写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』を出版された太田康介さんのインタビューの後半です。人気漫画『夜廻り猫』(深谷かほるさん著、講談社刊)で、太田さんとぽーちゃんが取り上げられた経緯などについて伺いました。
――『夜廻り猫』の漫画は私も知っていたのですけど、太田さんとぽーちゃんが取り上げられて漫画になって、というのはリアルタイムでは知らなかったです。
そうですね。『夜廻り猫』は、Twitterで連載しておられたんで、始まって3、4ヵ月くらいで気が付いたんです。読み始めたら、第60話過ぎくらいかな、5話連続で描かれている話がすごく良くて、感動したんです。子猫の重郎が登場した回なんですけどね。もう映画一本見たくらいの気持ちになって、あまりにも良かったんで、深谷先生に感想を書いて送ったんです。そしたら喜んで下さってね。
筆者注:太田さんが感動したのは、『夜廻り猫』第1巻の68話から72話にかけて描かれた物語。涙の匂いをたどって心に寄り添うためにやってくる夜廻り猫こと遠藤平蔵が、ある夜助けたのは、鳥に片目を奪われて命が尽きようとしている子猫。子猫を抱えては動きが取れず、縄張り争いが勃発する。平蔵を助けるのは同じく片目の孤高の猫・ニイと、伝説の長老猫・重郎。みんな生き延びた喜びの新年会で、子猫に「親も目もなくしてもおまえは生き抜いた。そして誰も殺していない。なんと美しいことだろう」と語りかける重郎は、子猫に自分の名前「重郎」を与えた。
――そこからなんですね。
はい、そのうち、何かのことで僕が福島のことをやっているってことも知ってくださって。深谷先生は福島の方なんですね。それで関心を持ってくださって、最初に出た『夜廻り猫』の本のカバーの裏に、ぼくの写真集『のこされた動物たち』『待ちつづける動物たち』『しろさびとまっちゃん』を絵で描いてくださったんです。
――わ~、嬉しいですね、すごいですね。
青山で個展をされたときに初めてお会いして、サインいただいたりしてね。そのあと、伊勢丹の相模原店の企画で、「読者のみなさんの飼い猫とか飼い犬のエピソードがあったら、寄せて下さい。抽選で夜廻り猫の漫画にします」というのが始まったんです。誰でも応募してよくて、だから、僕はぽーの話を書いて送ったんです。それが採用されて、まず一話が出来たんです。
筆者注:太田さんが応募したのは、伊勢丹相模原店の初売り企画「夢袋 夜廻り猫登場権」で、これに採用されたことを喜ぶ太田さんのブログにはこう書かれていました。
内容は2年前に亡くなった
私のTNR第一号の ぽーのエピソードでした
やさしい猫だった ぽーを
深谷先生はみごとに再現して描いて下さった
そして
飼い主の気持ちも考え救ってくださる内容でした
感動感謝 お礼の言葉もありません
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、太田康介さんインタビュー後半の全文とともに、写真展会場に飾られていた太田さんのお連れ合いの言葉などを紹介します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■『夜廻り猫』に登場したぽーが、すごく可愛いかった(笑)。すごい人気が出て
■もう、お腹を減らしてるっていうのに一番反応するんです。それがかわいそうで
■太田さんにTNR活動を教えてくれた今はもうこの世にいないやさしいねこ・ぽー
■ぽー、ごめん。君は最強だった。だから「やさしいねこ」になれたんだね
<写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』>
著者:太田康介
出版社:扶桑社
発売日: 2017/10/18
単行本(ソフトカバー): 112ページ
ISBN-10: 4594078346
定価:1,188円(1100円+税)
<関連リンク>
太田康介さんブログ「うちのとらまる」
http://uchino-toramaru.blog.jp/
Amazon販売ページ
https://www.amazon.co.jp/dp/4594078346/
ギャラリーパウパッドブログ
https://blogs.yahoo.co.jp/gallerypawpad
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- 多摩川河川敷を舞台に、猫を守る3人のおじさんと猫の物語『おじさんと河原猫』発刊 2020年10月17日
- 「『夜廻り猫』と深谷先生にすごく感謝しています」、太田康介インタビュー(下) 2017年11月14日
※写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』をアイデアニュース有料会員3名様に抽選でプレゼントします(うち1冊は太田さんのサイン入りですが、どれが当たるかは選べません)。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月27日です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、よろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■『夜廻り猫』に登場したぽーが、すごく可愛いかった(笑)。すごい人気が出て
――『夜廻り猫』にぽーちゃんと太田さんが初登場したわけですね。
そうなんです。そのぽーが、すごく可愛いぽーだったんです(笑)。ホントですよ。すごい人気が出て、それを見た出版社の知り合いが、ぽーの本を出す話をもってきてくれたわけです。今回の『やさしいねこ うちの ぽー』にはその時の漫画と、描きおろしの一話とで、ふたつ、深谷先生の漫画が載っています。
■もう、お腹を減らしてるっていうのに一番反応するんです。それがかわいそうで
――私にとって、太田さんと言えば福島の猫たちのことをされている人というイメージだったんです。でも、初めて福島に連れていっていただいたときに、地域猫の話をお聞きして、まさにぽーちゃんから始まったTNR活動をしていたからこそ、のこされた動物たち、福島の猫たちが気になって仕方がないというふうになったわけですね?
