太鼓芸能集団「鼓童」ドラムを監修、元「ザ・ブルーハーツ」梶原徹也ら鼎談(上)

梶原徹也さん=撮影・岡本隆史

新潟・佐渡島を拠点に、国内外で活躍する太鼓芸能集団「鼓童」。歌舞伎役者の坂東玉三郎さんが芸術監督をつとめ、演出する「鼓童ワン・アース・ツアー」第4作公演が2015年11月23日、本拠地・佐渡での公演を皮切りに全国各地で上演される。「伝説」、「神秘」、「永遠」に続く、今回のテーマは「混沌」。和太鼓奏者である鼓童メンバーが、今回はドラムも演奏するという。ドラム監修に伝説のパンクロックバンド、元ザ・ブルーハーツのドラマー、梶原徹也さんを迎え、ドラムセットやタイヤにテープを巻いたタイヤドラムなど、新たな打楽器を取り入れた構成で、音楽的な広がりのある作品となるようだ。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

アイデアニュースではこのほど、鼓童の中心的奏者である小田洋介さんと坂本雅幸さん、そして本作のドラム監修の梶原さんに話を聞いた。インタビューを2本の記事に分けて掲載し、第一回は、鼓童と梶原さんとの出会いなど、有料会員向け部分では、梶原さんがドラム指導で目指した「根っこの部分を共有する」ことを、坂本さんと、小田さんがどう汲み取っていったか、などについて本人たちの言葉で紹介する。

佐渡島に暮らし、作品を作っていることが大きい

――2014年冬、第3作「永遠」の大阪公演を観ました。都会にあるホールで佐渡の風を感じ、その表現のベースにあるものについて気になりました。佐渡の風を、日本国内や海外公演など各地で表現できるのは、太鼓の技術によるものなのか、日々の感性を磨くものなのか、何なのでしょうか。

坂本雅幸さん=撮影・岡本隆史

坂本雅幸さん=撮影・岡本隆史

坂本:感性の部分はもちろんありますし、やはり僕らは、佐渡島に暮らし、そこで太鼓の練習をして、作品を作っていることが大きいと思います。(舞台監督の)玉三郎さんは長年佐渡に通われていて、佐渡の景色がすごくお好きで、「永遠」に関しては、景色を見てインスピレーションを受けて、具体的にこうしたいとイメージしながら作られた部分があります。それが、作品のいろんなところからにじみ出ているのではないかと感じます。佐渡の星空と、玉三郎さんが舞台上で表現された星空をきれいだと思う感覚は、似ていると僕は思います。

小田洋介さん=撮影・岡本隆史

小田洋介さん=撮影・岡本隆史

玉三郎さんの演出には嘘がない

小田:やはり、佐渡に住んでいるのが大きいでしょうね。僕たちは、鼓童のメンバーになるのに、まずは研修所(鼓童文化財団研修所)に入ります。そこは、(佐渡の人里から離れた山の中にあり、廃校になった中学校の校舎を借り受けているところで)冷暖房が無く、環境的にはすごく厳しいところです。四季がはっきりと感じられますので、春が来たら嬉しい気持ちになったり、冬場は寒さが厳しかったりと、そんな身体感覚で身に付いたものが舞台で自然に出ているのでしょう。佐渡では今の季節、星が落ちてきそうなんですよ。しかも、一個一個の星が大きくて、都会では見られない星空ですね。僕は、佐渡で道路に寝転がって星を見ています(笑)。僕たちには、舞台上の星が佐渡の星に見えますし、玉三郎さんの演出には嘘がないと感じます。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

坂本:雨や風のシーンでも不自然さが無い。それは、玉三郎さんの歌舞伎や舞台演出のセンスだと思いますが、想像力の部分で星や風などの自然の景色が本物より本物っぽく見えるのです。とりわけ僕がきれいだなと思ったのは、二作目の「伝説」で舞台に雪が降るシーン。それは紙で作られた雪なのですが、紙だと分かっていても、はっとする美しさで、映像で実際の雪のシーンを映すよりもきれいでした。

和太鼓の鼓童は憧れでもあり、ライバル

――梶原さんが鼓童のことを初めて知ったのは、いつですか?

