太鼓はパンク、心の叫び　「鼓童」小田洋介・坂本雅幸ら鼎談（下）

2015年11月23日から始まる「鼓童ワン・アース・ツアー」第4作公演「混沌」に向けて、鼓童メンバーの小田洋介さんと坂本雅幸さん、ドラム監修の元ザ・ブルーハーツのドラマー、梶原徹也さんによる鼎談第2回。インタビューでは、和太鼓とドラムが合わさることについての受けとめ方や、それぞれの楽器に向き合う意識などの感覚的なものが、それぞれの実感のこもった言葉で語られた。

ドラマーでも太鼓打ちでも、観にきていただきたい

――新作「混沌」は、どういう方に観てほしいですか。

小田：老若男女、みなさんに見ていただきたいですね。単純に楽しめると思います。最近は、ゲームなど外出しなくても家の中で完結できる娯楽が増えていますが、昔はそうじゃなかった。夜、みんなで集まって長老の話を聞くとか、今日はどんな話が聞けるのかと楽しみにしていた時代もあったと思うんです。そんな時代にかえったようなつもりで、敷居なく見られると思います。太鼓か…、ドラム…うるさいんじゃないのとかならずに、十分満足していただける内容です。

小田洋介さん＝撮影・岡本隆史

――太鼓、ドラムというイメージが持つ先入観を取り払うような？

小田：そう！

坂本：ドラマーでも太鼓打ちでも、観にきていただきたいなと思います。先ほどおっしゃたように、先入観を取っ払いたいんです。

異質さを、いい意味での違和感に変えていきたい

――その先入観とは？

坂本：ハチマキや、はんてんを着て太鼓を叩く中で、ドラムが入ってくると異質な感じがあったんです。太鼓打ちの自分たちがドラムを叩くとなると尚更。ですから、僕たちにとって今回の作品は挑戦ですし、その異質さを、いい意味での違和感に変えていきたい。そういう意味で、おじいちゃんやおばあちゃんにも見てもらいたいです。和太鼓を見に来たのに、何かすごいのが出てきた！　となれば刺激にもなると思います。

坂本雅幸さん＝撮影・岡本隆史

70歳近い方たちは、ビートルズのリアルタイム世代

――梶原さんはいかがですか。

梶原：老若男女という話が出ましたが、私たちの先輩ミュージシャンで70歳近い方たちは、ビートルズのリアルタイムの世代なんです。ビートルズを小学校の時に聞いたとか、中学校の修学旅行で電車の中でみんなで歌ったんだ、という話を僕は聞いています。ですから、ドラムと和太鼓を同じ舞台で演奏するというのは、時代の流れとしては自然なことのような気もしています。それで言えば、鼓童さんの所に行くにつれ、（坂本）雅幸くんや（小田）洋介さんがブルーハーツを聞いていたとか、（中込）健太くんがブランキー・ジェット・シティの大ファンだったと知ると、こちらとしては憧れていた鼓童の人たちがロックも聞いていたというのが嬉しいですね。しかし、それも先入観だったと思うんです。和太鼓とドラムに対する違和感も、じつはそこに真剣に取り組んでなかったから、そう見えなかっただけなのかもしれない。そういう点で、玉三郎さんは〈パンク〉ですね。周りに何と言われようと、面白いと思ったことはやって、発表する。実際にやってみせることで先入観を取り払い、こういうのありでしょう、と提示して幅を広げる。

梶原徹也さん＝撮影・岡本隆史

――梶原さんにとってパンクとは、前人未踏のことに挑戦していくようなイメージですか。

梶原：そうですね、常に前向きにチャレンジしていくということですかね。

太鼓はパンク、しとやかにやってるものじゃない

――では鼓童は、パンクですか。

梶原：あっはっはっは（笑）。

小田：太鼓、パンクですよ、ほんとに。シャウトというか、心の叫びですよね。叫んでいるのか、歌なのか、わかりませんが、僕は確実に叫びの方が入っています。僕が太鼓を始めた理由は、そこです。叫びたいけど、叫ぶ手段がなかった。そういう時に、たまたま鼓童と出会って、自分の中で余っていた力を発散できる場が見つかった。太鼓はパンクだと、僕は随分前から思っていました。行儀よくやってるものじゃない。一方で、現時点で叫びたいかと聞かれれば、そればかりでもなく、いろんな喜びもあり、太鼓のことをかわいいなと思う気持ちもあります。でも、最初に18歳で鼓童に入る前に太鼓に魅せられ、心震わされた感覚が、原点にあるのは間違いありません。

――和太鼓、ドラム、パンク、叫び……。形や言葉は違っていても、根底に通じるものを感じました。公演を楽しみにしています。

インタビューを振り返って、三人とも、自身の中の〈感覚〉をとても大事にしているように思えた。それは梶原さんがドラムに向き合う上での意識なのか、小田さんと、坂本さんの場合、佐渡島という自然豊かな土地に根ざして暮らす中で、おのずと磨かれていったものなのか。感覚的なものはなかなか言葉にしにくいものだが、それでもその〈感覚〉についてそれぞれの実感から言葉があふれた。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ～混沌」稽古より＝撮影・岡本隆史

※有料会員向け部分では、小田さん、坂本さんにとっての太鼓とは？　梶原さんにとってのドラムとは？　についてうかがっています。

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＜鼓童ワン・アース・ツアー2015 ～混沌＞
11月23日（月・祝）　新潟県佐渡市アミューズメント佐渡
11月29日（日）　福井県越前市越前市文化センター
12月 1日（火）　富山県富山市オーバード・ホール
12月 3日（木）　新潟県新潟市新潟県民会館
12月 5日（土）　大阪府大阪市 NHK大阪ホール
12月 6日（日）　大阪府大阪市 NHK大阪ホール
12月 9日（水）　福岡県福岡市博多座
12月11日（金）　広島県広島市 JMS アステールプラザ
12月13日（日）　岡山県岡山市岡山市民会館
12月15日（火）　愛知県名古屋市愛知県芸術劇場コンサートホール
12月17日（木）　神奈川県横浜市神奈川県民ホール
12月19日（土）　東京都文京区文京シビックホール
12月20日（日）　東京都文京区文京シビックホール
12月21日（月）　東京都文京区文京シビックホール
12月22日（火）　東京都文京区文京シビックホール
12月23日（水・祝）　東京都文京区文京シビックホール
公演紹介 →　http://www.kodo.or.jp/news/20151123oet_ja.html

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「鼓童」小田洋介さん・坂本雅幸さんと、元「ザ・ブルーハーツ」梶原徹也さん、お３方のサイン色紙を抽選で３名さまにプレゼントします。どなたでもご応募できます。（このプレゼントの募集は終了しました）ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。

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＜アイデアニュース有料会員向けコンテンツ＞

小田さん、坂本さんにとっての太鼓とは？　梶原さんにとってのドラムとは？　三者三様、じっくりと語ってくれた。

叩いていると、一人になれるし、一つになれる

楽しいからやっているのが大きい

混沌が調和になり、またさらに次の混沌に

叩いていると、一人になれるし、一つになれる

――小田さんにとって太鼓とは？　梶原さんの場合は、叩きたいという沸き上がるものがある、とおっしゃっていましたが。

小田：僕も沸き上がってきます。叩いていると、完全に一人になれるし、一つになれる。それは一人で叩いていても、皆で叩いていてもそうで、孤独も、大人数で一つになる感覚も両方味わえます。そこが面白いところで、どっちともとれないその感覚が心地いいんです。もしかしたら、それは無我の状態なのかもしれません。僕個人は毎日、トレーニングで10キロ走っていますが、その時の感覚も無に近いですね。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ～混沌」稽古より＝撮影・岡本隆史

楽しいからやっているのが大きい

――坂本さんにとって太鼓とは？

坂本：僕は楽しいからやっているのが大きいですね。音色が豊かなドラムに比べて、太鼓は音も一つですし、ぼてっとした楽器とも受け取れますが、むしろそこに可能性を感じています。大きな太鼓の場合、音だけではなく身体表現も必要ですし、シンプルな楽器をどう自分なりに演奏するか。太鼓にはよく悩まされます（笑）。

――太鼓に悩まされるとは。

坂本：今回ドラムと一緒にやるとなった時に、太鼓は響きがドーンとあって音が大きいんです。あまりボカボカやってしまうと、他の音がかき消されることがあります。そこでどう表現していくか。太鼓は話し相手になりますね。かつげるほどの小さな太鼓の場合は「がんばれ！」と声をかけることもありますし、大太鼓の場合は「大太鼓先輩、今日もやるぜ！」みたいな、友達感覚で楽しませてもらっているところもあります。よく鳴ってくれた時は「ありがとう」、調子の悪い時は、大太鼓ぐらいの大きさになると「自分の力不足でした」とひれ伏す感じにもなります。

――梶原さんは、ドラムに向かう時、話し相手のような感覚はありますか。それとも、無を体感しているのか、梶原さんにとってドラムとは、どういうものでしょうか。

梶原：細かいことが気になる時は、あまり調子がよくないですね。入り込めている時は、いい感じてプレイできている。ロックンロールは、シンプルであればあるほどかっこいい、いかに無駄をそいでいくかというところがあります。そうすると一打にかける思いといいますか、一打で自分の持っているバイブレーションが共鳴し、それがいかに多くの人に伝わって、そこでまた共振作用が起こって一つのエネルギーを作り出せるか。常にそこを考えています。

梶原徹也さん＝撮影・岡本隆史

混沌が調和になり、またさらに次の混沌に

――その感覚というのは、さきほど小田さんが話されたような〈孤独〉と〈一つになっている感覚〉との両方を味わえるということにもつながりますか。梶原さんは、ブルーハーツにいらっしゃった時にも、そんな感覚はありましたか？

梶原：一つになった感覚は常にありましたね。そのことを頭で理解するというより、感覚として受け取っていました。たとえば武道館の舞台の上から一万人の観客を見た時に、対一万か…と思ってしまった時は不安の方が大きかったです。そうではなく、音楽という媒体でみんながエネルギーを発散する。それがライブの状態で、一つになって楽しんでいることが感覚とともにぱっと理解できた時、怖さが消えていき、僕たちもエネルギーの流れの中の一つだったと知る。ばらばらに考えると〈混沌〉かもしれないけど、それは〈調和〉に向かう過程であって、混沌が調和になり、またさらに次の混沌にいく。断片で見るというより、一連として常に流れている感じです。