「明治座。フライング使えます、と」、『麒麟にの・る』原田優一インタビュー(上)

原田優一さん=撮影・岩村美佳

2011年から年末の上演が恒例となっている演劇製作会社「る・ひまわり」と明治座による「る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ」。2019年は、織田信長と明智光秀を描く『明治座の変 麒麟にの・る』が12月28日(土)から12月31日(火)まで、明治座で上演されます。主演は平野良さんと安西慎太郎さんで、平野さんが明智光秀役、安西さんが織田信長役をつとめます。今回、演出を担当するのは原田優一さん。役者であり演出家でもある原田さんは、これまでに祭シリーズの出演経験がありますが、このシリーズの演出を担当するのは初めて。原田さんにインタビューし、どんな構想を描いているのか、また演出家の面白さなどについて伺いました。

原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

――原田さんが祭シリーズの演出をされると知ったとき、「ついに!」と思いましたが、お話があった時はどう思われましたか。

びっくりしました。これまで祭シリーズに2回出させていただいて、雰囲気はわかっていましたし、本当に年末にお客様が楽しみにしてくださっているシリーズだとよくわかっているので、お話があった時に、最初はすごくプレッシャーは感じました。「来たぁ!」と思いまして。その前の年に、いつも演出をされている板垣(恭一)さんが「もう他の仕事が入っていてできない」と話していて、じゃあこのシリーズはどうするんだろう、1回休むのかなと思っていましたが、やるとなって、僕に演出のお話が来た時に「ええっ、マジかよ」みたいな感じでした。僕は板垣さんをすごく信頼していますし、いつも何かを作る時に絶対声をかけてくださったり、すごく信頼関係がお互いにあるので、板垣さんに「こういうお話を頂きました、とりあえず他の人に板垣さんの演出の代わりをやらせるのならば僕がやりたいと思ってお受けします」と報告しました。板垣さんが「何かあったら絶対相談してきてね、いつでも相談に乗るからね」と約束してくださって、心強いなと思いました。それと、企画に際して、プロデューサーが、ちょっとキャストの平均年齢を高めていこうかなと仰っていたんです。新たに若いキャストが追加になって、結果、平均年齢がグッと下がったのですが、最初に僕がやると決まった時に伺っていたキャストが、結構平均年齢が高めで面白いなと思って。今回は「番外編」と銘打っていますが、それで今までシリーズを支えてきたメンバーをメインとしてやりたいと仰っていたんです。

――確かに今年はおなじみの皆さんが揃っているなと思いました。

そうなんです。頼もしいですし、やはり年末シリーズは、皆さんの“引き出し”というか、その年、今年だと2019年にどれだけインプットしてきたか、役者としての技術を発散する場なので、皆さんがそう捉えてくださっていると思いますが、ここで「祭りだ!」と1年の総決算をする、洗いざらい明治座に落として帰っていく場になっていると思います。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、「手練れの人たち」が揃った『麒麟にの・る』のキャスティングがどのように進められたのか、主演の平野良さんと安西慎太郎さんの違いについて、他のキャストの方について、『麒麟にの・る』のストーリーなどはどのように作られていっているのかなどについて話したくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。12月20日(金)掲載予定のインタビュー「下」には、これまでの出演と演出の経験を通して考える「稽古と本番についての役者と演出家の思いの違い」や、両座長以外の出演キャストについてのお話など、インタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■自分が得意としているのは展開の速さや、音楽を味方にすること

■脚本の赤澤ムックさんとプロデューサーと、よく3人で妄想会議をする

■役者としても色が違うふたり。似ていないから両座長というのがすごく立つ

■演出は、出てくるのを待つ仕事だと思っている。与えるのは最終手段

<る・ひまわり×明治座年末“祭”シリーズ『明治座の変 麒麟にの・る』>
【東京公演】2019年12月28日(土)~12月31日(火) 明治座
公式サイト
https://le-hen.jp/

<関連リンク>
原田優一 Twitter
https://twitter.com/yuchan_yuchan_
原田優一プロフィール(ショウビズ)
http://www.show-biz.jp/profile/yuichi-harada/

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原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■自分が得意としているのは展開の速さや、音楽を味方にすること

――ある種、手練れの人たちが揃いましたね。

そう思います。だからキャラクターも結構バラバラですし、ジャンルもいろいろなので、そういう人たちが集まったらこういう面白い事ができました!というような、本当に年末の化学反応の大決算祭りみたいな感じですね。

――なるほど。キャストの年代が上がるのは、原田さんとしてはよりプレッシャーはないんですか?

