2018年1月12日(金)から、東京、福岡、愛知、兵庫で上演される、Japanese Musical『戯伝写楽 2018』に出演する、橋本さとしさんと小西遼生さんに、対談インタビューしました。(上)(下)に分けてお届けします。橋本さんは斎藤十郎兵衛役、小西さんは喜多川歌麿役を演じます。
――今回の稽古場の雰囲気はどのような感じですか?
橋本:いつにもなく、小西遼生が熱心に稽古を見てる。
小西:いやいやいや(笑)、毎回そうですよ。
橋本:遼生と何回か共演させてもらっていますが、「遼生って芝居好きなんだな」とすごく感じています。
――音楽劇『魔都夜曲』のときは、いかがでしたか?
橋本:『魔都夜曲』のときは、意外と僕が稽古場にいなかったんですよ。
小西:確かにいなかったですよね(笑)。
橋本:稽古場の目立たないところに隠れていたんです。人の芝居を見る余裕もなかったですし、僕は自分の役作りの上で、隔離された空間にいたいと思ってしまうんですが、今回は「ここですよ」と稽古の始めから最前列の席が用意されてしまって(笑)。
――(笑)。隠れられないんですね?
橋本:そう(笑)。セットや小道具の関係で裏に居場所がなくて。だから、僕も正面で見させてもらっているんですが、そうすると色々な人の表情やカンパニーの空気がすごく分かって。遼生だけじゃなく、みんな真摯に芝居に取り組んでいて、芝居を楽しんでいる感じや、役作りを苦しみながらも楽しんでいる感じが、役者としてとてもいい空気なんですよね。居心地がいいですよ。今、家にいるより居心地がいい(笑)。
小西:(笑)。
――小西さんはいかがですか?
小西:8年前に一度上演している作品なので、さとしさんと僕と、東山(義久)くんの3人は続投組になるんですね。8年前を思い返すと、あのときに自分の中になかったものが、今は気持ちの面でも増えていたりします。3人とも「8年前よりもっと芝居が好きになっていた」という感覚がありますね。それが特にさとしさんから伝わるので、とても引っ張られます。作品自体も、新たに河原雅彦さんが演出をされ、森雪之丞さんが作詞をされ、2010年版から変わる部分も色々とあります。前回よりもっと芝居寄りというか、役柄を詰めていて、みんな本当に熱心にやっているので、稽古場にとても充実した空気が流れています。
――8年ぶりに同じ役を演じることってあまりないですよね?
橋本・小西:ないですね。
――8年を経て再び同じ役に取り組むのは、どんな感覚ですか?
橋本:やはり気合は入りましたよ。ただ、最初に気合を入れてすぎてしまって。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、橋本さんと小西さんが方法論の違いなどについて語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。9日掲載予定のインタビュー「下」では、おせい役の中川翔子さんについて、また『魔都夜曲』から引き続いてのメンバーについて伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■小西:今とても楽しい。役自体がちゃんと記憶に残ればいいなと
■橋本:遼生と俺は方法論が違うなというのを感じています
■小西:民衆たちの中に、猛牛がガンッて入ってくるんです
■橋本:今回は生々しい人間群像になっていると思います
<cube 20th Presents Japanese Musical『戯伝写楽 2018』>
【東京公演】2018年1月12日(金)~1月28日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【福岡公演】2018年2月3日(土)~4日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランド
ホール
【愛知公演】2018年2月7日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【兵庫公演】2018年2月10日(土)~12日(月・休) 兵庫県立芸術文化センター 阪
急 中ホール
チケット発売中
公演オフィシャルサイト
https://sharaku2018.amebaownd.com/
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※橋本さとしさんと小西遼生さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは1月22日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
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■小西:今とても楽しい。役自体がちゃんと記憶に残ればいいなと
橋本:「8年前と同じようなことはしたくない」という気合が最初はあったんです。すると、意外とそれは間違った方向にいってしまったり、さじ加減が上手くできなくなってしまいました。8歳年を重ねた十郎兵衛というものは、出そうとして出るものじゃなかったんですよね。中島かずきさんが書いた脚本に委ねて、自然に今自分が感じることを瞬間的に出していけば、結局あとから「ああ、変わったんだな」と気づくんじゃないかと。変えようとして変えるんじゃなくて、「変わったんだな」と思えるものにしていけばいいのかなと思ったら、おのずとそれが自分の成長や変化になって表現できているような気はしますね。
――小西さんはいかがですか?
小西:実は8年前と比べることはできないくらい忘れているんですが、僕は逆に「同じ役をやるから、今回は絶対こうしたい」と最初に思っていませんでした。脚本自体、変わっている部分もありますが、フラットな状態で本を見たら、「これ、おもしれぇぞ」と素直に感じることができました。8年前にはそれを感じるほど、自分の中で気づけるものが多くなかったですね。フラットな状態で読んだときに、気づけるものや見えるもの、「これを作っていけばいいんだ」というものなど、目指す道がとても明確にあるので、その道を辿っていくのが、今とても楽しいです。結果、お客さんにとって8年前の作品の印象を超える作品になればいいなと思いますし、役自体がちゃんと記憶に残ればいいなと。自分の役というよりも、作品全体の中での自分の役割みたいなものを、明確に出したいですね。こんな思いは、8年前にはなかったです。
■橋本:遼生と俺は方法論が違うなというのを感じています
――この8年間で共演することがたくさんありましたが、今回一緒に芝居をしてみて、何か違いやおもしろさはありますか?
橋本:最近、遼生と芝居について話すんですよね。遼生と俺は方法論が違うなというのを感じています。遼生はじっと作品全体を見て、その中で自分の居場所や自分の感情を「自分はこのテンションでいけばいいのかな」と、全体の中に自分を置いて芝居をするんです。僕は真逆で、「このぐらいのテンションでいく」というボーダーラインにまず自分がなって、そこにみんなを引っ張っていけたら、一緒に楽しめたらなと思っているんです。だから、ときどき僕の場合は「一人猛牛」が(笑)。遼生には分かるんですけど(笑)。
小西:日本の江戸時代の過疎の町に、「スペインの猛牛が走りこんできた」みたいなエネルギーを出すんです。
橋本:(笑)。
■小西:民衆たちの中に、猛牛がガンッて入ってくるんです
小西:稽古場でみんなが作っている段階で、エネルギーは本番のエネルギーまで高まっていない訳じゃないですか。その民衆たちの中に、マタドールに角を刺してしまうぐらいの猛牛がガンッて入ってくるんですよ。ものすごいエネルギーなんです(笑)。それに引っ張られて、作品がグッと上がるのを目の当たりにすると、「この先輩すげぇな」と思うんですが、もしみんなが上がりきらないまま本番を迎えたら、スペインの猛牛が見られる作品になっちゃうんです(笑)。
橋本:(爆笑)。遼生も俺も共通しているところは、「作品を上げたい」という思い。自分は役者として成長すべきだけれど、やはり「作品をいいものにしたい」という風に見られるようになったのは、僕たちの共通する8年前の違いですね。
――8年前は、むしろ自分のことに……という感じですか?
