「意地でもバイトはしないって決めて」 オレノグラフィティ、インタビュー(中)

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

初演時に“衝撃度No.1”と言われた伝説の作品「image -KILL THE KING-」が、11月23日~12月4日まで東京・下北沢駅前劇場、12月8日~12月11日に大阪・ABCホールで上演されます。この作品に出演する俳優・音楽担当のオレノグラフィティさんに想いを語っていただいたインタビューの第2回目(中)です。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

■「鹿殺し」に入って2年間は修行僧みたいな生活。会議して。洗濯、食事当番があって

――「鹿殺し」さんは元々関西の劇団さんで、それが上京して活動拠点を移さなきゃいけないとなったのは、ものすごく勇気が要ることだったのではないですか?

僕、逆に一人だと行けなかったと思うんですよ。絶対に。今回客演の小沢道成くん(「虚構の劇団」所属)と話していて、小沢くんはひとりで関西から東京に出てきたんですね。ひとりで出て、オーディション受けて、受かんなくて、みたいな生活をしてたっていうことで、俺はもう衝撃を受けて。まぁ普通多分みんなそうなんですよね、上京する人って、きっと。僕は逆にその1ヵ月で上京決まって、もう先輩たちと一緒にブワッと、2トントラック2台とハイエース1台借りて、全員で引っ越し準備して、グワッて行ったんで。で、7人で共同生活して。なんか、そういう事がないと、僕は逆に上京出来なかったと思うし。今でも関西で、お芝居してたかしてないかは別として、多分ずっとカラオケ屋で働いていてたろうし(笑)。

■公民館で稽古。「殺し」は駄目なんで「演劇サークルバンビ」ですって可愛いフりして

――劇団に入ってすぐだったのも案外良かったのかも知れませんね。

そうですね。そうかも知れない。入って2年間は本当にもう修行僧みたいな生活で、毎日。朝10時に起きて、制作会議をして。共同生活なんで、生活の会議も「今日はトイレットペーパーの芯が変えられてませんでした。誰かはわかりませんが、これ絶対変えてください。」とか言う話をして。各自、洗濯当番、食事当番とかがあって、昼間にお弁当を作って。東久留米市に住んでて、新座市が近いんで、埼玉の公民館まで行って、埼玉の公民館を「演劇サークルバンビ」っていう名前で借りて。「鹿殺し」では借りられないから。

――借りられない?

公共の持ち物なんで、「殺し」とか、駄目なんですよ(笑)。だから、「演劇サークルバンビ」ですって言って、可愛いフりして(笑)。申請出して、毎日昼から大体夕方6時ぐらいまでは、毎日その公民館でみんなで肉体訓練して稽古して。で、6時からみんなハイエースに乗って、スピーカー積んで、物販積んで(笑)。東京の路上に出て、そこでお金を稼いで。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分では、「劇団鹿殺し」に入って「バイトはしない」と決めてからの大変な生活についてのお話を紹介します。11月9日掲載予定のインタビュー(下)では、音楽を創るようになった経緯とオレノさんの音楽についての考え方、外部出演でスズカツ(鈴木勝秀)さんや鴻上(尚史)さんから受けた言葉などについて語っていただいた全文を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■場所取りしてくれて、終わったら差し入れ、そんな「天使」がたくさんいらっしゃって

■意地でもバイトはしないって決めて。路上パフォーマンスで生活するって

■「歴史に名を残せー!『鹿殺し』!」って訳の分からんコールが始まって(笑)

■路上は雨が大変。梅雨の時期は、稼ぎが三分の一くらいになって、ずっと毎日部屋に

■舞台には、台詞を吐く瞬間に『生』を感じられる人間しか立っちゃいけないと言われて

■すごく特殊な劇団で、妥協を許さないチョビと丸尾がいる。常に弾が飛び交ってて命懸け

■2人が続けてくれないと、「鹿殺し」ではなくなっちゃうので、絶対に。それに尽きますね

■なるべく自分の時間を作る。同じ方向を向いた人間がいっぱい居るのは、弱みでもあるから

<「劇団鹿殺し」オレノグラフィティさんのサイン色紙と写真を有料会員3名さまにプレゼント>
オレノグラフィティさんに書いていただいたサイン色紙と写真1カットを、アイデアニュース有料会員(月額300円)3名さまに抽選でプレゼントします。当選者の発表は発送をもってかえさせていただきます。応募は有料会員の方はログインし、この記事の文末にある応募フォームからご応募願いします。有料会員の方はコメント欄にメッセージを書き込むことができますので、ぜひ記入をお願いいたします。応募締め切りは11月21日(月)です。(このプレゼント応募は終了しました)

<劇団鹿殺し「image -KILL THE KING-」>
【東京公演】下北沢駅前劇場 2016年11月23日(水・祝)~12月4日(日)
【大阪公演】ABCホール 2016年12月8日(木)~11日(日)
作・丸尾丸一郎 演出・菜月チョビ 音楽・オレノグラフィティ
劇団鹿殺し 15周年記念・伝説リバイバル「image -KILL THE KING-」のページ
http://shika564.com/image/index.html

<「劇団鹿殺し」オレノグラフィティさん関連ページ>
劇団鹿殺し公式サイト⇒http://shika564.com/
オレノグラフィティ ツイッター⇒https://twitter.com/oreno_g?lang=ja

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「image」上演へ、「劇団鹿殺し」オレノグラフィティ、インタビュー(上)
「意地でもバイトはしないって決めて」 オレノグラフィティ、インタビュー(中)
「音楽を創る時、忘れないようにしているのは鼻歌」、オレノグラフィティ(下)(11月9日掲載予定)

※ここから有料会員限定部分です。

■場所取りしてくれて、終わったら差し入れ、そんな「天使」がたくさんいらっしゃって

――チョビさんが留学される前に上演された「無休電車」を拝見しているのですが、まさにあの世界ですね!

そうです!ほぼリアルです(笑)。だからもう、警官にも各地で怒られて、ヤクザに怒られたこともあるし(笑)。

――あの作品ではとんでもない熱量、「お芝居を続ける」ための熱と難しさを本当に感じました。

しんどいんですよね、やっぱり。

――たまにフッと我に帰る時とか?

何してるんだろう、と、思いますもんね、自分が(笑)。でも、お客さんの顔を思い浮かべると、あ、続けなきゃ!って、もうそれが本当に一番の原動力ですね。待っててくれてる人が居るって事は、やっぱりね。何よりも嬉しいことだから。

――その頃から、常連のお客さんがいらしたんですね。

毎回、そう、もう場所取りしてくれる、何なら。「先に取っといたよー」って、来てくれて。

――芝居を打つ場所を、ですか?!自分が観る場所じゃなく?

そう!僕らが準備している間、離れてどっか行ってて、芝居が始まったら、遠くで観てるんです。その、お客さんが集まるから、前に来させるためにちょっと遠いところから「俺はまぁ前に観られてるから、みんなで観てくれ」という感じで観てて(笑)。

――まるでスタッフさんのように!

本当に(笑)。で、芝居が終わったら、物販を売っている間に居なくなってて。そして全部終わって「疲れた、よし、帰ろう」って言って休憩してる時に「おい、差し入れ持ってきたよ!」って(笑)。もう、なんだこれは!「天使」じゃないか!って(笑)。そんな方がたくさんいらっしゃって。応援してくれて。

――すごい!(笑)。でも、それはありがたいお話ですね。モチベーションにも直結しますね。

■意地でもバイトはしないって決めて。路上パフォーマンスで生活するって

いやー、本当にね。凄かったです。関西の時に、バイトをしたくないって言って、最初丸尾が上京すると決めたんで。意地でもバイトはしない、って、向こう(東京)では路上パフォーマンスで生活するって。だからそんな中でやっぱり、ね、不安な中で行って誰が来るのかな?っと思ったら、そうやって、支えてくれる方がたくさん集まって。

で、上京一発目の公演が関西の動員を抜いたんですよ、一気に。でも、東京に知り合いひとりも居なかったから、全部路上のお客さんなんです、みんな。だから結構異様な雰囲気で。王子小劇場(現 花まる学習会王子小劇場)で演ったんですけど、全部ブルーシートを引いて。赤テントに憧れていた時期で、唐(十郎)さんみたいな見せ物小屋にしようって。

■「歴史に名を残せー!『鹿殺し』!」って訳の分からんコールが始まって(笑)

そこに路上のお客さんが来て。(芝居が終わって)「ありがとうございました」って全員ハケた時に、なんか「歴史に名を残せー!『鹿殺し』!」って言う、訳の分からんコールが始まって(笑)。

――それは、客席から?(笑)。

そうなんです(笑)。カーテンコールの仕方とかも分からないから「これ、カーテンコールなのかな?」って言って出てって「ありがとうございます」。

――本当にお客さんと一体!といった感じですね。

いやぁもう、面白かったです。本当に。

■路上は雨が大変。梅雨の時期は、稼ぎが三分の一くらいになって、ずっと毎日部屋に

――それは、でも嬉しいですよね。凹んでる場合じゃない!って思っちゃいますね。

やっぱりね。本当に、頑張んないと!って思いました。雨の月とかが大変だったんですけども、土方の方と一緒で、雨の時出来ないんですよ。だから、梅雨の時期は、稼ぎがもう三分の一くらいになって、ずっと毎日部屋に居るっていう。

――最初の誓いどおり、アルバイトはやらずに?

全くせず、2年間は。2年半かな?2年間した時に、やっぱり先輩方はしんどかったみたいで。僕の先輩の役者が、チョビと丸尾と入交と、もう3人居たんですけど、3人とも2年半でやめちゃって。だから、本当に「無休電車」みたいに「もう、ちょっと、俺はやめるわ」って、関西に帰っちゃったりして。続けるのがやっぱり一番難しいんですよね、お芝居って。

■舞台には、台詞を吐く瞬間に『生』を感じられる人間しか立っちゃいけないと言われて

――「続けることが才能だ」みたいな言葉もありますね。

ね。でも多分、もう他のルートが無い人間しか出来ないんだなと思いますね、多分。

この間、僕が今、音楽を担当している「墓場、女子高生」っていう「乃木坂46」さんの舞台なんですけども、それに行った時に、丸尾が演出で福原充則さん(「ピチチ5(クインテット)」主宰)が脚本を提供されてて、何度も上演されている脚本なんですけど、その読み合わせの時に、(福原さんが)乃木坂の子たちに「君たちは本当に下手くそすぎる。なので頑張ってください。」って、苦言を呈した後に、「僕は、舞台上に立つ役者っていうのは、もうそこで、台詞を吐く瞬間にしか、『生(せい)』を感じられる人間しか立っちゃいけないと思っている。だからもう、『生』を感じないのであれば、今すぐやめた方がいい」って言われて。

僕も、それはもう、ね、10年やっぱこうやって東京でやって来て、ちょっと忘れかけてた事だったんで、確かになー、って。その“必然”がない人間は、お芝居続けちゃ駄目なんだな、と思って。すごくそれはグッと来ましたね、身につまされたというか、改めて初心に返らないとな、と思いました。

■すごく特殊な劇団で、妥協を許さないチョビと丸尾がいる。常に弾が飛び交ってて命懸け

――お芝居に限らずですけれど、ずっと「続ける」と、いつか「慣れ」て、どこか麻痺するところが…。

なんかね。その、効率を求めた結果、大事な事がなくなっちゃったりね。

――ありますね。そして、ある日、全くの素人さんや演劇の世界で日の浅い方たちのお芝居なり表現なり見ておおっ!となる瞬間とかが。

そうなんです。「忘れてた!」ってなることがあるんですよ。でも「鹿殺し」って、すごく特殊な劇団で、チョビと丸尾が二人居るので、お互い妥協を許さないんですよね、やりたいことに対して。常にこう、表現の上では喧嘩してて、なんか、そういう意味ではすごく効率が悪いと言うか、両方のやりたいことを試さなきゃ駄目だから。試さないと、やっぱお互い気が済まないんですよ。で、試す時に、やっぱ全力で試さないと駄目だから。ある意味「鹿殺し」に居る間は、その…、なんだろな、我が身を庇うというか、そういう事が無いんですよね。その、保身に走る事がないっていうか。

――保身に走れる状況じゃあないですね。

そう!それどころじゃないから(笑)。常にこう、弾が飛び交ってるから。

――そこに、こう、切り込んでいかないと、弾に当たらないように縮こまっていたら、出番無くなりそうですね。

そう!そうなんです。だから、ある意味すごくいい劇団だなと、ね。いつだって命懸けでやらないと、追いつかない事ばかりなんで。そりゃもう、幾つになっても。

■2人が続けてくれないと、「鹿殺し」ではなくなっちゃうので、絶対に。それに尽きますね

――「鹿殺し」さんは何回か拝見していて、毎回このエネルギーはどこから湧き出て来るんだろう?!と思っていましたが、今のお話がその理由の一端なのだなと納得しました。

そうですね。でも本当に2人が続けてくれてるのが嬉しいですね、2人が続けてくれないと「劇団鹿殺し」じゃなくなっちゃうんで。

――そういう意味では、チョビさんが留学されてご不在だった事は、インパクトが大きかったのではないですか?

そう…、いや僕は…、本人も言ってたんですけど「行って、帰ってくるけど、何も変わらないから。とりあえず、無理しなくていいので、続けておいてください」って言って行かれて。普通はね「守ってよ、よろしくよ!」って言ってるのを全然言わずに、とにかく「身体と心に無理のないように、続けてってくれたら、あたし帰ってくるんで」って言って行かれたので。

――信頼されていたんですね。やっぱり「帰ってくる。何も変わらない」って言えるのも「強さ」ですね。

ね。勿論、本人は、むこうで僕らの活動観て、モチベーションが下がったりする事があったんですけど、でも、まぁ、やっぱ帰ってきて「よし!」って言ってやってくれてるので、今。なんか、それは有難いなと思いますね。2人が続けてくれないと、「鹿殺し」ではなくなっちゃうので、絶対に。なんか、本当にそれに尽きますね、「鹿殺し」という団体に関しては。劇団でやっていくって、やっぱすごい大変な事だから。

■なるべく自分の時間を作る。同じ方向を向いた人間がいっぱい居るのは、弱みでもあるから

――ある意味集団生活と同じで、長い間一緒にいると、ものの考え方みたいなものが…?

似通ってくるんですよね。共同生活している時も思ってて。同じテレビを見て、同じ映画を見て、同じものを見て、同じ感想を言い合ってしまって「こりゃ、駄目だよね」とか「こりゃ、めっちゃ面白いね」とか言うのを共有し過ぎちゃって。「あ、こりゃマズイな」って思った時期はやっぱりありましたね。

――どう、されました?その時。

なるべくだから、自分の時間を作るとか、あと自分の好きなものを、改めて確認するとか。それは今でも、チョビは「したほうがいいよ」って言うんですけど。やっぱりね、同じ方向を向いている人間がいっぱい居るっていうのは、良い事なんですけど、やっぱり弱みでもあるから。いろんな方向を向いている人間が、同じ方向を向くっていう事の方が、すごく健全な劇団だと思うので。それはすごく目指さないとなと思いますね。

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

オレノグラフィティさん=撮影・達花和月

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