大阪で「クリスマス・オルガンコンサート」出演、コロンえりかインタビュー(上)

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

透き通るような美しい歌声で観客を魅了するソプラノ歌手コロンえりかさん。ベネズエラで生まれ、日本で育ち、英国王立音楽院声楽科修士課程を卒業後は、日本をはじめ世界各国の舞台に出演しています。2015年には、演出家・野田秀樹と指揮者・井上道義がタッグを組んだオペラ「フィガロの結婚」でバルバリーナ役を務め、その可憐な歌声を記憶に留めている人も多いのではないでしょうか。2017年12月23日に大阪市中央区のクラシック音楽専用ホール「いずみホール」で開かれる「クリスマス・オルガンコンサート」に出演するコロンさんに、コンサートの魅力をはじめ、生い立ちや、ベネズエラの音楽教育プログラムなどについて話を聞きました。

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

――コロンさんは、ベネズエラ・ボリバル共和国生まれで、10歳のときに日本に移住されたそうですね。

当時のベネズエラの政権が混乱していて、カラカスで暴動が起きたんです。私と家族が住んでいる地区が暴動の最前線で、自宅の前で銃撃戦が繰り広げられる状況でした。私の父は国立音楽大学の学長をしていたのですが、子供の命を守るには国から出たほうがいいという判断をして、日本に来ました。

――コロンさんは作曲家のお父様がベルギー人で、ソプラノ歌手のお母様が日本人です。いきなり日本に来て言葉など大変だったのではないですか。

そうですね。いじめとか色々経験しました。こういう外見ですが、今は日本人という気持ちです(笑)。

――もともとご両親の仕事の関係で音楽はいつも周りにあったのですよね。いつから歌手になりたいという気持ちが芽生えたのでしょうか。

6歳のときに初めて両親がかかわっている舞台に出演しました。家がそういう環境でしたから、特に意識もせず、子役としてちょこちょこオペラや、リサイタルなどの公演に出ていたんです。音楽について、きちんと考えるきっかけとなったのは、阪神大震災ですね。そのときに、目に見えるものの大切さと、それ以上に目に見えないものの大切さや力をすごく感じて。

音楽はお腹をいっぱいにすることは出来なくても、もっと深いところで人間が求めているものに対して、答えを与えてくれると感じました。自宅は全壊しましたが、色んな避難所で歌を歌いながら、それを感じて、音楽の道を真剣に目指すようになりました。当時15歳でしたが、震災の怖さはとても言葉では表現しきれなくて、自分の経験をかみ砕いて表現できたのは、音楽だったんです。

東日本大震災のときも、私の体験と被災地の子供たちが重なり、ベネズエラで始まった「エル・システマ」という音楽プログラムが日本で出来ないだろうかと模索しました。現在代表を務める菊川さん始め、多くの方の力のもと、エル・システマジャパンが立ち上がって6年になります。私は子供たちと演奏するだけでなく、子供たちの成長を見守りながらスペシャルアドバイザーとして関わらせて頂いています。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、コロンさんがライフワークとして歌っている長崎の浦上天主堂で被爆したマリア像をモチーフにした歌「被爆マリアに捧げる賛歌」が誕生した過程や、お父様のエリック・コロンさんが「被爆マリアに捧げる賛歌」を作曲した時にコロンさんが見た不思議な夢などについて話してくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。12月2日掲載予定のインタビュー「下」では、コロンさんが10歳のときに日本に移住し、阪神大震災を経験して感じたこと、ベネズエラが混乱した状況の中にある今、それでも音楽の力を信じていることなどについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■音楽で責任感や協調性、自己肯定感を作る「エル・システマ」

■音楽家は情が厚い人が多いので、色んな方が支えてくださる

■父に作曲を頼む夢を見たら「被爆マリアに捧げる賛歌ができた」と

■父は子供のころナチス侵攻があり、平和への思いを抱えて生きてきた

<クリスマス・オルガンコンサート>
【大阪公演】2017年12月23日(祝) 12:00開演/16:00開演(2公演) いずみホール
公式ページ
http://www.kyodo-osaka.co.jp/schedule/E019055-1.html

<関連リンク>
いずみホール
http://www.izumihall.jp/index.html
コロンえりか オフィシャルwebサイト
http://www.erikacolon.com/index.html

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コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

