浦井健治さんインタビュー後半です。『ペール・ギュント』は、浦井さんが演じるペールが、「普通であることが一番大事」だと気づく物語。浦井さんにとって「普通」とは、さらに有料部分では、役を生きることで役者の中に残っていくものについてなどを伺いました。
――人によって「普通」って難しいと思うんです。人生それぞれで、例えばファンの方や観客側から見れば、浦井さんが「普通である」という感覚って難しいと思うんですよ。だけど、ご自身の中ではもちろんそれが普通ですよね。その辺の「普通である」というニュアンスの違いを埋めるのは難しくないですか?
そうか……そうかもしれないですね。カメラの前に立つ、映像、テレビで何か発言している、雑誌に載る、板の上に立つ、普通に生活をその場で覗き見して頂くようなことも、もちろん素人ではないから、プロなんだからという所ではもう普通じゃないですよね。けれど、それを生業としているのであれば、普通に生活している人の代弁者とは言わないけれども、文化に寄り添い、地域に寄り添い、時代に寄り添う……世田谷パブリックシアターさんみたい(笑)。
(一同笑)
そういう風に思うと、「普通であること」が発信する中での役割というスタンスであれば、プレイヤーとして普通であることは、人間として普通であることなんじゃないかと思います。例えば常識から外れた役ならば、少し不思議な雰囲気が求められることもあるかもしれませんが、普通の役を演じられる役者として、もしくは新しい表面、側面を常に見せていくことが出来る、そう調理して頂けるならば、フラットに普通の感覚を研ぎ澄ましていくことが近道なんじゃないかなと。そういう意味では、自分の中で「普通」というのは「普通に生活すること」「普通に人間としてあること」という所に、今はいると思います。
――色々な役の人生を生きていくと、きっと自分の中に何か残っていきますよね。『ペール・ギュント』のように長い人生を演じたり、半生や、短い数日間を演じるお芝居もありますが、たくさん演じてきた役のそれぞれの人生って、浦井さんの中にどんな風に残るものなんですか?
すごい質問ですね。
――(笑)。
役者の中身を分析すると、本になるんじゃないかと思っているんです。それは役者になりたい次世代の人が教材として読むと面白いと思いますし、今井(朋彦)さんが「言語学の領域」という本の著者の一人として、役者が台詞を覚える時にどういう変化が起こっているのかをかなり明確に文章として書いているんです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、浦井さんが成河さんと話した「理想」などについて語ってくださったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■役者は十人十色。全く残らない人もいるし、全部残ってしまって大変な人もいる
■たまたま「これ観てみようか」と入ってこられて、「良かったね」となるのが理想
■趣里がその場で起こったことをきちんと受け止めてくれるのは、とても大きい
■ヤンさんが人生をかけた作品を「浦井で」と思ってくださったことに、全力で応えたい
<『ペール・ギュント』>
【東京公演】2017年12月6日(水)~12月24日(日)世田谷パブリックシアター
【兵庫公演】2017年12月30日(土)~12月31日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
<関連リンク>
世田谷パブリックシアター『ペール・ギュント』のページ
https://setagaya-pt.jp/performances/201712peergynt.html
兵庫県立芸術文化センター『ペール・ギュント』のページ
http://www1.gcenter-hyogo.jp/contents_parts/ConcertDetail.aspx?kid=4292412353&sid=0000000001
浦井健治オフィシャルファンクラブ”Kopi-Luwak”
https://www.fanclub.co.jp/k_urai/?id=8
浦井健治&STAFF Twitter
https://twitter.com/kenji_staff
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※浦井健治さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月2日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■役者は十人十色。全く残らない人もいるし、全部残ってしまって大変な人もいる
――そうなんですか。読んでみたいです。
面白いですよ。そういう風に文字にすると面白いくらい、役者は十人十色だと思うんです。役が全く残らない人もいるだろうし、全部残ってしまって大変な人もいるだろうし、切り替えが上手い人、下手な人、切り替えたくない人……色々いると思いますけど、自分は改めて考えてみると、残っているんですよね。残っているがゆえに、先日(平方)元基に言われたのが「仙人」。
――仙人?