梶原:もう30年前、大学生の頃です。自分は、二十歳ぐらいからパンクロックをやっていました。ドラムという西洋の楽器をやることに対して、そのビート感を果たして日本人ができるのかという部分で一生懸命がんばっていたわけです。その中で、和太鼓という日本の楽器を演奏している鼓童は、憧れでもあり、ライバル(笑)。憧れの裏返しですね。親しくなったのは、4年ぐらい前。(小田)洋介さんとワークショップで知り合って、関係が深まりました。

梶原徹也さん=撮影・岡本隆史

梶原徹也さん=撮影・岡本隆史

――お二人が実際に会われた時の印象は?

小田:イケる、と思いました。合うというか、(身を乗り出して)ヴァーーーーーーーン、みたいな感じでデカい音が出るんじゃないかと思ったんですよ。

梶原:出会ったその日に意気投合し、一緒にやってみようという話になったんです。

――その出会いがきっかけでお二人はユニット「えびす大黒」を組み、梶原さんは佐渡に通われるようになった。

梶原:それがきっかけで、ドラム奏法を鼓童メンバーに教えたりもしていました。玉三郎さんも練習を観にこられていたので、いつか本公演でドラムをメンバーに叩かせてみたいというのが頭の中にあったんじゃないかと思います。それが4年前です。

――新作「混沌」は、梶原さんから見てどのように映っていますか。

梶原:「混沌」という作品をいつ上演するかは決まっていなかったので、長い時間をかけて、みんなのキャラクターをドラムの中にしっかり出せたことが一番よかったと思います。技術的なことではなく自己表現の一つとして、それぞれのキャラクターをドラムで出せればいい。ドラマーから見ても、彼らのドラム演奏がカッコイイと思えるところまでは確実に辿り着いていますね。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」稽古より=撮影・岡本隆史

※インタビューの続きは、有料会員向けコンテンツで紹介します。

———————

  • <鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌>
    11月23日(月・祝) 新潟県佐渡市 アミューズメント佐渡
    11月29日(日) 福井県越前市 越前市文化センター
    12月 1日(火) 富山県富山市 オーバード・ホール
    12月 3日(木) 新潟県新潟市 新潟県民会館
    12月 5日(土) 大阪府大阪市 NHK大阪ホール
    12月 6日(日) 大阪府大阪市 NHK大阪ホール
    12月 9日(水) 福岡県福岡市 博多座
    12月11日(金) 広島県広島市 JMS アステールプラザ
    12月13日(日) 岡山県岡山市 岡山市民会館
    12月15日(火) 愛知県名古屋市 愛知県芸術劇場 コンサートホール
    12月17日(木) 神奈川県横浜市 神奈川県民ホール
    12月19日(土) 東京都文京区 文京シビックホール
    12月20日(日) 東京都文京区 文京シビックホール
    12月21日(月) 東京都文京区 文京シビックホール
    12月22日(火) 東京都文京区 文京シビックホール
    12月23日(水・祝) 東京都文京区 文京シビックホール
  • 公演紹介 → http://www.kodo.or.jp/news/20151123oet_ja.html

———————

「鼓童」小田洋介さん・坂本雅幸さんと、元「ザ・ブルーハーツ」梶原徹也さん、お3方のサイン色紙を抽選で3名さまにプレゼントします。どなたでもご応募できます。(このプレゼントの募集は終了しました)ご応募くださったみなさま、ありがとうございました。

———————

<アイデアニュース有料会員向けコンテンツ>

梶原さんがドラム指導で目指したのは、表現の「根っこの部分を共有する」こと。和太鼓奏者の坂本さんと、小田さんが、稽古を通してそのことをどう汲み取っていったか、また梶原さん自身の根っこの部分について、それぞれの実感を語ってもらった。

それぞれの感じる能力の部分がすごく大きい

「沸き上がってくる」叩きたいという感じ

喜びや悲しみを言葉無く相手に伝えることができる

それぞれの感じる能力の部分がすごく大きい

――梶原さんがおっしゃった「ドラムを自己表現の一つとして、それぞれのキャラクターを演奏の中に出す」というのは、技術面とは違った側面で、何かマニュアルがあってできるようなことではないと思いますが、そこを鼓童の皆さんはどうやって育まれたのでしょうか。

