「YouTubeで学ぶ英語」の第80回は、10月がBreast Cancer Awareness Month :乳がんに対する意識を向上させる月間なので、ある乳がん患者の動画を取り上げます。コロナの時代にニューヨークで闘病生活に入ったサラさんの言葉から学んでいきましょう。
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サラ・サンダースさんはまだ35歳のニューヨーカーで、今年の2月に浸潤性の高い進行性の乳がんと診断されました。アメリカにおけるコロナ感染拡大の中心ともいえるニューヨークでの癌闘病について話している部分を聴いて、( )の中を書き取ってください。
When you get a cancer diagnosis during a ( 1 ) pandemic, living in the epicenter of it all, you do everything you possibly can to just ( 2 ) alive. 新型コロナウイルスの大流行のさなかに、がんと診断されたら、しかも流行の中心地に住んでいたら、生きるために出来る限りのことをしますよね。
2月に進行性乳がんの診断を受けたサラさんですが、1月までの自分をどんな人間だったと言っているでしょう。( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
I was a very silly, dedicated, hard-working, ( 3 ), always wanted to experience some of the big things in life. Always wanted to go to concerts always wanted to travel, always wanted to enjoy ( 4 ) 私は、ひょうきんで、献身的で、働き者で、のんきで、人生の大切な経験を味わいたいと思っていました。いつだってコンサートにいきたかったし、旅行もしたかったし、ニューヨークが差し出してくれるものはすべて楽しみたいと思っていました。
2020年2月のニューヨークといえば、コロナ流行の初期の最前線だったわけですが、どんな経緯だったのかとジャーナリストのケイティさんにきかれて、説明しています。サラさんの答えを聴いて( )の中を書き取ってください。
Sarah : I went in for my annual exam with my OBGYN and she felt a ( 5 )on my breast. 産婦人科に年に一度の定期健診に行ったんです。そしたら胸にしこりがありました。
Katie : Sarah was diagnosed with triple negative breast cancer and learned that had already spread to her lymph ( 6 ) サラさんは、トリプルネガティブ=エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体を持たず、HER2 発現がないタイプの乳がんと診断され、しかもすでにリンパ節に広がっているとわかりました。
Sarah : It’s a type of breast cancer that you, that’s one of the worst. But I went into this fighter mode : I didn’t cry. I was just like, ” let’s go.” これは、最悪の種類の乳がんです。でも私は、戦闘モードに入りました。泣きませんでした。「さあ、がんばろう」というふうに考えたんです。
Katie : But there was more bad news. In March, Sarah tested ( 7 ) for BRCA, which indicates a high risk for other types of cancer. しかし、悪いニュースは続きました。3月に、サラはBRCA遺伝子異常があると診断されました。他の種類のがんを発生するリスクが非常に高いということです。
Sarah : And I broke. I collapsed. I literally fell into my mom’s arms. And Isaid, “Cancer’s gonna take me.” “This is it, this is what my life has in ( 8 )” 私の心は折れました。落ち込んで、文字通り母の腕の中に倒れこみました。そして、「私はがんで死ぬのよ」と言ったんです。「もうこれでおしまい、人生が私に用意したものがこれだなんて」
悪性度の高い乳がんと診断されただけではなく、ひとりで立ち向かわなければならないのが、2020年のニューヨークの状況でした。COVID-19もまた広がっていたからです。サラさんの闘病の様子の最初の部分を聴いて、( )の中を書き取ってください。ひとつの( )にひとつの単語とは限りません。
Katie : Living in New York City, Sarah got firm direction from her doctors. ニューヨークに住んでいるために、サラは医師から断固とした指示を受けていました。
Sarah : Do not leave your apartment; it’s not safe unless to come here. When I go to treatment, I wear everything but a hasmat suit. Two pairs of gloves each hand. It’s easier to say, it’s ( 9 ) sometimes. アパートを出ないこと。病院に来る以外は。安全ではないから。治療に行く時には、化学防護服こそ着なかったけど、それ以外はなんでもたくさん身につけました。手袋は2組。言うは易しよね。やるのは難しいわ。
Katie : She takes a special car service to the hospital alone. サラは特別な車で病院に行きます。ひとりで。
Sarah : Nobody’s ( 10 ) to come with you; no friends, no family. 誰も一緒に行くことは許されません。友だちも家族もダメなんです。
かなり前になりますが、筆者も乳がんと診断され、ショックを受ける間もなく、治療の方針を立てたり、仕事の始末をつけたり、いろいろな決断を迫られた経験があります。家族や友人、乳がん経験者の諸先輩方からの協力や手助けがなければ、あの時期を切り抜けることが出来ただろうかと思います。サラさんの場合は、悪性度の高い進行性癌と診断され、その後遺伝子異常も発見されて、他の種類のがんを発症する可能性が高いことを指摘された人生最悪の時期とCOVID-19の感染拡大の時期が重なってしまいました。毎年10月はBreast Cancer Awareness Month :乳がんに対する意識を高め、早期発見のための検査を促進する月にあたります。しかし、2020年の10月はまた特別な意味をもつ乳がん啓蒙月となりました。コロナの時代、それでもがんは、定期健診や啓蒙月に検査をする必要があります。早期発見のためにも検診をしてほしい。そのためにも、政府には、科学的根拠に基づくしっかりとしたコロナ対策をお願いしたいです。
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■聴き取りの答えと解説
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■聴き取りの答えと解説
When you get a cancer diagnosis during a COVID pandemic, living in the epicenter of it all, you do everything you possibly can to just stay alive.