何か悟っている「仙人」。それはもしかしたら、そういう役を演じた片鱗かもしれませんが、自分で意識して残していた訳ではなくて。でも、それをずっとやっていると、自分の滅びてしまう部分というか、擦りきれてしまう部分もあると思うんです。役者って何だろうと考えるのは、人間について考えるということと通じる気がします。そうであれば、鵜山(仁)さんがおっしゃってくださった、「全ては人間が意識しているものであって、そこを意識していなければ無である。意味を持たせるから存在する」というところに行き着くのではないかと。そういう方向に自分を分析していくことになるんじゃないかと思います。
■たまたま「これ観てみようか」と入ってこられて、「良かったね」となるのが理想
――『ペール・ギュント』を読んでいると、人間の本質などを考える方向へどうしても行きますよね。
そうだと思うんですよね。
――芝居が好きな方って、多分考えることが好きだと思うので、生きることや自分探しを常にしている方が結構多いと思うんですよね。
だから僕は今、ちょっとどう見えるのかなと思っていることもあって。『王家の紋章』や『デスノート THE MUSICAL』を、原作ありきで見てファンになってくれた方が、「『ペール・ギュント』も観にいきます!」と言ってくれるんですが、どういう風に観てくれるんだろうかと。ミュージカルが好きな方は、「音楽が好き」「癒されたい」「声が好き」「あの雰囲気がいい」「煌びやかな世界が好き」など、それぞれに色んな理由があると思うんですよね。それも大正解だし、どんな見方をしたって、エンタメなんだから楽しんで頂ければ、それでいいんです。
でも先日、成河と話していたのが、東京から離れた場所で公演をすることになった時に、その地域の老夫婦が、その日にたまたま劇場の前を通って、「これ観てみようか」と入ってこられて、「感動した。良かったね」となるのが理想だねと。
舞台を見るのに「この役者さんが出ているから」「こういうシーンが見られるかも」という理由ももちろんありです。けれど、様々な演劇やミュージカルの垣根がなくなってきていて、さらに2.5次元というジャンル分けもある中で、スタッフさん、キャスト、お客様、全員で一生の思い出として残る実りのある時間が、舞台の最大の魅力だと思うんです。
――一期一会ですね。
どんな舞台を見るのかも一つのチョイスですし、誰々が好きだからこの作品を見るというのも素敵なチョイスです。僕だってあの方が出ているから見たい!と思う時もあります。どんなチョイスが正解かなんて分かりませんが、ただ、今の僕はファンの皆さんが応援してくださるところに、有難いことにいられて、本当に感謝しています。でも、役者であり、ただのプレイヤーなんですよね。そこは肝に銘じてやっていけたらと思います。
■趣里がその場で起こったことをきちんと受け止めてくれるのは、とても大きい
――共演者の方についてもお伺いさせてください。今とても勢いのある趣里さんがソールヴェイ役というのも楽しみです。
そうですね! とにかく語り続けるペールに対して、ソールヴェイはあまり自分の心情を語らないミステリアスな存在なんです。
――韓国で上演されたときの舞台映像を拝見すると結構出て来ますよね。
出て来ますし、ペールにとって一番重要な役ですね。ペールというかすべての人にとって一番重要な存在なのかな。
――趣里さんと共演で楽しみなことや期待はありますか?
趣里が「早く『ペール・ギュント』を一緒にやりたい」と言ってくれていて。グミ友としては……(笑)。
――(笑)。
同じグミが好きな者同士すぐ意気投合したんです。趣里はお芝居が大好きで、全てにおいてまっすぐで、永遠の少女と言っても過言ではない女優さん。その場で起こったことをきちんと受け止めてくれる彼女への信頼感とともに、僕もきちんと受け止めなければいけないと思っています。趣里がいてくれるというのは、僕にとってとても大きいです。
――母親役のマルシアさんとのシーンも楽しみですね。
そうですね。切ない場面もありますが、楽しみです。
■ヤンさんが人生をかけた作品を「浦井で」と思ってくださったことに、全力で応えたい
――切ないことがたくさんありますよね。色々な感情が沸き起こる作品だと思いますが、最後に楽しみにされているお客様にメッセージをお願いします。
日韓文化交流企画として、世田谷パブリックシアターさんの20周年のラインナップの一つに取り上げて頂いているこの『ペール・ギュント』。ヤンさんが演劇を始めたころ、実のお母さんに「いつか『ペール・ギュント』をやってね」と言われたのがきっかけだったそうです。そのぐらい人生をかけて、ずっと温めているヤンさんの『ペール・ギュント』を、今回「浦井で」と思ってくださったことに、全力で応えていけたらと思います。