※ここから有料会員限定部分です。

■音楽で責任感や協調性、自己肯定感を作る「エル・システマ」

――約40年前にベネズエラでできたエル・システマは、スラム街の子供たちに楽器を手渡すことから始まったそうですね。

オーケストラの中で子供たちを育て、音楽を学ぶことによって社会人としての責任感や協調性、自己肯定感、精神的な居場所を作っていくプログラムです。文化政策ではなく、社会政策として始まりました。日本でもビックリ箱みたいに、ドンドンと子供たちが成長していく過程を目の当たりにしています。

昨年は相馬の子供たちがベルリンフィルに招かれて、ベルリンフィルの団員と一緒にベートーベンの「運命」をコンサートホールで演奏したんです。

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

コロンえりかさん=撮影・米満ゆうこ

■音楽家は情が厚い人が多いので、色んな方が支えてくださる

――ベルリンフィルと共演できたのはすごいですね。

音楽家は情が厚い人が多いので、世界中で色んな方が支えてくださっています。今年10月に東京で開催された「エル・システマ・フェスティバル」にもその相馬の子供たちが出て、聴覚障がいの東京の子供たちと一緒に演奏しました。

――素晴らしいプログラムですね。話を戻しますが、コロンさんは阪神大震災がきっかけで、音楽家を志すようになったのですね。

両親は大反対だったんです。私は日本の大学で教育学を勉強して、日本で4年間学校の先生をしていたこともあります。でも、「人生は一回しかないから自分のやりたいことをしたい」と親に内緒で英国王立音楽院を受けて合格し、ロンドンに渡りました。

――音楽家で生きていくのは大変ですから、ご両親はコロンさんに苦労させたくなかったのでしょうね。

そのおかげで、いい意味できたえてもらいましたね。

■父に作曲を頼む夢を見たら「被爆マリアに捧げる賛歌ができた」と

――コロンさんは、お父様のエリック・コロンさんが作曲された「被爆マリアに捧げる賛歌」を歌うことをライフワークにされています。1945年に長崎の浦上天主堂で被爆したマリア像がモチーフです。ずしんと心に残る楽曲ですね。

二十歳のときに、「もう一度、自分の人生の意味を考えたい」とバックパッカーで長崎の教会巡りをしたんです。野宿をして野犬に襲われそうになりながら(笑)。若気の至りですね(笑)。そのときに「被爆のマリア像」と出会い、マリア像の姿があまりにも痛々しくて、ものすごくショックを受けました。被爆のシンボルになっていますけれど、それ以上に、そこにある祈りと出会い、心を打たれました。

そして、その話を親にして、東京の大学に戻りました。しばらくして、父に泣きながら「一度でいいから私のために作曲して」と頼んでいる夢を見たんです。翌日、母から電話がかかってきて、父が『被爆マリアに捧げる賛歌』を作ったと言うんです。私は、「さっき頼んだばかりなのに、もうできたの?」と。

楽譜が届き、その曲を浦上天主堂で初演することになりましたが、その2週間前に9・11のテロが起こったんです。私の中で、さまざまなことがリンクした出来事でしたね。「アヴェ・マリア」は昔から、色んな国の歴史的文化背景の中で、多くの作曲家が普遍的なテーマとして扱っています。「被爆マリアに捧げる賛歌」は21世紀に父が作り、長崎を起点に平和への願いを込めた作品です。私はこの曲を一生、大事にしていこうと、色んな場所で歌わせてもらっています。

コロンえりかさん

コロンえりかさん

■父は子供のころナチス侵攻があり、平和への思いを抱えて生きてきた

――コロンさんが作曲してほしいと、お父様にはどういう風に伝わったのですか。

一度も伝えたことはありません。父は父で、私が話をしたマリア像の話にインスピレーションを得た。父はベルギー人ですが、子供のころにナチスの侵攻があって、平和に対する思いを抱えて生きてきた人です。そこで、何か感じるものがあったのでしょう。曲の中で盛り上がる華やかな部分と、ガクンと低い領域になるコントラストが激しい部分があります。それは人間が起こす過ちや戦争のために、「祈って下さい」という思いを込めて作曲したと話していました。

――それは驚きのエピソードですね!

音楽家の家族は、普段ミスコミュニケーションがすごく多いんです(笑)。皆、自分ひとりの世界を突っ走っている(笑)。でも、音楽を一緒に作ったり、演奏したりすると、魂の部分でコネクトできるんです。ほかは、行き違いや誤解ばかりです(笑)。心の中では繋がってはいるんですが。

――家族が皆、音楽家だと大変なのですね(笑)。

大変です。私の弟は「僕は普通の人になりたいから、音楽家はやめておく」と飛行機を作る仕事をしています(笑)。

※コロンえりかさんのサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは12月15日(金)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。

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