みなさんは、「にこたんソープ」をご存じでしょうか?可愛らしいイラストが添えられた個別包装の石けんは、手に取るとけっこうずっしりくる80グラム。中には半透明の石けんがひとつ入っていて、石けんの中にはメダルが透けて見えます。この石けんを世界中のこどもたちに配布する手洗い推進プロジェクトをおこなっているのが、「にこにこ一般財団法人」です。代表理事の浅野敬子さんとご縁が出来て、2017年1月30日、六本木ヒルズでおこなわれた「にこにこ一般財団法人」主催『nicotan♡soap 2017新年会&交流会』に行ってきました。この日は、実業界や芸能界などさまざまな分野で活躍している方たちおよそ200名が、プロジェクトの報告を受けたり、活動に賛同している企業や団体、個人から提供された景品のチャリティラッフル(慈善福引)を楽しんだりして、新年会らしい華やかなひとときを過ごしていました。ほとんど東京になじみのない私、六本木ヒルズに行くのも初めて、集まっている皆さんほぼ全員初対面、にこたんソープを手に取るのもこの日が最初、実は内心ドキドキだったのです。でも、お話を聞けば聞くほど、この活動が世界の子どもたちに愛と夢と勇気を届ける素敵なものだと分かり、たくさんの人に知っていただきたいと思いました。愛らしい「にこたんソープ」に込められた想いをお読み下さい。
チャリティラッフルには、歌手のAIさんから『サイン入り 抱っこ紐 』、7本指のピアニスト・西川悟平さんからはご本人がピアノソロ用にアレンジしたアラジンの”A Whole New World”サイン入り楽譜、有名パティシエが作った”にこたんのお菓子”など、たくさんの魅力的な品が寄せられ、ニコたんソープを応援している人が色々なところにおられるのだなあと思いました。ラッフルの収益は福祉関係の11団体に寄付されるそうで、みんなで楽しんだことが次の良いことにつながる仕組みも素晴らしいと思います。収支報告もきちんとしていただきました。石けんで手を洗うことで子どもたちの命を守る活動が、他の活動を応援することになる。実はこれは、手洗い推進プロジェクト「nicotan♡soap」の理念でもあるのです。
ユニセフは、「石けんを使った手洗いは子どもの健康に有効であることが証明されているにも関わらず、その普及率は多くの国で危険なほど低い」と報告しています。ユニセフの水と衛生部門部長のサンジャイ・ウィジェセケラは「たとえば助産師が手を洗っていなかったら、恐ろしい病原菌をうつしてしまうことがあるように、誕生のときから乳幼児期、学齢期、さらにその先も、子どもの健康に手洗いは不可欠です。手洗いは、私たちにできる、最も安価で、シンプルで、有効な健康を守る方法なのです」と述べています。(unicef 世界手洗いの日プレスリリース2015年10月より)また、石けんを使って正しく手を洗うことで100万人もの子供たちの命が守られると言われているのです。(日本ユニセフ協会からのお知らせ2009年10月より)
でも、石けんを使って手を洗う衛生習慣が普及していない地域へ、「にこたんソープ」をただ送るだけでは、うまくいかないかもしれません。綺麗な石けんをお菓子と間違えて食べたりしても困ります。そこで、にこたたんソープには手洗いを楽しむ仕組みが組み込まれました。
半透明の石けんの中からのぞく「にこたんメダル」が、手を洗うご褒美。子どもたちはメダルが大好きで、早くメダルを取りだしたくて一生懸命手を洗ってくれるそうです。もうひとつ、にこたんソープの特色は、直接子どもたちに石けんを手渡ししてくれる「にこたん大使」の存在です。世界のあちこちに旅行に出かけるとき、この石けんを持って行って、出会った子どもたちに使い方を説明して手渡す。そうすることで、子どもたちは自分を大事に思ってくれる人と交流し、石けんの正しい使い方を教えてもらうというわけです。
世界を旅するのが夢だった福田知世さん、世界一周をしたい人のためのセミナーに出たときに「にこたんソープ」のことをききました。興味がわいた彼女は「にこにこ一般財団法人」代表理事の敬子さんに連絡をします。そして、2016年4月から7月末までと、2016年12月初めから2017年1月末までの2回、知世さんはにこたんソープを持って”世界旅”に出かけていきました。1度目のときは、石けんは15個くらいを持参していましたが、「自分が旅をすることがメインで、あまり石けんをわたすことを意識していなかった」とのこと。でも、発展途上国を旅して現状を見るうち、「もっとちゃんと石けんを渡したいなあ」という想いが強くなってきたそうです。それで、帰国して2度目の旅に出る時には60個のにこたんソープを持って行ったのでした。
いわゆる観光地ではなく、ローカルの人たちが暮らしているところを訪ねて人と触れ合うことが好きだという知世さんは、決して裕福ではない人たちの優しさに出会います。電気もなかったり、トイレなどの水回りの設備も十分でない地域の人たちが、アクシデントにあってクレジットカードが使えなくなった知世さんに、ご飯を食べさせ、家に泊めてくれ、いろいろ助けてくれました。
