慰安婦にされた女性を描く、2人芝居『キャラメル』ルポ(上)

4月22日・23日の舞台「キャラメル」=きむきがんさんのFacebookページより

<2018年7月1日追記>

「慰安婦」被害ハルモニたちを、在日の視点で取り上げた舞台『キャラメル』、東京での大入り満員公演の後、上演を願う声に応えて、いよいよ各地での公演が始まります。関西での初公演は、脚本・主演のきむきがんさんが主宰する劇団石(トル)の拠点である滋賀県と、在日韓国・朝鮮の人が多い大阪府で行われます。「ハルモニたちのことを全く知らない人たちに観てもらいたい」というきがんさんの言葉通り、夏休みの一日、多くの人が舞台を観る機会があることを願っています。

『キャラメル』フライヤー(クリックすると画像が大きくなります)

『キャラメル』フライヤー(クリックすると画像が大きくなります)

■2018年8月11日(土) 18:00開演(17:30開場)
栗東芸術文化会館 さきら 中ホール
滋賀県栗東市綣(へそ)2丁目1-28
JR琵琶湖線「栗東駅」東口より400m
*託児所あり(要予約)
問い合わせ / チケット予約 k.kija.tol☆gmail.com ☆を@に変えてください
主催・企画 ◎劇団石(トル)

■2018年8月14日(火) 18:30開演(18:00開場)
イコーラム(岩江岩田駅前)
大阪府東大阪市岩田町4丁目3-22
近鉄岩江岩田駅前 希来里6F
問い合わせ / チケット予約 uhz1969☆gmai.com ☆を@に変えてください
もしくは→ https://goo.gl/forms/JlKtkKTc0OblLgZs2
主催・企画 ◎嘘みたいな本当の在日話


<ここから2018年5月8日掲載の『キャラメル』東京公演ルポ記事です>

2018年4月22日と23日、『いま、日本軍性奴隷問題と向き合う~被害者の声×アート~』と題したイベントが東京で行われました。パネル&アート展や講演会が開かれた中で、書きおろし2人芝居『キャラメル』を鑑賞。脚本・主演のきむきがんさんのインタビューと合わせてお読み下さい。

4月22日・23日の舞台『キャラメル』左がきむきがんさん、右が洪美玉さん=きむきがんさんのFacebookページより

4月22日・23日の舞台『キャラメル』左がきむきがんさん、右が洪美玉さん=きむきがんさんのFacebookページより

きがんさんのお芝居に魅せられたのは、アイデアニュースで何度も紹介してきた『在日バイタルチェック』からです。植民地時代に日本に渡ってきた女性の生涯を、彼女を取り巻く人々を含めてひとりで演じきったきがんさんが、従軍慰安婦=性奴隷の問題に真正面から取り組んで芝居を作っている。しかも、今度は2人芝居。そう聞いたときから観たくてたまらなかった『キャラメル』は、期待を裏切らない圧倒的な舞台でした。90歳で息を引き取った在日1世のハルモニ(朝鮮語で祖母、おばあさんという意味)とその友人が、今まで語られることのなかった自らの壮絶な人生を、在日3世の役者ふたりの体を借りて、ようやく語りはじめます。泣き笑い、歌い踊り、哀しみ、怒り、それでも未来の世代に希望を抱きながら。

――きがんさんと言えばひとり芝居というイメージでした。今回の芝居は共同演出ということですが、いかがでしたか?

初めての経験で、すごく勉強になりました。価値観が似てる人とじゃないと一緒に出来ないんだけど、それでも徹底的に話し合って、とにかく話をして、それで、この芝居でやりたいことが全部出来たという感じです。舞台に出るメンバー以外の人たちが、どんどん深くかかわってくれるようになって。テーマがテーマだけに、芝居に携わるものとして精一杯、ハルモニ達の思いに寄り添って舞台を作ろうと努力してくれました。

武蔵関の駅から「ブレヒトの芝居小屋」へ歩いていくと見えてきたのは「償わなければならないこと」と題された絵=撮影・松中みどり

――場所がまた素敵でした。「ブレヒトの芝居小屋」、初めて伺いましたが、中に入った瞬間から演劇が始まってるんじゃないかという雰囲気のある建物ですよね。移転ときいて残念ですが……。

良い感じの場所ですよね。ここでやれて嬉しかったですよ。箱にこだわってるわけじゃないけど、この小屋がなくなるってことをきいて感慨深かったし、ずっとあそこで合宿しながら今度の芝居を作っていったので。たくさんの人に支えてもらいました。志を共にする仲間があの舞台を一緒に作ったんだと、今、思っています。

