世界各地で活躍しているミュージカル界のトップが集結するミュージカル・ショー『4Stars 2017』が、2017年12月14日から梅田芸術劇場メインホールで、12月20日からは東京国際フォーラムホールCで上演されます。アイデアニュースでは、出演する4人のうちの1人、城田優さんの取材会に参加し、城田さんの今の思いなどをたっぷりと伺いました。上下2回に分けて詳しくお伝えします。
『4Stars』は2013年に初めて開催され、城田さんのほか、レア・サロンガさん、ラミン・カリムルーさん、シエラ・ボーゲスさんが出演しました。今回の『4Stars 2017』では、レア・サロンガさんに代わって、『天使にラブ・ソングを』のデロリス役で知られ、『ピピン』のリーディング・プレイヤー役で2013年のトニー賞・ミュージカル主演女優賞を受賞したパティーナ・ミラーさんが参加。パティーナ、ラミン、シエラ、城田(アルファベット順)の4人の共演が実現します。
――2013年の『4Stars』を観させていただきましたが、最初は正直、あのメンバーの中でよくやるなと思ったのですが、公演を観終わってからは、よくやったと、驚きました。
ありがとうございます。
――本当に、素晴らしかったです。城田さんはアーティストとしても歌を発表されていて、その英語歌唱部分も迫力があって素晴らしいのですが、英語やスペイン語で歌うというのは、城田さんにとってはどうなのでしょうか?
僕は、第1カ国語は日本語、そして第2カ国語はスペイン語。そして英語は皆さんと同じように、中学校の頃に初めて英語の教科書を開いたのが英語との出会いです。基本的に英語で歌うことに関しては得意ではなく、勉強しているだけです。もともと発音が良いわけでもないです。時間をかけて、最低限の日常会話レベルの英語は喋れるようになっているとは思いますが、決してもともと喋れるわけではないのです。
2013年の『4Stars』の時は、発音の先生もいましたが、歌詞の意味を汲み取ることが非常に難しかったです。ただ、英語で歌うということは、歌としては歌いやすいんですね、日本語は、ひとつの音にひとつの言葉しか入りません。でも、英語だと、たとえば前回歌った『スウィーニー・トッド』の「ジョアンナ」という曲がありますけど、日本語だと「君~を ジョアンナ 感じ~る」となるんですけど、英語だと「 I fee~l you, Johanna. I fee~l you. 」という風に、流れるように歌えると言うか、縦に割れないんですね。だからやっぱり、言語としては英語で歌う方が歌いやすいです。ただ同時に、今言ったような言葉の壁ですとか、意味を自分の中でちゃんと落とさなければいけないということで言うと、難しいです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、前回の公演について、この4年間について、さらに今回の公演について詳しく語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。24日掲載予定のインタビュー「下」では、前回の稽古中にシエラに言われた印象的な言葉とその影響などについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■スペイン語で歌った「イザベル」は、たくさんの方が「一番良かった」と
■ラミンとシエラとは、プライベートでもずっと交流して、仲良くしています
■勝負ではないんですけど、これが日本語だったら、僕は誰にも負けないです
■2人、3人、4人のエネルギーが混ざり合って、ということを楽しみたい
<4Stars 2017>
【大阪公演】2017年12月14日(木)~2017年12月17日(日) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2017年12月20日(水)~2017年12月28日(木) 東京国際フォーラムホールC
<関連リンク>
『4Stars 2017』公式サイト http://www.umegei.com/schedule/643/index.html
『4Stars 2017』公式ツイッター https://twitter.com/4Stars_2017
『4Stars 2017』公式インスタグラム https://www.instagram.com/4Stars_2017/
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■スペイン語で歌った「イザベル」は、たくさんの方が「一番良かった」と
――スペイン語は、どうですか?
