「キャリアを積めば積むほど自分を疑って」、小野田龍之介(下)

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

2022年3月31日に開幕し、5月8日(日)まで東急シアターオーブで、5月20日(金)から6月6日(月)まで梅田芸術劇場メインホールで上演されるミュージカル『メリー・ポピンズ』に、バート役で出演する小野田龍之介さんのインタビュー後編です。「下」では、バートの役作りをする上での面白さ、久しぶりに踊る役を演じるにあたっての想いや周りからの反応、メリーを演じる濱田めぐみさんと笹本玲奈さんとのこれまでの共演経験を踏まえて感じること、ミュージカルの魅力について、30歳になられた今思うことやこれからのチャレンジについて話してくださった内容と、お客様へのメッセージを紹介します。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

(※このインタビューは、2月中旬に行いました)

――先ほどインタビューの中でおっしゃっていた、ショーアップされた部分について教えてください。バートは、タップダンスや見せ場のナンバーも多いかと思いますが、面白さや大変さについてはいかがでしょうか。

素晴らしいからこそ大変だと思うのですが、大変さについて語ろうとすると、「大変です」としか言えないです(笑)。  

――では、面白さのほうをぜひお願いします。

動きひとつ、音ひとつ、段取りひとつ、きっかけひとつ、すべてが計算し尽されているので、それが面白さにつながっていると思うんです。よくできている作品だなと思います。ロバートソン・アイを演じた時も、あんなにしっちゃかめっちゃかな役だったのに、すごく計算されているんです。

『メリー・ポピンズ』は、段取りやきっかけを間違えると、機材トラブルや公演中止になることがあるんです。実際、前回の公演でも、セットが止まったことがありました。計算し尽くされ、緻密だからこそ、お客様にとてもマジカルな瞬間をお届けできるのだと思います。

とにかくセットの色鮮やかさと音楽が素晴らしい作品です。ミュージカルをご覧になったことがない方も、音楽は「この曲、この曲」と思っていただけるかと思います。ディズニーファンの方だったり、映画が好きな方だったり、普段ミュージカルは観ないけれども、たまたま観に来たら「この曲も出てくるんだ、この曲も知ってる」と思えるところも魅力でしょうね。

――小野田さん、久し振りにたくさん踊られますよね。とても楽しみです。

勇輔くん(大貫勇輔さん)にも言われますが、僕の場合、踊る役をやるという印象が、共演者の中にもあまりないみたいなんです。

――最近は、歌がメインだと思われているのではないでしょうか。

昔から知っている俳優には、「久しぶりだね、見ていて楽しいよ」という感じで、踊っていても特に驚かれないのですが、最近共演したばかりだったり、歌っていたり、俳優としての面のみで僕を知っている方々には「もっと踊りなよ」みたいなことを言われますが、「いや……もういいです」という感じです。 

――いやいや、もっと拝見したいです。

 『メリー・ポピンズ』のダンスナンバーは、本当にショーナンバーですからね。

――そういう意味で、ガツンと来るのが楽しみだなと思います。

 そうですね。ガツンと届ける前に、本人がガツンとなっているので(笑)、みんなで手を取りあっていきたいです。特に、メリーとのナンバーは、反復練習がとても必要とされるんです。仕掛けが多かったり段取りが多かったり、細かいものも多かったり。なので、とにかく暇さえあれば、みんなでビッグナンバーの反復練習をしていますね。

 ――2人のメリーの印象を伺いたいです。前回はロバートソン・アイとしてメリーに関わっていましたが、バートとしての目線ではいかがですか?

濱田さんの場合、ご自身の劇団四季での厳格なキャリアというものが、メリーの厳格さという部分にとてもピタッとマッチしているなと感じています。「経験者」という感じの、メリーという完成された空気感は、初演でもすごいなと感じましたが、改めてバートとして一緒に演じながら、面白いと感じています。

――笹本さんとは10代の頃からご一緒されていて、ずっと長いお付き合いだと思いますが、メリーとバートとしての共演はいかがですか?

