2015年のトニー賞で、ミュージカル作品賞、ミュージカル脚本賞、オリジナル楽曲賞、ミュージカル主演男優賞、ミュージカル演出賞の5部門を受賞した『ファン・ホーム』が、2018年2月7日から「A NEW BROADWAY MUSICAL『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』」として上演されます。この作品に主演する瀬奈じゅんさんにインタビューしました。(上)(下)に分けてお届けします。瀬奈さんは、主人公・アリソン役を演じます。
――この作品に出演する事になってまずどう思いましたか?
この少人数で、こういう作品に取り組める事はとてもありがたい事だと思っていますし、演出家の小川絵梨子さんとご一緒できる事がとても楽しみです。
――小川さんの作品は私も大好きで色々拝見していますが、小川さんがミュージカルを演出されるという事が一大ニュースというか。
本当ですよね。
――小川さんとは何かお話はされましたか。
いえ、まだお会いしていないんです。(稽古前のタイミングで取材しました)
――小川さんの作品に出演されている吉原(光夫)さんからお話を伺ったりする事は?
吉原さんからはまず「小川絵梨子と戦いましょう」と言われました(笑)。先日、城田優君とある撮影でご一緒させて頂いた時にも、「いいな~! ミュージカル初演出だもんね。小川絵梨子さんのミュージカル初演出に出れるって、とても羨ましい。とても勉強になると思うよ」と仰っていて。色々な人から言われます。
――小川さんの作品は何かご覧になりましたか?
先日、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』を観させて頂きました。とても面白かったです。大掛かりなセットもなく、二人でどんどん進めていく言葉遊びみたいなものが、とても面白かったですし、バランスが素晴らしいと思いました。シェイクスピアは、ちょっと堅苦しいイメージがあるじゃないですか。それが、時事ネタとまではいかなくても、今の時代に合わせた客席への投げかけや客席への絡みなど、お二人のやり取りされている中での、時代の行き来みたいなものがとても絶妙でした。時事ネタすぎたり、今の時代寄りすぎたりすると、現実に戻されたりして(観客が)ちょっと引いてしまったりしがちなこともありますが、そのバランスが素晴らしかったですし、引き込まれました。主役のお二人の魅力もあってだと思います。
――みなさんからの情報も含めて、小川さんとご一緒する事をどう感じていますか?
どういう要求がくるのかという事も、怖いですが、楽しみなんですよね。この作品を小川さんはどう捉えるのか、どう演出していくのかという事が楽しみです。私が演出を受けるという事よりも、小川さんが作品を、どう作り上げようと、どういう方向性で、どういう言葉と表現で進めようとしているのかなという事がとても楽しみです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、海外ミュージカルを日本で上演することについて、LGBTの人の役での出演について、昨年春に出演された舞台『エジソン最後の発明』に続いて父と娘のお話となることについて自身の経験と比較してなどについて語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。1月30日掲載予定のインタビュー「下」では、舞台『エジソン最後の発明』、ミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』、『エリザベートTAKARAZUKA 20周年 スペシャル・ガラ・コンサート』などについても伺ったインタビューの後半の全文を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■日本人キャストが演じるとどうなるのかなという、期待と不安が
■LGBTの人の役。小川絵梨子さん演出と聞いて、出演したいなと
■『エジソン最後の発明』の時より、私と父の関係に近い
■16歳で(宝塚に)入って、想像して思いやる事しかできなかった
<A NEW BROADWAY MUSICAL『FUN HOME ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』>
【東京公演】2018年2月7日(水)~2月26日(月) シアタークリエ
【兵庫公演】2018年3月3日(土)~3月4日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
【愛知公演】2018年3月10日(土) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
公式サイト
http://www.tohostage.com/funhome/
<関連リンク>
瀬奈じゅんオフィシャルウェブサイト
http://www.jun-sena.jp/
瀬奈じゅん東宝芸能オフィシャルサイト
https://www.toho-ent.co.jp/actress/profile.php?id=6872
瀬奈じゅんマネージャーtwitter
https://twitter.com/senajunmg
- 公民権運動の時代、バスに乗り合わせた人々は… ミュージカル『VIOLET』開幕 2020年9月4日
- 日英共同プロジェクト第一弾ミュージカル『VIOLET』、9月に3日間のみ上演決定 2020年8月11日
- 演出家・藤田俊太郎、ロンドンでミュージカル『VIOLET』演出、日本でも上演へ 2018年9月12日
- 「新しい知識を入れながら、楽しく笑顔で進みます」、瀬戸かずやインタビュー(下) 2021年10月22日
- 「退団後初舞台、気を引き締め」、『Greatest Moment』瀬戸かずやインタビュー(上) 2021年10月21日
- ミュージカルオタクの警部補が捜査したら… ミュージカル『カーテンズ』2022年2月開幕 2021年9月17日
※瀬奈じゅんさんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2月12日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■日本人キャストが演じるとどうなるのかなという、期待と不安が
――作品の内容について、原作の漫画、音楽や向こうの映像などを総合して、今の印象はいかがですか?