『4Stars』でスペイン語で歌った「イザベル」という歌に関しては、たくさんの方が「あの歌が一番良かった」と言ってくださいました。それはなぜかと言うと、僕の第2カ国語で、きちんと意味を落とした状態で、発音を気にすることなく歌えたからで、あの歌が褒められた理由はそこかなと思います。英語に関しては僕は一生懸命、発音も気にしながら歌っていますが、スペイン語の方は、幼少期にスペインに住んでいたので発音はほぼ完璧だと思いますし、意味も勉強すれば普通にすっと入ってきます。感覚的にわからない部分を勉強していけばわかるというのが英語ですが、スペイン語に関しては一度知らない言葉を吸収すれば自然と自分の感情として歌えるので、やはりあの曲が評価されたのだと思います。
でも、やっぱり一番楽なのは、日本語で歌う曲ですね。ただ、日本語は「ありがとう」だったら5個の音が必要になってしまうので、歌では不利というか、流れが悪いんですよね。日本でミュージカルが受け入れられないひとつの理由がそれだと僕は思っています。縦に割れすぎて言葉数が入らないし、英語やスペイン語で500文字入る歌があるとしたら、同じことを日本語で伝えようとすると音が1500音ないといけなかったりする。すごく難しいんです。だから、日本でミュージカルをもっともっと流行らせためにも、日本語で、もっとおしゃれに、もっとかっこよく作詞するにはどうしたらいいんだろうと、最近は考えています(笑)。
――ということは、英語で歌うことは…。
英語で歌うのは好きですけど、苦か楽かでいったら苦です(笑)。そして、『4Stars』のような場所で、ブロードウェイのど真ん中で主役を張っている人達と、同じ条件で英語の歌を歌わなければいけないのは、ハードルが高いですよね。
――『4Stars 2017』の公式ページに掲載されている城田さんとラミンさんが話をされている動画、 本当にネイティブのように聞こえます。「ピー」とかいう音のところも含めて(笑)。
はははは(笑)。本当に、日常会話のレベルの英語は喋れます。勉強をしていますので。ただ、歌は表現が難しいですし、過去のミュージカルナンバーは、今の文法とちょっと違ったりするので、勉強することがたくさんあります。日本語だと、今もこうして考えながらスラスラ喋れますが、英語で喋ろうとするとまず日本語から置き換えて「……」ぐらい間が空いてから喋り始めるので大変なんです。歌詞を覚えてすらっと出てくるには時間が必要ですし、そこに感情をのせてとか、ここは引いて、ここは押してとかということを、日本語の時と同じようにやることはとても難しいです。他の3人よりも、一つの曲に対して、作業が何十個も何百個も多いわけですよね。
■ラミンとシエラとは、プライベートでもずっと交流して、仲良くしています
――しかも、その3人は、本当に世界のトップですよね。
トップ中の“トップ”ですね。
――前回は、そのトップ中の“トップ”の方々と城田さんと、4人が勝負をしているような感じがしました。和気あいあいとやってはいるけれど、やっぱり火花が散ってるなぁと。今回も、ストーリーがあるとはいえ、火花が散ると思うんですが。
トップ中の“トップ”の表現力・歌唱力を兼ね備えたお3方と一緒に歌うということは、自分のポテンシャルだったりテクニックだったり、全ての要素を比べられ、日本の皆さんに、それを評価してもらう立場になるわけです。ただ、前回は、圧倒的な緊張や恐怖があったのですが、今回は、とにかくこの3人とスペシャルな時間を共有して、お客様にもそれを届けて、みんなで楽しい最高の時間を過ごすこと、それに集中したいと思っています。前回ほど「絶対負けないぞ」と言う思いはなくて…。
――前回は思っていたんですね。「絶対に負けないぞ」って。
そうですね。「勝ちたい」ではないんですけど、ただ「負けたくない」と。観に来たお客様に「圧倒的にあの3人は上手だったけど城田優はなんでここにいるの?」と思われることほど、しゃくなことはないですよね。しゃくというか、一番そう思われてはいけないというか。英語の問題でそう思われるのはいいんですけど、歌唱力やテクニックの問題でそう思われるのは。彼らは、普段から戦っている土俵でトップ中のトップの人達とやりあっている人たちなので、圧倒的に優れていましたし、経験値も圧倒的に高かったですね。
僕は、あれからラミンとシエラとは、プライベートでもずっと交流して、仲良くしていますし、今回は、今まで築いてきたこの4年の月日が生み出す新しいコラボレーションが絶対あると思います。パティーナとは初めましてですからまだわからないですけれど、僕は実際に彼女のブロードウェイでの作品を生で見ていて、彼女のポテンシャルの高さは分かっているので、それこそ「彼女には負けないようにはしたい」なと思います。
■勝負ではないんですけど、これが日本語だったら、僕は誰にも負けないです
――パティーナさんの何を観られたんですか?
