「音楽を創る時、忘れないようにしているのは鼻歌」、オレノグラフィティ(下)

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

今年活動15周年を迎えた「劇団鹿殺し」の記念公演のラストを飾る、2003年の初演時に“衝撃度No.1”と言われた伝説の作品「image -KILL THE KING-」が、11月23日~12月4日まで東京・下北沢駅前劇場、12月8日~12月11日に大阪・ABCホールで上演されます。この作品に出演する俳優・音楽担当のオレノグラフィティさんインタビューの第3回目(下)です。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

■小学校のときにピアノを3年間やって、後は何もやってない。独学なんです

――それでは「好きなこと」というキーワードが出ましたので、「音楽」について。いつくらいから音楽に興味を?

僕ね、小学校のときにピアノを3年間やってたので、後は何もやってないんですよ。習ってなくて。独学なんです。その、ポップスは中学校の時に「バンドやろうぜ」(宝島社)とか、「月刊歌謡曲」(ブティック社)っていう本があって、コード進行だけ載ってる本があるんです。コードを覚えて、自分で好きな曲をピアノで弾いたり、なんとなく曲を創ったりしたのはあったんですけど。でも、それっきりで、劇団に入っても、別に音楽要員で入った訳ではないので。

入交星士(いりまじりせいし)っていう、劇団員が居るんですけど、彼がずっと音楽を創ってて、僕はそれの補佐みたいな形で、メロディを鼻歌で創るのが得意だったんで。入交が作った伴奏に、僕が歌詞を見てメロディを当てていく、みたいな作業をしてたんです、ずっと。その時期が5~6年あって。でも「無休電車」の時に、曲を創るのが、僕自身で出来そうな気がして(笑)。それまで、生演奏の管楽器隊の楽譜は僕ずっと書いてたんですよ、自分で。それも独学で(笑)。何となく、このハーモニーがいいって思って書いて、鼻歌を。

■理論もなしに書いてるんです。音楽の方とかが観に来ると「ありえない」って

――ものすごく複雑な音だった印象がありますが、独学であれを!?

何の理論もなしに書いてるんです、あれ(笑)。感覚だけでやっててずっと。だから、たまに音楽の方とかが観に来ると「ありえない。ありえない進行の仕方をしてる」って(笑)。だから、ちゃんとはしてないんだと思うんですけど。

その「無休電車」の時に入交の創ってる姿をずっと見てたんです。入交がその頃調布に住んでて、稽古終わりに丸尾と2人で音楽を創りに行くっていう時間があって。夜10時に稽古が終わって、調布に行ったら12時なんですよ。で、12時から朝の8時くらいまで、ずっと寝ないで音楽を。それはしかも人のやってる音楽に“口を出す”って作業なんです、僕が弾くとかじゃなくて。

■「ガンダムを基地から動かす」から、ザクを創ろうと始めたのが「無休電車」

――稽古終わりから休みなく延々とディスカッションしている状況ですね…。

そう、なんか、こう、なんですかね。“ガンダムを基地から動かす”?(笑)。無人のガンダムを、あ、人は乗ってるんですけど、アムロに延々指示を出し続ける「右、右、右、左!ビームサーベル!」って言い続ける仕事で(笑)。

――すごく磨り減る仕事だというのが、とてもよくわかります(笑)。

もう、「アムロ、自分でやってー!」って(笑)。でも天才だから、うちのアムロは、入交って男は。無双する時はビームサーベルでバッサバッサなぎ倒す。無双しない時はもう、一切動かなかったり。なんかもう、湖にどんどん歩いて行って、顔しか見えてなかったりするガンダムなんですよ(笑)。それを、こう「こっちじゃない」って、引き起こして、ヨイショっていう作業してて(笑)。すごい、ガンダムの性能いいのになって思ってたんで。

僕はじゃあもう、自分でザクを創ろう、寄せ鍋のザクを俺は創ろうと思って(笑)。ザクに乗り始めたのが「無休電車」だったんです。

――「無休電車」からですか?

そうなんです。「無休電車」の「路上の歌」とかは僕が創ってて。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分では、音楽を創るようになった経緯とオレノさんの音楽についての考え方、外部出演でスズカツ(鈴木勝秀)さんや鴻上(尚史)さんから受けた言葉などについて語っていただいた全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■「主人公の気持ち」の音楽を創る時、必ず忘れないようにしているのが「鼻歌」 

■三上陽永さんとは共通言語が出来ているから、彼の世界を具現化してあげたい

■役者の時にかかって欲しい曲を創りたい、観てる時にかかって欲しい曲が欲しい

■ベースで呼ばれた「フォレスト・ガンプ」。実はベースを人前で弾いたことがなくて

■スズカツさんは「上手い役者はいっぱい居る。君はもっと熱が欲しいんだ」って

■鴻上 さんには「かっこよく居てくれ」って姿勢矯正から仕掛けられて(笑)

■(鴻上さんが)「弱さを見せるオレノってかっこいい。お前の使い方はこうだ」と

■「よろしくお願いします」って挨拶したら、がっかりされる事が、よくあります(笑)

■これから、演劇に携わろうと思っている若い人に観て欲しい「image」

<「劇団鹿殺し」オレノグラフィティさんのサイン色紙と写真を有料会員3名さまにプレゼント>
オレノグラフィティさんに書いていただいたサイン色紙と写真1カットを、アイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまに抽選でプレゼントします。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。応募は有料会員の方はログインし、この記事の文末にある応募フォームからご応募願いします。有料会員の方はコメント欄にメッセージを書き込むことができますので、ぜひ記入をお願いいたします。応募締め切りは11月21日(月)です。(このプレゼント応募は終了しました)

<劇団鹿殺し「image -KILL THE KING-」>
【東京公演】下北沢駅前劇場 2016年11月23日(水・祝)~12月4日(日)
【大阪公演】ABCホール 2016年12月8日(木)~11日(日)
作・丸尾丸一郎 演出・菜月チョビ 音楽・オレノグラフィティ
劇団鹿殺し 15周年記念・伝説リバイバル「image -KILL THE KING-」のページ
http://shika564.com/image/index.html

<「劇団鹿殺し」オレノグラフィティさん関連ページ>
劇団鹿殺し公式サイト⇒http://shika564.com/
オレノグラフィティ ツイッター⇒https://twitter.com/oreno_g?lang=ja

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※ここから有料会員限定部分です。

■「主人公の気持ち」の音楽を創る時、必ず忘れないようにしているのが「鼻歌」

――「無休電車」以前の作品では?

一応、連名だったんですけど、伴奏を創ってたのは、あくまで入交で、メロディラインとか、あと楽隊の楽譜を創る担当とか、完全に分業が出来てたんですよ、その時は。

――「無休電車」の楽隊の音楽は、印象的で懐かしい気持ち、ひどくノスタルジーを呼び起こされた記憶があって、この音楽たちは一体どこから来たのかと不思議で!

有り難うございます。いつもその「郷愁」の音楽とか、…なんだろう、「主人公の気持ち」の音楽を創る時に、必ず忘れないようにしているのが、絶対人って「鼻歌」で歌っている音楽があって、自分の記憶の中に。きっとその「鼻歌」って、すごく大事な瞬間にかかった「鼻歌」が多分あると思うんです。

頭の中でかかってる音楽でも良いんですけど。その音楽の「根源」に近いものをとにかく創りたいと思っていて。だから、自分のノスタルジーでもあり、いろんな人のノスタルジーでもあるっていう。身近にある音楽を、必ず創りたいって思っているので、それはだから、すごく意識しているところで、そう思って頂けたらとても嬉しいです。

■三上陽永さんとは共通言語が出来ているから、彼の世界を具現化してあげたい

――お話を伺っていて、以前インタビューさせていただいた、三上陽永さん(「虚構の劇団」所属)が「音楽担当」のオレノさんについて、“妥協なく演出にとことん寄り添ってくれる。彼は役者だから、音楽が役者にとってどれ程大事か解ってる”と、仰っていたのを思い出しました。

ありがたいですね。彼とは役者やってて仲良くなっているので、どういう事に重きを置いてて、どういう信念で演劇をやっているのか、っていうのが、肌で伝わっているので「演劇愛」というか、「ここは絶対外したくないポイントでしょ?」、「ここは別にちょっと外した方がいいポイントでしょ?」っていう共通言語が出来ているから。だから逆に言うと、何とかして彼の世界を具現化してあげたいし、それは勿論他のライブやってても思うんですけども。

■役者の時にかかって欲しい曲を創りたい、観てる時にかかって欲しい曲が欲しい

――それが「寄り添う」音楽に繋がるんですね。

役者として立っている時に、自分がかかって欲しい曲を創りたい、とも思ってて。お客さんで観てる時にかかって欲しい曲が欲しいし。その、自分が役者やってて、それは良かったなって思います。音楽と両方の気持ちが分かるから。

――印象的なメロディラインのオレノさんの音楽ですが、実は先日の「名なしの侍」のような激しい、ガーッ!っていう感じのものが特徴なのかと思っていました。

あっちは、割と入交が得意な方で、僕はそっからこう盗んできたタイプなんですよ。ガーッ!ってヤツは。だから、ギターも「無休電車」から初めて触って…。

■ベースで呼ばれた「フォレスト・ガンプ」。実はベースを人前で弾いたことがなくて

――えっ?!そうなんですか?

「これが、『パワーコード』というものか!」っていう(笑)。「これが、『ドロップD』というものか!」っていうところから始まって。

そっからでもこの何年かで…。G2さんのプロデュースで「フォレスト・ガンプ」っていう作品に出させていただいた事があって、田口淳之介くん(元「KAT-TUN」)の主演のやつで。その時、役者さんが楽器を弾く全編生演奏だったんです。元「第三舞台」の大高洋夫さんがギターで、元「四季」の鈴木壮麻さんがピアノで、僕はベースで呼ばれたんですけど、実は僕、ベースを人前で弾いたことがなくて(笑)

自分でちょっとは弾いてはいたんですけど、でもそれももう、ルートのコードくらいしか知らなくて。「出来るよね?曲を創ってるから。」って、G2さんに言われて(笑) 「はい、出来ますよ」って(笑)言ったのがきっかけで、そっからもうベースを猛練習して(笑) G2さんもギター弾いてらっしゃるので、教えていただいたりして、最初アップライドベース弾いて。

それがきっかけで、「ああ!弦楽器、イイじゃん!」って思って。ピアノ畑の人間だったから、自分の楽譜で弦楽器入れにくかったんですけど、でも、あぁ!これいけるなぁと思って、そっからもう、どんどん。その後「彼女の起源」で「鹿殺し」の方でも生バンドのやつで、その時、僕ベース弾いたんですけど。

――てっきりオレノさんは、ベースの人だと思ってました!

そうですよね(笑)。元々ピアノ畑なんですよ。

――音楽は本当に独学なんですね。

完全にそうですね。未だにだから、たぶん訳の分からん事してると思うんです。

■スズカツさんは「上手い役者はいっぱい居る。君はもっと熱が欲しいんだ」って

――それでは、G2さんのお話も出てきましたので、外部のご出演について。印象深いエピソードなどあればお伺いしたいです。

各演出家さん、タイプが違うから面白いなと思うんですが、スズカツ(鈴木勝秀)さんは、本当にもう、話聞いてて面白かったのは、「キャスティングした時点で作品は出来上がっている。もう後は君たちが演ってくれるだけなんだ。」だから、稽古時間もすごい少ないし、もう開始3日目に通し稽古(笑)。いやあ、すごかったですね。

――それは凄いというかびっくりですね!

僕は熱量がすごい必要な役で、上手くやんなきゃ駄目なのかなって思った稽古の日があって、上手くやろうと思って立ち回ってたんです。そん時だけ唯一怒られて。「イヤ、君にそんな事求めてないから!」って。「上手い役者はいっぱい居るし、今やった事は、別に、上手くもないし、実験でやる事も何もない。そうじゃないんだよ。君は、もっと熱が欲しいんだ」って言われて。だから、そういう意味のキャスティングではない、そこ求められてない。あ、凄いな、って思いました。

――役者の持っているものを把握して、その役者が持ってる力を発揮すれば、もう物語は成立する、と。そこまで読んでらっしゃるんですね。

■鴻上 さんには「かっこよく居てくれ」って姿勢矯正から仕掛けられて(笑)

多分ね。本当に面白い。鴻上(尚史)さんは、僕に求められたのは、とにかくスマートでかっこいいという事、でしたね。「グローブ・ジャングル」で最初稽古場に行った時に「あれ?お前オレノだよな?」って(鴻上さんに)言われて(笑)。

――それは、どういう…?(笑)。

「『田舎の侍』で観た、かっこいいオレノだよな?なんか違うんだよな。(劇団)ホームページ見ていいか?…やっぱオレノお前だよな?コレ。なんか違うんだよな。」って(笑)。

――鴻上さんがオレノさんに持っていらしたイメージと違った?

そう、「かっこよくないんだよ。」って言って。それなら、と姿勢矯正から仕掛けられて(笑)。で、もう、スッと立つ。舞台上に立って、言葉を吐いて、歩く、っていう鴻上さんの理想とする男性像、というか。「彼」ならば女性と何かがあってもおかしくない、鴻上さんの本って、女性と男性の恋の結果、何かが渦巻いていくっていうお話だから、「このシーンの男がかっこよくないと成立しないんだよ。」って。脇の人間が嫉妬するのも、コイツがかっこよくないと意味ないし。女性は追いかけてこないし、絶対に。だから、「かっこよく居てくれ」って。

■(鴻上さんが)「弱さを見せるオレノってかっこいい。お前の使い方はこうだ」と

――そうだったんですね!「グローブ・ジャングル」での、あのカッコよさは元々なんだと思ってました。カッコよくて、でも実はナイーブなんだなと。

僕はもう、無理してかっこよくしてました(笑)。すごく。ナイーブな面は確かにそうですね。「ホーボーズ・ソング」で、(鴻上さんが)「俺、今回初めてオレノがすごい良いって思った」って言ってくれたのが、最後のシーンで弱さを見せるシーンがあって、そのシーンで「弱さを見せてるオレノってかっこいいなって思った。お前の使い方はこうなんだな。」って言ってくれて(笑)。それがすごい嬉しかったですね。

■「よろしくお願いします」って挨拶したら、がっかりされる事が、よくあります(笑)

――頷きます(笑)。一見強面のオラオラ系に見えて、インパクト絶大だけど実は意外にそうじゃない?!というギャップはポイントだと思います(笑)。

そう、本質は僕すごくそうなんです。オラオラじゃなくて、わりと。よく言われるんです、たまに外部の方に「オレノグラフィティです。よろしくお願いします。」って、挨拶したら、「ちょっと待ってください、チガウ!」って(笑)。「やめてください!ちょっとガッカリです。俺は握手とかも、こう、外側からグッと『ヨロシク!』ってくるもんだと思ってた」って(笑)。「『オレノだけど!』って言ってくれると思ってた。ちょっとやり直してもらっていいですか?」って、がっかりされた事があります。よくありますそれは(笑)。

――皆さん、最初はそんな反応されるんですね(笑)。鴻上さんは演じる俳優さんに当て書きされるとも聞きますし、新作だった「ホーボーズ・ソング」ではオレノさんの魅力的なところを引き出してくださってるなぁと思いながら拝見しました。

有難い役を頂きました。鴻上さんに新作書いていただけるなんて、もう凄い事だから。本当に嬉しかったですね。また、機会があったら、是非演らしていただきたいと毎回思います。

■これから、演劇に携わろうと思っている若い人に観て欲しい「image」

――いろいろと興味深いお話をありがとうございます。それでは最後に今回の作品「image」についてのメッセージををお願いします。

今回、なにせ一番思うのは、若い人に観て欲しいっていうのがすごくあります。僕が16、17の時に観て、演劇の価値観ていうのを根底から覆された作品で、人生でなかなか会う事はないと思うんです、その作品っていうのは。

僕にとって、やっぱりこの「鹿殺し」の「image -KILL THE KING-」と「唐組」さんと「シルク・ドゥ・ソレイユ」と限られているんで。きっとでもそれに見合うだけの熱量の作品というか、観たことのない作品に絶対になるので、まずは若い人に、演劇をこれから、演劇に携わろうと思っている若い人に観て欲しいなという気持ちはすごくあります。

また、15周年の最後の公演で、本多劇場から始まって、サンシャインで「名なしの侍」やって、最後に「駅前劇場」っていう、もう収束されていった公演というか、15周年なので、収束の最後の時点というのは、燃え尽きると思うんです、僕本当に。ろうそくが一番最後に、こう、有り得ないぐらい燃えるような熱量というか、もう、僕はこれで出し切ろうと思っています、今年に関しては。

何者にも代え難い作品にしたいと思っています。もちろん、これからの「鹿殺し」を観ていく歴史の上でも「鹿殺し」の分岐点というか「鹿殺し」を語る上でなくてはならない作品にしたいと思っているので。
結構、ビジュアルがこんな感じなので、怖いなって思う人居ると思うんですけど、全然怖くないですし、あの、なんだろ、間口の広さ的な作品に必ずするので、ダークでアンダーグラウンドな世界を気軽に覗きに来てください。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

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