「鹿賀丈史さんと泣きながら抱き合った」、『生きる』新納慎也インタビュー(上)

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

黒澤明監督の映画『生きる』をオリジナルミュージカルにして2018年にTBS赤坂ACTシアターで上演されたミュージカル『生きる』が、黒澤明生誕110年記念として2020年10月9日(金)から日生劇場で再演され、富山・兵庫・福岡・名古屋でも上演されます。余命半年を宣告された男が、残された時間を人としてどう生きるかを追い求める映画のテーマを活かしつつ、エンターテイメント性を全面に出した舞台として大きな評価を集めた初演から2年。ストーリーテラーでもあり、主人公・渡辺の人生に大きく関わる「小説家」役(新納慎也さんと小西遼生さんのWキャスト)を再び演じる新納慎也さんにインタビューしました。初演時の思い出からコロナ禍の自粛生活で感じたものまでを、たっぷりと語ってくれたインタビュー全文を「上」「下」に分けて紹介します。

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

──再演の報を聞かれた時にはいかがでしたか?

明確にいつだったかは覚えていないのですが、結構早い段階で再演が決まったんです。でもそれ以前に、初演をやっている時に「再演はあるな」と思っていました。誰にもそう言われた訳じゃないんです。でもそれくらい手ごたえがあったし、この作品は初演だけで終わるべきじゃないと思っていたので、正式に聞いた段階では「来たか!」という感じでした。本当に大好きな作品で、初演で僕自身が感動しましたし、愛した作品だったんです、演じた役も含めて。だから純粋にまたこの世界に戻ってこられることが嬉しかったです。

──初演は、観客側には「この作品がミュージカルになるの?」という驚きがあったと思うのですが、出演される側としてはいかがでしたか?

それは僕も全く同じです。最初は「これをミュージカルにするの!?」と思いましたし、ひとつずつ作っていく過程では、様々ああでもない、こうでもないと、試行錯誤の連続でしたが、完成した時には「これをミュージカルにしようと最初に思った人、天才だ」と思いました。もちろんそこに至るまでには、各セクション皆の力が重なっていったからこそなのですが、やはりなんと言っても(宮本)亞門さんの功績が大きかったと思います。ミュージカルを愛し、ミュージカルを知り尽くした人が、こういう作品をエンターテイメントとして仕上げる。演出家によって色々なやり方がありますし、この作品も演出家によっては様々に形が変わっていったと思います。この作品を初演するにあたって、亞門さんが「黒沢映画をエンターテイメントにしよう!」と振り切った考え方をしたことが、成功につながったのではないかと思います。

──初演時に、特に思い出に残っていることは?

思い出だらけなんですけど、やっぱり鹿賀丈史さんですね。初演はWキャストが固定だったので、僕は鹿賀さんの渡辺とだけ演じたこともあって、思い出の99.8%は鹿賀さんのことしかないんです。ひたすら鹿賀さんを愛して鹿賀さんと向き合った初演だったんです。それは僕がどうこうというよりも、やはり鹿賀さんから受けた影響がとても大きかったんですね。最初は主演の鹿賀さんをサポートできれば、というようなちょっとおこがましい気持ちもあったんですが、気がつけばぐんぐん引っ張ってもらって、どんどん鹿賀さんに影響されて、僕もどんどん変わっていく。つまりまさしく劇中の渡辺と僕が演じる小説家との関係性そのものでした。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、初演時の思い出、自ら演じる小説家役についてなどインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。8月4日(月)掲載予定のインタビュー「下」では、自粛期間をどう過ごしていたか、再演に向けての想いなどインタビューの後半の全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■千秋楽、カーテンコールの幕中で鹿賀さんと泣きながら抱き合った

■映画の小説家は、かなりダークな印象が強かったんです。でも…

■ミュージカルバージョンには、生きるエネルギーがある人が必要

■「人生の愉しみ方」では、小説家のような部分が僕にもあるのかも

<ミュージカル『生きる』>
【東京公演】2020年10月9日(金)~10月28日(水) 日生劇場
【富山公演】2020年11月2日(月)~11月3日(火・祝) オーバードホール
【兵庫公演】2020年11月13日(金)~11月14日(土) 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
【福岡公演】2020年11月21日(土)〜11月22日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【名古屋公演】2020年11月28日(土)~11月30日(月) 御園座
公式サイト:
http://www.ikiru-musical.com

<関連リンク>
新納慎也 公式サイト
http://www.shinya-niiro.jp/top/
新納慎也 オフィシャルブログ『ニイロの思考カイロ』
https://ameblo.jp/shinya-niiro/
新納慎也Twitter
https://twitter.com/ShinyaNIRO
新納慎也|ワタナベエンターテインメント
https://www.watanabepro.co.jp/mypage/10000087/

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新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

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■千秋楽、カーテンコールの幕中で鹿賀さんと泣きながら抱き合った

──劇中の渡辺と小説家との関係性そのものだったんですね。

だから思い出のどのページをめくっても鹿賀さんがいるんです。はじめて読み合わせをして、鹿賀さんが素晴らし過ぎたことにはじまって、僕ら二人がこっそり初日を開けるまで…こっそりって言うのも変なんですけど(笑)。市村(正親)さんのペアとコニタン(小西遼生)のペアで作品が初日を開けて、その初日を開けるために、ゲネプロや数回の通し稽古も市村さんペアでやっていたので、シングルキャストの皆さんもどんどん練れていたんですね。そこから鹿賀さんと僕のペアが初日を迎えた時には、カンパニーには初日の雰囲気はまるでなくて!(笑)。

──そうだったんですね。

そうなんです。だから鹿賀さんと二人だけで「初日だね、頑張ろうね」と言い合ったことも思い出します。ですから千秋楽のカーテンコールで再び幕が開くまでの、幕中で、二人で泣きながら抱き合ったことも強烈な思い出です。プロデューサーがその瞬間の写真を撮ってくれていて、その写真はツィッターやブログにもあげているんですが、見て頂ければ全てが伝わるだろうと言いますか、初演の全てを物語ってくれていると思います。

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

■映画の小説家は、かなりダークな印象が強かったんです。でも…

──さきほどインタビュー用に撮影しているお姿、素敵でした。撮影中は役柄でいらしたのですか?

