2022年2月26日(土)から3月15日(火)まで東京芸術劇場 プレイハウスで上演される舞台『冬のライオン』で、フィリップを演じる水田航生さんのインタビュー後編です。
「下」では、『冬のライオン』の登場人物のこと、作品の中での人間関係、フィリップの思惑、佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんが演じるヘンリーとエレノアを見ながら感じること、今この時期だからこそ、この作品を通して感じていただきたいこと、お客様へのメッセージなどを紹介します。
(※このインタビューは2月初旬にリモートで実施したものです)
――以前のインタビューで、『ゲゲゲの先生へ』の忠は、周囲との距離をある程度必要とする役だとのお話がありました。今回のフィリップは、いかがですか?
今回、それぞれが腹の探り合いなので、「家族」と言いつつも本当に「個々」なんです。「いろいろな思惑を持った個々が集っている」というイメージで、フィリップだけが、周りと距離があるという感じではないです。もちろん、フィリップは一番部外者ではありますが、二枚舌のようなところがあって、「さっきはこの人と手を組んだけれど、次はこの人と手を組んで」ということのオンパレードなんです。
周囲に「信じられるのは自分だけ」と思っている人しかいないので、『ゲゲゲの先生』の時よりも、意外と今回の方が部外者感は少ないのかもしれないです。一応、「エレノアとリチャード」「ジョンとヘンリー」という、史実に基づいた派閥みたいなものはありますが、そこも行ったり来たりするので、グループ感、チーム感みたいなものはないですね。
――関係性や立ち位置が頻繁に変わるとなると、人間関係を理解するのが大変そうですね。
僕はもう知ってしまっているので、単純に受け入れられているだけなのか。人間関係や感情を追うだけでも十分楽しめる作品だと思います。
――客席にどう伝わるか、どうみえるかということでしょうか?
ある程度は、関係性を知っておいていただいた方が、よりすんなりと入ってくると思います。例えば土地の名前でも、意外と聞き馴染みがないんですよ。誰の領地がどことか、台詞の中で説明はしますが、大前提がわかっていた方が楽しめるのかな、とは思います。
――クリエイティブ陣に渥美博さんがいらっしゃいますが、アクションシーンがあるのでしょうか?
ソードファイトはあるかもしれないですけど、メチャメチャ戦うシーンはないです。取っ組み合いや、ちょっと掴みかかるみたいなことを、渥美さんにアクションとして面白い感じでつけて頂いています。
――フランス王であるフィリップの目線では、『冬のライオン』で語られる一連の出来事は、どのように見えているのでしょうか?
森さんとも、語られている出来事のどこまでが計算で、どこからが予期せぬことなのかを話し合いました。もし全部が計算だったら、すごくややこしいことになってくると思うんですよ。そこで行き着いたのが、予期せぬことのオンパレードなのにもかかわらず、あたかも「いや、計算通りですよ」と振舞っているヤツらばかりなんだと(笑)。
計算通りになっているところももちろんありますが、さっきまではこう言っていたはずなのに、急に「いや、僕にはわかっていたよ」というのが、体感として多いなとフィリップを演じながら思っています。
――それは、フィリップに限らずでしょうか?
どうなんでしょうね。 意外と他の人たちの方が、ヘンリーの、予期せぬちょっとした策略に、ある意味ちゃんと振り回されています。やはりヘンリーとエレノアが二大巨頭なので、その2人のいざこざ、戦いに、みんなが巻き込まれているという感覚があります。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、フィリップの思惑、佐々木蔵之介さんと高畑淳子さんが演じるヘンリーとエレノアを見ながら感じること、今この時期だからこそ、この作品を通して感じていただきたいこと、お客様へのメッセージなどインタビューの後半の全文を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)
■ 出たとこ勝負なところもあるが、「話術に長けたIQ高めの方」なフィリップ
■「ややこしくさせたモン勝ち」。17歳のフィリップは、時間を味方につけている
■ヘンリーとエレノアのように「馬鹿だな」と笑いながら言えるのは、すごく平和な愛
■青臭くてこっ恥ずかしくても、「愛や平和」をストレートに感じ取っていただけたら
<『冬のライオン』>
【東京公演】2022年2月26日(土)~3月15日(火) 東京芸術劇場 プレイハウス
公式サイト
https://www.thelioninwinter.jp/
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■出たとこ勝負なところもあるが、「話術に長けたIQ高めの方」なフィリップ
フィリップ個人としては、「考えてるふう」なんです。でも、意外と考えてないことも多くて。そこを上手く話術や雰囲気で、「考えている感じ」に見せているんです。そういう賢さがある感じで、現時点での僕の捉え方では、「フィリップは話術に長けているIQ高めの方」みたいな(笑)。
ただ、IQが高いと「ここがこうなったら、次はこうなる」と先読みする感じもしますよね。でも意外とフィリップには、出たとこ勝負なところもあって「そういうふうに転がっていくなら、ここでその転がりを止めるか。いや、もう少し転がしたままにするか」みたいなことで、その場を見ている感じがします。
■「ややこしくさせたモン勝ち」。17歳のフィリップは、時間を味方につけている
――フィリップは、変化する状況を楽しんでいるのでしょうか?
楽しんでいるところまでは、いかない感じですね。それぞれが、「領地が欲しい」「王冠が欲しい」という具合に、一番念頭に置いているものが、はっきりしていますから。その中でフィリップが一番念頭に置いているのは、「ヘンリーたち家族をかき回すだけかき回すこと」なんですよ。
だから今、「よりヘンリーの家族がこじれるようにするには、どうすればいいか」と感じながらフィリップを演じています。「ややこしくさせたモン勝ち」だと思っている気がするんですよ。「ヘンリー、貴方は先に死んじゃうんだから。でも僕にはまだ時間があるんですよ」という台詞があるんです。「今は無理かもしれないが、いずれ」というヴィジョンを持っているんです。17歳のフィリップの中には、時間を味方につけている自信があるのだと思います。
■ヘンリーとエレノアのように「馬鹿だな」と笑いながら言えるのは、すごく平和な愛
――佐々木蔵之介さん演じるヘンリーと、高畑淳子さん演じるエレノアは、どのような夫婦なのでしょう?
シーンによっては、完全に夫婦漫才です。端から見ていて面白くて「なんなの、この2人?」と何度思ったか。1日1回喧嘩するのが恒例というような、「喧嘩しているのが、夫婦の愛の形」みたいな夫婦って、いるじゃないですか。そういう愛の形もあるのだろうと思いつつも、「巻き込まれる家族や周囲は、きっとこういう気持ちだよね」と、この2人を見ながら思っています。外野にいたら、「変な夫婦」と言っちゃいそうな(笑)。
――最後に、お客様にメッセージをお願いいたします。
今このご時世は、演劇が行えるのか、行われないかという狭間で、本当に大変な時期だと思うんです。人と人との繋がりが薄くなって、「会いたくても会えない、関わりたくても関われない」という時代です。この作品のエレノアとヘンリーは、やいのやいの文句を言いつつ、腹の探り合いをしながらも、結局は、何か目に見えないもので繋がっています。それが愛であるのか、腐れ縁なのかはわからないですけれど、この本を読んで、稽古を見ていても、本当に愛があふれている作品だと感じます。「馬鹿だな」って笑いながら言えるのは、すごく平和な愛じゃないかと僕自身は思います。
■青臭くてこっ恥ずかしくても、「愛や平和」をストレートに感じ取っていただけたら
作品の描写で、「戦争だ、血を流す」ということを言ってるので、ちょっとおっかない部分もありますが、そういうものを抜きにして、心情的、感情的なところでは、愛や平和を求めているんです。ヘンリーの台詞に「平和を今、僕が欲してるんだ」というものがあります。建前なのか本音なのかはわからないですが、ヘンリーが求めているものは、意外とそういう「愛や平和」なんです。ちょっと青臭くて、こっ恥ずかしいかもしれないですが、こういう時代だからこそ、今一番求めてるものは、そんな当たり前のことだと。このドタバタした『冬のライオン』を観て、ストレートに感じ取っていただけるんじゃないかと思っています。
まずは初日を迎えられるように、僕たちは体調管理を徹底して稽古しますので、初日が開けることを祈って、劇場にいらっしゃったら、是非楽しんで作品を観ていただければ嬉しいです。
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「冬のライオン」本日千秋楽おめでとうございます。
上下共にライターさんの質問から航生君がこの度の役に対してどのように臨まれているのかを知る事ができ、とても読み応えのある記事でした(特に有料部分がいつも好きです)。考えてなくても考えてる風に演じるところ、航生君とてもお上手そう!とか思っちゃいました。観劇が叶わなかったのが残念ですが、記事を通して何となく知ることできるのでありがたいです。
今後の舞台でもまたインタビューしてくださると嬉しいです!