「日本語が分からないのに全部わかった」と海外へ、中原くれあインタビュー(下)

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

台湾のフローラです。私の大好きな劇団「THEATRE MOMENTS」(シアターモーメンツ)の中原くれあさんインタビューの「下」です。「THEATRE MOMENTS」がマカオやメルボルンなど、海外で公演するようになった経過などについて伺ったお話を、紹介します。

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

――ところで、去年、海外でとても活躍されましたね。海外公演についての話もぜひ聞かせてください。

2011年に東京で公演をしているときに、たまたま劇場のそばに宿泊していたマカオのパフォーマーの女性がMONENTSの『雪のひとひら』という作品を観に来ました。彼女は日本語がほとんど分からなかったのに、全部わかったと、感動して涙が止まらないと、終演後に話に来てくれました。

――ステキな出会いですね。日本語が分からなくてもお芝居を見て感動できる! 素晴らしい事です。

彼女がマカオの人達にもMOMENTSの作品を見せたい!と、マカオの演劇界での有名なプロデューサーを紹介してくれ、2012年にその方に会いに自費でマカオへ。そして2013年にマカオフリンジフェスティバルへの招聘が決定。MOMENTSとしては初めての海外公演を実現させました。2013年の『幸福な王子』マカオ公演を縁に、2014年のマカオとメルボルンでの『パニック』公演も招聘して頂き、2016年、11月に『楢山節考』という作品を、12月に『雪のひとひら』を、2017年1月に『生者のための葬儀』という作品、3カ月連続3作品をマカオで公演させて頂きました。

――2013年がマカオ、2014年はマカオとメルポルン、2016年年末から2017年始がマカオ! それはすごいです。 海外で、日本語で公演をするとなると、セリフの翻訳が必要だと思います。例えば、宝塚の台湾公演の時は、「字幕器」が用意されて、セリフ毎に翻訳した中国語が表示されます。その面は苦労されましたか?

そうそうそう! 大変でした! メルボルン公演は日本語・広東語・英語の3種類をMIXしての上演を選びました。その際は英語の字幕を準備しました。この3か国語上演は、メルボルンで音の感じが面白かったと好評でした。が、役者の私たちは、2人が日本人、2人がマカオ、1人が香港だったので、もちろん何度も稽古をしましたが、慣れない言語を聞いてのやり取りになるので、とっても大変であり面白い経験でした。2016年末から2017年始のマカオ公演、3本のうち2本は字幕でした。翻訳はマカオの演劇人で日本に留学していた方にお願いしました。広東語は日本語よりも長いのです。なので、稽古終了後の深夜に、翻訳をしてくれる方と何時間もかけて、編集しました。そして画面ごとの編集も自分でやったり……本当に大変でした。ちなみに、『幸福な王子』と『パニック』は、私と佐川以外は、マカオと香港の俳優をキャスティングしての公演。『楢山節考』と『生者のための葬儀』は、念願の日本人オリジナルキャストでの公演でした。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、中原さんにさらに詳しくお話をうかがった全文をテキストと公演写真で紹介しています。

<有料部分の小見出し>

■初マカオ公演はSkypeでオーディション。『パニック』はマカオと香港の俳優で

■マカオの世界文化遺産である「聖ポール天主堂跡」に野外ステージを設営して公演

■舞台は「愛」。創っているときは地獄でも、終わるとそこに「愛」が溢れている

■自信作の『パニック』再演。ぜひ、せんがわ劇場に体験しにいらしてください

<THEATRE MOMENTS『パニック』>
【東京公演】2017年6月29日(木)~7月2日(日) せんがわ劇場(東京都調布市仙川町1-21-5)
チケット予約
http://moments.jp/ticket/

<関連サイト>
THEATRE MOMENTS 公式ホームページ
http://moments.jp/nextstage/
せんがわ劇場
http://www.sengawa-gekijo.jp/

※アイデアニュース有料会員若干名様を、THEATRE MOMENTS『パニック』の6月25日(日)16時公演、6月29日(木)19時半公演、6月30日(金)19時半公演に、1人1公演(2枚まで)先着順で無料ご招待します。有料会員がログインすると、この記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは、6月5日(月)です。(このご招待の募集は終了しました)

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

『パニック』公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

※ここから有料会員限定部分です。

■初マカオ公演はSkypeでオーディション。『パニック』はマカオと香港の俳優で

――マカオと香港の俳優も一緒に出演されたんですか? キャストはどうやって選定しましたか?