『ピピン』です。
――トニー賞受賞後に?
トニー賞をとられる前に観ました。
――どうでしたか?
すごかったです。2013年の『4Stars』の稽古で、ニューヨークに行っている時に『ピピン』を観たのですが、観終わって稽古に行った時、シエラに「ピピン観てきた」と言うと、「どうだった?」と。「いやもう、リーディング・プレイヤー役の人がすごかった」と伝えると、シエラが「彼女、私の友達だよ。すごいよね、彼女。上手だよね」と言うのです。そのリーディング・プレイヤー役がパティーナだったんです。「すごいな」と思いました。あの2人が友達だって。本当にモンスター級の歌唱力を持った2人が友達で、今回はその2人が『4Stars』に入るわけですけれど。本当に「負けてられない」という言葉が出てきてしまいますね。勝負ではないんですけど、個人的な英語という壁がまずひとつありますので。これが日本語だったら、僕は誰にも負けないです。
――日本語なら(笑)。
正直(笑)。感情の込め方とかで、この3人に負ける気がしないです。一切。ただやっぱり日本語ではなく英語ですから。どちらかというと、僕が3人に挑まなきゃいけない立場ではあるんですけれど、ただ挑むとかではなく、色でたとえるなら僕が赤、ラミンが青、パティーナが紫、シエラがオレンジみたいに、この四色が混じり合うことで、僕たち4人の、それぞれの魅力をぎゅっとまとめたエンターテイメントショーをお見せできればと思っています。
■2人、3人、4人のエネルギーが混ざり合って、ということを楽しみたい
――この4年間、いろんなところでミュージカルをやってきて、思い的にはどのように立ち向かうんでしょうか?
まず「 立ち向かおう」という概念をなくすというか…。前回は、「ブロードウェイスターと城田優」という、たぶん95パーセントぐらいの人が「何で城田優?」と思ったと思うんですけど、この4年間で、僕の中で確実に言えることは、前回の『4Stars』の3人+1人ではなく、今回は「4」。新しく入ってくるパティーナが未知数であって、僕はシエラとラミンと並んで皆さんご存知だと思うんです。たとえば、前回公演を10段階評価にしたとすると、彼らが8とか9で、僕が7だとしたらそれはそれです。僕は今、数値的にあのレベルに行きたいとか、ここを越えてやるということはなくて、自分のこの4年間の経験値を存分に活かしつつ、このショーの中で、歌で、4年間を形にできればと思っています。
まだ稽古も始まっていませんし、演出家や音楽監督などと細かい打ち合わせをしている段階です。あと1、2ヶ月してくると具体的に僕の目標だったり、こういう風にしたいんだ、ということが出てくると思います。ソロ曲は自分で何とかすればいいので、今回は相手と歌う時に2人のエネルギーが混ざり合って、3人のエネルギーが混ざり合って、4人のエネルギーが混ざり合って、ということを楽しみたいですね。僕らが楽しむことでお客様にそれが伝わればいいなと思うし、勝負を挑むと言うよりは、自分のやってきた事を皆さんに見てもらうぐらいの感覚でいた方がいいのだろうなと思っています。気負いしないように。