これを日本人キャストの私達が演じるとどうなるのかなという、期待と不安が今はありますね。それによって、お客様がどういう印象をお持ちになるだろうかと。この題材という事よりも、海外ミュージカルを日本で上演する時の笑いどころの違いなどがあるじゃないですか。そういう意味での、この日本で上演する手段、言葉の選び方などがとても難しいんじゃないかなとは思っていて。とてもシニカルな部分を、観に来て下さった方たちにどう伝えていくかがとても難しいですが、そこもやりがいがあるのかなと思います。
――私も原作漫画を読んでシニカルさを感じたので、舞台映像を見てこんなに笑うところがあるのかと驚きました。
そこなんですよね。文化の違いなどがあるので、難しいですよね。宝塚時代に『Ernest in Love』という、イギリス貴族の話をやったのですが、プロポーズをする時に、緊張のあまり「良いお天気で」とご挨拶をしてしまうという、イギリスの方はそこでドッと笑んです。イギリスでは常に空は曇っていて、晴れているのは珍しいのに「良いお天気で」と言う事がおかしいわけです。でも、日本人はそれで笑えないじゃないですか。わからないし、その笑いの意味を知っている人も少ない。言葉ではなく文化の違いというのは、少し感じますし、難しさも感じます。ただ、副題にもある通り、家族の話です。「家族の在り方」には外国も日本もないと思うので、そこの思いみたいなものは共通していると思います。
■LGBTの人の役。小川絵梨子さん演出と聞いて、出演したいなと
――アリソン役についてですが、まずはオファーが来てどんな風に思われましたか?
正直に言うと、LGBTの人の役ですと聞いた時に、「私がやるのは安易じゃないのか」と少し思いました。私の宝塚のイメージがあるうえで、男らしい恰好をして、女同士の恋愛物ですので。アリソンも割と男性的なので、私が演じるにはとても安易で、とても薄っぺらいものに思われてしまうのではないかという不安があって「私じゃないほうがいいんじゃないかな」と思ったのが正直なところです。そこは宝塚の女優じゃなくて、普通の女性という言い方も変ですが、宝塚を通っていない女優さんが演じたほうがいいんじゃないかとは思いました。
――そこを引き受けようと思ったのは?
小川さんです。
――やはり。
小川さんが演出と聞いて、出演したいなと思いました。このお話自体、LGBTという事がとてもクローズアップされがちですが、それよりも「家族」の話という事のほうが重要だと思うので、そこに関しては、私だからこそできる事があるんじゃないかなとも思えましたね。
■『エジソン最後の発明』の時より、私と父の関係に近い
――昨年春に出演された、舞台『エジソン最後の発明』も家族の物語で父と娘でしたし、今回も父と娘ですね。
そうなんですよ。『エジソン最後の発明』の時、「父と娘の関係って、ポンポン言い合うでしょ」と提示された時に、私は違ったんです。私は16歳で父親のもとを離れていて、年に多くて2回ぐらいしか会わない生活を20年くらい続けていたので、会った時には、変な話ですが、優しくしてあげようとか(笑)。私がトップの頃、父はまだ会社勤めで、よく大阪に出張に来たりしたんです。その時はうちに泊まったりしていたので、そこでご飯を作ってくれたりして。そう思うと、『エジソン最後の発明』のあの役(糀谷深春)のように、冷たく喧嘩とかはできませんでした。ある意味、あの舞台が私と父の関係を見直すきっかけにはなったんですが。ですので、私と父は普通の親子の関係とはちょっと違うと思っていて、多分アリソンのほうが近いと思っているんです。
■16歳で(宝塚に)入って、想像して思いやる事しかできなかった
――私は昨年父を亡くしたばかりなので、アリソンのように「どんな事を考えていたんだろう」と思い巡らす感じがよくわかります。それぞれの家族の関係によって、色々でしょうね。
私は16歳で(宝塚に)入っているので、(父と)一緒に生活したのが16年間だけです。そうすると、想像しかしないですよね? 「今、父はどういう思いでいるのかな」とか。私がトップの後半の時に、父は会社を引退しているので、「今会社に行かないで、家でどんな思いで過ごしているのかな」とか。想像でしかできないし、ぶつかれない、ぶつかる時間もない。辞めてから、いっぱい時間ができるようになりましたが、想像しかできない、想像して思いやる事しかできないという意味では、アリソンに近いですよね。
――『エジソン最後の発明』と『ファン・ホーム ある家族の悲喜劇』では両極な父と娘の感覚?
そうですね。
※瀬奈じゅんさんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2月12日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。