太鼓芸能集団「鼓童」の「鼓童ワン・アース・ツアー2016 ~混沌」が、全国巡演中です。アイデアニュースでは2015年のツアー時に、鼓童の中心的奏者の小田洋介さんと坂本雅幸さん、本作でドラム監修を務める元ザ・ブルーハーツのドラマーの梶原徹也さんの3人の鼎談記事と「混沌」公演レポートを掲載しました。このほど2016年の地方公演にあたって、今度は梶原さんに単独インタビューし、その内容を2回に分けて紹介します。前半は、「混沌」の印象やロックンロールについて、有料会員向け部分では、梶原さん自身の活動の変化やご奉納演奏に対する思いなどについてお届けします。
――2015年12月「混沌」大阪公演で梶原さんにお会いした時、打楽器だけの演奏について「まるで大巨人が行進するようなリズムを刻む」とコメントされていました。独特の例えが印象的でしたが、梶原さんは曲を作る時、具体的にイメージを思い浮かべて言葉にすることが多いのですか?
フレーズを組み立てる時に、ストーリーを作ると曲が生きてきます。「巨人」の例えで言えば、最初は小さなうごめきがあって、それが段々と育って大きくなり、そのうちドカドカ歩いてサーっと消えていく。そんな風に曲の展開をストーリーとして組み立てると、私の場合は作りやすいですね。
今回の鼓童の作品「混沌」には、第一部の終わりに「混沌」という曲があります。この曲には、私の得意な「ハヤブサフレーズ」と呼んでいるテンポの速いフレーズがあります。この曲を鼓童メンバーの小田洋介さんと一緒に太鼓とドラムで練習している時に、私が「このフレーズを使っていろいろやってみたい」と言うと、小田さんが曲の印象について「ハヤブサが上から一気に獲物を狙うような疾走感がありますね」と話してくれて、「じゃあ、ハヤブサが獲物を狙って襲ってきたりとか、また立ち去っていったりとかを曲で表現したら面白いんじゃないか」と彼から提案があって試してみました。ここは空でゆっくり舞っている感じとか、獲物を見つけたら一気にダカダカダカダカーーーと行って、またそこで一旦休んで去っていく。そうやってストーリーをつけて演奏すると曲が面白くなっていきます。
■鼓童メンバーがドラムでやると、30メートルぐらい先に届く
――実際に見ていなくても、まるで同じ景色を見ているかのように曲を作り出すことができる。
そこが面白いところですね。それを大人数でやると更に大きく広がっていく。自分の手が5メートルぐらいグーンと伸びるような感じですね。それを鼓童メンバーがドラムでやると、30メートルぐらい先に届く(笑)。
――本作「混沌」では、プロの和太鼓奏者がドラムを叩くという新たな試みに、梶原さんはドラム監修で参加されていますが、実際に公演が始まって気づいたことはありましたか?
ドラムと和太鼓。各世代によって、いろんなことを感じてくださっているようですが、若い世代には共通言語としてのドラムがまずあるんじゃないかと思います。ドラムがあることで「和太鼓ってこういうものなのか」と知っていく。それは逆も言えて、和太鼓に馴染みのある人たちは、和太鼓を通してドラムを感じる。ザ・ブルーハーツ時代からの私の友人が「混沌」を見に来てくれた時、隣にいたご年配の方が、和太鼓集団のドラムを中心にした公演を観て拍手している光景にすごく感動して「かじくん、君はロック界にすごく貢献をしているよ」と言われました。
――ロック界に貢献?
ロック界はロック界で、広いようでいて実は狭い。ビートルズの年代が70歳を越えているので、ご年配の方が今ロックを聞いていてもおかしくはないのですが、日本ではまだまだロックに馴染みの無い人も多い。そういう人にもロック・ドラムを自然に聴かせて拍手をもらっていたんだよ、と言ってくれて。自分ではそんなに深くは考えていなかったのですが、その言葉は嬉しかったですね。
――つなぐという点で考えると、梶原さんがフリースクールで行われているリズムワークショップや、バリアフリー・ロックバンド「サルサガムテープ」との関わりなど、梶原さんの活動自体が社会とつながっているように見えます。
そうですね。ロックンロールが始まったのは1950年代、アメリカのチャック・ベリーというミュージシャンが始めたと言われていて、今では世界中に広まっていますが、その歴史は60年ほどです。その時点でボーカル、ドラム、ベース、ギターという形はほぼできていて、テクノロジーの進歩と共に発展はありますが、スタイルはほぼ変わっていないんです。クラシックだとプレーヤーになるためには3歳ぐらいから始めていないとできませんが、ドラムの場合は、10代の自分がやりたいと思った時点で始めても、頑張ればプロになれる。そんな誰でもできる間口の広さと、いつも同じというジレンマがあります。
■その時の社会に対して何を感じて言葉にするかが、すごく大事
――いつも同じというジレンマとは?
