「レインボーフェスタ!2015×関西レインボーパレード」が10月10日(土)に大阪の扇町公園で開催されました。ひとりひとりの“性”があり、それぞれに“生”がある。それを祝うお祭りが関西で行われることや、関西でのレインボーパレードが今年で10回目を迎えるということを知ったのは、9月12日に行われた「バリコレ」の取材に行った時でした。バリアフリーファッションショーのスペシャルステージに、はるな愛さんをはじめとする「LGBT」やセクシャルマイノリティの人たちが登場し、セクシャリティーの多様性があることがあたりまえで、生き方がそれぞれ違うように性のあり方もそれぞれだということを、華やかなパフォーマンスを通して伝えてくれました。10月にはぜひ参加したいと思った次第です。当日、筆者が見て、感じて、考えたことをレポートします。
当日ステージでも紹介され、本部近くにずっと飾られていたFreedom詩人-輝さんの書いた言葉を、今あらためて読むと、本当にそうだなあと思います。今年のレインボーフェスタ!のテーマは「PRISM:プリズム」でした。レインボーフェスタ!というプリズムを通してみると、普段私たちが生きている社会が、人には男と女というたった2種類しかなくて、恋愛対象は異性だという画一的な一色に染められていることに気がつきます。普段は、そんな社会のプレッシャーの中で、なかなか自分らしさを出せない人たちも、10月10日の扇町公園では違いました。好きな格好をしておしゃれにスタイリッシュに、ありのままの姿で楽しんでいて、とても華やかでした。まだカミングアウトしていない、あるいはカミングアウトしないことを選択した人たちは、サングラスや仮面などをつけていて、そうした変装もまた、お祭りムードを盛り上げる雰囲気のあるものでした。
トップバッターは「NSM=」(エヌエスエムイコール)
会場にいたワンちゃんだって、こんなに素敵な衣装を着せてもらっていました。この犬は実は、トップバッターとしてステージに登場した名古屋のダンスグループ、「NSM=」(エヌエスエムイコール)のメンバー、なおちゃんのパートナーの方が飼っているワンちゃん「ぱーまん」ちゃんでした。
NSM=は、Nagoya Sexual Minority Equal 。2011年11月に結成されたグループで、プロフィールには「~『女の子が好きな女の子』や『恋愛に性別は関係ない』という子、『身体と心の性別が違う』という子、いわゆるLGBTのメンバーで活動しています。LGBTの存在を知ってもらうきっかけになれたら嬉しいです~」と書いてありました。グループ名のイコールには、「好きな人といたい気持ちはみんな同じ」「平等」「変わらない権利が欲しい」というような意味を込めたそうです。顔を出さないメンバーもいれば、オープンにしているメンバーもいる、名古屋のとってもキュートなアイドルグループ「NSM=」のステージ、手作りの虹色衣装も、オリジナルソングの心に響く歌詞も、とにかく元気いっぱいで楽しめました。
コミカルでいて胸がキュンとなる「虹組ファイツ」
ステージからもう一組、ご紹介したいのは「虹組ファイツ」の皆さんです。ホームページによると「~虹組ファイツ(にじぐみ ふぁいつ)は、LGBTシーンを拠点に「サークルとして」活動する男性アイドルグループ。2009年に結成され、現在活動6年目。20代から40代までの通算70名を超えるメンバーが活動に参加し、オリジナル楽曲のレコーディングやライブ活動を展開している」~ということで、この日もたくさんのメンバーがステージに登場しました。
