「シカゴは男役ではなく男、苦しかったけれど楽しかった」 姿月あさとインタビュー(下)

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

歌手・姿月あさとさんへの単独インタビューの「下」です。2016年の夏に上演された「ブロードウェイミュージカル『シカゴ』~宝塚歌劇OGバージョン~」のニューヨーク公演の様子などについて、うかがいました。

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

■ニューヨークの「シカゴ」公演は、ロックコンサートみたいな感じでした

――7月から横浜、ニューヨーク、東京、大阪と、ずっと「シカゴ」でしたね。

お稽古が6月からだったので、6、7、8月と、どっぷり「シカゴ」でした。

――ニューヨークに行かれて、いかがでしたか?

行くまでは、どういうお客様がいらっしゃるのかとか、現地での反応とかがすごく不安というか、わからなかったんですが、お客様の反応がすごくって。

――現地の?

現地の方が、笑うのもそうだし、拍手もそうだし、すごくエンジョイなさっているんです。向こうの、海外のミュージカルとか舞台やコンサートは、ほんとに見てるお客様と一緒に作り上げるというか、オーディエンスが表現なさるじゃないですか。それを体感して、ああこういうもんだなぁって、すごく楽しかったです。

――ワーキャーとか、言葉にするとおかしな感じですが、そんな風に?

ロックコンサートみたいな感じ。歌でもナンバーが終わるたびにそうですし。我々がやるのは日本語なんですが、英語の字幕がついていて、英語のシカゴの持つアメリカンギャグというか、むこうの人のセンス、アメリカ人ならではの笑いのセンス、日本人にはわからないものもいっぱいある。もとがアメリカの作品ですから、なるほどなぁと思いました。この作品の持っている意味がわかりました。

■アメリカ人が笑うところと日本人が笑うところは全然違うってことが、わかりました

――私は、まだよくわかっていない部分があるんです。

我々も、何が面白いんだっていうのが、演じていてわかんなかったり、たとえば日本人だと男の人が亭主関白で女の人は1歩下がってで、アメリカ人だったらレディーファーストだったり、文化的な違いがあるんですね。

――そうですよね。

アメリカ人が笑うところと日本人が笑うところは、日本人でも東京の人が笑うツボと大阪人が笑うツボが、全然違うじゃないですか。そういう意味で、この作品の面白いエッセンスが、ニューヨークに行って「ああ、こういうところで笑うんだ」とわかりました。

――たとえば、どんなところですか?

イエス・キリストの話とか、弁護士が弁護してる時であったりとか、そういうところですごい笑いが起きるんですね。

――イエス・キリストがなんとか…って、セリフありましたね。

いっぱいあります。我々日本人が聞いても、何が面白いのかわからないんですね。

■契約書、裁判、弁論、イリノイ州、シカゴ…、アメリカ人にしかわからないものがある

――キリスト教的なことなどは、我々からみると笑っちゃいけない感じがしますね。

契約もそうです。アメリカ人の生活では、契約書が多いじゃないですか。日本では契約書を交わさないけれど、アメリカでは裁判であったり人前で弁論するということが、身近にある。日本ではそういう仕事にかかわっている人以外はあまり立ち会うことがないけれど。また「州」というもの、イリノイ州だったり、そして「シカゴ」という町だったり、そういうものについての思いは、アメリカ人にしかわからないものがあると思います。

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

<姿月あさと LIVE in Magnolia 2016>
【大阪公演】2016年10月19日(水) 14:00 17:00 逸翁美術館マグノリアホール
チケット料金:¥6,000(全席指定・税込)
http://www.shizukiasato.net/news/4049

<THE PRAYER X’mas Special Live>
【東京公演】2016年12月21日(水) 18:00 20:30 コットンクラブ東京
【大阪公演】2016年12月23日(金) 13:00 16:00 逸翁美術館マグノリアホール
http://www.shizukiasato.net/news/4080

<アイデアニュース、姿月あさとさん関連記事>

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■オーディションではなく、OG公演でやらせていただいているところが、あちらの方とは違う

■「男性が歌っている曲を同じキーで女性が歌うのは、誰もができることじゃない」と

■15年ぐらいやってきた「男役」と「男」は、全然違う。つらく苦しく難しいことが多かった

■「姿月あさと」っていいうのが出てきちゃいけないけど、私なりのビリーという作り方をした

★姿月あさとさんサイン入りチェキ写真プレゼント応募フォーム(このプレゼント応募は終了しました)

■オーディションではなく、OG公演でやらせていただいているところが、あちらの方とは違う

――私が観た大阪公演の「シカゴ」では、姿月さんが歌うと「おお、さすが!」という感じでした。

今回、自分は宝塚OGとして記念公演に出演させていただいているんですけど、ブロードウェイというところは、当たり前にオーディションがあって、できる人が選ばれるんですね。私たちは、オーディションを受けてうかったわけではなくて、OG公演ということでやらせていただいているっていうところが、あちらの方とは違う。そういうことに甘んじることなく、選ばれて出れるような作品をやりたいと思いました。そして、自分の実力で認められる仕事をしたいです。

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

■「男性が歌っている曲を同じキーで女性が歌うのは、誰もができることじゃない」と

――歌については、どうでしたか?