濱田さんも笹本さんも、違う演目で相手役や敵役をやることが多くて。濱田さんは、『ラブ・ネバー・ダイ』ではクリスティーヌでしたが、俺は酔い倒れたような男(ラウル)を演じていました。『レ・ミゼラブル』では、関わりはあまりない役ですが、ファンティーヌとアンジョルラスでした。

笹本さんは昔から知っていて、『ミス・サイゴン』でのキムとクリスだったり、最近だと『マリー・アントワネット』でマリーとオルレアン公をやっていました。そんな2人とハートウォーミングな芝居をしているのが、こっ恥ずかしくなりますね。 他の役で関わる時はこんなふうに思わないのですが。メリーとバートは、恋人でもないし何でもないからこその、とても心温まる関係性なんです。2人でいると、「そこだけオレンジ色」のような。観ている方も温かい気持ちになるでしょうし、目を合わせている我々もすごく温かい気持ちになるんです。

これまでに我々は、温かい気持ちになる芝居を一緒にしたことがないんです。基本的にドロドロでしたから。さんざん「地獄へ堕ちろ」みたいな芝居を一緒にやっていたのにと(笑)。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、メリーを演じる濱田めぐみさんと笹本玲奈さんとのこれまでの共演経験を踏まえて感じること、ミュージカルの魅力について、30歳になられた今思うことやこれからのチャレンジについて話してくださった内容と、お客様へのメッセージなどインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■「濱田さん、笹本さん、小野田」という関係性が、バートにとってのメリーを描く

■普通の人生では歩めない感情の飛躍を経験できるのは、ミュージカルだから

■海外ミュージカルを、日本語で演じる面白さ。チャレンジし続けたいと思っている

■ここからの未来に向けて、『メリー・ポピンズ』は、人間が持っている感情の活力に

<ミュージカル『メリー・ポピンズ』>
【プレビュー公演】2022年3月24日(木)~3月30日(水) 東急シアターオーブ 渋谷ヒカリエ11階
【東京公演】2022年3月31日(木)~5月8日(日)  東急シアターオーブ 渋谷ヒカリエ11階
【大阪公演】2022年5月20日(金)~6月6日(月) 梅田芸術劇場メインホール公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/marypoppins2022/
https://marypoppins2022.jp/
公式サイト
https://horipro-stage.jp/stage/marypoppins2022/
https://marypoppins2022.jp/

『メリー・ポピンズ』 関連記事:

⇒すべて見る

小野田龍之介 関連記事:

⇒すべて見る

※小野田龍之介さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは5月4日(水)です(このプレゼント募集は終了しました)。また、これとは別に、笹本玲奈さんの写真とサイン色紙に応募された方、ならびに、小野田龍之介さんの写真とサイン色紙に応募された方の中から計3名さまに、「笹本玲奈さん&小野田龍之介さん」のサイン色紙をプレゼントします(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、よろしくお願いいたします。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■「濱田さん、笹本さん、小野田」という関係性が、バートにとってのメリーを描く

――確かにそうですね(笑)。

ちょっと照れくささはあります。「こんなに温かくていいのかな」と。でもその分、すごく幸せです。今回メリーがお二方でよかったなと思えるのは、メリーとバートは長い関わりがある中で、久しぶりに会っているんですよね。

最後に会ったのは、きっとバートがマイケルのような子供の時で、何十年も前の話なんですよ。でも何十年経っても、ついこの間まで、ずっと心の中にいてくれるような存在を、「濱田さん、笹本さん、小野田」という関係性が、勝手に描いてくれるんです。ドロドロの世界観で芝居してきているからこそ、「温かい瞬間」という今回のメリーとバートの芝居を、ものすごく大切に、繊細に感じられるんです。これはある種の武器かなと思います。