サービス精神が旺盛で、歌も踊りもおしゃべりも最高にエンターテインメントしていました。最初の曲、オリジナルソング「恋愛DEBUT始めました」の歌詞とダンスで、もうすっかり心を奪われました。『さっ!みんないくよっ! 虹組ファイツ! 』という掛け声で始まるコミカルでいて胸がキュンとなる歌詞と、可愛らしい振付け。また機会があったら、「虹組ファイツ」のステージを見たいと思っているところです。
LGBT結婚式のブースも幾つかありました。結婚式プロデュース会社「Vraietable」さんのブースには、こんな素敵なウエディングドレスを着たモデルさんがアピールしていました。2015年2月からLGBT専門の結婚式をプロデュースしているのは、長年ブライダル業界におられた人たちです。ホームページのスタッフ紹介にはこんな風に書かれていました。~私たちはノンケ3人娘です。ただ愛に性別は関係ないことを知りました。そして結婚式に性別は関係ないことを知っています。婚姻が認められていない日本だからこそ結婚式を挙げて家族になる瞬間を大切な方々に見届けていただき承認をしていただいて正式なパートナーになっていただきたいと思っています。~
他にも、ホテルグランヴィア京都のブースでは、「まず英語のサイトを作りました」と担当の方がおっしゃるように、英語のパンフレットが飾られていました。伝統的でありながら特別な結婚式を、京都であげませんか?という呼びかけは、「同性婚」を望む世界のカップルにアピールするもので、今後、新しいビジネスにつながると思います。
虹色のお菓子やパン販売も
レインボーフェスタ!の会場には、セクシュアリティの多様性に関連した作品を展示したり、活動報告をするブース、物品販売や飲食物販のブースがたくさんありました。パンフレットによると45のブースがあって、全部を回ることはできませんでしたが、ホテルグランヴィア京都は、こんな虹色のお菓子やパンを販売していました。
色々なテーマのブースがある中で、特にウエディング関連のことが目に入ってくるのは、筆者がこのレインボーフェスタ!にやってきた大きな理由のひとつが、ステージで行われる結婚式「平等結婚式」を取材したかったからです。もともと、このイベントを知ったのも、バリアフリーファッションショー。そこで行われたユニバーサルウエディング(結婚式専用の車椅子「イスコ: Isco」を使った車椅子ユーザーの結婚式)が、すべての始まりでしたから。
世界ではじめて同性結婚法を施行したオランダ(2001年)を皮切りに、ベルギー(2003年)、スペイン、カナダ(2005年)、南アフリカ共和国(2006年)、ノルウェー、スウェーデン(2009年)、ポルトガル、アイスランド、アルゼンチン(2010年)、デンマーク(2012年)、ウルグアイ、フランス、ニュージーランド(2013年)と各国が同性婚を合法としてきました。2015年6月には、アメリカの連邦最高裁が「同性婚は合憲」「全ての州で同性婚が認められる」という判断を下しました。
日本でも同年4月、渋谷区が「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」、いわゆるパートナーシップ条例を可決・成立させています。世田谷区でも同様に同性カップルを結婚に準じる関係と認める方針を打ち出しましたし、日本の状況が変わってきたと感じていたところでした。2015年、10月10日、大勢の参加者の前で平等結婚式をあげるお二人、ひとみさんと淳子さんのことを知りたいと思ったのです。
お互いの合意のみに基づく、平等結婚式
