「すごく切ない役です」、『ラブ・ネバー・ダイ』小野田龍之介インタビュー(上)

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

2019年1月15日(火)から2月26日(火)まで、日生劇場で上演されるミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』に、ラウル・シャニュイ子爵役で出演する小野田龍之介さんにインタビューしました。「上」「下」に分けてお届けします。「上」では、小野田さんが演じるラウル役の「切なさ」などについて語ってくださったお話のほか、共演する市村正親さん、石丸幹二さんについて伺った内容を掲載します。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

――この作品への出演が決まって、どう思いましたか?

子どもの頃からお仕事をさせて頂いていますが、ミュージカルがずっと大好きなんです。観るのも大好きなので、いまも観ていますが、やはりミュージカルを代表する作品や憧れる作品ってたくさんあると思うんです。その中で、ファントムの作品、アンドリュー・ロイド=ウェバーが作りあげる世界は、ミュージカル俳優がものすごく憧れるというか、とても格式の高い世界だなと思っていたんですね。僕は決して、声楽を音大や芸大で勉強したというクラシカルな人間ではないので、『オペラ座の怪人』のような作品には縁がないだろうなとずっと思っていました。そう思っていた中で、キャスティングして頂いて、すごく嬉しかったです。

ファントムの世界にいられるのは、すごく光栄なこと。特に、『ラブ・ネバー・ダイ』は、それぞれの人物が『オペラ座の怪人』から10年経った人生を物語で綴っていますが、僕の印象は『オペラ座の怪人』よりも『ラブ・ネバー・ダイ』の方がものすごく人間味が溢れているなと。それぞれのキャラクターが、それまでは少し気取った、表面上の美しさが描かれている印象が強かったですが、この『ラブ・ネバー・ダイ』になって、ラウルもそうですし、ファントムやクリスティーヌ、メグ、マダム全員が生々しく描かれていて、ものすごくおもしろい。音楽だけではなくて、物語としても、俳優さんの演じ方によって、ドロドロした具合やその中で見えてくる愛や光というものが変わってくると思うので、とてもチャレンジし甲斐のある役ですね。

――『オペラ座の怪人』は少しファンタジー的な感じがありますもんね。

『オペラ座の怪人』は「そんな美しい話ある?」というくらいの話ですが、『ラブ・ネバー・ダイ』は逆に「そんなドロドロした話ある?」というくらい(笑)。

――確かに(笑)。

でも、僕は『ラブ・ネバー・ダイ』の方がおもしろいですね。少し昼ドラ感はありますが(笑)。元々、僕はこの『ラブ・ネバー・ダイ』が大好きで、日本版はもちろんですが、DVDなどで世界の映像も観たり、音楽を聴いたりして、キャスティングして頂く前から知っていたんです。今回のバージョンもそうですが、上演するごとに結構変わるんですよね。今回の日本版もまた少し変わるみたいなので、進化していく作品に携われるというのも嬉しいです。日本ではまだ2度目の上演ですが、進化してさらにおもしろいものになればと思っています。

※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、小野田さんが演じるラウル役についてさらに詳しく語ってくださった内容のほか、共演する市村正親さん、石丸幹二さんについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。11月27 日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、『メリー・ポピンズ』でも共演した濱田めぐみさんと平原綾香さんと今回は夫婦役になることについて濱田さんと平原さんと話した内容や、同じく共演する田代万里生さん、鳳蘭さん、香寿たつきさんらについて語ってくださった内容と、さらに『レ・ミゼラブル』でのアンジョルラス役についても伺ったインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■闇がある役だからこそ、僕がキャスティングされる可能性があったんだと

■音楽を理解できないラウルは、つらい。音楽的な人たちの交流に入れない

■市村正親さんは拝みたくなる。ファントムのなかでドラマが続いている

■石丸幹二さんが仮面をつける瞬間を見たら、やっぱり、ぞわーっとしました

<ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』>
【東京公演】2019年1月15日(火)~2月26日(火) 日生劇場
公式サイト
http://hpot.jp/stage/loveneverdies2019

<関連リンク>
小野田龍之介-Ryunosuke.O- Twitter
https://twitter.com/ryunosukeonoda

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小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■闇がある役だからこそ、僕がキャスティングされる可能性があったんだと

――同じ時期に日生劇場の隣の東京宝塚劇場では『ファントム』が上演されていますし、今年はケン・ヒル版の来日公演もありました。

劇団四季の『オペラ座の怪人』も仙台で上演されていましたし、本当に日本がファントムに侵されていく感じが、おもしろいですよね(笑)。この時期、ファントムが日本を熱くしているなというのは。その一員になれるのは嬉しいです。

――その中でラウル役ですが、『ラブ・ネバー・ダイ』では苦悩していますね。

だからこそ僕がキャスティングされる可能性があったんだと思います(笑)。闇がある感じがね。それこそ『ラブ・ネバー・ダイ』のラウルの話によくなるんですよ。2幕の最初にラウルの歌から始まるんですが、すごくこの役自体が切ないんですよね。表面上は少し嫌な感じで、お酒に溺れて、借金をつくって、家族をかえりみない。

――だめな男ですよね(笑)。

だめな男みたいになっているけれども、そこに対する葛藤というものが、すごくあって。このキャスティングをして頂くより前に、音楽監督のビリーさんと「『ラブ・ネバー・ダイ』のラウルはいい役で、すごく演じ甲斐がある役」という話をしたんです。やはり闇がある役の方がかっこいいですよね。

――演じられる方は、作り甲斐があるのかなと。

変に「作る」という感じにはなりたくないなとは思いますが、闇があるからこそ、その闇からどう脱することができるか。闇の中にいるからこそ、自分を見つめなおせる。多分、それは日常でも同じですが、なにか人に怒られたり、自分が葛藤したりしているときこそ、自分を見つめ直すいい機会になる。本当に影がある役の方がやりがいもあるし、その中で生まれてくるドラマにとても心動かされますよね。すごく難しい立場の役ですが、クリスティーヌ役の濱田(めぐみ)さんも平原(綾香)さんもそうですし、ファントム役の市村(正親)さんも石丸(幹二)さんも共演させて頂いている方々なので、すごく仲良く、普段からお話させて頂いたりしています。そういうところがクリアになっているからこそ、一歩深く入っていきやすいのかなと思います。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■音楽を理解できないラウルは、つらい。音楽的な人たちの交流に入れない

――人間関係を作るというところは、もう大丈夫。

そうですね。主に関わる方々とは共演させて頂いているので。そこは、すごくありがたいですね。こんな苦悩する役なのに、「この人どういう人なんだろう」って思いながら稽古したくないので(笑)。ラウルはもちろん、愛に溢れている人間だと思うし、だからこそ結婚して、ずっと10年間一緒にいるわけじゃないですか。でも、愛があるのに、クリスティーヌがもっている音楽性やそこに集まっている人たちの交流のなか、きっと音楽的な人たちが集まってくるんだろうけれど、そこに入っていけない孤独とか。

――それは、きっとあるでしょうね。自分にはわからない話をしている。

変な話、多分、この人たちの出会いはお金じゃないですか。多分、お金と権力しかなかったと思うんですよね。そこから、もちろんいい人の部分、すごく爽やかな人間的な部分もあって結婚したと思うんですが、どうしても大人になるにつれてお金や権力が絡んでくるなかでラウルは生きていて、妻を愛しているから妻とも話をしたい。でも、絶対に音楽の話になってくる。その音楽を理解できない人の気持ちって、すごくつらいですよね。音楽をわからないというか、愛する人との交流の、共通の会話がどんどん減っていくなかで。

――しかも、相手にとっては一番大事なものですもんね。

そう。僕は無理ですね。一番大事なものがわからない人とは一緒にいられない。わかり合えないし、つらいだろうなと思いますね。そこでお酒やギャンブルに走ってしまって、そのラウルの垢がどんどんと取れていく感じを、すごく丁寧につくっていきたいなと思います。

――おそらく多くの観客が、舞台もしくは映画で『オペラ座の怪人』を観たことがあると思うんです。作品のなかに描かれていない登場人物たちの過去を、観客も共有できるって、すごくおもしろくないですか?

『オペラ座の怪人』を観た人でも、びっくりする内容じゃないですか。だいたい続編物ってうまいこと話が続いているんですが、まったくうまいこと続いていないから(笑)。冒頭はファントムがひとりで歌って、「『オペラ座の怪人』がはじまった!」と思いますが、次の瞬間からサーカスの人たちがでてきて、どんな世界が繰り広げられるんだろうって思いますよね。『ラブ・ネバー・ダイ』は観たことがないけれど、『オペラ座の怪人』は知っているという人が観たときに、いい意味で衝撃を与えられる作品なんじゃないかなと思います。素敵な音楽が散りばめられていますしね。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■市村正親さんは拝みたくなる。ファントムのなかでドラマが続いている

――共演者の方のお話を伺います。まずは、市村さんですが。

市村さんとは、『ミス・サイゴン』でもご一緒させていただいてます。ファントムの話をすると、やはり日本の、劇団四季が上演しているロイド=ウェバー版の『オペラ座の怪人』を、日本で上演するにあたってもそうですし、ここまで日本でファントムが愛されているきっかけや、その源って「市村正親」だと思うんですね。市村さんが『オペラ座の怪人』の初演でファントム役を演じられていて、その方が、その何十年後になったときに、『ラブ・ネバー・ダイ』のファントムをまた初演で演じて、再演でも演じるというのは、日本以外にそうないことだと思います。

――両作品を順番通りにされている方っていらっしゃらないんですよね。

そうなんです。市村さんもよく「俺だけだ」とおっしゃっています(笑)。その市村さんとご一緒できるのがすごく嬉しいです。市村ファントムのなかでドラマが続いているじゃないですか。だからこその幕開けの歌。ファントムが10年経ってから歌う歌も、特別に惹きつけられる部分がありますし、これは市村さんにも何度も何度も伝えていますが、市村さんのファントムの世界にいられるのは、俳優としてはとても特別なこと。それをラウルとファントムとしてできるというのは、ものすごく嬉しいですね。『ミス・サイゴン』のときにも思いましたが、初演からやられている方がずっといらっしゃるのは特別です。その方々のおかげで続いているんですから。

――市村さんとは、『ミス・サイゴン』で一緒に演じていて、市村さんならではだなと思うことはありますか?

出てきただけで、拝みたくなる。

――拝みたくなる?(笑)

市村さん!って(笑)。僕はとてもミュージカルが好きで、すごく勉強したんですよ。いまも、もちろんしていますが。劇団四季『オペラ座の怪人』オリジナルキャスト版CDもそうですし、『ミス・サイゴン』日本初演版CDもそうですが、その声が頭のなかで植え付けられているんです。だから、今回の稽古場でもそうなると思いますが、「CDで聴いてた声が間近でいる」と思うと、またひとつ俳優のモチベーションを上げてくれる存在だと思いますし、緊張感を与えてくださる方だとも思います。それが「市村さんならでは」というか、市村さんしかできないことなので、特別ですよね。

――なるほど。それで「拝みたくなる」なってしまうわけですね(笑)。

出演してくださるだけでありがたいです。それは『ミス・サイゴン』のときにも思いました。『ラブ・ネバー・ダイ』は、『オペラ座の怪人』のメロディも散りばめられているので、それをふっと口にしたときに、わけわからない感動がこみ上げてくるのが市村さんならではかなと。『ミス・サイゴン』にしろ、『オペラ座の怪人』にしろ、とにかく市村さんの思い入れが強いのではないかと。一緒にお酒を飲んでいても、よくその話になるんですが、その思い入れが強い作品に携われるというのが、嬉しいですね。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■石丸幹二さんが仮面をつける瞬間を見たら、やっぱり、ぞわーっとしました

――石丸さんについても伺わせてください。

石丸さんとは、舞台では『パレード』で最近ご一緒させて頂きました。石丸さんも日本で上演された『オペラ座の怪人』の世界では、なくてはならない存在の方だと僕は思っています。『オペラ座の怪人』のラウル役が石丸さんのデビュー作品ですし、きっと思い入れも強いでしょうから、石丸さんがファントム役で出演されるところにラウルとして出るというのは、ものすごく嫌ですよ(笑)。

――(笑)。

すごく嫌だ。「お前はラウルじゃない」って思われたらどうしよう、とかね(笑)。もちろん、そんな怖いとか嫌な感じの先輩では全くないのですが、緊張はしますね。また市村さんとは違う、ラウルを演じてこられた方が、ファントムになって、その前でラウルとして演じるというのは、とても責任感を感じます。それこそ、石丸さんがラウル役をされたバージョンのCDも聴いていますから。このチラシの扮装写真の撮影でご一緒したとき、絶対に見てから帰ろうと思って。やはり石丸さんが仮面をつける瞬間を見ておきたい。見たら、やっぱり、ぞわーっとしました。ラウルがファントムになったというのは! 『パレード』のときも、石丸さんの役とはとても関係が深い役で、石丸さんが演じた役と、僕が演じた役はすごく対峙する部分がありました。今回は、対決の仕方がまた違いますが、違う形で対峙できるのは、それは役者の先輩後輩として楽しみです。お互いに新キャストですから、一緒に組み立てていけるので楽しみです。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

※小野田龍之介さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは12月26日(水)です。(このプレゼントの募集は終了しました)

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“「すごく切ない役です」、『ラブ・ネバー・ダイ』小野田龍之介インタビュー(上)” への 3 件のフィードバック

  1. まさ より:

    最近益々ノリに乗っている龍之介くん。応援してます。
    龍之介くんというより、龍之介さんって言う方がしっくりくる安定感ですね。ますますのご活躍を楽しみにしています。

  2. ミッキー より:

    龍之介くんのいろいろな想いを知る事が出来てとっても嬉しいです。
    ミス・サイゴンの時の記事もファンにとってはとても貴重なお話だったのでまた取材してくれないかな?と待っておりました。
    どんな風に演じられるのか今から楽しみです!

  3. ようこ より:

    LNDよりもオペラ座のが好きだったのですが、今回は小野田くんがラウルをやるというので、どんなダメ男を演じるか楽しみです。ミスサイゴンのクリスもダメ男だったのですが、今回はフランス人。歌も演技もとても気になります。パワーアップした小野田くんを楽しみにしています。

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