でも、それだけアウトプットを期待できるので、好きなようにやっていただいて。材料を頂けたと自分は思っているので、経験者の方がいてくださるのは、むしろありがたいことです。

――なるほど。熟成した高級素材が揃いましたみたいな感じでしょうか。

そうですね。フレッシュな面々もいて、そういう方たちにはフレッシュさやエネルギーで、思う存分、体力のある限り舞台じゅうを走り回っていただきたいですし、お客様に迸るエネルギーを飛ばしていただきたいと思っています。

――原田さんはこれまでにも演出を何作品かされていますが、年末シリーズにご自分が参加されていて、これまでの演出を担われてきた板垣さんのこともよく知っているうえで、この作品を演出するのはいかがですか?

このシリーズを知っているのもそうですし、それを期待しているお客様もすごく多くいらっしゃるので、その期待には添いたいと思います。「これはもう絶対的なもの」というものは出したいと思いますが、自分が得意としているのは展開の速さや、音楽を味方にすること、ミュージカルを作っているので、そういう意味では、自分の強みを演出としてここに入れたいとは思っています。今までは自力でセットを動かすことが多かったのですが、今回は明治座なので、機構がパーフェクトに揃っている劇場なんです。

――確かに。

だからそういう機構も、1回自分でシミュレーションしながら、模型をニマニマしながら夜中に動かそうと(笑)。それが一番楽しい作業なんです。自分が「これがこうなって、こうして……」と考えたものを、皆さんが体現してくださるわけじゃないですか。演出って、こんな面白い事ってないんですよね。夜な夜な自分の机の上でやっていた事が、何人もの手によって形になる。

――しかも今回は劇場が大きいですね。

そうなんです。最初に企画で装置の事を話していて「フライングって使えますかね?」みたいな話をした時に「使えます」と。今回、平野良君たちを客席に飛ばすので。

――おお! 盆も廻し、花道も通って?

さらに、セリも使い、映像も使うつもりです。自分らしく、大事な所や流しちゃいけない所はピックアップしつつ、展開を速くしていき、色んな情報がお客様にクリアに入ればいいなと思うんです。

――キャストの数も多いですね。

エンタメをその人数でしたいなと思っています。

――最近の祭シリーズは、音楽、ミュージカル色が徐々に強くなってきています。今年はいかがですか?

音楽色も強めかなと思います。ただ、ミュージカルでよくあるような、台詞を言って「1曲歌います、では聞いてください」ではなく、効果的に、出てくださるキャストの皆さんがよく見えるように、またミュージカルとは違った形で音楽を入れていきます。音楽の伊藤(靖浩)さんとは『デパート!』という作品で1回組ませていただいたことがありますが、彼の音楽の作り方は本当に天才的なところがあるんです。芸術家というかアーティストのような感じの作り方なので、「こんな感じで」とオーダーしたらきっと面白く作ってくださるんだろうなと思います。そちらも楽しみにしていただきたいです。

原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

■脚本の赤澤ムックさんとプロデューサーと、よく3人で妄想会議をする

――今回の物語は、本能寺の変をベースに、織田信長と明智光秀が主軸に描かれるそうですが、ストーリー作りにもかなり関わられているんですか?

そうですね。脚本の赤澤ムックさんとプロデューサーと、よく3人で妄想会議をするんです。こういう脚本にしていくという段階で、「この人がもうちょっと目立つには」「この人を悲しくさせるにはどうしよう」「こことここは結託しちゃってよくない?」とか、そういう夢のような妄想を3人のなかで描いて、それをムックさんが文章にし、台詞も足してくださいます。今回も、人間関係が非常に入り組んでいて、チラシには「トンデモ設定」と書いてありますが、現代と昔のタイムスリップなどを今回は入れているので、「もしもこの人がこういう性格だったら本能寺の変はどうなっているだろう」というのをうまいこと出せたらいいなとは思っています。

――プロットを拝見した限りでは、そこまで突拍子がない感じではないですよね。

そうですね。最終的に、このチラシの飛行機が出てきますが、これがどういう風になるのかが最後のほうにわかるかな。それがトンデモ設定なんですが。

――なるほど、じゃあ物語の最後の最後まで、そのトンデモ設定はお楽しみにですね。今回は、座長が平野(良)さんと安西(慎太郎)さんで、原田さんもよく知ってらっしゃるおふたりかなと。

良君は『FACTORY GIRLS』で共演していて、それが初めましてでした。先に共演しておいてよかったなと思います。どういう風に良君が作ってくるか、役に向き合うことや芝居をどう考えているか、一緒にやらせていただいて、すごく共感したんです。何を面白いと思っているかなど、ツボが一緒なんですよね。

――例えば?