――ちょっとキュンキュンしますね。

 そうですね、面白いキュンキュンですね。ふたりで微笑んで踊っているって、面白いじゃないですか。

 ――歌うという面では、この作品の楽曲はいかがですか。

 歌について、詳しいことは、あまりよく分からないのですが、本当に個人的な部分で言うと、『メリー・ポピンズ』の舞台版でも映画版でも、最初に導入で入ってくる歌のメロディーは、すごく人をワクワクさせる力を持っているなと思います。歌っていて、それをとても感じます。「上がって、下がって」というように、ワクワクさせてくれる音楽が常に流れている作品なので、これは歌っても聴いていてもワクワクする秘密というか、トリックなのかなと思いますね。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■普通の人生では歩めない感情の飛躍を経験できるのは、ミュージカルだから

――小野田さんご自身のことを教えてください。子供の頃からたくさんのミュージカルへの出演を経験されてきて、中心部で今活躍されていますが、そのキャリアの中において、ミュージカルならではの魅力ややりがいについては、今どのように感じていらっしゃいますか?

 コロナ禍を経ても、演劇の道を今も変わらず歩ませていただいています。僕もついに30歳になり、20周年を超えました。「小野田も30歳か…」と自分でしみじみ思いながら、でも周りにも10代からとか、8歳から小野田を知っているという共演者の方々も多いですし、本当に長い間、大好きな演劇の世界、エンターテイメントの世界にいられて嬉しいと思います。同時に、やはりコロナ禍を経て、劇場というひとつの空間で、今回で言えば『メリー・ポピンズ』というひとつの世界を、俳優、関係者、お客様と、何千人で共有するのは、とても豊かなことだとも思います。

ミュージカルだからこそ、普通の人生では歩めないような、人間の感情の飛躍を経験できます。これはミュージカルの魅力だと思います。会話がメインの演劇だと、音楽は自分で作り出すので、すごく人間的なものになり、それはそれですごく密なもので面白いです。僕は、ストレートプレイもすごく大好きですが、ミュージカルはそのリズムというものを人間ではなく音楽が作り出していますので、やはり、人間では越えられない世界に連れて行ってくれるなと感じます。

その中で。2時間、3時間という激動のドラマを歩める。例えば、昔、消防士になりたかったとか、警察官になりたかったとか、スーパーヒーローになりたかったとか、あるいはもっととんでもない夢だったとしても、演劇やミュージカルの世界はその夢を叶えてくれるのだと思います。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■海外ミュージカルを、日本語で演じる面白さ。チャレンジし続けたいと思っている

演劇のジャンルの中に、いろいろな会話劇やオペラなどがある中で、ミュージカルはまだ歴史は浅いですが、非常に豊かなコンテンツだと実感しています。ミュージカルは、海外から輸入することがどうしても多いですが、それを日本人として日本語でやれる面白さも感じています。

海外のキャストやスタッフと仕事したり、向こうでコンサートに出たり。海外のものを観たりしてきた中で、改めて日本語は、本当に豊かな言語だと思うんです。演歌的な、心に寄り添ってくれる言語。心にすっと入ってくる。これは母国語だからかもしれませんが、日本語は美しいなと、すごく思ったこともあります。

『メリー・ポピンズ』、『レ・ミゼラブル』、『ミス・サイゴン』などの、世界的な作品を日本で上演する機会がある際には、改めて日本語と、海外作品ならではの音楽性を大事にしたいです。そこに日本語をはめた時に、どうやれば本国と同じようなスケールや音楽のダイナミックさのままに、日本語で演じられるかというチャレンジを常にし続けたいなと思います。

 ――そこがやりがいであり、30歳を迎えた今、ここから取り組んでいく作品に対して思われていることなのですね。

 若いうちから、わりと年齢が上の役を任せていただいてきました。今、本当に30歳になって、役柄がマッチしてくる年齢になってきたなと、幸せで嬉しいです。役柄が変わってきた時や、今回のようにロバートソン・アイからバートに変わったりという時に、やはり「知った風」じゃない姿勢で取り組みたいです。同じ演目に何回も携わると、できている風になってきますし、作品がよければいいほど、適当にやりたくなってきてしまう。

 ――『レ・ミゼラブル』や『ミス・サイゴン』のような何度も上演される名作も、そうだと言われますよね。

 そこに甘んじていると、クオリティが落ちてくるのは目に見えています。ロングランの作品も新作もそうですが、やればやるほど、関われば関わるほど、キャリアを積めば積むほど自分を疑って「こうなのかな」と考えることを忘れないでいたいです。加えて、作品の型というものにしっかりはまっていく面白さもあるので、そこにはまりながら、「じゃあ、こうやったらどうだろう」と、ギリギリのところで楽しむのが面白いですよね。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

■ここからの未来に向けて、『メリー・ポピンズ』は、人間が持っている感情の活力に

――最後に、楽しみにしている読者の方に、メッセージをお願いします。

『メリー・ポピンズ』が4年振りに日本に舞い戻って参ります。先ほども言いましたが、音楽、台詞、ダンスナンバー、すべてにおいて、次から次へと宝石箱のように、これでもかこれでもかの連続で、お客様にはコロナ禍を経て塞ぎ切ってしまった心や、ワクワクドキドキを引っ張り出してくれると思います。

このコロナ禍を抜けた時に、「忘れていたな」と思うものが絶対あると思うんです。ここからの未来に向けて、この『メリー・ポピンズ』は、人間が持っている感情の活力になると思います。夏に向けて、劇場で『メリー・ポピンズ』の世界、ディズニーの世界、ミュージカルの世界を皆さんで共有して、楽しい世界を繰り出したいなと思っていますので、ぜひお越しください。

小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳
小野田龍之介さん=撮影・岩村美佳

※小野田龍之介さんの写真1カットとサイン色紙を、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。応募締め切りは5月4日(水)です(このプレゼント募集は終了しました)。また、これとは別に、笹本玲奈さんの写真とサイン色紙に応募された方、ならびに、小野田龍之介さんの写真とサイン色紙に応募された方の中から計3名さまに、「笹本玲奈さん&小野田龍之介さん」のサイン色紙をプレゼントします(このプレゼントの募集は終了しました)。有料会員の方はコメントを書くこともできますので、よろしくお願いいたします。

Follow me!

“「キャリアを積めば積むほど自分を疑って」、小野田龍之介(下)” への 3 件のフィードバック

  1. りん より:

    素敵なインタビューありがとうございました。
    私も同様に小野田さんは歌の方かと思っていたのでダンスについての事を知ることができてよかったです。バートのダンスもとても素敵でした。濱田さん、笹本さんの関係性も面白く、これからも色んな作品で共演してほしいです。小野田さんは安定さ、貫禄が流石としかいえないので、これからも海外ミュージカルを突き進んで沢山出演してほしいです。

  2. ゆん より:

    小野田さんのインタビューをありがとうございました。上下とも、興味深く拝読いたしました。「キャリアを積むほど自分を疑う」という言葉に、小野田さんの毎度の安定感とクオリティの理由が見えた気がしました。素敵なお写真も嬉しいです。また小野田さんの記事を読めるのを楽しみにしています。

  3. まひと より:

    上下ともに拝見しました。
    小野田さんの舞台への取り組み方にあらためて脱帽しましたが、印象的だったのはメリーとバートが再開するまでの年数。
    再会までに要した時間は数年程度だと思っていたので、何十年も開いたと考えるとバートもジェーンやマイケルと同じような年齢のころに同じ体験をしたわけですね。
    メリーの影響が凄いのはもちろんですが1人ではこなしきれないカバーしきれない部分を無意識にバートが担っていて、今回それを体感したジェーンとマイケルが次代のバートになっていく、と解釈しました。
    些細なことですが舞台への解像度がグンとあがり次回の観劇もより楽しみになる素敵な記事をありがとうございました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA