2018年1月13日開幕の「東京芸術劇場“RooTS シリーズ”第5弾『秘密の花園』」に出演する玉置玲央さんインタビューの「下」です。アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、元々、演劇の裏方をやろうと思っていたという玉置さんが裏方を止めて俳優業をやるようになった経緯や、定期的に俳優向けのワークショップを開催されている理由などについて語って下さった内容を掲載しています。
――再演を繰り返した作品です。戯曲は同じでも、キャストやスタッフが違うという意味での「違い」を超えて、さらに違う何かが生まれる可能性があるのかなと思っています。
全然あると思います。
――これまでに『秘密の花園』を観たことがある方にも、新鮮に感じる部分があるのではないかなと。
僕が今32歳で、同世代が『秘密の花園』を知っているかといったら、読んだことも観たこともない人がかなりいるかもしれない。でも僕は70年代~90年代の戯曲に取り組ませていただく機会が多いので、以前から唐十郎作品に触れて、直接じゃないにしてもなんとなく知っていました。戯曲も読んだり、映像も観たこともありました。ただ全員が全員そうではないし(笑)。
――確かに。
自分と同年代で、唐十郎さんを知らない人も当然いるとは思うんですが、だったらじゃあ、なんの取っ掛かりでもいいから、この作品を観に来て、そこから「〝唐十郎〟っていうすごい人がいるんだ」って思ってもいいし。それこそ僕みたいに「〝唐十郎〟という人をなんか知ってるぞ」っていう人間が、そこを取っ掛かりに観に来て「やっぱ凄いんだな、〝唐十郎〟って人は!」と思ってもいいし。
――作品を知っている方だけでなく、知らない方も等しく客席にいらっしゃる状況、ですね。
東京芸術劇場が「RooTS」という企画で、福原さんに演出をお願いして、このキャストで上演する『秘密の花園』の、かつその中での僕の役割としては、やっぱり「こんな面白ぇ芝居あったんだぞ!!」っていうことを、少なくとも僕を観に来てくださる同世代には知ってもらえたら良いなって思っています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、元々、演劇の裏方をやろうと思っていたという玉置さんが裏方を止めて俳優業をやるようになった経緯などについて語ってくださった、インタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■舞台と映像は、お客様の目に触れるのか、カメラで抜かれるかの違いでしかない
■お付き合いいただくための「場」として、ワークショップをやっています
■裏方業やっていたのが、裏方業と俳優業がだんだん需要が入れ替わって
■『秘密の花園』、敬意をもって取り組むのが、僕の中での今回のテーマです
<東京芸術劇場“RooTS シリーズ”第5弾『秘密の花園』>
【東京公演】2018年1月13日(土)~2月4日(日) 東京芸術劇場 シアターイースト
公式ページ
http://www.geigeki.jp/performance/theater153/
<関連リンク>
ゴーチ・ブラザーズ
http://www.gorch-brothers.jp/modules/tinyd9/index.php?id=6
玉置玲央 「博愛日和」
http://hakuaibiyori.seesaa.net/s/
玉置玲央 Twitter
https://twitter.com/reo_tamaoki
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※ここから有料会員限定部分です。
――確かに。この作品が「入り口」になるお客様はいらっしゃると思います。私も今回の上演が唐十郎さんの戯曲を初めて読むきっかけになりました。
本当ですか? 良かった。そうなっていくと良いなと思っています。
■舞台と映像は、お客様の目に触れるのか、カメラで抜かれるかの違いでしかない
――では、最近のお仕事についても少し伺います。映像のお仕事でお名前を拝見する機会が多くなって、先日も『相棒 season 16』にご出演でしたね。
なんか増えてきました。ありがたいことに。
――ジャンルの垣根を越えてご活躍の場を年々広げていらっしゃいますが、テレビドラマやラジオドラマ、舞台というのは、玉置さんの中では、どうとらえていらっしゃいますか? 例えば全て同じ枠なのか、それぞれ違うものなのか?