ところで、「平等結婚式」とはどういうことでしょうか。ウエディングのスタイルとして、親族や友人、知人などの参列者を証人として行われる「人前結婚式」がありますが、今回のステージでの式は、キリスト教式で、牧師が式を執り行ないました。レインボーフェスタ!には、『平等結婚式は、お互いの合意のみに基づいて成立し、お互いのこれからを誓い合うセレモニーです』と書かれていました。「平等結婚式」は、equal marriage もしくは、marriage equality という英語から来たのではないかと思います。同性のカップルに、等しく婚姻(marriage)の道を開くということなのでしょう。
いよいよ主役のふたりが、虹色に飾られた赤いカーペットを歩いて、たくさんの参加者に祝福されてステージに向かいます。ふたりとも白いウエディングドレス姿、やや緊張した面持ちでした。
この式をおこなった牧師さまのお話が素晴らしいものでした。レインボーフェスタ!で結婚式を挙げたいという方はご応募くださいという呼びかけに応えて選ばれ、これだけの会衆の前で誓いを立てるふたりを気遣い、温かい言葉をかけておられました。以下が、川江牧師の式辞の冒頭です。
『わたしたちは今、ここに集まり、瓜本淳子さんと井上ひとみさんとが結婚し、互いのパートナーとして共に生きる決意を新たにするための式を挙げようとしています。神は、「人がひとりでいるのは良くない、助けるものを作ろう」と言ってふたりの人間を創造しました。それは決して結婚や恋愛を義務づけるものではなく、様々な違いをもって生きる人と人とが、互いに向かい合い、助け合い、対等に一緒に生きることを私たちに促すものです。そして今、瓜本淳子さんと井上ひとみさんは神の計らいによって出会いを与えられ、ここに二人がこれからますます愛し合い、助け合って生きることを神に誓おうとしています。この時が、神と人とに豊かに祝福された時となるように祈りつつ、この式を執り行ないます。どうぞここに立ち会っている皆さんも、お二人の結婚の証人として誠実にその役割を果たして下さい』
結婚する人たちだけが祝福されるのではない
式の後で川江牧師に話をうかがったところ、昨年もレインボーフェスタ!で平等結婚式をとりおこなったそうで、「誠実に愛し合うカップルが、異性愛のカップルと同様、平等に結婚が出来るようになることは良いこと。ただ、結婚という形だけがクローズアップされることのないようにと思います。結婚する人たちだけが祝福されるのではなく、それぞれの形で愛し合うこと、その多様なあり方が認められるべきだと思う」と話されました。とても腑に落ちるお話で、川江牧師に紹介してもらった「現代思想10月号 特集 LGBT 日本と世界のリアル」も、大変勉強になりました。自分の知識のなさ、感性の鈍さに気づかされました。感謝しています。
最も大切な、最も短い言葉とは?
牧師さまは平等結婚式の中で、ハワイの教会に書かれている「もっとも短い大切な英語の言葉」も紹介してくださいました。結婚式を挙げるふたりのためだけではなく、人が人とともに歩む上でとても大切な言葉だと話されました。
- 6つの英単語を使った言葉は、I was wrong. Please forgive me. (私が間違っていました。ごめんね。許して)
5つの英単語 You did the good job. (よくやったね)
4つの英単語 What is your opinion ? (あなたの考えを聞かせてください)
3つの英単語 Can I help ? (手伝いましょうか?)
2つの英単語 Thank you (ありがとう)
こんなふうにひとつずつ単語の数が減っていく、人と人が生きていく上で大切な言葉。最後、たったひとつの単語になりますが、いったいどんな言葉だと思いますか? 最も大切な、最も短いたったひとつの言葉とは?