知世さんは2度目の旅でドイツ国際平和村を訪れ、世界の紛争地域からやってきて治療を受けた子どもたちが帰国するときのバッグにひとつずつ、にこたんソープを入れてもらえたそうです。45個の石けんが、戦争で傷ついた子どもたちの手に渡り、「夢をもって生きてね。20年後に会いましょう」というメッセージが届いたのだと話してくれました。
「20年後に会いましょう」とはどういうことでしょうか?実は、にこたんソープの中に入っているメダルは、2036年8月9日、ニューヨークのセントラルパークにあるベセスダ噴水前で会おうねという招待状でもあるのです。
幼い命。特にまだ公衆衛生が整わない発展途上国で生きる子どもたちの命は、簡単に失われてしまいます。石けんで手を洗うことで救える命があるなら、救いたい。「にこにこ一般財団法人」代表理事の敬子さんはそんな思いでこの活動を始めましたが、にこたんソープにはまだその先に物語がありました。
敬子さん――「にこにこ一般財団法人」や「にこたんソープ」の“にこ”には、2個という意味もあるのね。例えば、お腹が空いているとき、ひとつしかない食べ物を自分が食べちゃっていいと思う。でも、もしみかんがふたつあったら、ひとつは誰かにあげてねって。だから、新年会で来てくださった皆さんが、にこたんソープを買って下さった時には、2個セットで購入してもらいました。ひとつは自分の分、もうひとつは誰かに手渡して欲しいという意味でね。「君の夢が叶いますように」って書いてあるチラシと一緒に石けんを配ってるけど、それだって、まず自分の夢を叶えてからでいいから、隣にいる人の夢が叶いますようにって願えるようになればいいなと思う。そうしたら、世界っていつか平和になっていくんじゃないかな。
敬子さんが、「自分の夢を叶えた子どもたちがにこたんソープの中に入っていたメダルを持って20年後にニューヨークで集う」というアイデアのヒントを得たのは、7本指のピアニスト・西川悟平さんからなのだそうです。
敬子さん――悟平さんは、すごく苦労して努力して、病気になってからもまたいっぱいがんばって夢を叶えた人で、彼の音楽がいろんな人を救ったりいやしたりしているのを見てきたのね。自分の夢のためにがんばっている、その姿が他の人を励ますことになるよね。私は、子どもに「こんなふうに生きなさい」なんて言いたくないの。シングルマザーで一生懸命子育てもして、自分の人生を楽しく、やりたいことをやって生きている私の姿をみて何かを感じてもらえたらいいなあと思うけど。逆に、子どもたちが夢をもってがんばっていたら、それを見る大人が励まされるよね。
敬子さんは、悟平さんが「私の人生に音を乗せてくれた」と言います。そのおかげで自分の人生は豊かになったと。悟平さんの方も「小さな石けんだけど、ここから平和は始まると思う。衛生状態の悪い国の子どもたちの命が、手を洗うことで守られて、その子が命を守る人になってほしいという敬子さんの思いを伝えるために全身全霊で協力していきます」と話していました。
にこたんソープの包装紙には『きみがあらうとみんながわらうよ』と書いてあります。石けんで手を洗う。日本のようなところに住んでいたら当たり前のことが、当たり前ではない暮らしの子どもたちへ、敬子さんはこんな風に伝えたいと言います。
君がこの石けんで手を洗ってくれたら、それはめぐりめぐって誰か他の人の命を救うことになる。命を守ることは良いことなんだ、命を奪うことはいけないことなんだよ。そして、大切な命を守って自分の夢をかなえてほしい。病気で7本の指しか動かなくなってしまってもピアノを弾く夢をあきらめず、ピアニストとして多くの人に勇気と希望を与えている西川悟平さんがニューヨークで待っているよ。2036年に会いましょう。
「nicotan♡soap」が描く物語は、未来へ向けての約束。小さな石けんに込められた大きな夢のお話でした。
*nicotan♡soapが正式な名称ですが、読みやすくするために「にこたんソープ」と表記しました。ご了承下さい。
海外に旅行に行くとき「にこたんソープ」を子どもたちに配りたいという方は、手洗い推進プロジェクト ホームぺージか、にこにこ一般財団法人Facebookページを参照されて、浅野敬子さんまでご連絡下さい。筆者も次回フィリピンに行くときにはぜひ持参して、にこたん石けんのお話を子どもたちにしたいと思っています。
◆手洗い推進プロジェクト ホームぺージ http://nicotan.org/
◆にこにこ一般財団法人Facebookページ https://www.facebook.com/nico.nico.japan.2014/