どっちもだなと思ったんです。「舞台」は「舞台」、「映像」は「映像」と思っていた時期もあるし、「いや、どっちも“演技”ってことだよ」って思ってたときもあって、どっちもあるなって今は思っていて。僕は自分が納得してから動きたい性格なので、どっちかに振り切りたいタイプなんです、本当は。でも、多様性という高さは持たなきゃいけないのかもなと思ってたときに、丁度映画のお仕事で共演した方が「いい芝居をするだけでいいことなんだから、別に変わんないよね」みたいなことをおっしゃって。そのとき別に相談をしたわけでもなく、ポロッとそうおっしゃってて「この方はそういう風に生きてきたんだな」って思って。それがなんか僕の中では「かっこいい!」と思ったし「そうだよな」とも思えたし。
やっぱり出来れば僕は、作品もそうだし、座組とかもそうなんですけど、「人に由来」していろんなことを刺激されたり刺激していきたいなって思う性質なので、そういうことをキチンと受け取って、その都度その都度の「答え」が出せれば良いかなって思ってやってきてるんです、特に最近。だから「どっちもあるな」っていう感じです、ホントに(笑)。ある時には「映像」と「舞台」は違うもんだ、芝居って違うもんだ、って、思ってるし、ある時には「いや、全然変わんないよ」って思ってるし。今は「どっちも変わんないよ」ですね。お芝居ってちゃんとその人とやりとりして、それがお客様の目に触れるのか、カメラで抜かれるかの違いでしかないね、っていう時期、かな。
――変わらないと思うときと、違うと思うとき、両方あるんですね。
それは、だから声のお仕事も一緒です。でもどうなんでしょうね。このまま場数が増えていけば、もっと差がなくなってくるのか、逆に「イヤイヤこれはちゃんと切り分けて考えた方がいい」ってなるのか、ちょっとまだ分からないなぁって思っていて。
――でも技術的なところの違いはあったり?
それはもう、絶対的に。あと、ちょっと細かい話になると「求められるか、求められないか」も絶対あって、監督さんから「もうちょいお芝居抑えましょうか。舞台っぽいお芝居になってます」って言われることもあれば、「もっとやってよ!」って言う人も居るし、これも、さっきの人の話じゃないですけど、結局“なにを求められてその「現場」に居るのか?”。
――確かに。
舞台にしても映像にしても、求められて、その現場に居るのかってことを「知る」っていうか、感じなきゃいけないし。そこを早く掴めると、やりとりが楽じゃないですか。
――そうですね。
撮ってくださっている人、観てくださっている人とのやりとりが楽なので、なんかその辺もやっぱり、この…「振れ幅」なのかな? その中の判断材料になって、やっぱり自分の振る舞いも当然変わってくるし、その辺を行ったり来たりしてるのが楽しいな、っていうのは、今あります。
■お付き合いいただくための「場」として、ワークショップをやっています
――常々ご活躍を拝見していて、演劇への向き合い方がある種ストイックで熱量が半端ないと感じているのですが、「演劇」と出会ったきっかけや、定期的に開催されている俳優向けのワークショップについてもお伺いしたいです。
ワークショップを一番最初にやるようになった理由は、ひとつは例えば自分がいろんな現場に行って得てきた知識をみんなで共有したら楽しいなって思ったことです。いろんな世代のいろんな方がいらっしゃって、「演劇」への取り組み方に関して、いろんな選択肢、いろんなやり方があるのに、それを知らないまんま過ごしていく方も当然いらっしゃって。でもそれもその人の演劇人生なので、それはそれでいいんですけど、そういう人たちに、ちょっとヒントとして「僕はこういう現場行ったときに、こういう考え方をいただいたから、そういうこともあるよ」みたいなことを共有出来る「場」として、月イチでワークショップ開けないかな?と思ったのがありました。
それと、10年前位にいろんな日本各地に行くようになったときに、「北海道にこんな面白い俳優いるんだ!」とか、「九州って、こんなに稽古場安いんだ」とか(笑)っていう発見があったりして、そういう人たちが最終的に一堂に会することが出来る「場」みたいなものを作れないかな?と思って。その足掛かりという訳じゃないですけど、少なくとも東京にいるいろんな世代のいろんな俳優さんたちが集まって交流出来る「場」みたいなものを作れないかなと思って。
そのふたつが合わさって、ワークショップっていうのをやってみようかなって思ったのがきっかけなんです。で、僕は「カスガイ」っていう団体もやっていて、そこの演出もやっているので、そこでの演出「人に何かを伝える」っていうことにもやっぱり俳優とはまた別で興味もあるので、そういうことを試したりとか、ちょっと言い方変ですけど「お付き合いいただく」ための「場」としてやれないかなって思ってワークショップをやっています。
■裏方業やっていたのが、裏方業と俳優業がだんだん需要が入れ替わって
――俳優同士を繋ぐ接点としての「場」という意図もあるんですね。「演劇」との出会いはいかがでしょう?
「演劇」に出会ったきっかけは、高校進学のときに、まだ全然高校決まってなくて(笑)。そしたら定員割れしてたんですね。僕の母校は韓国語科とロシア語科と演劇科って3つ科があって、定員割れしてたんです。で、3年間少なくともやれるのはどれだろうと思ったときに、演劇科にたまたま入って演劇をやるに至りました。
――学校の演劇科進学が「演劇」との出会いだったんですね。そこで興味を持って?
元々裏方をやろうと思ってたんです。で、入学してすぐ、1年生のときに、出入りしていたプロのスタッフさんに弟子入りして、舞台監督業と、舞台美術業、演出部業をやるようになって。それとは別に学校外で劇団組んで公演とかもやってて、みんな大学に進学して、うちの深谷(由梨香さん「柿喰う客」劇団員)が中屋敷(法仁さん「柿喰う客」代表)と知りあって「玲央、面白い人いるから、会ってみなよ」って紹介してもらって、そこから「柿喰う客」に出るようになって。2006年に劇団化する時にも、「居てください」って言われたから「はい、やりまーす!」って劇団員になって、っていうのが今に至る経緯です。
――初めは裏方業だったんですね!
そうです。裏方業やっていたのが、裏方業と俳優業がだんだん需要が入れ替わってきて(笑)。これ以上はやれないなって裏方を止めて、俳優業をやるようになって。
――裏方に興味がおありなんだなとは感じていましたが(笑)。
そうそう(笑)。現場によっては「めんどくせぇな、コイツ」って思われるヤツです(笑)。
――(笑)。スケジュールについて、2018年は『秘密の花園』に始まって、その後のご予定は?
情報解禁前の作品はまだ言えないんですが(笑)、発表になっている中では、6月に新国立劇場で栗山民也さん演出の『夢の裂け目』に出演します。
■『秘密の花園』、敬意をもって取り組むのが、僕の中での今回のテーマです
――それでは最後に『秘密の花園』のお客様に向けて、メッセージをお願いします。
『秘密の花園』という作品について、新しい定義を提出していくのか、どうか。どっちもあると思うんです。以前東京芸術劇場でタニノクロウさん演出の『チェーホフ?!』(2011年)を観たときに、チェーホフ作品をやるんだと思って観にいったら「まさかこれがチェーホフ?!」と思ったんです。それはそれで僕の中では良い裏切りだったんです。多分タニノさんが自分の中で、チェーホフ作品のいろんなものを消化して出した時に、ああいう風になったんだなと思って、すごい肯定的に僕は思えたんですね。
だから『秘密の花園』という作品も、多分新しい定義も出せるだろうし、いろいろ出来る戯曲だと思うんです。それこそ『小指の思い出』(2014年)とか、東京芸術劇場でいろいろ取り組んできているじゃないですか。過去の先輩たちの名作に新しい解釈をして「ほう! こうするんだ!」っていうのがあったり。まず東京芸術劇場がそういうことに取り組んでいるということに、最終的には「敬意を表す」っていうのが、僕の中では結構マストなテーマです。作家、つまりは唐さん、プロデューサー、東京芸術劇場に「敬意」をもって取り組むっていうのが、僕の中で、結構今回のテーマなんです。
その結果、それは勿論、演出家とのすり合わせもあれば、共演者とのすりあわせもあって、いろんな各所とのすり合わせがあるので、その上でそう形になっていくか。まだわからないですけど、その「敬意」を表すというか、「敬意」をもってこの戯曲に取り組む、この作品に取り組むってことをすれば、自然と作品は完成していくんじゃないかなと思うんです。それが人によっては「あぁ、こういう解釈なのか」と思えばいいし、「ちゃんとやったね」って思ってもいいし。そういうことになっていけば良いなって思っています。
個人としてはそういう気持ちでやっているので、稽古場でどんどん練りあげて、最終的にお客様の前にこの作品が立ち上がれば良いな、って思っています。そこが、おすすめポイントというか、自分の「つもり」の部分です。
※玉置玲央さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは1月18日(木)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
玉置さんの記事読みたさに有料会員になりました。
俳優になったキッカケやワークショップのお話まで聞くことが出来て大満足です…!
私にとって初めての唐作品。作品や役どころはもちろんですが、玉置さんキッカケで未知なる素敵なものとの出会いが待ち受けていることにとてもワクワクしています。
タイトルだけみると昔読んだお話のようですが、もっと迷宮のような戯曲なのでしょうか。
どのような世界が劇場に現れるのか、玉置さんの表現も楽しみにしています。
改めて記事を読み返して、自分に取って演劇は「新しい世界への扉」なんだなぁとしみじみ思っています。今回の玲央さん『秘密の花園』ご出演をきっかけに、紅テントに足を運んでみたり、唐さんの戯曲を幾つか読んでみたりして、その独特な世界の深さと狭さと繋がりと拡がりと…みたいな物の片鱗を感じられた様な気がしていて、それが今回どの様な形で私達の前に提示されるのか、とても楽しみにしております!
玲央さんの作品や演じることへの向き合い方、改めて好きだなと思いました。
裏方から俳優業への流れなども知れて良かったです。
玲央さんきっかけで色んな作品を知れて世界が広がっています。