日本初演50周年となるミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』が、2017年12月5日から東京、大阪など全国各地で上演されます。ゴールデ役の鳳蘭(おおとり・らん)さんと長女・ツァイテル役の実咲凜音(みさき・りおん)さんの取材会がこのほど大阪で開かれ、参加しました。インタビュー「上」では鳳さんと実咲さんの合同取材会のやりとりを詳しく紹介し、11月7日掲載予定のインタビュー「下」には、アイデアニュースによる実咲さん単独インタビューの全文と写真を掲載します。
――宝塚歌劇団出身の共演のご感想を教えてください
鳳:下級生すぎて…。年齢差、数えんといてください(笑)。私、下の娘が33歳かな。娘より年下だから、共演の感想と言われましても…。光栄です(笑)。
実咲:宝塚出身の方みなさんが憧れる鳳蘭さんと、それも退団して初めての作品でご一緒させて頂けて、今もこうやってお話させて頂ける時間が幸せです。
――これまで長女ツァイテル役は、宝塚の男役さんがされることが多かったですよね。
鳳:私は、今回で3回目ですが、これまでの2回はトップの男役の子でした。2人はボーイッシュなツァイテルだったのですが、今回初めて娘役の子で、「女の子」って感じがしますね。
――今回は日本初演50周年ですが、改めて作品の魅力について教えてください。
鳳:新幹線の中で3年ぶりに台本を読んで、前はこんなに感じたかなというほど、最後の場面で嗚咽するほど泣いて、恥ずかしくてどうしようと思うぐらいでした。
実咲:私は舞台を拝見したことがなく、映画で初めてこの作品を観させていただいたんですが、クスッと笑う部分と感動した部分があったので、お客様にも同じような感動を与えている作品なんだなと思います。50周年という区切りのいい時に参加させていただけて、光栄です。
――鳳さんが、嗚咽されたのはどういう所ですか?
鳳:ユダヤ人の迫害というのを、前よりも、もっともっと感じるようになったんですね。ドラマの最後の最後で、アナテフカという村を追い出されて、アメリカにいるおじさんを訪ねて行こうっていうんですけれど、アメリカのおじさんに行っていいかとも、まだ聞いてない。上の娘3人は家出したり行方不明になったりしていて、下の2人の小さい娘だけを連れてアメリカに逃げて行くんだけれど、無事にアメリカに着くか、アメリカに着いてもアブラハムというおじさんが受け入れてくれるかも何にも知らず、とにかく村を出されてゆくという悲しみ。幸せになるか殺されるか、分らないんですよ。そういうことまで前は考えなかった。本当は考えなくちゃいけなかったんですね。私の未熟な所ですね。演技派女優って、違うなってつくづく思います(笑)。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、鳳さんや実咲さんにご自身の家族への思いなどについて伺った内容など、取材会でのインタビューの詳細と写真を掲載しています。11月7日掲載予定のインタビュー「下」では、宝塚のサヨナラ公演『王妃の館 -Château de la Reine-』の思い出や、トップコンビを組んだ凰稀かなめ(おうき・かなめ)さんや朝夏まなと(あさか・まなと)さんについてなど、アイデアニュース単独インタビューで伺った内容の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■鳳:実の娘にも「お金持ちと結婚しろ」と言い続けてきましたけど、ダメでした(笑)
■実咲:長女の責任、長女の個性みたいなものは、しっかり見せられたらいいなと
■鳳:「宝塚の人は人を疑わなくて99%騙される」って、悪いことばかり吹き込んでいます
■実咲:(好みのタイプは)ツァイテルとしては、もちろんモーテル。個人としては…
■鳳:笑ったり泣いたりする、感動的な世界3大ミュージカルの1つ。ぜひ、ご覧ください
<ミュージカル『屋根の上のヴァイオリン弾き』>
【東京公演】2017年12月5日(火)~12月29日(金) 日生劇場
【大阪公演】2018年1月3日(水)~8日(月・祝) 梅田芸術劇場メインホール
【静岡公演】2018年1月13日(土)~14日(日) 静岡市清水文化会館(マリナート)
【愛知公演】2018年1月19日(金)~21日(日) 愛知県芸術劇場大ホール
【福岡公演】2018年1月24日(水)~28日(日) 博多座
【埼玉公演】2018年2月10日(土)~12日(月・祝) ウェスタ川越大ホール
公式サイト http://www.tohostage.com/yane/
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※実咲凜音さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは11月20日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
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■鳳:実の娘にも「お金持ちと結婚しろ」と言い続けてきましたけど、ダメでした(笑)
――鳳さんは、ご出身が神戸のジェームス山ですよね。
鳳:はい、ジェームス山で生まれました。この人(実咲さん)は、(神戸の)名谷なんですよ。ホント近所なんです。年代があまりにも違いすぎるけど(笑)。
――ご両親は、上海から来られたんですよね。
鳳:はい、両親は上海から渡ってきて、私は日本で生まれました。
――『屋根の上のヴァイオリン弾き』は民族の物語、家族の物語ですが、ご自分の経験と重なる部分は、いかがですか?
