2017年10月24日(火)~30日(月)まで世田谷区砧にあるギャラリーパウパッドで開催されていた『やさしいねこ』写真展、最終日に駆けつけました。念願だった写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』が出版されてとても嬉しいと語る著者・太田康介さんのインタビューをお送りします。争いが嫌いで、他の猫にごはんをゆずるやさしい野良猫ぽーを、仕方がないとはいえTNRで去勢してしまったことを「痛かったろう、こわかったろう」と悩む太田さんもまた、やさしい人です。
太田康介さんは報道カメラマンとして、ボスニア・ヘルツェゴビナやアフガニスタン、カンボジア、北朝鮮などを撮影してこられました。また、飼い主のいない猫たちが地域猫として受け入れてもらえるようTNRにも尽力。2011年の東日本大震災以降は、福島の原発周辺に取り残された家畜やペットの写真を撮り、本を出しています。現在も福島に2週間に一度のペースで通い、TNRと給餌活動をしている太田さんの動物へのまなざしは本当に優しくて、その写真からも愛情が伝わってきます。TNRとは、T:Trap 捕獲器などで猫を捕まえる、N:Neuter 不妊手術をほどこす、R:Return 元いたところに戻す、の頭文字で「地域猫活動」ともいわれています。リターン後も、えさやりや、健康観察などを続けて地域の猫として見守る活動です。
――ぽーちゃんが、太田さんにとって初めてTNRをした猫ということですか?
そうなんです。捕獲器を使うのも初めてでしたね。ぽーはすぐ捕獲機に入ってくれて、病院でオスだと分かったんです。初めてのことで、まだ勝手が分かってない頃だったので、傷口がひらいたらダメだと思って、去勢手術後、1週間くらい家に置いたんですが、ニャーニャー大騒ぎでした。
――ぽーちゃんは、野良猫さんの中でも最初から目立っていたんですか?
いや、たまたまですね。2009年までは自分の猫を可愛がるばっかりだったんですけど、外猫たちの過酷な環境に目をむけるきっかけがあったんです。護岸工事で住むところのなくなった多摩川の”河原猫”を世話する方と出会ったんですが、その活動に参加しながらも、よく考えると、うちの回りにもそういう猫がいるじゃないかと思ってね。ぽーが近所の公園にいたもんで、よし、こいつにしようと。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、今を時めく漫画『夜廻り猫』(深谷かほるさん著、講談社刊)に、ぽーちゃんが登場するきっかけなど、太田康介さんインタビュー後半の全文と、太田さん撮影のぽーちゃんの写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■手術して放したからには、えさをちゃんとやんなきゃダメだと思いました
■ぽーは町内最弱。他の猫が来たらえさ取られるし。しょっちゅう怪我をして
■一番怖いのは、ぽーがいなくなってしまうこと。それが心配で心配で…
■うちでも先住猫にいじめられ…。1年半か2年くらいして、受け入れてくれた
<写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』>
著者:太田康介
出版社:扶桑社
発売日: 2017/10/18
単行本(ソフトカバー): 112ページ
ISBN-10: 4594078346
定価:1,188円(1100円+税)
<関連リンク>
太田康介さんブログ「うちのとらまる」
http://uchino-toramaru.blog.jp/
Amazon販売ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4594078346/
ギャラリーパウパッドブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/gallerypawpad
- 猫専門のお手伝い屋さん「ねこから目線。」開業2年、小池英梨子さんインタビュー 2020年12月9日
- 多摩川河川敷を舞台に、猫を守る3人のおじさんと猫の物語『おじさんと河原猫』発刊 2020年10月17日
- 「『夜廻り猫』と深谷先生にすごく感謝しています」、太田康介インタビュー(下) 2017年11月14日
※写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』をアイデアニュース有料会員3名様に抽選でプレゼントします(うち1冊は太田さんのサイン入りですが、どれが当たるかは選べません)。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月27日です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、よろしくお願いいたします。
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■手術して放したからには、えさをちゃんとやんなきゃダメだと思いました
――では、ぽーちゃんは偶然出会ったTNR一匹めの猫ということですね。
そうなんです。性格のいい子でね。見てる間に捕獲器に入ってくれて。手術後1週間たって、近所の公園で放しました。手術して放したからには、えさをちゃんとやんなきゃダメだと思いました。手術しっぱなしじゃね。だから、家のそばで放したら「ここはやばい」と思って来なくなったら困るので、公園に行ったんです。案の定、公園がやばいんだと思ってぽーはうちにえさをもらいに来るようになりました。公園とわたしの家が、ぽーのテリトリーの端と端って感じでしたね。
――すぐなついてくれましたか?
最初は僕の顔見たらターっと逃げてましたけどね。公園と家の中間くらいに、”おばあちゃんの家”とか、えさをくれる人のところがあって、そこでご飯食べてる姿を僕は写真を撮ったりしてましたね。だんだん、ぽーが家にも来るようになって、えさをやってました。
■ぽーは町内最弱。他の猫が来たらえさ取られるし。しょっちゅう怪我をして
――地域最弱、でしたっけ?
町内最弱ですね。他のオス猫が来たらえさ取られるし。背中の毛がむしられて、しょっちゅう怪我をしてましたね。やりかえすなんてことはなかったです。去勢手術をしたことで余計弱くしてしまったかもしれないですね。
――なるほど。でも、もともと性格はやさしそうな感じですよね、見るからに。
そうですね。ぽーは他の猫のことが大好きなんですけどね、近づいてはシャーって言われてましたね。ぽーとつきあったのは、外猫時代が3年、うちの子になってから3年なんですけど、その外猫3年の時代にいろんなオス猫がやってきて、ぽーをいじめるんですよ。ぽーが2~3日来なくなるっていうのが何回かあって。
■一番怖いのは、ぽーがいなくなってしまうこと。それが心配で心配で…
――心配ですね。
ええ、一番怖いのは、ぽーがいなくなってしまうことで、それが心配で心配で。1週間いなくなった時には、近所の人に声かけて、見かけたら教えて下さいってお願いしました。また来るようになっても冬場なんか寒そうなのが可哀そうでね、また他のオスが来ていじめてるし。あんまりいじめられて、テリトリーを移動してしまってぽーがいなくなったらというのが一番心配でした。2年半くらいで、ようやく触れるようになってましたから、「うちの子になるか」ってことで、家にいれたわけです。
■うちでも先住猫にいじめられ…。1年半か2年くらいして、受け入れてくれた
――「うちのぽー」になったんですね。
そうなんですけど、うちに入れたら入れたで、また先住猫の「とら」にいじめられて。半年くらいは外を見ては鳴いて、そこらへんにおしっこしまくって。それがだんだんおさまって、1年半か2年くらいしてからかな、とらがやっと受け入れてくれるようになったんです。この写真がぽーの人生で一番幸せな頃の写真ですね。ほかにも、「まる」や「しろ」がいたんですけど、ぽーはとらが大好きだったんです。
――それはぽーちゃん、嬉しかったでしょうね。大好きな先輩に認められて。
はい、こうやって一緒に寝られるようになって、幸せそうでしたね。この後、保護してきた「マーラ」とか、後から来た保護猫たちをぽーは一生懸命世話してくれたんです。とら、まる、しろは、お互いにしか興味がなかったんですけど、ぽーは子猫たちのことをよく面倒みてくれてました。マーラは、里子に出てるんですけど、ちょっと失敗して帰ってきた猫で、人間不信というか、人間が怖いみたいになってしまったんです。それをぽーが癒してくれてましたね。栃木の牛舎にいた子猫の「エル」とか、近所でひとりでいた「はな」とか、ぽーはよく可愛がってくれました。子猫たちもぽーが大好きで。
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