2019年12月28日(土)から12月31日(火)まで上演される、る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ『明治座の変 麒麟にの・る』の演出を担当する原田優一さんのインタビュー、後半です。原田さんが普段どんな演出をされるのか、これまでの出演と演出の経験を通して考える「稽古と本番についての役者と演出家の思いの違い」や、両座長(主演の平野良さんと安西慎太郎さん)以外の『明治座の変 麒麟にの・る』出演キャストについて語ってくださった内容を紹介します。
――これまでいろいろな作品を演出しているなかで、例えば、演出をしたキャストの皆さんから、原田さんの演出について言われたことってありますか?
時々言われるのが、芝居している最中、ミュージカルなんかは歌っている最中に、近寄っていって、耳元でコソコソッと言うのをやると言われる。
――それはなぜやっているんですか?
芝居している、歌っている時に言うほうが、効率が良いんです。
――後から言ってもどこのことなのかピンと来なかったり?
そうなんです。あと「今ここでこれを思ったよね。それを思ったんだったら、こっちをやってみたら」とか言いながら歌わせてしまう。
――やっている側は結構大変ですね。「今、入ってきた!?」みたいな感じですよね。
僕は歌っている時に、外国人の演出家にされたんですが、それが良かったんですよね。だから、それは使えるなと思って。例えば「まだ泣かないで」とか。
――へぇ!
「今、相手の話を聞いて」、「今、あの人の顔を見ながら歌ってみて」、「まだまだ」、「近づけ」とか。
――歌でいうと、音楽の流れと歌っている気持ちを……。
その場で一緒に作って、隣りで併走しているみたいな感じです。
――今回のように、台詞が多い場合はどうなるんでしょうか?
どうなるのかなと思いますが、相手に聞かせないチェックはするかもしれません。個人個人で会って。全体に言うのでなく、ひとりひとりに対してが多いのかもしれません。
――全員の前だと、ある種“公開処刑”みたいになりかねませんが、そうではなくて。
この人に対するチェックはこの人への処方箋だから、他の人にはもしかしたらその薬は要らないかもしれないし。やはり、稽古中の役者って、とても繊細な生き物だと思うんですよ。本番はまた繊細な生き物になるのですが、稽古中の役者の繊細さは結構独特で。それは多分役者をやったからこそわかるのかなと思います。
――ちなみに演じる側の稽古中の繊細さって、ご自身では何か自覚されていることはありますか?
役者の時は稽古はあまり好きじゃありませんが、演出家は稽古中が仕事なので、演出家になるといきなり稽古場が好きになります。稽古場の隣で寝たいぐらい。
――24時間ずっと一緒!
演出をやっている時は、寝袋を持ってきたくなるくらいに稽古が好きになるんです。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、これまでの出演と演出の経験を通して考える「稽古と本番についての役者と演出家の思いの違い」や、両座長以外の出演キャストについてのお話など、インタビューの後半の内容の全文と写真を掲載します。
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■もしかすると、ひとりでニマニマするのが楽しいのかもしれないですね
■粟根まことさん椿鬼奴さん凰稀かなめさんたちが、男の子たちに与える影響が楽しみ
■最終的には、明智と信長がどうなるか。1個のメッセージをそこで込めたい
■第1部は馬鹿馬鹿しさは残しつつちゃんとした芝居、第2部は年末のお祭り感で
<る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ『明治座の変 麒麟にの・る』>
【東京公演】2019年12月28日(土)~12月31日(火) 明治座
公式サイト
https://le-hen.jp/
<関連リンク>
原田優一 Twitter
https://twitter.com/yuchan_yuchan_
原田優一プロフィール(ショウビズ)
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- 2019年以前の有料会員登録のきっかけ 2020年8月18日
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■もしかすると、ひとりでニマニマするのが楽しいのかもしれないですね
――役者のときに稽古場があまり好きじゃないというのは、それは繊細さというよりも辛さですか?
