言葉を超えて感じる演劇、「THEATRE MOMENTS」中原くれあインタビュー(上)

中原くれあさん=写真提供・THEATRE MOMENTS

アイディアニュースの購読者の皆様、こんにちは。台湾のフローラです。今回は台湾発の情報ではなく、私の大好きな劇団「THEATRE MOMENTS」(シアターモーメンツ)の取材をさせて頂きましたので、「THEATRE MOMENTS」について、そして6月29日から東京・調布市の「せんがわ劇場」で上演される舞台『パニック』などについて、紹介させて頂きます。

中原くれあさん=写真提供・THEATRE MOMENTS

中原くれあさん=写真提供・THEATRE MOMENTS

「THEATRE MOMENTS」は演出家の佐川大輔さんと、元宝塚歌劇団の中原くれあさんが主宰する劇団です。台詞はもちろん、音楽性、身体表現など、演劇だからこそ出来る全ての表現手段を活用し、観客にシンプルかつダイレクトに訴えかける普遍的作品を生み出し、そして文化、言語の壁を超越した創作を海外に展開するとのビジョンにより設立されたようです。

それでは、「THEATRE MOMENTS」主宰の中原くれあさんのインタビューを掲載します。

――お忙しい中、取材をさせて頂きありがとうございます。いつもFacebookでくれあさんと「THEATRE MOMENTS」のご活躍を拝見しています。くれあさんと知り合ってから20年以上も経ちましたよ。

ありがとうございます! ほんとにね~20年以上か……。すごいね~、嬉しいな~。

――私は、実は真剣に宝塚音楽学校を受けようかなと考えたことがありました。調べてみると!あら!まぁ~、すでに受けられる年齢を超えていました。

Floraさんが宝塚を知ったのは、台湾で高校を卒業した後ですものね。中学校卒業の15歳から高校卒業18歳までが、宝塚の受験資格ですからね~。残念!!!

――そうなんですよ~。日本語学校の時、宝塚の舞台を見てファンになりました。くれあさんにファンレターを出しました。覚えてますか?

覚えてますよ~、というか出会いは、阪急電車の中でしたよね? 話しかけてくれたんですよね!

――阪急三番街でお見かけてして話しかけさせていただいたんです。すみません、当時、日本の「シキタリ」を全く知らなかったので……。でも、くれあさんからご自筆のお手紙を頂けるなんてすごく嬉しかったです。日本に留学中に頂いたお手紙は、今も宝物としてちゃんと保管しています。

ほんとに??? うゎ! ありがたいです!

――早速ですが、今日は取材を通してアイディアニュースの購読者に「THEATRE MOMENTS」の事を紹介したいです。「THEATRE MOMENTS」の事が分からない方もいると思いますので、簡単に紹介して頂けますか?

THEATRE MOMENTSは、1999年に、俳優のトレーニングチームとして、佐川と私が立ち上げたことが始まりです。佐川は今は演出もしていますが、現在も俳優でもあり、私たちの出会いは、劇団俳優座養成所の同期でした。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、「THEATRE MOMENTS」の「言葉を超えて感じる演劇」について、中原さんにさらに詳しくお話をうかがった全文をテキストと公演写真で紹介しています。5月23日に掲載する予定のインタビュー「下」では、「THEATRE MOMENTS」がマカオやメルボルンなどの海外で公演するようになった経過などについて語ってくださったお話の全文を掲載します。

<有料部分の小見出し>

■「あなた自身の心・身体から溢れてくる衝動的なものが観たい!」と

■「MOMENTS」の特徴は集団創作。演出家・出演者全員で話合い、立ち上げる

■2013年にグランプリを受賞した作品『パニック』の再演依頼を受け

■役者はアスリート。稽古では必ず、90分くらいは身体トレーニングを

<THEATRE MOMENTS『パニック』>
【東京公演】2017年6月29日(木)~7月2日(日) せんがわ劇場(東京都調布市仙川町1-21-5)
チケット予約
http://moments.jp/ticket/

<関連サイト>
THEATRE MOMENTS 公式ホームページ
http://moments.jp/nextstage/
せんがわ劇場
http://www.sengawa-gekijo.jp/

※アイデアニュース有料会員若干名様を、THEATRE MOMENTS『パニック』の6月25日(日)16時公演、6月29日(木)19時半公演、6月30日(金)19時半公演に、1人1公演(2枚まで)先着順で無料ご招待します。有料会員がログインすると、この記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは、6月5日(月)です。(このご招待の募集は終了しました)

『終わりよければすべてよし』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

『終わりよければすべてよし』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

※ここから有料会員限定部分です。

■「あなた自身の心・身体から溢れてくる衝動的なものが観たい!」と

――そうですね。宝塚を卒業した後は、劇団俳優座に行かれましたね。

はい。劇団俳優座養成所をやめた後、私たちは、海外の演出家のトレーニングや演出を受けました。そこで目から鱗! 本当に表現すること・創造することの楽しさを知りました。それまで私たちが学んできた演劇は、「これが普通」という型のようなものがありました。ところが私たちが出会った海外の演技術は、もっと自由!

――演劇技術は自由? 自由に発想するでしょうか?

誤解を恐れずに言うならば、「普通なんてつまらない。そんな演技はどこかで観たことがある。想像がついてしまう。もっともっとあなた自身の心・身体から溢れてくる衝動的なものが観たい! より感覚的な表現を!」みたいな。

――わぁ~。心と身体の自由! なんか聞くだけでもすごく難しそう~。

最初の海外の演出家との出会いは、アメリカ人でしたが、セリフだけのストレートプレイではなく、例えば、数名のアンサンブルで、「嵐」という自然状況も、身体表現や音声でも表現してしまう、みたいな。各自が思い思いに、小道具や布や石などを持ってきて、それらを使用し、即興でシーンを立ち上げていくみたいな感じで稽古が進んでいきました。演出家から「こうやって!」なんてアドバイスもありません。「あなたがやりたいと思ったことを見せて! 私を驚かして!」と。

――今、くれあさんの説明を聞いて、心と体も震撼させられました。

なにせ自由でした。想像力と創造力が溢れているというか、大きなセットや照明、音響に頼らなくても、俳優力で、あらゆるものを表現してしまう凄さ、説明的ではなく、感覚的に伝わる表現をそこで学びました。それは言葉がわからなくても感覚的にも伝わる演劇でした。

――セリフで伝わる演劇は観客に「解ってほしい」、体で伝わる演劇は観客に「感じてほしい」と理解してもいいですか?

そうだと思います。「解ってほしい」だと、答えが一つかなと思うのですが、「感じてほしい」だとお客様にとっても答えは一つではないという感覚があります。その後も、フランスやイギリス、ロシアの演出家から、様々な演技表現を学び、それらのいいところ取り?をして、私たちにしかできない演劇を創りたい!そして、海外公演をして行きたい!と思い、2004年にトレーニングチームから、劇団としての活動に発展していきました。

■「MOMENTS」の特徴は集団創作。演出家・出演者全員で話合い、立ち上げる

――それで「THEATRE MOMENTS」劇団を立上げたわけですね。「THEATRE MOMENTS」の特徴はなんですか?

特徴としては、集団創作をしています。テーマから、表現方法まで、全てを演出家・出演者全員で話合い、トライ&エラーしながら作品を立ち上げていきます。セリフはもちろん、身体表現、声での表現、アンサンブルでの表現、また、私たちはオブジェクトと言っていますが、作品によって、何か1つか2つ、日常に身近なもの、例えば、新聞紙であったり、スーツケースだったり、そういうもののみを使用して、色々なものに見立てたり、それらを使って心象表現したり……。あ~~~言葉での説明は難しい!!! そうなんです、MOMENTSの良さは観て頂かないとわからない! だからこその舞台表現! 映像では絶対に体験できないライブ感覚を、味わうことができる! それがMOMENTS!!!なのです!

――本当に素晴らしいです。私も初めて観劇した時にビックリしました。びっくりした上で感動が大きいです。本当に生舞台をみておかないとその感動が分からないと思います。

ありがとうございます! でもね、観て頂ける様にもっと説明が上手くならなくちゃいけないのだけど……Floraさん、いい宣伝文を今度考えてください!!!

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

■2013年にグランプリを受賞した作品『パニック』の再演依頼を受け

――ようやく6月末の公演を発表されましたね。この公演は前回の日本国内公演とは約1年半ぶりの公演ですね。きっとファンの皆さんも「よっ!待ってました!」と思いますが、なぜ、今回は以前に上演された『パニック』という作品を選んだのでしょうか?

実は私たちが選んだ訳ではないのです。今回の公演は、調布市せんがわ劇場から依頼されての公演になります。この劇場は、日本では珍しい市直営の劇場なのです。MOMENTSは今から4年前の2013年、せんがわ劇場演劇コンクールで、グランプリを受賞しました。ありがたいことに、オーディエンス賞と演出賞も同時に受賞しました。その時の作品が『パニック』なのです。そして今回、せんがわ劇場の新しい試みで、グランプリ受賞の素晴らしい作品をもっと多くの方に観て頂きたい!という企画が立ち上がりました。「せんがわシアター・セレクト」と名付けられ、その第一回目に、第4回グランプリのMOMENTSと、第5回グランプリの820製作所という劇団のグランプリ作品が選ばれました。という訳で、グランプリ受賞作品を再演してください!というせんがわ劇場からの依頼で、今回の公演作品が決定したという訳です。

――めちゃすごいじゃないですか? 「せんがわシアター・セレクト」、せんがわ劇場さんの発想も自由ですね。

ありがたいことです!

――今回の再演にあたって、何かの新しいアイデア、あるいは新しい演出がありますか?

基本、大きくは変えないと思います。まだ稽古が始まってないのでわかりませんが。一応、メルボルンフリンジフェスティバルでも、とても良い評価を頂けたほど、相当細かく考えて作り上げてはいます。ですがメルボルンでの再演からもすでに3年は過ぎているので、時代的に少しずれているようなところは、今に合わせて微調整はします。また演技・表現に関しては、さらなる向上を目指します。4年前は、まだ各役者、力が入りすぎていたとも思いますし、役者たちの演技力も、もう少し隙をなくしたいなと。一人一人の役がもっと緻密になることで、やり取りももっと鋭いものになったり、ユーモアが溢れたり、観客の想像力をもっと揺することができるのではないかと。元々この作品は安部公房さんの短編小説を舞台化したものです。なので、40分で駆け抜けます。短時間で、様々な感覚を私たちと一緒に、観客の皆さんにも体感して頂ける様に頑張ります!

――きっと再演の時よりもレベルアップになると思います。

お約束します!!!

■役者はアスリート。稽古では必ず、90分くらいは身体トレーニングを

――私は日本で初めて見た舞台は宝塚歌劇です。日本の小劇場のお芝居を見たことがなかったので、「THEATRE MOMENTS」の公演をみて、本当に衝撃を受けました。なんという素晴らしい表現の力!

ありがとうございます!

――「THEATRE MOMENTS」の舞台の特徴は役者の一人一人の爆発的な身体表現ではないかと思います。豪華な舞台やセットではなく、身近な道具を使ったりしています。一番びっくりしたのは、同じ道具が、いろんな場面に合わせたセットに変身する事です。すごく想像力があり、創新的なんですよ~。役者こそ舞台のセットになったと私は感じました。それを思いついたのは、だれですか? そして、劇団の役者たちの身体表現をどう訓練、或は育成されたのでしょうか。

MOMENTSの大きな特徴は身体表現です。爆発的! そうですね! 海外では、演技トレーニングの中に、身体表現が含まれています。日本では、身体への感覚がとても遅れていると感じています。なので、私たちが海外から学んだような表現をするには、中々日本の俳優さんで出来る人は少なかったのです。ありがたいことに、私の演劇の始まりは、宝塚歌劇団でした。厳しいダンス訓練を受けてきました。退団後、ダンスではなく、より演劇的な身体表現をと思い、佐川と一緒にコンテンポラリーダンスのカンパニーにも所属しました。ケイ・タケイさんという、ニューヨークで活躍されていた方のカンパニーです。ケイさんから演劇に近い身体表現方法を学ばせて頂きました。私が培ったダンストレーニング、そしてケイさんから学んだ身体表現トレーニング、また今も様々な方法を学び、トレーニングに加えています。MOMENTSでは、役者はアスリートだという考え方も持っています。なので、稽古では必ず、90分くらいは、身体トレーニングを行っています。

――90分も身体トレーニングですか!? 私は多分10分でへとへとになる

役者が舞台のセットにもなる……これは、自然にそうなりました。なにせ、余計なものは使わない。ミニマムにすることで、想像力が溢れる表現が生まれる!と。子どもって、ものが何もなくても、想像力で豊かに遊ぶじゃないですか。まさしくそれです。子どものような自由な想像力を使って、遊び心溢れる作品を創りたいと思いました。なので、誰ということなく、自然と、みんなで「ここに椅子が欲しい!」「OK!じゃあ 3人で椅子になろう!」とか。嵐のシーン、「揺れている木が欲しい!」「OK!みんなで嵐の木になろう」。ま、言ってみればお遊戯会です。そのお遊戯会的な発想を、トレーニングした身体、そしてそれをスタイリッシュに見せるためのアイディアを加えていくことで、アート表現にしていくと。ここが本当に難しいところなのですが。いつも時間との戦いでもあります!

――「THEATRE MOMENTS」の役者は個性的な方が多いと思いますが、実際はどうですか?

どうでしょう? でも、一般的な演劇ではないMOMENTSの作品を好きだと言って集まってくるのですから、変な人達だとは思います。MOMENTSで作品を創るって、本当に大変だと思うのです。でも想像すること、創造することが好きな演劇人には、たまらない場所だと。苦労するのを楽しんでいる仲間たちなので、やっぱり変な人達だと思います!

――でも私から見ると、本当に楽しい仲間たちだなぁ~、羨ましいなぁ~と思います。

みんなには本当に感謝しています。

マカオ公演『遺すモノ~楢山節考~』より=写真提供・THEATRE MOMENTS

マカオ公演『遺すモノ~楢山節考~』より=写真提供・THEATRE MOMENTS

※アイデアニュース有料会員若干名様を、THEATRE MOMENTS『パニック』の6月25日(日)16時公演、6月29日(木)19時半公演、6月30日(金)19時半公演に、1人1公演(2枚まで)先着順で無料ご招待します。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは、6月5日(月)です。(このご招待の募集は終了しました)

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