鳳:父には、小さい時から「目立つな、目立つな、とにかく目立つな」と言われていました。こんな派手な顔に産んどいてね(笑)。そして宝塚に入った時も、父に内緒で受けたので「とんでもない。すぐ辞めろ」って。父は、日本で一生懸命目立たないように、地味に地味に生きてきたんだなと思います。正田美智子さまがご結婚を発表された時に「お花は何が好きですか?」という質問に「お花は何でも好きです。すべての花が好きです」とおっしゃったことから、「お前もこれからそう答えろ」って言うぐらい、父にはとにかく目立たないようにと育てられました。母は、塩屋の海を見ながら「海のように広い心を持った女性になれ」という風に言われました。目立たないのと、広い心と、ちょっと違うんですけど。
――お父様は洋服屋さんでしたよね。『屋根の上のヴァイオリン弾き』には、仕立て屋さんが出てきますが…。
鳳:そうです。仕立て屋です。洋服屋さんでした。(劇中で)私はお金持ちの肉屋さんと結婚させたいのに、ツァイテルは貧乏な仕立て屋さんと結婚するんです。
――ツァイテルが貧乏な仕立て屋さんと結婚するのは、どう思いますか?
鳳:未だに反対です。娘にはお金の苦労はさせたくないので、実の娘にも「お金持ちと結婚しろ」と言い続けてきましたけど、ダメでした(笑)。
――鳳さんは、お嬢さんがお2人いらして、お孫さんもいらっしゃいますよね。
鳳:下の文学座の娘が産休中で、男の子が生まれたので、孫が4人います。上のOLの娘に、女、女、男の子が生まれたんです。
――お嬢さん2人とお孫さんに囲まれて、『屋根の上のヴァイオリン弾き』と重なるところがありますか?
鳳:あ、そういうのもあるのかな? 感じ方が。そうかもしれない。でも父と母が、孫が来て2時間ぐらいで「帰れー」ってよく言ってた気持ちが、今はわかります。疲れてしまって「もう帰っていいよ」って言ってしまう。無条件にかわいいのは、2時間ぐらいですね。あとはもう疲れる。ほんとに、皆さんには、まだわからないと思いますけれど(笑)。
■実咲:長女の責任、長女の個性みたいなものは、しっかり見せられたらいいなと
――実咲さんに質問します。ツァイテル役の感想を教えてください。
実咲さん:長女ということで、姉妹の責任と言いますか、しっかりしている部分があるんだろうなと。まだお稽古が始まっていないので、イメージでしかないのですが、長女の個性みたいなものは、しっかり見せられたらいいなと思います。また、ツァイテルとお母さんとの芝居が多いので…。
鳳:うん、そう。多い。
実咲:嬉しいなと思っていて、楽しみです。
鳳:結局、次女が流れ者の革命家と恋をして、その革命家が刑務所に入ったら、次女は家を捨ててシベリアに追っかけて行くんですね。三女はユダヤ人なのに、よりによってロシア人と恋をして、家出をしてしまうんです。だから結局、ツァイテルが子供を産んで跡を継いでいる。あと、下の2人はまだ小さいから…やっぱり長女が1番近くにいますね、私も。
――実咲さんは宝塚歌劇団を退団して半年経ちますが、どんな生活を送られていますか? 鳳さんには、これからどういう風に過ごせばいいかのアドバイスをお願いします。
実咲:そうですね、辞めたらこんなに自分の時間があるのかと、衝撃でした。在団中は目の前に課題がずっとあるので、それに立ち向かっていて、諦めなければ、ずっと成長していられるんですよね。ありがたい環境だったなと、つくづく感じます。そして時間がある今、とにかく寝て、どこまで寝られるかというくらい寝ました(笑)。舞台を観る時間もあって、改めて舞台が好きなんだって思うこともできました。まだまだ未知な部分がたくさんありますが、初めての作品が『屋根の上のヴァイオリン弾き』で本当に幸せだなって、今、感じてます。