辛さのほうが先立ってしまうから、何が一番楽しいかって、役者だったら舞台に出ている時です。なかには稽古が好きという人もいるじゃないですか。
――結構聞きますよ。
本当ですか? 僕は稽古が辛くて仕方ないです。苦しいというか。
――稽古が好きな俳優さんは、その苦しいのが好きということなのかしら?
そうかもしれないですね。あとは、みんなで作っている、1個のものを作り上げているという期間が楽しい、プラモデルみたいなものですよね、きっと。組み立てているのが好きな人と、飾るのが好きな人とみたいな。
――なるほど。その組み立てる期間である稽古が、演出側になると楽しい。
そうです。
――それはご自身で組み立てていく、指揮を執るのが楽しいんですか? それとも、トライアンドエラーを繰り返して作る、みんなを見るのが楽しいんですか?
もしかすると、ひとりでニマニマするのが楽しいのかもしれないですね。稽古中がなぜ苦しいのかって、人といろいろ組み立てなければいけないじゃないですか。本番中は結構自分との戦いなんですよね。人とのやり取りって、共演している舞台上に居る人との対話と、お客様との対話だから、どちらにしろ、自分に目がいっていなければ本番はできませんが、稽古中は全てにアンテナを張って、いろいろな人との組み合わせで変わっていかなければいけなくて、それが稽古中の役者のやるべき事。周りへのアンテナを張るというか。ですが、演出家になったら、見て、そこの対話というよりは自分でどうしたいかというのをやっていく作業で、対自分なんですよね。
――ある種のひとり遊び的な楽しさが好きなのかもしれない?
そうだと思います。演出をやるにあたって、ひとり遊びが好きじゃなくて、全員と向き合っちゃうような人だと、多分すごく疲れると思います、演出家としては。
――なるほど。山盛りいるキャストやスタッフの感情的なことを抜いて、サディスティックに、自分脳で。
「だってこうしたいんだもん」みたいな。
――気を遣い始めたらきりがないですもんね。
そう、きりがないんです。最初に演出をやった時に、それをやっちゃったんです。全部を気にして、全部の感情を気にして、「あの人今何を言ったかな」「そこでコソコソ何を話しているんだろう」と気にしたのですが、「こっちから正解だったらそれでいいの、だって自分がやりたいことをやっているんだもん。それが演出家だもん」と思ったら楽になりました。
――そう思えて、しかも自分の嗜好に合っていたらこれ以上ない面白い仕事ですよね。
そうなんですよ。こんなに面白い事ないなと思うんです。
――しかもそれを明治座の規模でできるとなったら相当面白いんじゃないですか?
相当面白いと思いますよ、きっと滅茶苦茶大変だと思いますが。
――では、稽古期間は楽しいですね。
そうですね。まずは作る。台本を自分のなかでどういう風にしていくか、今日からまた妄想族が始まります。多分カフェとかに籠っています。いつも籠ってやるんです。
――たくさんの方々とのお仕事になりますね。
今まで年末のシリーズを支え続けているスタッフの方や、いつも自分がやってくれる振付の方などに、いろいろ支えていただきながら。舞台監督の岩戸(堅一)さんはずっと明治座で年末シリーズをやってくださっている方なので、どういう事ができるかのアドバイスをもらいながら作りたいと思っています。
■粟根まことさん椿鬼奴さん凰稀かなめさんたちが、男の子たちに与える影響が楽しみ
――先ほど平野さんと安西さんのお話だけ伺いましたが、今もうメチャメチャ期待してます、というキャストを数人ぐらい挙げるとしたら?
座長ふたりは置いておいて、粟根まことさんと、椿鬼奴さんと、凰稀かなめさんという先輩方。凰稀かなめさんは僕と同い年だそうですが、やはり大人たちが、どういう風にこのなかに混ざるのかなと。全員が、出身が違うじゃないですか。劇団☆新感線と吉本興行と宝塚歌劇団の、この3人がまたどういう影響を男の子たちに与えるのかすごく楽しみですね。
――皆さん初めましてですか?
皆さん初めましてです。
――何かお話されました?
