風に言ってみようとか、楽しいですね。戸井さんとは以前ご一緒させて頂いていたので、すぐに話し合ってできました。吉原さんは今回初めてです。会った瞬間に見た目で「怖っ」と(笑)。昨日、「セリフ変わったところを教えてくれよ」と言われ、はじめてちゃんとお話できました。最初の稽古から台本を離して、目を見てセリフを言われる方で、それを目の当たりにして、負けていられないとやる気スイッチが入りました!
――おふたりとのやりとりは具体的にどう違いますか?
戸井さんは、狂気的に走るプライジング社長。変態チックな感じがします(笑)。吉原さんは、気弱な感じから少しずつ人間が壊れていく様が描かれている感じがします。それと、吉原さんの目力がすごいんですよね。「おい! プライジング!」というセリフがあるのですが、本気で行かないと負けてしまいそうになりますね。そのせめぎ合いを稽古でも楽しみながらやっています。
――その違いに対して、大山さんはどんな風になりそうですか?
僕は相手のセリフを聞いて返す役どころ。倒産しそうな会社の社長に対して、会社が倒れそうなのにこのままでいいのか、ちっちゃな嘘ひとつつけないのかと、食ってかかる感じを頑張って出せればと思っています。
――どちらかというと、大山さんが芝居を受けて変わる?
僕からはげしく言うのですが、それに対してどう反応されるかによって変わってきますね。演技に関して、この人だからこうしようというのではなく、受けた感覚で返しています。
――本番でも日によって変わったりするでしょうね。
そうなると思います。
<ミュージカル「グランドホテル」>
【東京公演】2016/4/9(土)〜4/24(日) 赤坂ACTシアター
【名古屋公演】2016/4/27(水)、4/28(木) 愛知県芸術劇場大ホール
【大阪公演】2016/5/5(木・祝)〜5/8(日) 梅田芸術劇場メインホール
<関連サイト>
⇒ミュージカル『グランドホテル』
⇒大山真志オフィシャルブログ「大山真志のお陰さまさし。」
<関連記事>
⇒ミュージカル「グランドホテル」出演 大山真志インタビュー(上)
⇒マイケル・ジャクソンになりたかった 大山真志インタビュー(下)
⇒中川晃教インタビュー(下) ミュージカル「グランドホテル」出演へ
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■グルシンスカヤ役のおふたりをリフト、毎回、うわぁーーーー
■分岐点でひとつの違いで着地点が変わる
■「死ぬっちゅうねん!」と思いながらやっています(笑)
■グルシンスカヤ役のおふたりをリフト、毎回、うわぁーーーー
――他に何か大山さんが違ったりすることはありますか?
あとは、ダンスでグルシンスカヤ役のおふたりをリフトさせていただくのですが、もう、そこが何よりも、一番緊張します! 3回ぐらいリフトするんですよ!!! もう、毎回、うわぁーーーーってなります(笑)。
――(笑)。
もう、怪我だけは……、僕が怪我しても、怪我をさせられない、わぁーーーーって気持ちで、本当に、めちゃくちゃ緊張します!!!
――おふたりの呼吸も違うでしょうし。
はい。乗るポジションも安寿(ミラ)さんと草刈(民代)さんは違うので、ドキドキします……。草刈さんに、リフトを上げられて降ろされるまで、女性は何もなかったかのように降りられたら、一番素晴らしいリフトの仕方だよと教えて頂いたんです。おふたりが練習にずっとつきあってくださって、なんて優しい人たちなんだろうと! ただ、緊張が取れないんです!!! 本番が全て終わるまで、ずーっと緊張すると思います。
――一番のポイントはリフトを無事に終えることですね。
腕がもげようが落とせない!!! 絶対に頑張ります!
――リフトのご経験はありますか?
何度かはあるんですが、できるというレベルではなかったので、振付のリーさんに教えてもらいながら、なんとか付いていこうと挑戦しています。挑戦させて頂けていることがすごく嬉しいです。
――ひとつ引き出しが増えますね。
そうですね。
――精神的にもタフになりそうですね。
3億円を乗せているような気分ですよ(笑)。
■分岐点でひとつの違いで着地点が変わる
――悲劇的エンディングのGREENチームとハッピーエンディングのREDチームと違う結末を迎えますが、一番面白く感じていたり、新鮮だなと思うことはありますか?
昨日ふたつのチームの分岐点を作っていて、結末が違うところに着地することが見えているのですが、それに対してすごくわくわくしています。最終的な完成台本を見ていないですが、ここからどう演出してくださるんだろうと楽しみにしているところです。この作品は群像劇で、グランドホテルが主役なんだとトムさんが言っていました。そのなかに命が行き交い、人の人生が行き交っている。そういう舞台もあるんだなと、面白いと思いました。
――ひとつの物語から真逆のような結末を迎えるというのは、自由度が高いというか、普通に考えたらないですよね。そのことは素直に心に入ってきましたか?
入ってきました! 実はこっちの選択肢を選ぶとこっちの道に、あっちの選択肢を選ぶとあっちの道にいくというゲームが好きで、それと似ているんですよ。分岐点でひとつの違いで着地点が変わるんだという面白さをゲームで知っていたので、この作品もそういう感じなんだなと納得しました。
■「死ぬっちゅうねん!」と思いながらやっています(笑)
――海外のスタッフとの現場はいかがですか?
以前、「ファントム」で海外の演出家を経験していますが、振付、音楽監督まで海外の方というのははじめて。パワフルだなと! 毎回「フルボイス!」と言われるんですよ。「死ぬっちゅうねん!」と思いながらやっています(笑)。全力でやらないとできないこともわからないでしょうというスタンスが理に叶っているのですが、体力がもたなくて。海外の方の振付も初めてで、日本の方よりもパワフル。すごくわかりやすく、ここのシーンでは、こういう気持ちだからこういう風に踊っているんだよと、ひとつずつ教えてくださるので、そこが面白いです。
――毎日エネルギッシュな空間ですね。
稽古時間は他とそんなに変わらないのですが、くたくたになるまでやるので、家に帰ってパタっと寝て、気づいたらまた稽古場にいるぞというような(笑)、そんな毎日です。
――毎日全力ですね。体力が入りますね。
全員が出ずっぱりですから、みんなで頑張っています。両チームに出演する僕らは、ほとんどの役者がひとりで3役ぐらいやっています。ずっと舞台上にいるので、椅子や着替えなど、段取りも自分たちで把握していないといけないんですね。舞台上に小道具が置いてあったり。みんなで共通認識を持ちながらやっています。
――大山さんはズィノヴィッツ役以外にどんな役をされるんですか?
ウェイター、舞踏場にやってくるゲストをやっています。
――オープニングでリフトしていたときは、何の役ですか?
ウェイターです。
――あと2回のリフトは?
ゲスト役ですね。
――ズィノヴィッツ役ではリフトはしないんですね。
ズィノヴィッツはそういうことは絶対にしないです(笑)! ズィノヴィッツは格差社会のなかではゲスト側なんですが、踊ったりすることはなく、プライジングとの場面にしか出てこないですね。あのリフトは、泊まりにきている人たちと、グランドホテルで働いている人たちの格差を描いていているんです。ゲストたちが陽気に飯を食っている下で俺たちは働いているんだという意味があるんです。
――なるほど。
舞台セットひとつひとつにも意味合いがあったり、そういう話をトムさんがしてくれるのですが、ものすごく面白いです。