鳳:私の「上」は、越路吹雪さんがお亡くなりになって、上月晃さんがお亡くなりになって、ひょっとしたら私が今宝塚を辞めて女優をしている先頭を歩いている気がするんです。ちょっと振り向くと、大地真央さんがいて、天海祐希さんや黒木瞳さん、檀れいさん、真矢ミキさんがいる。その、ずーーーっと後ろの方に、やっとこの子が歩き出した。だいたい、この年齢でこれで悩んだ、この年齢でこの悩みがあった、子供を産む時期があったり、結婚する時期があったり、振り返ると、今あれで悩んでるだろうな、これできっと悩んでると。そういうのが振り返ると見えてくるので、後ろから歩いてくる下級生が、かわいいです。私は全部、経てきたから。今や孫のいるおばあちゃんだから、みんなこれからそういう苦労が始まるんだろうなって思って。良かった、もう終わって(笑)。
鳳:「宝塚の人は人を疑わなくて99%騙される」って、悪いことばかり吹き込んでいます
――これからの心構えなどのアドバイスは、ありますか?
鳳:さっきも言ってたんですけど、「騙されるな」と。無菌者なんですよ。宝塚ってイバラの道っていうけれど、とげは全部、宝塚歌劇団が取ってくれてるから、どんなイバラがあっても傷つかないんです。ただ、辞めて一歩踏み出したら、とげで傷だらけ、血だらけになるのね。だから、彼女に「宝塚の人は人を疑わなくて99%騙されるから」って、悪いことばっかり今、吹き込んでいます。「気を付けろ」って言ってます。無菌者だから。本当に、怖い。みなさんも人生色んなことがあったでしょう? 私はもっとすごいことを経てきたから、気を付けろって言ってます。信用するなって。人間を疑えと(笑)。
実咲:そうですね、楽しみな所もありますし、こうやって色んなお話をしてくださって、すごく勉強になります。鳳さんが色々な経験を経てとおっしゃいますけど、それを楽しんでらっしゃるような気がして、お話を伺ってると、未来は明るく見えます。でも色々気を付けて…。
鳳:そうですね、騙されるなと。
実咲:はい、肝に銘じていきたいと思います。
――共演者の市村正親さんは、どんなイメージですか?
鳳:本を読むと「かかあ天下」で、私がぐいぐいリードしているように見えるんですけれど、実はテヴィエ役の市村さんの掌で大きく動かされてるなと感じます。大きな壁が私をすごく守ってるなと感じるんです。例えば演技の上でも、私が5ぐらい怒っているのに、彼は10怒られたようなお芝居をしてくれるんですよ。すごく私のかかあ天下が目立つように。そういう所の気配りって、彼はやっぱり自分だけのお芝居じゃなくって周りを全部見ながらお芝居をしているなと思います。
――実咲さんは、市村正親さんは初めてだと思いますが…。
実咲:色々な舞台を拝見させて頂いたんですけれど、お人柄がどの作品を観ても滲み出ていたなと。朗らかで面白くて、そういうのが観ていて伝わってきたので、今回、近くでお芝居をさせて頂けるのは、すごく勉強になると思うので、楽しみです。
――鳳さんが演じるゴールデは、どのような女性ですか?
鳳:テヴィエ役の市村さんに動かされてて、でも自分は自分が動かしてると思ってる。娘は絶対にお金持ちと結婚させたいと思ってるのに、市村さんに上手いこと丸め込まれて、お化けが出てきたり、うなされて信じて、貧乏な人との結婚をそれでいいと許したり、やっぱり市村さんのリードで動かされてるゴールデなんだなと感じています。
――家族愛の物語については、いかがですか?
鳳:日本より、外国の方が、もっと深く作品を感じているような気がするんです。ユダヤ人の問題、宗教や人種を、もっともっと日本の方が感じるように、こちらも演じなくちゃならないんじゃないかなと。私のイメージはガス室しかないんですけど、海外でやってると、もっとそういうことに詳しく、もっと感じると思うんです。人によって違うとは思いますが、日本の観客が10感じるところを、向こうの方は100ぐらい感じて、すっごい深い作品だと思ってると思うんです。もっと日本のお客様に、ユダヤ人の悲劇を感じて欲しいなと思ってます。
■実咲:(好みのタイプは)ツァイテルとしては、もちろんモーテル。個人としては…
――物語には、仕立て屋さん、革命を志す学生、ロシア人と、年頃の男性が3人出てきますが、実咲さんは、どの方がタイプですか?
実咲:…ツァイテルとしては、もちろんモーテルですよね。私個人といたしましては…。
鳳:「あなたが好みです」って言っといたらいいのよ(笑)。
--男性と一緒にミュージカルの舞台に立つのは初めてですよね。
実咲:男性との空間っていうのは、製作発表の時に「サンライズ・サンセット」を歌わせて頂いたのですが、歌稽古ですら「男性の声が聞こえる」っていう感覚で、新鮮な部分がありました。ドキドキしますね(笑)。
鳳:今日の合同取材会とは関係ないけど、私、宝塚歌劇退団後『ファニー・ガール』という舞台が初めての舞台だったの。岡田真澄さんから毎日バラの花を頂いて、この人、私のこと好きなのかしらって、危なかったもん。気を付けて(笑)。
実咲:お花を頂いたら嬉しいですよね。
鳳:でも、その時には、結婚相手がいたから(笑)。がんばれ!
――お花と言えば、実咲さんのブログに、歌劇団の方からもらった「ひまわりの花」の写真が出ていましたね。
実咲:花組で頑張っている同期の男役さんから、ひまわりの花を頂きました。
――『屋根の上のヴァイオリン弾き』の男性陣からは、お花は頂いてないんですか?
実咲:まだ1回しか会ってないんですよ、製作発表で2回目だったので(笑)。
鳳:今月の25日から、歌稽古が始まるのよね(※この取材は10月13日に行われました)。
実咲:緊張します。
鳳:大丈夫。守ってあげる(笑)。
■鳳:笑ったり泣いたりする、感動的な世界3大ミュージカルの1つ。ぜひ、ご覧ください
――今回の作品は家族愛がテーマですが、お2人は、家族愛についてどのように感じておられますか?
鳳:私は両親が亡くなっているので、自分の娘たちと孫の家族ですね。やっぱり子供が転んでも自分が痛い、代わって私が転びたかったみたいなのは自分が親になって、おばあちゃんになって、やっとわかった。両親もそうだったんだと。自分がなってみないとわからないですね。
実咲:宝塚にいる時から、サポートはありました。健康面についてもですし、悩んでる時も。私は母に相談していたので、すごく支えてもらったなと思います。渦中にいた時は必死すぎてわからなかったのが、辞めてみて時間があると、こうやって家族の時間というものが持てるんだなということも辞めてから感じたことでした。普通に家でごはんを食べたりとか、私には兄と弟がいるんですけど、みんな集まって、兄家族、弟家族、みんな家族が増えてて、当たり前のことだけど、これって幸せなことだなとすごく感じます。
――大阪公演を楽しみにしている方に向けてのメッセージをお願いします。
鳳:多分、笑ったり泣いたりする、感動的な世界3大ミュージカルの1つです。ぜひ、ご覧ください。
実咲さん:関西出身の私は、梅田芸術劇場に出させて頂く事は、とても嬉しく思います。感動して頂けるように舞台を作っていけたらと思いますので、どうぞ皆さん、ぜひ足をお運びください。
※実咲凜音さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは11月20日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
宝塚時代から大好きだったみりおんのインタビューが読めて嬉しいです。
鳳さんとがっちり組んだ舞台を楽しみにしています!