師匠に付いて何十年やらないと形ができないといった世界ではないので、スタイルは誰でも出来るようになるんです。スタイルが同じであれば、50年代のチャック・ベリーや、60年代のビートルズとか大天才が既にいるので彼らの音楽を聴いていれば、あとは再生縮小ミュージックでいいじゃないとなってしまいますが、そう言わせない何かが必要になる。それが「今と関わる」ことです。その時の社会に対して何を感じて言葉にするかが、ロックンロールではすごく大事。例えば60年代のビートルズであれば、ベトナム戦争があった中でいろんな名曲が生まれました。ジョン・レノンの「イマジン」もそうです。
私たちが影響を受けたパンク・ロックも、技術はまず二の次。イギリス・ロンドンの失業率が高い社会状況の中で、DIY (Do It Yourself)が一番大きなメッセージだったと思います。何か文句があれば自分で変えていけよ、というもの。そこを受けて、私たちもパンクを始めた。その後アメリカで9.11が起き、私たちの国でも東日本大震災が起きた。その前と後では、社会状況も、みんなの意識も違うと思うんです。そんな中で何を言えるか、やれるか。音楽だけでなく全ての活動に言えることですが、特にロック・ミュージックは、外に向かって開かれているのが大きい。10代からでも誰でもできるし、それを一つの武器にして、誰でもメッセージが発せられます。だから今、あなたが感じていることが大事。今この時に何を感じて、何を言うかがロックで一番大事なところだと思います。
<鼓童ワン・アース・ツアー 2016 ~混沌>(6月20日以降分)
2016年6月22日(水)兵庫県明石市 明石市立市民会館(アワーズホール)
2016年6月24日(金)高知県高知市 高知市文化プラザかるぽーと(大ホール)
2016年6月26日(日)鳥取県鳥取市 鳥取市民会館
2016年7月2日(土)愛媛県松山市 松山市民会館
2016年7月3日(日)愛媛県宇和島市 南予文化会館
2016年7月5日(火)山口県岩国市 シンフォニア岩国
2016年7月8日(金)佐賀県佐賀市 佐賀市文化会館 大ホール
2016年7月10日(日)福岡県北九州市 北九州市立黒崎ひびしんホール
2016年7月12日(火)大分県日田市 パトリア日田大ホール
2016年7月14日(木)宮﨑県延岡市 延岡総合文化センター
2016年7月22日(金)長野県長野市 長野市芸術館メインホール
2016年7月24日(日)静岡県焼津市 焼津文化会館
<関連ページ>
「太鼓芸能集団 鼓童」のホームページ ⇒http://www.kodo.or.jp/index_ja.html
梶原徹也のお風呂でコーヒーもう一杯! ⇒http://ameblo.jp/tetsuya-kajiwara/
<プレゼント>
梶原徹也さんのサイン色紙と写真1枚をセットにして、抽選でアイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまにプレゼントします。応募は以下のフォームからお願いします。応募の際に記入いただいたメッセージは、コメントのページ(⇒こちら)に掲載します。応募締め切りは7月4日(月)。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。(このプレゼントは締め切りました。ご応募ありがとうございました。)
<ここからアイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分>
■もっと自分の力で実際にできることをやろうと
■人間が生きていく本当に必要なエネルギーは何なんだろう
■ステージに立つ人は、シャーマンだと思っています
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■もっと自分の力で実際にできることをやろうと
――梶原さんご自身は今、何を感じていますか?
そこはねー……(しばらく考える)。一生向き合っていく課題ですが、拠点を関西に移したのも3.11のことが大きかったですね。当時は東京に住んでいて、計画停電とか、朝のラッシュ時に間引き運転していたりとか、放射能のことで外に洗濯物を干すのも抵抗があったりと、リアルに日常が緊張感を持っていたりとインパクトが大きかったです。
それに軒並みコンサートは中止になった。こういう時こそ、音楽で人に喜んでもらったり助けになりたいのに中止になってしまう状況があったりして。じゃあ音楽で何ができるのか、何をやろうかと考えた時に、お金のかかることが大前提で成り立っているスタイルのエンターテインメントは置いておき、もっと自分の力で実際にできることをやろうとシフトしていきました。それがフリースクールの子たちや、障がいを持った子たちと触れ合いながら音楽を楽しんでもらうことでした。
――それは東日本大震災以降に、梶原さんの中で大きく変化した活動ということですか?
サルサガムテープには16年前からずっと関わってきていますが、そちらの方に軸を移していこうということですね。あと、神社やお寺でのご奉納演奏も、もっとやりたいと思っていたので力を入れています。
■人間が生きていく本当に必要なエネルギーは何なんだろう
――そうやって活動をシフトしていく中で、梶原さんの心の底にあるものは?
うーん……(しばらく考える)。難しいんですけど、本当に生きる。人間が生きることのエネルギーを突き詰めていった先の本当のコアなところ、というのかな。例えば災害時のような日常生活がいろんな状況下でうまく回らなくなってきた時に、自分の中で、人間の中で、生きることのエネルギーってどこに行き着くんだろうって思うんです。電気が不通になるだけで、日常生活は大きく揺らぐ。だけど、人間は生きていくし。そこに本当に必要なエネルギーは何なんだろうと考えて、そこにアクセスするようなものがやりたいですね。
――梶原さんのご奉納演奏は、そこに向かっている実感はありますか?
ありますね。
■ステージに立つ人は、シャーマンだと思っています
――それは、どういうものですか?
これは主観的な感覚になるのかもしれませんが、よく神社とかでお参りさせていただくと清々しいエネルギーを感じるんです。それをすっと体の真ん中に入れる感覚。風がすーっと来たり、鳥が鳴いたりと常にエネルギーが動いている。そのバイブレーションを体の中に入れて、自然と一体になるような感じです。
もっと言えば、例えばステージに立つ人は、シャーマンだと思っています。ジョン・レノンしかり、ボブ・マーリーしかり、そういうカリスマ性を持った人は、本人が意識しているかは別にしても何かしらのメッセージを知らず知らずのうちに受けて、それを分かりやすく伝えていると私は感じます。それと同じように、何かしらのバイブレーションを身体で頂いて、それをわかりやすく太鼓なり音楽で、皆さんに伝えられたら一番理想だなというところを目指しています。
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