『幸福な王子』の時は、初めてのマカオ公演だったので、Skypeでオーディションをさせて頂きました。『パニック』は、マカオの葛多藝術會(Godot ArtAssociation)という劇団からの依頼公演だったので、そこの主宰である陳飛歷氏がマカオと香港の俳優をキャスティングしました。

――彼らと一緒に公演することについて、如何ですか? 言葉の問題はなかったですか?

言葉の問題は、つたない英語と、お互いに表現者なのでジェスチャーなどでどうにかしました。面白かったのは、言葉よりも文化の違い! 特に『パニック』は日本作家の作品なので、描かれている夫婦のやり取りなどには、どうしたって日本の文化が反映されている。例えば、夫が無断外泊しても、その理由を聞けずにいる妻、とか。でもマカオではそれはあり得ない!と。なぜ怒らないのか?と俳優からも観客からもそんな質問が出ました。本当に面白い経験でした。

■マカオの世界文化遺産である「聖ポール天主堂跡」に野外ステージを設営して公演

――マカオとのご縁は深いですね。

『生者のための葬儀』という作品は、実は2015年にマカオの劇作家である、陳飛歷氏から依頼を受け、彼の作品をMOMENTSが東京で日本人キャストで演出上演しました。その作品を今年1月に、マカオの世界文化遺産である「聖ポール天主堂跡」に野外ステージを設営し、公演しました。この場所で、演劇公演が行われたのは、このMOMENTS公演が初めてとのことです。

――はい、それなんです! 私、その公演の宣伝を見て、マカオ観劇旅行を計画しましたが、スケジュールが合えなくて断念したんです。ほんとに残念でしたが、今年の春節にふらっと行ってきました。聖ポール天主堂跡に行って、くれあさん達はここで公演したんだ!と想像しました。

本当に残念でしたが、おかげさまで、マカオではMOMENTSは有名らしく、現地のテレビ局の取材を受け、30分の特番番組を放送して頂いたり、新聞の劇評でも大変高い評価を頂きました。またそれを縁に、もしかしたら、今年マレーシアでの公演や、来年、香港での公演へと繋がっていくかもしれません。

――日本初、マカオからアジアに展開する感じですね。

もちろん、Floraさんのいる台湾での公演は、私の昔からの夢です!

――ものすごく台湾に来て頂きたいですよ~それも私の夢です。この劇場で公演をやれればいいし、日本人小学校に『幸福な王子』、私はずっと見たくてもスケジュールが合えなかった『雪のひとひら』をみたい……。あ、すみません一人の世界に入ってしまいました。

本当にそう言って頂けて嬉しいです。ちょうど先日も、マカオの文化局から2019年度の公演のご相談を頂きました。その時にでも、アジアツアーを組んで、台湾にも行きたいなーーー!でもその時は、『雪のひとひら』ではないかな。すでに昨年マカオで上演してしまったから……。台湾でも『雪のひとひら』も『幸福な王子』もやりたいな~~~!

――台湾公演はぜひ実現してください。翻訳と通訳作業、宣伝作業は私に任せてください!

よろしくお願いします!!!

マカオ公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

マカオ公演より=写真提供・THEATRE MOMENTS

■舞台は「愛」。創っているときは地獄でも、終わるとそこに「愛」が溢れている

――硬い話になりますが、「THEATRE MOMENTS」にとっての舞台観はなんですか?

難しいな~~~。創り手の魂が洗われるところであり、表されるところ。そしてできるならば、観客の魂とふれあい、共振できる場所でありたいなと。また創り手、観客ともに、互いに、新たな発見があるところでもありたいな。生活していく上では必要ないものだけど、生きていく上では必要なものでありたいな。これはMOMENTSのというよりも、私個人の舞台観だと思います。

――今回の公演『パニック』を経由して、お客さんに何かを伝えたいですか?

世界の未来・日本の未来・己の未来……どこへ向かいたいのか? なんて、固そうですが、ユーモア溢れる、ドキドキする作品です。作品って、観る方一人一人の人生経験、またその時のタイミングでも感じることが多様だと思います。なので、好きに感じ取ってください! 正解はありません。好きに想像し、40分間、現実逃避してください!

――演劇も正解なんてないですね。同じセリフでも観る側が感じる事が違うんですよね。

本当にそうです。好きに観て頂けたら嬉しいです!

――では、くれあさんにとっては、舞台はなんですか? 舞台に対する期待はなんですか?

先の質問の演劇観と同じかな。さっきの答えがMOMENTSの答えだったらよかったのですが、あえて違う答えを言うならば、私にとって舞台は「愛」です。創っているときは、地獄のように大変ですが、終わってみると、そこには「愛」が溢れているのです。また頑張ろうという気持ちになります。

――「愛」!!

観たお客様にも「舞台」を観ることで、生きるエネルギーになることを期待します。

■自信作の『パニック』再演。ぜひ、せんがわ劇場に体験しにいらしてください

――いま、くれあさんの「生きるエネルギー」との言葉を聞いて、311の東日本大震災思い出しました。大地震の後、「THEATRE MOMENTS」は震災地にもたくさんの活動を行いましたね。

はい。震災以前から福島で毎年、市民の方や高校生に演劇のワークショップをしていました。たくさん友人がいます。被災地に住んでいるわけではないけど、友人がいたおかげで、震災の現状をメディアからだけではなく、生で聞くことが出来ました。その友人に力を貸してほしい、MOMENTSの『雪のひとひら』を福島でボランティア公演をしてもらえないか?と相談され、即決しました。東京でMOMENTSを応援してくださっている方が資金を援助してくださり、震災の翌年の1月に、福島県内3か所で公演させて頂きました。震災から約1年過ぎていても、震源に近い場所では、劇場も復活していなく、ショッピングセンター内に仮設の空間を作り、そこで公演しました。お買い物に来た方が思わず見入ってくださり、終演後に抱き合って泣きました。「震災以来、頑張ってきた。泣いちゃいけないと思っていた。でもこの芝居をみて泣いた。泣きたかったんだと気が付いた。本当にありがとう」と。

――わかります。こんな大変な時期にお芝居なんてみられないと思う方もいますが、でも、そういう時こそ人々に勇気や愛を与えられる物が必要ですよね。

はい。台湾の方も、震災などがあると、いつも日本のために色々と支援をしてくださっていますよね。本当に心から感謝しています!ありがとう!!!

――台湾も1999年の9月に大きい地震がありました。その時、日本の救助隊が一番に駆けつけてくれて、救助活動または日本からたくさんの寄付金も頂きました。その時の恩返しとして、台湾人は応援に動き出しました。台湾ほど日本の事が大好きな国はないと思います。台湾と日本とずっと仲良しにしてほしいですね。

そしてこれからもよろしくお願いします!

――最後になりますが、6月の公演『パニック』のアピールをもう一度お願いします。

第4回せんがわ劇場演劇コンクールにおいて、「グランプリ・オーディエンス賞・演出賞」を受賞。その後オーストラリアのメルボルンフリンジフェスティバルでも高評価された『パニック』! MOMENTS自信作の再演です。このインタビューを読んで「えっ?どんな舞台なんだろう?」と思ってくださった皆様、ぜひせんがわ劇場へ! MOMENTSの舞台を体験しにいらしてください。劇場でお待ちしております!

――ありがとうございました。

「せんがわシアター・セレクト」公演ポスター=写真提供・THEATRE MOMENTS

「せんがわシアター・セレクト」公演ポスター=写真提供・THEATRE MOMENTS

※アイデアニュース有料会員若干名様を、THEATRE MOMENTS『パニック』の6月25日(日)16時公演、6月29日(木)19時半公演、6月30日(金)19時半公演に、1人1公演(2枚まで)先着順で無料ご招待します。有料会員がログインすると、この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは、6月5日(月)です。(このご招待の募集は終了しました)

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