小田:一人ひとりの汲み取り方というのでしょうか。それぞれの感じる能力の部分がすごく大きいと思います。あとは、それに合わせて梶原さんが教えてくださるので。

坂本:ドラムと和太鼓は、なかなか踏み込みにくい部分で、両者を馴染ませるのは難しいんです。そこに、表面的なドラムの技術から入ると薄っぺらいものになってしまう気がしますが、梶原さんは、叩きたいという欲望といいますか、「この音が欲しい」と強く想うような根っこの部分を共有しながら指導してくださるのでありがたかったです。

「沸き上がってくる」叩きたいという感じ

――叩きたい欲望というのは、梶原さんの体の中から自然と沸き上がってくるものなのか、何か原動力となるものがあるのでしょうか。

梶原:「沸き上がってくる」という言葉が本当に最適で、わからないんですけど、叩きたいという感じなんですよね。

梶原徹也さん=撮影・岡本隆史

梶原徹也さん=撮影・岡本隆史

――理屈抜きで、ただ叩きたいというものが沸き上がってくる。それは昔から、ずっと持続してあるものなのですか。

梶原:そうなんです。不思議ですけどね。中学の時は、家に座布団や枕を並べて叩いてました。

――何を持って叩かれていたのですか。

梶原:昔のハンガーは、木製の棒のようなものが付いていて、それを二本取って叩いていました。当時は、スティックを買うお金もなかったですしね。ドラムと和太鼓は、打楽器として根っこの部分が同じだという確信が僕にはあったので、鼓童の皆さんの中にも入っていけましたし、そこで同じだと確認できて、さらに深いところに行けました。

喜びや悲しみを言葉無く相手に伝えることができる

――その深いところについて、坂本さんと小田さんは実際にどう感じていますか。

坂本:和太鼓をやってドラムを叩くというのは最初、難しかったんですよ。細かいことは色々ありますが、梶原さんの場合、そういうのを気にせずにできる方といいますか、演奏を見ているとドラムがぶわーっと揺れまくって、とにかくパワーがすごい。見ているだけでこっちも叩きたくなるような駆り立てられるものがあります。

小田:深いところというのは、リズムを奏でるだけではなく、言葉無く音で会話するような感じですね。最終的には、言葉が必要なくなる。喜びや悲しみを言葉無く相手に伝えることができる。それには、お互い思いやる気持ちが必要ですし、自らリードして行く場合もあるし、逆に付いて行く場合もある。もちろん技術は必要ですが、そういうものを技術でやらない。自分の欲求や、心で思ってやっています。

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」=撮影・岡本隆史

「鼓童ワン・アース・ツアー2015 ~混沌」=撮影・岡本隆史

———————–

<読者の声>(プレゼント応募メッセージより)

鼓童さんたちとのうれしくてすてきな出会いに感謝します。

鼓童の活動はテレビでしか見たこと有りませんが、日本人の魂(ハート)を揺さぶる迫力を感じます♪ 一度は生演奏を観たいと願ってます。メンバー関係者皆様の更なるご活躍を…

和太鼓とドラム?! ちょっとどうなんだろうと思ってました。ごめんなさい… でも、インタビューなどを読むうちに、楽しみになってきました!すごく開放的で楽しそうです! 鼓童の演奏、大好きです。がんばってくださいね☆

長年のファンであり鼓童会員です。坂本君のさっぱりとした顔立ちやスタイルが大好きです。玉三郎さん演出の作品ひとつひとつは、演者ひとりひとりを際立たせていて見ごたえがありますね。個人的には昔の鼓童の古典的のほうが好きですが、「ザ・玉三郎」的な今も目の保養もあって、好きです。身体に気を付けて、公演頑張ってください。

『混沌』どんな舞台になっているのか、とても楽しみです! 絶対観に行きます!

鼓童さんの源となる佐渡は綺麗な所なのでしょうね。四季を身体で感じそれが素晴らしい舞台に繋がっているのだと思います。星がとても綺麗とインタビューでありましたが私も星空を見上げるのは大好きなので佐渡の降って来そうな程大きなお星さまを道路に寝転がって眺めてみたいです(^-^)v

鼓童を知って11年。まさか、鼓童の公演にドラムが入るとは当時は想像もしていませんでした。この数年、新しく変わりつつある鼓童が今後、どう変化していくかも楽しみであり、ドキドキもしています。トラディショナルなスタイルの鼓童と新しいスタイルの鼓童、これからも両方の鼓童を楽しみにしています。

アイデアニュース関連記事:鼓童

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA