ミュージカル『ビューティフル』に出演する伊礼彼方さんにインタビューしました。(上)(下)に分けてお届け致します。伊礼さんは、キャロル・キング(水樹奈々/平原綾香 Wキャスト)のパートナーで作詞家のジェリー・ゴフィン役を演じます。(上)ではカンパニーや作品に期待することを伺いました。
――製作発表のとき、メインキャストの皆さんと集まってみて、カンパニーの印象はいかがでしたか?
僕は比較的リラックスした状態で現場に入っていったのですが、意外とみんなもそういうテンションだったんです。緊張はしているけれど、いかにも製作発表みたいな、緊迫している雰囲気ではなかったというか。
――作っていないという事ですか?
それぞれに美学はあると思いますが、素で勝負している人が多いんじゃないかなと。皆さんがそういう感じで、アーティスティックだなと。みんな音楽をやっているからでしょうね。色々な音楽経験があって、その道で成功している。だから、人間的にも柔軟性があるなと思ったんですよ。
――アーティストの方は、自分の裏側や負の感情も音楽にしていきますもんね。それを隠さない事が大切ということでしょうか。
もちろん、ある意味では役者もそうですが、アーティストは自分の人生の苦楽を提供していますからね。
――聞いている人はその苦楽に共感する。
共感してもらって、曲を作ったり、歌詞を書いたりする訳ですから。そういう所で、肝が据わっている。だから、今回は特にそういうアーティスト性の高い方たちが集まっているので楽なんですよ。
――そういう意味では稽古場も楽しみですね。
意見を積極的に発信していくタイプの人たちが集まっているんじゃないかと。僕は全体のバランスを取っていこうかと思っています。
――そうなんですか?
僕は意外とこうみえてもバランサーなんですよ。例えば、意見のぶつかり合いが発生しそうだなと思ったら、それを解決しながら稽古を進めていこうと思っています。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『王家の紋章』のカンパニーでのポジショニングの話からはじまって、『ビューティフル』の共演者の印象などについて話して伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。7月4日掲載予定の「下」では、『ビューティフル』と同じく相手役がダブルキャストだった『アンナ・カレーニナ』で精神的に追い込まれていった経験や、『ピアフ』で大竹しのぶさんから学んだことなどについて話してくださったインタビュー後半の全文を掲載します。
<有料部分の小見出し>
■バカキャラがいなかったら、バカにもなるし、みんなが緩すぎたら喝を入れます
■『ビューティフル』は『ジャージー・ボーイズ』に似ているなという印象を持ちました
■水樹さんは柔らかい印象の方で、平原さんは勢いがあってガンガン行く系というか(笑)
■音楽をやっている人は心がオープン。ハーモニーを通してその日のうちに打ち解けられます
<ミュージカル『ビューティフル』>
【東京公演】2017年7月26日(水)~8月26日(土) 帝国劇場
<公式ページ>
帝国劇場 ミュージカル『ビューティフル』
http://www.tohostage.com/beautiful/
<関連リンク>
伊礼彼方official web site http://www.kanata-ltd.com/
伊礼彼方【KL-official】 twitter https://twitter.com/kl_official_?lang=ja
⇒すべて見る
- 「大竹しのぶさんから学んだことを『王家の紋章』に」、伊礼彼方インタビュー(下) 2017年7月4日
- 「アーティストは肝が据わっている」、『ビューティフル』伊礼彼方インタビュー(上) 2017年7月3日
- 「ミュージカルはエンターテイメントの集合地点」、中川晃教&ソニン対談(下) 2017年6月16日
- 「物語はすでに始まっている」、『ビューティフル』中川晃教&ソニン対談(上) 2017年6月15日
- キャロル・キングの波乱万丈の半生を描く、ミュージカル『ビューティフル』製作発表 2017年4月12日
※伊礼彼方さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは7月17日(月)です。※このプレゼント募集は終了しました。
※ここから有料会員限定部分です。
■バカキャラがいなかったら、バカにもなるし、みんなが緩すぎたら喝を入れます
――自ら率先して発信していくのかなと思っていました。例えば『グランドホテル』の時のように、みんなで語りつくして作り上げていくのかなと。
もちろん、それは変わらないです。率先してやっていかない訳ではなく、様子を見て、率先するような人がいなかったら行きます。でも、今回の現場は口火を切りそうな方々がいるんじゃないかなと思っているので、どのタイミングで自分は口火を切ろうかなと。いきなり自分が立ち上がるのはやめておいて、まず状況を見ようかなと思っています。バランスを見て、攻めてなかったら僕が攻める。僕はいつも、足りていない所を補うようにしているんですよ。現場でバカキャラがいなかったら、バカにもなるし、みんなが緩すぎたら喝を入れますし。
――潤滑油のような役割ですね。
そういう感じですね。毎回色々なキャラクターでやっています(笑)。例えば『王家の紋章』では、少しボケ役に回りました。座長の健ちゃん(浦井健治)は真面目なことをいいますが、素でボケちゃうんですね。だから、そのツッコミもちゃんとやらないといけなかったり。
――なるほど。今回のカンパニーでのポジショニングも、これから間合いを測っていくわけですね。
■『ビューティフル』は『ジャージー・ボーイズ』に似ているなという印象を持ちました
――『ビューティフル』という作品自体の印象はいかがですか?
『ジャージー・ボーイズ』に似ているなという印象を持ちました。アーティストの半生を、その人の音楽を使って構成されたミュージカルだからです。ではなぜ、そこでキャロル・キングが取り上げられたのか。おそらく、アメリカ人が見れば、オープニングからすごく盛り上がるんでしょうが、日本人にはその文化はあまりないですよね。ということは、描くのは人間ドラマで、そこで起きていることを大事にしていこうと思います。『ジャージー・ボーイズ』は非常に素敵な構成で、「ジュークボックスミュージカル」という言葉を知るきっかけになりましたね。
台本を読んだ限りでは、アーティストによくある自分と相手の葛藤や、世の中との葛藤、一番は自分の才能との葛藤で苦しむ物語。売れても、売れなくても、人は必ず自分と戦うんですよね。自分に勝ったり、負けたりを繰り返す。勝ったら勝ったで、どんどん苦しくなったりもする。どちらが幸せなのかは結局分かりませんが、多くの人に響く分かりやすい題材だなと思いました。
■水樹さんは柔らかい印象の方で、平原さんは勢いがあってガンガン行く系というか(笑)
――自分がジェリー役をやる上で、興味をもっていることは何ですか?
一番興味があるのは、化学反応です。キャロル役の水樹(奈々)さん、平原(綾香)さんが、それぞれどういうアプローチをしてくるだろうかと。そのアプローチに対して、自分はどう返せるだろうというまだ見えない期待が楽しみです。本番というよりは、稽古が楽しみですね。
――おふたりとは初共演という事もあって、余計にわからないですもんね。
全くわからないんですよ。水樹さんの歌声はすごく突き抜けていて強いから、ご本人もすごく気の強い方なのかなと思ったら、もっと柔らかい印象の方でした。平原さんは包み込むような声をしているけれど、意外と勢いがあってガンガン行く系というか(笑)。真逆なんだなと思いました。僕もすごく紳士的に見られるんですが(笑)。そもそもが路上ミュージシャン育ちなので、言葉は知らない、音符も読めない、感覚だけで生きてきたような人間なので、最初はミュージカルの世界で生きていくのに、非常に苦労しました。それこそ、最初についてしまったイメージが「王子」だったので、ギャップですよ(笑)。
――(笑)。
僕自身、演じることがすごく勉強になっています。自分の持っていないものが、役にはたくさんあるんですよ。基本的に人の考えていることは面白くて、全員が自分と全く違うものを持っています。そこに自分を近づけていったり、相手に近づいていく作業をするのが本当に楽しいです。もちろん苦しいこともあります。今回も、自分の役に何となくイメージはありますが、ひとりでやっていても出来ないので、現場に入って彼女たちの声に乗った言葉を聞くまでは自分の心がどう動くか分からないです。例えば、同じ「なんで」という言葉でも、トーンだけで捉え方が変わるじゃないですか。だから、どうアプローチするかは分からないですね。決めてアプローチしたら、ただ型にはまっただけの芝居になってしまうので。何が生まれるか分からないというのが楽しいです。
■音楽をやっている人は心がオープン。ハーモニーを通してその日のうちに打ち解けられます
――初めての方と作っていくのは、色々発見する楽しみがありますね。
ありますね。でも、音楽をやっている人たちは心がオープンなんですよ。音楽の力は素晴らしくて、ハーモニーを通してその日のうちに打ち解けられます。
――先日の製作発表でも、全員で歌うのを聞きながら、打ち解けている感じがしました。
あのときは、歌稽古で2日前に初めてお会いして、いきなりハーモニーを合わせました。それで何となく分かるんですよ。相手の歌声で、性格が何となく分かったりする。だから、関係を作るのが早いんです。ミュージカルはそこが素晴らしいと思う。音楽の力だと思います。
――初めましてにはちょうどいい作品ですね。
そうですね! 毎日がドキドキと、恋する男の子みたいな気持ちで、稽古場に通うんじゃないかなと思います。「今日はどういう事が起きるんだろう」って。たまに誰かに強く言われて、傷ついたりするんだろうな……。言い返したらエスカレートしちゃうかなとか、意外と考えたりするんです(笑)。
※伊礼彼方さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは7月17日(月)です。※このプレゼント募集は終了しました。
ちゃんと彼方くんのことを見ている、わかっている岩村さんのインタビューだから、彼方くんの答えも素直だなと思いながら読みました。
現場によって、今回はそういう立ち位置なの?とびっくりすることもありますが、空気を読む彼方くんだから毎回現場によって違うんだなと、このインタビューでよくわかりました。
写真、どれも好きですが横顔は男性の色気があって特に好きです。
年齢を重ねた渋さが出ていて。
今回も読みごたえのあるインタビューでした。ありがとうございます。