――私は4月22日の初舞台を見せてもらいましたが、超満員で、みなさんが最初からのめりこむようにお芝居を観ておられたのが印象的でした。

おかげさまで、二日間とも満席でした。立ち見の方もいたし、初日は帰っていただかないといけないほどたくさん来てくださって。在日の人も大勢いらっしゃって、一体感がありましたね。お客さんのあったかい氣を感じて芝居をしてました。泣きながら一生懸命観てくれているのが分かりました。

※こちらは、2人芝居『キャラメル』のために作られたオリジナル曲、「故郷への想い」です。作曲・演奏は李相大さんです。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、お芝居のあらすじ、インタビュー前半の続きなどを掲載しています。舞台の写真もたくさんありますので、ぜひご覧ください。5月12日掲載予定のインタビュー(下)では、『キャラメル』というタイトルの意味や、インタビュー後半の全文を紹介しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

『キャラメル』あらすじ

お葬式の場面について~日本軍「慰安婦」被害ハルモニが亡くなっていく現状~

<二人芝居「キャラメル」>
【東京公演】2018年4月22日、4月23日 ブレヒトの芝居小屋 (この公演は終了しています)

  1. 出演:きむきがん 洪美玉  松下重人 李相大(ピアノ)
    脚本:きむきがん
    演出:(共同演出)松下重人 きむきがん
    公演時間:90分
  2. ★カンパのお願い 2人芝居『キャラメル』を日本各地で、また韓国で、上演するために皆さんにご協力をお願いしています。ご賛同いただけましたら、カンパは下記までよろしくお願いいたします。
  3. 劇団石(トル)のゆうちょ銀行口座
    郵便局からの場合
    記号 14600
    番号 15308261
  4. 他行からの場合
  5. 店番468
    口座1530826
  6. 口座名ゲキダン トル

<役者プロフィール>

きむきがん:在日コリアン3世 ・劇団石(トル)主宰。役者・シンガーソングライター。日本、滋賀県を拠点に、一人芝居・演劇ワークショップ・音楽ライブなど、全国各地で活動中。パワフルな笑いの中に、常に社会的弱者に目を向けた作品を上演している。 代表作にすべての生き物の尊厳を描いた『カンアジトン(こいぬのうんち)』、在日同胞の100年の歴史を描いた『在日バイタルチェック』、部落差別の歴史と現状を描いた『人の値打ち~たまちゃんとはるちゃん~』などがある。

洪美玉(ほん・みお):1974年、神奈川生まれ。アメリカ留学を機に演劇を本格的に目指す。日本大学芸術学部演劇学科卒業。現在、東京演劇アンサンブル劇団員。イベント開催場所であるブレヒトの芝居小屋を拠点に、全国の児童青少年にも演劇を届ける。本アクション共催の東京演劇アンサンブル切羽委員会委員長。これまで朝鮮、原発、沖縄問題などに向き合う憲法集会、学習会を企画、運営してきた。現在、音楽劇『消えた海賊』で全国の高校を巡演中。

<関連ページ>
きむきがん ライブ☆公演スケジュール
http://blog.livedoor.jp/kigang-kigang/
きむきがんfacebook ページ
https://www.facebook.com/soonji.omma
いま、日本軍性奴隷問題と向き合う~被害者の声×アート~「DA RE I KI だれもがいきいきと生きられる社会のために」ホームページ
http://dareiki.org/2018/02/19/wk20180423action/
ブレヒトの芝居小屋
http://www.tee.co.jp/?p=56

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※ここから有料会員限定部分です。

『キャラメル』あらすじ

『いま、日本軍性奴隷問題と向き合う~被害者の声×アート~』は、在日本朝鮮人人権協会 性差別撤廃部会の4・23アクションとして開催されました。その案内文にはこうあります。

  1. 「地獄だったよ、この世の地獄だった…」(裵奉奇・ペポンギ)
  2.  4月23日は、沖縄で日本軍の「慰安婦」=性奴隷を強いられ、朝鮮の解放/日本の敗戦後、朝鮮女性として初めて自らの被害を明かされた裵奉奇さん(1991年、沖縄にて逝去)の証言が『朝鮮新報』に掲載された日です(1977年)。
  3.  私たち性差別撤廃部会は、昭和天皇の謝罪と朝鮮半島の統一を願った裵奉奇さんの存在を記憶していくために、4月23日を記念して、日本軍性奴隷問題について考えるためのアクションを毎年行ってきました。
  4.  日本軍性奴隷問題が「解決される」として2015年に安倍・朴両政権下で発表された「合意」は、被害者を無視してなされた、国際人権基準に背く談合であったことが明らかになっています。被害者たちは今も、日本政府による事実の認定、真相の究明、公式の謝罪、法的な賠償、責任者の処罰、歴史の教育・記憶などを強く求めています。
  5.  私たちはこのたび、真実と正義を実現しようとする被害者たちの声を伝え、今こそ日本軍性奴隷問題と向き合うために、この問題をテーマとした様々な催し物を行います。

2人芝居『キャラメル』は、このイベントのハイライトともいえる舞台だったわけです。

4月22日・23日の舞台『キャラメル』左が洪美玉さん 右がきむきがんさん=きむきがんさんのFacebookページより

4月22日・23日の舞台『キャラメル』左が洪美玉さん 右がきむきがんさん=きむきがんさんのFacebookページより

舞台は、1980年頃の大阪、2人の女の再会シーンで幕を開けます。大入り満員の4月22日、役者の汗まで分かるほど間近で見ていた筆者の目の前に、夜の店で働いているような雰囲気の東京弁の女が、ヒールを履いて千鳥足で現れ、魚市場で働いている朝鮮語なまりの日本語を話す長靴姿の女にぶつかりました。ふたりは互いに相手が悪いと責めあいながら、やがて気が付くのです。壮絶な過去を共にした、朝鮮の女同士だということに。「慰安婦」になったことを家族に対して申し訳ないと自分を責めて、故郷・朝鮮の言葉を忘れてしまったオクスンと、「慰安婦」であったことを隠しながらも必死で働いて生き抜いてきたスッキのふたりです。

オクスンとスッキは、ともに忠清南道(チュンチョンナムド)の村の出身で、貧しい少女時代にわずかの食べ物につられ、だまされました。「日本の工場で働いたら家族に仕送りも出来る」と言われ、故郷を出て行きついた先は戦地。日本軍相手の慰安婦=性奴隷となることを強いられ、戦後は故郷に戻ることも出来ずに、各地を転々としながらたどり着いたのが大阪の今里でした。そんな在日1世のハルモニ(おばあさん)・オクスンが亡くなり、芝居は彼女のお葬式のシーンを中心に進んでいきます。亡くなったオクスンハルモニはなぜか、スッキハルモニと2人で、供えられた酒を酌み交わし、歌って、踊るのでした。

4月22日・23日の舞台『キャラメル』 左が洪美玉演じるオクスン、右がきむきがんさん演じるスッキ=きむきがんさんのFacebookページより

4月22日・23日の舞台『キャラメル』 左が洪美玉演じるオクスン、右がきむきがんさん演じるスッキ=きむきがんさんのFacebookページより

お葬式の場面について~日本軍「慰安婦」被害ハルモニが亡くなっていく現状~

――舞台の時間の多くがお葬式の場面でしたが、例えば死に装束の整え方とか、私には見慣れない様式で新鮮でした。

演劇的に脚色させてもらった部分はあるんですけど、基本的には、伝統的な葬儀のやり方を勉強して脚本の中に組み込んでいった感じなんです。在日だから、全部し切れていない家庭も多いんですけどね。お葬式みたいな儀式が、ちょっとちゃんぽんになっていくのもまた、在日らしさが浮かび上がるかなあと思って。

――なるほど。お葬式という「人を送る儀式」を通して、すでに亡くなった大勢の人たちと、今を生きている私たちをつなぐ意味があったのかなと思って拝見してました。

ああ、そうですね。日本軍「慰安婦」被害ハルモニたちが、お亡くなりになっていってるという現状があるんです。そこで、「お葬式」という構想が出てきたんですね。もうご高齢で、寝たきりになっている方もおられますし、直接お会いすることは出来なかったんですけど、かなりの調査はしました。その証言に基づいた脚本を作るということで。ただ、舞台が在日なんで、証言すらできない人たち、おそらくいたであろう存在というのをあぶりだしてるから、そこはフィクションなんですよね。

――そこが、きがんさんが芝居を書く所以、理由ですよね。

本当にそうですね。

4月22日・23日の舞台『キャラメル』=きむきがんさんのFacebookページより

4月22日・23日の舞台『キャラメル』=きむきがんさんのFacebookページより

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