まだなんです。まだ凰稀さんと鬼奴さんはお会いしたことがなくて、粟根さんは撮影の時にお会いして、ちょっとお話はさせていただきました。まだ当時はふたりとも台本がどのようになるかわかっていませんでしたので「よろしくお願いします」程度にしかお話していませんが、もの凄い方だなと。刀を持っていただいているのですが、持ち方からして完璧なんですよね。空気の作り方というか、瞬時にしてスパッと入るみたいな。凄いなと思いました。
――ここに粟根さんが出るのは凄い事ですよね。じゃあよく知っているメンツなどは?
よく知っているメンツですと、加藤啓さんが“きりん”というのが、やらかしてくれるだろうなと思います。
――加藤さんはこれまでスパイス的な役が多かったですが、今回は比重が多いですね。それがすごく楽しみなのですが。
そうですね、だいぶ多いですね。上演時間が延びる原因が、だいたい啓さんなので(笑)。今回こそ抑え込まなければと思いますが、ある程度自由にやっていただきたいと思います。
――あと触れておきたい方はいますか?
あと、私はWキャストになるので、内藤大希が出演します。マリウスなふたりです。歌枠として書かれている役ですが、ストーリーを粟根さんが話していて、それを聞く役が、僕らが演じる徳川家康です。
■最終的には、明智と信長がどうなるか。1個のメッセージをそこで込めたい
――祭シリーズならではの、今回の物語を作る上で、何か肝にしている事はありますか?
最終的には、明智と信長がどうわかりあうかですね。全然違うところから始まって、そのふたりがくっついて、結果としてこのふたりの関係性も分かり、そこでどういう風になるか。今のところの1個のメッセージをそこで込めたいんです。それが切なさや、結局人が抱える事の代弁になればいいなと思います。「人になる」というか。歴史上の人物だし、こんな設定ですが、結局みんなが人に見えたら、お客様も共感できますし、そこで同情したり、反発も含めてもっていっていただけるんじゃないかなとは思いますね。
――2部は、今回いつもとは少し違うんですよね。
1回構成を組んでみて新しくしたのですが、やはりお客様が求めている「2部ってこれだよね」というものは、単純にベースとして置いておいて、グループだったりそうじゃなかったり、いろいろありますが、いろいろなオムニバス的な事を、ライブテイストにのせて贈るみたいなことを考えています。
――グループのいつものだけじゃなく、ちょっとした切り口が加わるような感じですか?
そうですね。お客様がペンライトを振れる状況ではあると思います。
――安定の三上(真史)さんが司会にいらっしゃいますね。
そうなんですよ。安定の名司会者がいらっしゃいますので安心です。
■第1部は馬鹿馬鹿しさは残しつつちゃんとした芝居、第2部は年末のお祭り感で
――では最後に、楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
年末シリーズは、楽しみにしてらっしゃる方、毎年恒例の行事と思ってくださっている方もたくさんいらっしゃって、そういう方たちの期待にも応えたいですし、今回初めて観る方も置いてけぼりじゃなくて、ついて来られるような楽しい舞台にします。第1部は年末ならではの馬鹿馬鹿しさは残しつつも、壮大なスペクタクルに見えるような音楽も入れて、ちゃんとした1本の『麒麟にの・る』という芝居を作りたいと思います。うって変わって第2部は、年末のお祭り感が戻ってきました、という感じです。合計4時間、皆さんが明治座で2019年を締め括れるようなお祭りを作りたいので、1部、2部、色が違うように作れたらいいなと思います。番外編ではありますが、これはこれでまた違った色で良かったねと言っていただけるような、“原田テイスト”を入れて作っていきたいと思っております。
※原田優一さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは2020年1月19日(日)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
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俳優・原田優一さんが演出をする時、俳優さんならではの経験を活かした目線で演出をされてるんだという深いお話が聞けて、とても興味深かったです。
このお話を踏まえて見る『麒麟にの・る』が非常に楽しみになりました。
1部のお芝居はもちろん、2部の祭りも楽しみです。