笑いどころや「ん?」と思うところとか。ふたりで一緒に飲みに行ったりもしますが、すごく話が合って、とても仲良くしていただいているし、今は共演者としてですが、作品作りをするのがとても楽しみです。しんた(安西)とは共演しているので、彼がどれだけ面白いことをやってくるか、どういうのが得意なのかは知っています。今回信長をやっていただくにあたっては、彼のミステリアスな部分や、自分はいつもこの役を“サイコパス”と言いますが、彼の謎な部分がうまく出ればいいなと思っています。

原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

■役者としても色が違うふたり。似ていないから両座長というのがすごく立つ

――ふたりを掛け合わせてみると、演出家目線でどうですか?

ふたりが意外にも、あまり知り合いじゃなくて、まだ出会ってそこまで経っていないんですって。今回たまたま会った時に初めましてをして、「今度一緒にできたらいいね」と話していたらこの共演が入ったらしいので、「ご縁だね」という話をしました。多分役者としても全然色が違うふたりだと思いますし、それが信長と明智という、全然キャラクターが違うふたりにしているので、そこを掛け合わせるのと、役を掛け合わせるのが結構似たような感じの違いっぷりで面白いなと思いました。似ていないから、両座長というのがすごく立つ。パフォーマンスも全然違う色でやると思いますし、ふたり合わさった時に全然違って面白い。似ていないからこそ混ざらないというか。

――今回は対立構造の作品ですよね。平野さんとはご自身が似ていると仰いましたが、安西さんとは全然違う?

違うと思います。だから、しんたが出してくるものが、自分にとっては意外性がある。もちろん良君もそうですが、自分自身が求められているものを結構斜めから攻めたいタイプなんですよね。予想を裏切りたい、「そう来たか」というものを出したいタイプで、多分良君もそうだと思います。「こう言ってやったけど、どない」みたいな(笑)。しんたの場合は「俺はこれですから」というように自分の引き出しをバッと見せる。それが、僕はふいを突かれる考え方だから、多分しんたは違う考え方なんだなと。

――まっすぐドンって。

そう。まっすぐドンって出してきますが、「ああ、そう来たか」と自分にとっては意表を突かれるところなんですよね。

――斜めから来るだろうという想定を、逆にしてしまっている。

そうそう。それが違うパフォーマンスの種類だから、すごく面白いんですよ。「そう来たか!」ってしんたにも感じます。本人は多分ストレートに開けてくれているつもりなんですが、種類が違うから意表を突かれる。

――なるほど。じゃあ演出の仕方もふたりで変わってくる?

きっとそうだと思いますね。

原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

■演出は、出てくるのを待つ仕事だと思っている。与えるのは最終手段

――今回は演出家でもあり、出演もされますね。両方というのはいかがですか?

基本的には結構スイッチングするので、演出をやっている時は全然出たいと思わないですし、役者脳はあんまり使わないんですよね。

――違う脳が働く?

そうなんです。だからいつも演出する時は出ないと決めていたのですが、でも今回はまんまと出る(笑)。自分の場合は、演出をやる時は、自分がやってみせるということがあんまりありません。演出脳で見ているから「今こう見えているんですが、どういう風にやられていましたか? もしそうじゃなく演じていて、気持ちが違ったとしたら、こういう風に変えたほうがいいのかもしれないね」というやり方ですり合わせます。

――なるほど。手練れの役者さんは引き出しもたくさんあると思いますが、若い人たちがまだその引き出しが足りないなとなった時は、何か提示したりするんですか?

そうですね。でもあんまり自分はガツガツ行かないんですよね。「来いよ!」とはなかなか言いません。

――向こうから来るのを待つということ?

そう。もしなかったら、こっちから開けてもないんですよね。

――なるほど。

ないなと判断した時はこちらから与えます。でもそれは最終手段なので、ひたすら待ちます。演出は、出てくるのを待つ仕事だと思っているので。役者としてやっていた時に、やはり待ってくれる演出家って、最高に自分は嬉しい。それまでにはものすごく提示してもらわなければダメなのですが、すごく説明を頂いて、自分が出すまで待ってくれる演出家に自分はなりたいなと思っています。待てる人ですね。

原田優一さん=撮影・岩村美佳

原田優一さん=撮影・岩村美佳

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“「明治座。フライング使えます、と」、『麒麟にの・る』原田優一インタビュー(上)” への 1 件のフィードバック

  1. 山茶花 より:

    インタビュー記事興味深く拝読しました。役者から出てくるのを待ってくれる演出をなさる原田さんが、どんなふうにるひまの祭シリーズを見せてくださるのか、ますます楽しみになりました。
    機構の駆使、トンデモ設定、スピーディな展開、期待しています!

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