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■『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌、「ひまわりの約束」のように 浅野敬子さん
■どんどんズレて飛び出して行きたい 福田知世さん
■一生ピアノが弾けないと言われた指で、他の人も分も夢を奏でる 西川悟平さん
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■『STAND BY ME ドラえもん』の主題歌、「ひまわりの約束」のように 浅野敬子さん
「にこにこ一般財団法人」代表理事の浅野敬子さんから、こんな歌詞を教えてもらいました。国民的アニメであるドラえもんの映画『STAND BY ME ドラえもん』(2015年)の主題歌「ひまわりの約束」の一節です。
どうして君が泣くの まだ僕も泣いていないのに
自分より 悲しむから つらいのがどっちか わからなくなるよ
優しいドラえもんに頼って「宿題をしてもらいたい」「いじめっこをやっつけて欲しい」と自分のことばかりだったのび太くん。でも、愛を注いでくれる相手のために自分も何かをしたいと願うようになる。一方的に助けてもらうだけの関係から、自分は何ができるのかと考えるようになっていく。そんなのび太くんの成長物語を描いた映画の主題歌は、
そばにいたいよ 君のために出来ることが 僕にあるかな
いつも君に ずっと君に 笑っていてほしくて
と続きます。敬子さんは、にこたんソープで手を洗うようになった子どもたちが、他の人のために自分も何かをしたいと思う人になって欲しいと言いました。
敬子さん「石けんで手を洗うことで自分の命を守り、手を洗うことの大切さを家族や友だちに伝えて欲しい。自分の手のひらに乗ったふたつの石けんのひとつを、隣の子にあげる。そして、守られた自分の命を大事にして、他の人の命も大事にして、君の夢をかなえてね」
■どんどんズレて飛び出して行きたい 福田知世さん
5年間、社会人としてお仕事をしてきた知世さんは、世界を旅したいという夢を持っていました。でも、仕事の合間に休みをとって友だちと出かける旅に少しずつ満足できなくなってきた頃、「にこたんソープ」と出会います。そして、世界1周の旅をする夢を実現するべく、行動に出ました。仕事をやめて、世界を見て回ることにしたのです。誰もが知る観光地のその奥にある、人々の暮らしに触れたい、自分だけの経験値を上げていきたいと話してくれました。今は3回目の”世界旅”の準備中ですが、南米やアフリカなど遠い国を旅してみたいと、知世さんの夢は大きく広がっています。
知世さん「2016年は世界を旅するという私の大きな夢が一つ叶えた年でした*まだ継続中ですが。2017年は更に面白い事したいと思ってます。人とズレている事に息苦しさを感じてたけど今はどんどんズレて飛び出して行きたいと思います」
■一生ピアノが弾けないと言われた指で、他の人も分も夢を奏でる 西川悟平さん
ピアニストとしてニューヨークで活躍していた時に難病ジストニアを発症し、絶望の底を味わった悟平さんは、そこから立ち上がりまた夢をつないでいます。昨年はカーネギーホールの大ホールでコンサートという快挙を成し遂げました。その時、悟平さんが叶えたのは自分の夢だけではありませんでした。
悟平さんのFacebookページにこんな記事が出ています。
不思議な偶然。
昨年、18歳で亡くなってしまったリアム・ピッカー君の残したピアノ曲を、カーネギーホールの大ホールで世界初演をさせて頂きました。
それを機に、彼が生前憧れていた日本で、彼の作品を先月 初演し、今回のツアーで演奏し続けました。
明日、2月14日バレンタインの日に、米国 5チャンネル (セントルイス局)にて、夜10時(セントラル時間)に、僕も出演しているドキュメンタリー番組が、放送されます。
もちろん、カーネギーホールの大ホールでの演奏も、その番組の中で放送されます。
今回、予定より長かった日本滞在、実は先週から格安飛行機のチケットが取れず、停滞してました。
やっと、アメリカに帰れる本日、2月13日。
ふとカレンダーを見たら、リアムの命日でした。
今日で、2周忌。
ご遺族から、「貴方を、家族のように愛してます。貴方の帰国日が 息子の命日です。安全な旅を。NYの家に着いたら連絡して下さい。息子の夢を叶えてくれてありがとう。」と、メッセージが届きました。
ビデオで弾いてるピアノは、実際に彼が生前使っていたピアノです。
彼の死後、このピアノに触ったのは、僕だけだそうです。。。
心から、彼のご冥福を祈ります。
短い一生を終えたリアム君の写真は、今回悟平さんが日本のあちらこちらで演奏するピアノの上に置かれていました。美しい風景や、素敵な人に出会った時にはリアム君の写真を出して日本を見せてあげていた悟平さん。彼がピアノで音を奏でるたびに、夢がかなった少年が微笑んでいるような気がします。