1. COVID coronavirus disease 2019年に始まった新型コロナウイルスによって起きる病気を、頭文字をとってCOVID、もしくはCOVID-19と呼んでいます。
2.stay (動詞)とどまる、残る 自動詞 stay に、叙述的用法の形容詞 alive を添えて、「生き続ける」となっています。
I was a very silly, dedicated, hard-working, carefree, always wanted to experience some of the big things in life. Always wanted to go to concerts
always wanted to travel, always wanted to enjoy what New York had to offer.
3.carefree (形容詞)のんきな、心配のない、無責任な、むとんちゃくな
4. what New York had to offer 先行詞を含む関係代名詞 what が、動詞 enjoy の目的語となっています。「ニューヨークが差し出してくれるものはすべて楽しみたいと思っていた」
Sarah : I went in for my annual exam with my OBGYN and she felt a mass on my breasts.
5. mass (名詞)かたまり、密集、集まり、大衆 医学的には体内にできたこぶ状の腫瘤を意味します。良性と悪性のものがあり、悪性のものが「がん」です。
Katie : Sarah was diagnosed with triple negative breast cancer and learned that had already spread to her lymph nodes.
6. node (名詞)結び目、結節 cf. lymph node リンパ節
Sarah : It’s a type of breast cancer that you, that’s one of the worst. But I went into this fighter mode : I didn’t cry. I was just like, ” let’s go.”
Katie : But there was more bad news. In March, Sarah tested positive for BRCA, which indicates a high risk for other types of cancer.
7. positive (形容詞)明確な、実際的な、建設的な、陽性の cf. The test was positive/ negative. 「検査は陽性だった / 陰性だった」
Sarah : And I broke. I collapsed. I literally fell into my mom’s arms. And I said, “Cancer’s gonna take me.” “This is it, this is what my life has in store.”
8. store (名詞)店、備品 cf. in store 用意して、蓄えて、待ち構えて what is in store for us ? 「これから私たちには何が待ち構えているんだろう」
Living in New York City, Sarah got firm direction from her doctors.
Sarah : Do not leave your apartment; it’s not safe unless to come here. When I go to treatment, I wear everything but a hasmat suit. Two
pairs of gloves each hand. It’s easier say, it’s easier said than done sometimes.
9. easier said than done 《諺》言うは易く行なうは難し、 言うのはやさしいが行なうのは難しい
Katie : She takes a special car service to the hospital alone.
Sarah : Nobody’s allowed to come with you; no friends, no family.
10. allow (動詞)~を許す、許可する ここでは、受動態の文章で使われています。Nobody is allowed 「誰も許可されていない」
■Sarahさんの動画残りの部分紹介
ひとりで病院に行って、治療を受けるサラさんは、患者のために働く医療関係者に感謝します。サラさんのアパートに来て、ずっと一緒にいてくれるお母さんにも感謝します。日常の小さなこと~窓の外の景色や、一杯の珈琲~に感謝するようになったと語るサラさんは、治療を続けています。夏には両方の乳房切除手術を受けました。単に「乳がん患者」やCOVID-19時代の「乳がん患者」としてではなく、自分らしい自分でありたいと語っています。
Sarah : Even during the pandemic, there’s people that are coming in to work every day, that can’t even see their families just because they want to be there for you. And they’ll talk to you like a human, not as a cancer patient. And my god, is that a welcoming and beautiful moment. パンデミックのときにも、毎日出勤してくる人たちがいます。家族と会えなくても、ただあなたのそばで役に立ちたいと来てくれるんです。そしてそんな人たちは、がん患者に対するようにではなく、人間として扱い、話しかけてくれます。ああ、神様、それは本当にありがたい、美しい瞬間なんです。
Katie : Your mom is there, Sarah. How has that helped? お母さまが一緒にいて下さるんですね、サラさん。そのことについてはどうですか?
Sarah : She’s been here from the start. She’s a mom you know, so it’s hard on her. But she’ll never show it. She’ll always be that kind of pinnacle of strength for me. My mom and I cook a lot, we play cards, we play Rummikube. I win, a lot. But we, we, we try and find just little ways to make us happy. ~They’re not pretty but they’re usually pretty good. Hope they’re pretty good. Actually, yeah. I did a pretty good job. The experience I have now versus a year ago opens your eyes to gratitude you need to have for life. Even just looking out the window and having a great little cup of coffee, I find gratitude in that because I can do it today. And I’ll focus on tomorrow later. 母は最初からいてくれました。彼女は「母親」ですから、すごく辛いだろうと思うんですが、決してそれを見せません。母は私の強さの頂点として、いつもそこにいてくれます。母と私はしょっちゅう料理をします。トランプで遊びます。ラミィキューブもします。私が勝つの。大抵ね。小さなことで、幸せになれる方法を見つけようとしているんです。~「見た目は良くないけど、普段はいい出来なんですよ。これもそうだといいな。あ、良い感じ。良くできてる」~今経験していることと、1年前のことを比べて、今は人生に必要な感謝の気持ちを持てるようになっていると思います。窓の外を見て、美味しい珈琲を一杯。それだけで感謝の気持ちがわいてきます。今日、それが出来るんだから。明日のことは、またあとで考えるんです。
Katie : Sara has several more rounds of treatment to go and this summer, she’ll undergo a double mastectomy. サラさんはあと数回治療を受け、夏には両方の乳房切除手術を受けることになっています。
Sarah : One of my favorite and least favorite things I think I keep hearing is, “Boy, will you have a story to tell when this is over.” I’m not just a cancer patient I’m not just a cancer patient during COVID. I will always still just be me. 耳にし続けていることで、良いなと思うときとそうでもないときがある言葉は、「これを乗り切ったら、人にきかせる話が手に入るなあ」というものです。私は単にがん患者とか、COVID期間中に闘病しているがん患者という存在ではないんです。私は、まだ、以前の私でもあるんです。