はい、もう、お腹を減らしてるっていうのに一番反応するんです。それがかわいそうで。だから、このぽーも、「来たからには死ぬほど食え」と。
――だからかぁ、ぽーちゃん、家猫になってちょっと太ってますねぇ(笑)。でも、最初はやせ細ってたわけでもないですよね?
そうですね。ぽーはそんな太ってもいなかったけど、やせてもいなかったですね。まあ、えさくらいね、たくさん食べて元気出せと。特に冬なんか、寒いわ、ひもじいわじゃあ、大変じゃないですか。その延長上に福島の餓死している動物たちのことがあるわけですね。
――今も2週間に1回、福島に行かれてるのですよね。猫の餌場とか、何か変わってきましたか?
人はまだ全然帰ってきてないんですけどね。猫好きの人が帰ってきて、「猫のえさが残ってるかどうかチェックするよ」なんてことになったらね、いいなあと思ってるんですけど。えさが足りなくなったらこっちで支援しますよって言えるし。私の活動の終わりは、福島の人が自分らで猫の面倒を見てくれるということですから。
――ぽーちゃんの本を出されて、今までの本と比べて何か特別だなあと思う点はありますか?
ぽーの本は実はもう、ずっと出したかったんです。2011年くらいにはもう出したくて、自分でサンプルを作ったんです。タイトルも決まってました。
――そうでしたか。自家版、私家版『やさしいねこ』ですね。
そうです。それを持って出版社を回ったんですけど、ダメで。でも、いつかは出すぞと思ってました。
――やっぱりぽーちゃんは特別でしたね。
TNR第一号ですからね。ぽーに教えてもらったんです。やり方を。まあ、いろんな特別な子がいますけどね、「とら」と「まる」は猫の素晴らしさを教えてくれたし、「しろ」ほど僕のことを好きになってくれた猫はいませんしね。「レオーン」は明るい性格で、家の中を明るくしてくれますし、「マーラ」は里親さんのところで失敗して苦労かけたんで、家でゆっくりしてもらって、いつか膝の上に乗っけたい猫ですね。みんな特別なんですけど、ぽーは私のTNR活動の原点として、本にしたいと思ったんです。
――じゃあ、ぽーちゃんの本が出て、嬉しかったですね。
もちろん、もちろん。『夜廻り猫』と深谷先生にすごく感謝してるんです。
――漫画ってすごいですよね。
すごい!でも、漫画ってなんでも当たるわけじゃないから、やっぱり『夜廻り猫』は格別すごかったんですね。
■太田さんにTNR活動を教えてくれた今はもうこの世にいないやさしいねこ・ぽー
太田さんにTNR活動を教えてくれた今はもうこの世にいないやさしいねこ・ぽーの物語は、フォトグラファー太田康介さんの写真と、深谷 かほるさんの漫画『夜廻り猫』の中に、今も息づいています。写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』を、ぜひ手に取ってください。弱虫だけど、やさしくて、だから太田さんにとって最強だった猫にいつでもまた会えますから。
写真展には、ぽーの写真と並んで、最初にお連れ合いの太田あきこさんの言葉、最後に太田康介さんの言葉が飾られていました。
■ぽー、ごめん。君は最強だった。だから「やさしいねこ」になれたんだね
最後に太田さんの言葉の後半を引用します。
TNRするために捕獲したこと、病院へ連れて行き、手術されて痛い怖い思いをしたこと、ケージに閉じ込められて不安な思いをさせたこと。彼にとってはどれもこれも初めてのことで、たいそう怖い思いをしたのだろうと思いますが、このマイナスの記憶に上書きできるほどの良い記憶を持たせることができたと、私は思ってい…
は?
なんだって!?
今ここまで書いていて思いました。偉そうに「良い記憶を持たせることができた」だと?ぽーが去勢手術されリリース後に、勇気を出してうちにご飯を食べに来てくれたこと。ぽーが他の猫たちに虐められながらも、うちを捨てなかったこと。ぽーが望んだわけでもないのに家の中に入れられて、とらに虐められながらも耐えて時間をかけて受け入れてもらったこと。そして次々と私が保護してやってくる子猫たちを可愛がってくれたこと。全部、ぜーんぶ、ぽー自身の意思で、頑張って居場所を勝ち取ったんじゃないか。ケンカは町内最弱でも、ぽーはこんなにも心の強い子だった。私が無理やり環境を変えてしまったけれど、それを受け入れ、そこで生きるために努力してくれた。
ぽーは強かった。強いから優しくなれたんだと思った。写真集を作っているときも気づかなかったことを、いま改めてきづかされました。
ぽー、ごめん。君は最強だった。だから「やさしいねこ」になれたんだね。やっぱり君には謝るしかない。
ごめんね。
太田康介
※写真エッセイ『やさしいねこ うちの ぽー』をアイデアニュース有料会員3名様に抽選でプレゼントします(うち1冊は太田さんのサイン入りですが、どれが当たるかは選べません)。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月27日です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、よろしくお願いいたします。
ぽーちゃんの記事、途中から滲んで読めなくなりました(^^;
猫好きにはたまらないお話しですね。
サイン入りが当たりますように!