鈍感だった自分への反省としてこの言葉を心に刻みます。それは、「You 」あなた。一番大切なのは自分ではなく、あなた。それを互いのことにする。目の前のあなたを大切に、あなたが喜ぶことを、あなたのためにすることが愛の行為なのだと話されました。このことについても、結婚式の後で牧師に話を聞きました。「たいていの方が、最後のひとつの単語をLove だと思われます。しかし、そこに至る具体的な存在として最も大切なのが、結婚するときに愛し合い助け合うと約束した、目の前のYouなのです」
【補足】
今年のレインボーフェスタ!2015の公式テーマソングとして、 MAZEKOZE・まぜこぜの社会を目指すメッセージソング“Get in touch”が選ばれ、当日ステージでも披露されました。この歌は、「どんな状況でも、どんな状態でも、誰も排除しない、されない社会で暮らしたい」という思いで活動しているマイノリティPR・表現団体、その名も「Get in touch」 の発表した曲。“ちがい”をハンディにしないで面白がる社会がいい。アートや音楽やおいしいものを通して作る、心地よい楽しい空間と自由な雰囲気を、「まぜこぜ」と呼んでいる素敵な「Get in touch」、代表は女優の東ちづるさん。10月10日には扇町公園にかけつけて、“Get in touch”を、ジャフリカンバージョン(日本とアフリカの音楽をミックス)でYANO BROTHERS と歌ってくれました。
一般社団法人 Get in touch についてはこちらをご覧ください→ http://getintouch.or.jp/
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<関連サイト>
レインボーフェスタ!2015・関西レインボーパレード2015のサイト
一般社団法人 Get in touch
<アイデアニュース関連記事>
癌サバイバルの物語、シカゴの女性ふたりがニューヨークで上演
→ https://ideanews.jp/backup/archives/1965
LGBTフレンドリーをセールスポイントにしたホテルが増加
→ https://ideanews.jp/backup/archives/881
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<アイデアニュース有料会員限定コンテンツ>
先頭は、ろうLGBTのグループ
ありのままの自分を見つめた「マイストーリー」
色々あって、まぜこぜで、複雑で、割り切れないのが本当だ
先頭は、ろうLGBTのグループ
午後1時半には、関西レインボーパレードが扇町公園を出発、およそ900人がレインボーの旗やメッセージボードを持って大阪の街を歩きだしました。
パレードは5つの隊列に分かれて出発しました。「アピールフロート」と呼ばれる第一隊列の先頭には、ろうLGBTのグループがいました。ろう者の中にも、もちろんLGBT当事者がいる。そんな当たり前のことも、私にとっては初めてきちんと考える機会となりました。
ありのままの自分を見つめた「マイストーリー」
道行く人や、パレードの仲間たちにマイクでアピールするのが、第一隊列「アピールフロート」です。オープンカーが色とりどりの風船で飾られ、今年のテーマである「PRISM」の文字も、風船で作られていました。パレードに参加して歩く以上に、自分が言いたいことをマイクでみんなにアピールすることは、コワい。それでも大きな勇気をもってマイクパフォーマンスに臨む人がいました。親や周りの人との関係における悩みを率直に話す人、以前は見ているだけだったパレードに、好きな服装で参加して仲間と歩ける喜びを語る人、ろう者であり、セクシャルマイノリティであることで体験する偏見を変えていきたいと語る人。どの人の話も、ありのままの自分を見つめて、受け止めてほしいという願いにあふれた「マイストーリー」で、聴きごたえがありました。
色々あって、まぜこぜで、複雑で、割り切れないのが本当だ
プレスの腕章をして、写真を撮っている私に、沿道の人たちが次々声をかけてききます。「今日は何のパレード?」「祭り?」デモとはひと味違う、華やかで明るい雰囲気に道行く人も大きな笑顔を向けてくれました。レインボーパレードが通ることを知っていて、虹色の旗や横断幕を事務所に掲げて、待ちかねるように手を振っていた人もいました。主催者によると、今年のレインボーフェスタ!来場者は7000人、パレード参加者は905人だったそうです。沿道で少しでもパレードを見たり聞いたりした人や、知らずに扇町公園を訪れて少しの間でも雰囲気を味わった人を入れれば、本当にたくさんの人がこの日、「この世界は男と女だけがいて異性愛だけが性のあり方だ」という考え方がいかに偏っていて、間違っていて、そして何よりつまらないのかを改めて知りました。色々あって、まぜこぜで、複雑で、割り切れないのが本当だし、楽しいのです。
LGBT当事者と、アライ(LGBTセクシャルマイノリティを支援する人たち)との祝祭の日であった10月10日が新たな始まりとなって、パレードを一緒に歩いた人たちの人生がもっともっと豊かで美しいものになりますように。私も、アライのひとりとして、これからも学び続け、関わりを持ち続けて行きたいと思います。なぜなら、その方が人生が面白くて素敵になりそうだから。これからもどうぞよろしくお願いいたします。