ペールは本当にダメダメな男だし、いつも逃げてばかりだし、女たらしのように見えるかもしれないですが、いつも自問自答していて……というペールの愛らしさとともに、自分探しの旅を一緒にして頂きながら、「人生って何だろうな」とも感じて頂けたら嬉しいです。 もちろん、ただ単に「楽しかった」でもいいので、ぜひともこの世田谷パブリックシアターでクリスマス、兵庫県立芸術文化センターで大晦日という年の瀬を過ごして頂けたらと思います。
※浦井健治さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月2日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
浦井健治さんのインタビュー上・下を楽しく読ませていただきました。浦井くんの人柄が出ているとても暖かな感じがしました。写真もとても素敵です。ありがとうございます。舞台「ペール・ギュント」の公演がより楽しみになりました。
制作発表での浦井さんのご挨拶やこのインタビュー記事での、とめどなくあふれる、お稽古の様子や作品への想いから、いままで観たことのないような、観劇したなかで最高の作品になるのではないかと期待が高まっています。
この一年や、いままでの人生を振り返る濃い体験になりそうで楽しみにしています。
浦井さんから「すごい質問ですね」と言われる質問を投げかける岩村さんが素敵です(笑)
様々な問いかけから、ペール・ギュントに関する解釈だけでなく、役者としての思いも聞けて、とても充実したインタビューを読ませていただきました。
たくさんの写真も、様々な表情を見られて嬉しかったです。
素敵な記事をありがとうございます!
浦井さんのお芝居、舞台、ミュージカルに対する想いがとてもよく伝わり、本当に素晴らしい役者さんだと、改めて魅力を感じることができました。
ペール・ギュント。
インタビュー記事を読み、ますます楽しみでなりません!早く見たいです!!
浦井くんのインタビューはいつもぶれない。そして作品を楽しみにさせてくれる力があります。私の持っているペールギュントの作品イメージをどうかえてくれるのか楽しみにしてます
ペール・ギュント。
音楽としてしか知らなかった世界に出会える。
浦井健治さんで。
ワクワクがとまりません。
ヤンさんの演出も楽しみです。
素敵な写真と深いインタビュー、ありがとうございます!
浦井くんの言葉ひとつひとつが心に響きました。
ペールギュント・・実は、どんな舞台になるんだろう?苦手分野だったらどうしよう・・と、少し不安に思うこともあったんですが、今はもう期待しかないです。
アルカディア以来の趣里ちゃんとの共演も、とても楽しみです。
哲学的な内容で、読み応えがありました☆
浦井君がこれまで生きてこられた年数分の経験や精神が 、それぞれの役にギュッと凝縮されるので、どの舞台も楽しみに拝見しています☆彡
凄くふかいところまで突っ込んで下さって、非常に読み応えがある記事でした!
ありがとうございます。浦井さんの真摯な回答にも、ちょっとしたユーモアにも感服です。素晴らしいインタビューありがとうございました!
王家の紋章の舞台で舞台の素晴しさ、浦井さんのファンになった一人として、今回の記事とても興味深く、ますます浦井さんの魅力の一端を垣間見せていただけたような気がします。
仙人、と周りの方々にも思われるほどすごい存在なんですね。
素敵な魅力溢れる記事とインタビュー、写真をありがとうございます。
昨日に続いてインタビュー下興味深く読みました。本当に浦井君の色々な面が知れて幸せです。
「仙人」 これほどまで浦井君に似合う形容詞ないかもと思うほど、興味薄れないもっともっと浦井君の新たな一面知り続けていきたい、一緒に芝居を通じて旅をし続けて生きたいと思う人だと再認識しました。
12月のペールギュント 今回の上下インタビュー読んで、浦井君と一緒に謎に満ちた自分探しの旅が益々楽しみになりました。
浦井健治さんのペールをちょっと想像できて大変興味深い記事でした。質問が鋭くそれに対し言葉を選んで誠実に答える役者 浦井健治さんの人としてのあり方、作品を大切にする心、仕事への真摯な姿勢、情熱を感じました。とっても好感を持ちました。またペールを纏った写真も素敵で作品への期待に繋がりました。
昨日から楽しみにしていた後半!読み応えがありました。
“普通”に切りこんでくださったり、何役も纏ってきた浦井さんの内面のことだったり、演者としての心構えを知ることが出来ました。
幕開けが待ち遠しいです。
よいインタビューをありがとうございました!!