橋本:何なんだろうね。
小西:演出や作品の風合いもありましたからね。前回はどちらかというと、絵で魅せる芝居で、本当は身近で話している会話でさえ、舞台上ですごく距離があったりしましたね。座敷の芝居なのに客席に向って話したり。
――青山劇場が大きかったですしね。
小西:だから、いわゆる緻密な演劇というよりは、エネルギーを前に発する芝居だったと思います。今回はちゃんと同じ空間で、目を合わせて話したりします。例えば、僕とさとしさんは一緒のシーンが多いわけではありませんが、一緒に出ていないときでも関係性があるんですよね。十郎兵衛は成り上がりたい、何かを成し遂げたい人ですが、僕は物語冒頭で、それを成し遂げているモデルとして出てくるんですよ。他の人はみんなくすぶっている。「天才」とみんなにちやほやされていても、歌麿自身の中には何かあるんですけれどね。ことあるごとに十郎兵衛の言葉から、「歌麿」という言葉が出てきたり、僕も十郎兵衛という男に向かっていくものがあったり。だから、作品の中で強い絡みがあるなと感じていて、やっとお芝居ができている感覚があります。
■橋本:今回は生々しい人間群像になっていると思います
――直接話さなくても、意識し合うみたいなところが。
小西:空気の作り方というか、僕が出ているときと、十郎兵衛が出ているときなど、上手くいったら色々と作れるところがたくさんありますし、エネルギーの出し方も2010年版とは違いますね。
橋本:そうだね。正直、歌麿が自分の心の視界によく入ってきていて、前回は案外それぞれのキャラクターをあまり見ていなかった気もするんですよね。実際、目を合わせて芝居をするということが、あまりなかったので。確かに前回はエンターテイメント性に重きを置いていて、青春群像っぽく、みんなが一斉に前に進む感じでしたが、今回はそれぞれの生々しい人間群像になっていると思います。
小西:生き様ですよね。
――芸術家たちのそれぞれの生き方がより明確に見えてくるんですね。
橋本:それぞれが走っていますが、それぞれにちゃんと到達点があって、それが今回は、より明確になっていると思いますね。
――なるほど。演出が河原雅彦さんに変わっていますが、他に何か大きく違う、新しいと思うところはありますか?
小西:全部違いますね(笑)。
――新しい作品みたい?
小西:本のベースは同じですが、それすら別物に見えますもんね(笑)。
橋本:見える、見える。本当に不思議ですよね。同じ本でも、キャストや演出が違うと、まったく違うものになりますね。役者の心意気一つで見えてくるものが全然変わってきたり、なかなかできない経験を、初めてさせてもらっているような気がしますね。
――通常2、3年くらいで再演することの方が多いですよね?
橋本:2、3年だとまだ染み付いたものがあって、ついそれが出てしまうこともありますが、一行も台詞覚えていませんでしたから。
小西:それ、すごいですよね!
――逆に小西さんは覚えているんですか?
小西:僕は意外と覚えていましたよ。
――そういうところまで、違うんですね。
橋本:人の歌の歌詞まで覚えててね。僕の歌詞まで覚えているから、「お前すげぇな」って。
※ 橋本さとしさんと小西遼生さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは1月22日(月)です。(このプレゼントの応募は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
舞台を拝見してから、改めてこのインタビューを読むと、そういうことか!と思い当たることもたくさんあって、お二人の良い関係性が作品をさらに良いものにしているなと心から思いました。
何かお二人のいい関係性がいっすよねぇ。
岩村さんの丁寧で読み応えのあるインタビューと素敵なお写真で、ますます舞台へのわくわくが煽られます。
明日の後編も楽しみにしております(*´ω`*)
8年前は観劇出来なかったのでDVDでの視聴。そんな舞台が再演なので、とっても楽しみ‼️
いよいよ今週末からの公演に先立っての記事やステキな写真にワクワクが止まりません(((o(*゚▽゚*)o)))
いつも役者さんに寄り添った記事内容で楽しく読ませていただいています。お写真も素敵で、いい空気の中にいらっしゃるのだろうなと感じます。(下)も楽しみです。
今回もお人柄を感じる素敵なお写真とともに 声で聴こえるような記事をありがとうございます(^^) 明日公開分も楽しみにしています!
楽しい記事と素敵なお写真、ありがとうございます。
大好きなお二人のお話、とても興味深くて舞台を観るのが増々楽しみになりました。
明日の後半も楽しみにしてます。
前半、すごくテンポよく読めました。ただならぬエネルギーを感じる、楽しいインタビューでした。このお二人の良い関係が作品にも影響しそうですね。
後半が楽しみです。
何度も共演されているお二方なのに、稽古でのアプローチが全然違うんですね!
見てみたい。
8年前なのに他の方のセリフや歌詞まで覚えている小西さんはスゴい記憶力ですね。
戯伝写楽2018楽しみです!