4年前に「DANCIN’ CRAZY」という作品の中で「シカゴ」のダイジェスト版を、お芝居なしにダンスナンバーだけでやったんですね。その時に、いろんな歌稽古をして、あちらの男性が歌っているのと同じキー、同じ調で歌って。そして「女だけど、あちらの男性が歌っている曲を同じキーで歌うのは誰もができることじゃない」と。ミュージカルの女優さんたちがみんながみんな、このキーで歌えるかというと、歌えるわけではない。それは今、自分が持っている引き出しの中のひとつ。

――日本で宝塚の姿月さんを知っている人なら、姿月さんが低いキーで歌えるのは当然という感じですが…

「シカゴ」はアメリカ以外でも世界中で上演されていますが、ビリーというのは男の人が演じていて、世界で初めてビリーを女性が演じて、男性と同じキーで女性が歌うのはすごいことだねと、言っていただきました。

――言ってくださったのは?

あちらの演出家の方とか、ゲイリーという振付家の方とか、ずっと来ていて、彼らに指導を受けていて。譜面もみんな、あちらのものを使うので。世界中一緒のものなんです。

――言葉は

日本語。

――言葉以外は全く同じものを、女性ができるのかと…

やってみたら、できた。でもそれは、誰でもができることではない、と。

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

姿月あさとさん=撮影・橋本正人

■15年ぐらいやってきた「男役」と「男」は、全然違う。つらく苦しく難しいことが多かった

――男役の経験を踏まえて、しぐさやダンス、踊りはどうでしたか?

踊りとかという問題ではなくて、宝塚は女性が「男役」をやるんですが、「シカゴ」は「男」「ジェントルマン」だということを、すごく指示されました。自分が今までやってきた経験は「男役」だったので、それが今回、シカゴをやって、すごい壁にぶちあたりました。全然、違う。

――男、ジェントルマンって?

男って、なんなんだろうという壁にぶちあたったんです。私は来年30周年で、15年ぐらい「男役」をやってきたけれど、今までやってきた「男役」と、今回の「男」は全然違う。つらいとか、苦しいとか、難しいとか、そういうことがすごく多かった。おしゃべりとかも、早いし。この作品のテンポが、普通の会話よりすごく早いし、決められていること、目に見えない決まりごとが山のようにあって、すごい大変。

――観客席から見ると、そんなに大変そうには見えないんですけどね。

でもそれは、かなりの練習がないと、ここまでできるような簡単な役じゃないから。

――トークも、ペラペラペラペラと話していきますよね。

自分が全部おしゃべりして進めて行きますからね、ビリーは。みんなを操っていく役で。弁護士なので、普段のおしゃべりで使うような言葉じゃない言葉遣いが多いし、難しい。1回やると、疲れる(笑)。

――しゃべる量がすごいし、早いですよね。

会話じゃなくって、一人でしゃべってることが多い。ずう~っと、ベラベラベラベラと。

■「姿月あさと」っていいうのが出てきちゃいけないけど、私なりのビリーという作り方をした

――でも、ベラベラベラベラと言っているところの中で、時々、あっ、この感じは、マグノリアホールで曲の合間に話している姿月さんみたいだなって風に思えるところもありました。

それはたぶん、峰(さお理)さんがなさるビリー、麻路(さき)さんがなさるビリーと、私がやるビリー、世界中に何種類ものビリーさんがいて、その人その人によって全然違うので。

――ちょっと脱力した感じが、すごく姿月さんだなぁって。

「姿月あさと」っていいうのが出てきちゃいけないけど、私なりのビリーという作り方をしたということですね。

――そうなんですね。よくわかりました。では、10月19日のマグノリアホールでのライブ、それからクリスマスの「THE PRAYER」、30周年のさまざまな活動、期待しています。長い時間、ありがとうございました。

ありがとうございました。

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“「シカゴは男役ではなく男、苦しかったけれど楽しかった」 姿月あさとインタビュー(下)” への 3 件のフィードバック

  1. まつげん より:

    すっかり綺麗な女性に戻られて久しい姿月さんですが、ビリーとして舞台に立たれた瞬間に、どこからどう見ても男性にしか見えない、ジェントルマンに変身されますよね。そのハスキーなセクシーボイスに、悩殺されました ^^;
    シカゴでは「ビリー」という男性を見させていただきましたが、また、女性歌手「姿月あさと」としての歌声を聴かせていただくことを楽しみにしています。

  2. M より:

    シカゴの制作発表や囲み取材では聞けなかった
    姿月さんの本音の部分や役作りについて
    取材をして頂けているのでとても興味深く読ませて頂きました

  3. レッドロ-ズ より:

    改めて、「シカゴ」のビり-の役作りの大変さを、記事を読んで、感じました。でも、辛く、苦しい思いが、あったからこそ、あの宝塚の時と違うダンディな男性が、演じられ、私達を魅了してくださったと、心から感謝しています。ビり-に出会えて、幸せでした。       ずんこさん、コメントを、そして、このインタビューをして下さり、ありがとうございました。とても楽しく、読まさせて頂きました。

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