どうでしょう。普通の撮影の時には僕本人なのですけれども、今日は衣装での撮影でしたから、役だったりしたのかな。

──ドキドキする感じでした。その小説家役については、どうですか?

映画の小説家は謂わばメフィストフェレスのような役柄で。かなりダークな印象が強かったんです。もちろんそれは踏襲したかったですし、それを見込んで僕にオファーが頂けたんだろうということもわかっていました。でも実際に台本が出来て、読み合わせをし、更に稽古が進んでいくうちに、小説家が変わっていくことがこの物語の中でも非常に重要だなと感じて。と言うのも、渡辺の生き方を見て、心動かされ変わっていくということは、つまりお客様の立場と同じなんですね。

小説家はこの作品に於いてストーリーテラーの役割でもあるので、物語をどこかで俯瞰で見ているけれども、渡辺に一番影響される人という意味で、お客様との懸け橋でもあるんです。しかも最初にも言いましたが、亞門さんの作品創りがエンターテイメントを重視している中で、渡辺という人は無口な人なので、エンターテイメント部分は小説家が担わなくてはいけない、ということが稽古の中でわかってきたんです。そうすると映画の中のダークな部分だけを追求して、僕があくまでも妖しく存在していたのでは、舞台が跳ねないなと。

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

■ミュージカルバージョンには、生きるエネルギーがある人が必要

──「跳ねない」と言うのは?

「跳ねない」は僕らの間ではよく使う言葉なのですが、所謂トーンが変わらないという意味です。ですから『生きる』のミュージカルバージョンには、生きるエネルギーがある人が必要になるなと思いました。そもそも渡辺が生きるエネルギーがない状態から登場しますから、作品をエンターテイメントに仕上げる為には、生きるエネルギーに満ち溢れている人物が物語を回した方が作品が跳ねるので、そこは特に気にかけていました。あまりにも役だけに没頭して暗くなり過ぎないようにと。お客様とのキャッチボールで、その日その日の会場を盛り上げないといけなかったので、「さぁ!」という台詞があるんですが、ここが結構大事だなということは考えていました。

──観客を巻き込んで盛り上げていくというのは、お得意なのでは?

いや、よくそう言われるんですが(笑)自分ではあまり得意とは思っていません(笑)。でもよく言われるので、そうなのかもしれない(笑)。でもそういう客席の空気を巻き込んでいくことと、役柄のダークな部分との兼ね合いはいつも意識していましたね。

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

■「人生の愉しみ方」では、小説家のような部分が僕にもあるのかも

──小説家は渡辺に「人生の愉しみ方」を伝授していこうとする役柄ですが、新納さんご自身が、これが「人生の愉しみ」だなと思っていらっしゃることは?

あー、そう訊かれるとまさしく小説家のような部分が僕にもあるのかもと思いますが、僕小学校か、或いは中学校にはなっていたかも知れませんが、卒業文集に「毎朝同じ時間に起きて、同じ時間に電車に乗って同じところに行き、同じ時間に帰ってくるような人生は嫌だ」って書いているんです。

──少年の頃から!

そうなんですよ。そういう生き方が本当に嫌だったんだなと。刺激が好きなのか、変化が好きなのか、とにかく突発的に起こる何かに刺激を受け続ける人生でありたいと思っていましたから、それが愉しめる人生でありたいなと思います。もちろん現在に至っては、コツコツと定時に仕事をはじめて、定時に終わるような生き方を選んだ方が良かったのかな…と思うこともありますし、渡辺のように与えられた仕事を淡々とこなしていく…と言ってもね、今は皆さん仕事が大変でとても定時に帰れない人も多いと思いますから、そういう生き方を否定している訳では全くないんです。そんな生き方も良かったかもと思う瞬間も多々あるのですが、やっぱり僕は今、こういう次に何が頂けるかわからない、という仕事を楽しんではいますね。

今回、世界中がコロナ禍に見舞われて、大変だと思うことも多くありますし、心痛めることも多いですが、一方では、この状況からも何か得ることがあるんじゃないか。楽しめないからこそ、この状況、突然の非日常感を何とか楽しめないか?が、僕の人生訓でもあると思います。

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

新納慎也さん=撮影・伊藤華織

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“「鹿賀丈史さんと泣きながら抱き合った」、『生きる』新納慎也インタビュー(上)” への 2 件のフィードバック

  1. たま より:

    ミュージカル化することで物語が伝わり易くなり、ジワジワ〜っと沁みる作品だったのが印象に残っています。小説家の担う役割、新納さんが配役された意味がよく分かりました。再演が更に楽しみになりました。
    無事に上演されるのを心から願っています。

  2. カスミ より:

    初演拝見し、再演を心待ちにしていた作品です。新納さんだからあの小説家だったのだというのをとても感じられるインタビューでした。写真もどれも素敵です!ありがとうございました。続きも楽しみにしています。

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