台灣寶塚:(15)日本のファンのための台湾・高雄公演レポート

高雄の街を流れる、その名も「愛河(love river)」=撮影・中本千晶

【特集】日本のファンのための台湾・高雄公演レポート

高雄公演千秋楽から早くも2週間。あの熱狂のひとときが早くも懐かしく感じられます。思えば8月31日の梅田芸術劇場での初日から2カ月余りの長丁場。無事に高雄での千秋楽を迎えられたことが我が事のように嬉しく、台湾のファンの皆さまの温かさも心に沁みました。キャスト&スタッフの皆さま、そして私自身が元気でその時間を共有できたことに感謝の気持ちでいっぱいです。

高雄では11月4日の夜公演、そして5日の千秋楽を観ることができました。そこで今回は日本のファンの皆さま向けに、高雄での観劇レポートをお届けしたいと思います。

(今回は日本語・写真のみの掲載となります)

愛河

高雄の街を流れる、その名も「愛河(love river)」=撮影・中本千晶

■南台湾を代表する都市・高雄

11月4日、お昼に台北に到着。そこから台湾高速鉄道(台湾の新幹線)で高雄へ。車内もまるで日本の新幹線そっくりだ。12時31分台北発で14時5分には高雄・左営駅着。約1時間半しかかからない。

高雄(カオション)は南台湾最大の都市で、人口でいうと台北より多い、台湾第3の都市だ(ちなみに1位は新北市、2位は台中市)。ただ、面積も広いため、人でごった返している台北に比べると広々として伸びやかな感じがする。MRT(Mass Rapid Transit、台湾の地下鉄)もいつ乗ってもあまり混み合っていなかった。

台湾高速鉄道の車両

台湾高速鉄道の車両。鉄子の血が騒ぐ!=撮影・中本千晶


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■「高雄市文化中心」は市民の憩いの場

■進化したサンファン、客席は念白にも集中

■開幕時には静かだった客席も、中詰の頃には?

■紅子、世界を股にかける

■千秋楽、大アクシデントを乗り越えて

■第4回公演への期待を込めて…

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    MRTといえば、高雄の美麗島駅は「光之穹頂(The Dome of Light)」というステンドグラスで有名だ。ここは2つの路線が交わる乗り換え駅でもあるので、今回の「遠征」でご覧になった人も多いのでは?

    この「美麗島」という駅名は、台湾が民主化に向かう大きなきっかけとなった「美麗島事件」にちなんでつけられているのだとか。美しい駅舎にもそんな背景があったのだ。

    美麗島駅のステンドグラス

    想いが込められた、美麗島駅のステンドグラス「光之穹頂」=撮影・中本千晶

    駁二芸術特区

    駁二芸術特区で完全に童心に帰って楽しむ筆者の姿を特別公開(笑)=撮影・外園弥生


    ■「高雄市文化中心」は市民の憩いの場

    タカラヅカが公演した「高雄市文化中心」は、美麗島駅から2駅、「文化中心」駅から歩いて数分のところにある。敷地はとても広く公園のようになっていて、日中はのんびりくつろぐ人やダンスの稽古に励む若者グループなどで賑わってる。まさに市民の憩いの場だ。

    その一角に建物があり、劇場である「至徳堂」の他、会議室や展示スペース、図書館などもあるようだった。「至徳堂」は客席数でいうと台北の國家戯劇院より多いそうだが、國家戯劇院に比べるとこじんまりとしている印象。銀橋に代わるものとして、舞台全面にお立ち台的なスペースが設けられており、センター、上手、下手に各一人ずつが立てるようになっていた。

    セリフは日本語で、舞台の両側に字幕が出るというシステム。この字幕も、より観客にわかりやすいよう、また、進化する紅子さんのアドリブ(後述)にも対応するため、日々改良が重ねられたという。海外公演ならではの通訳の方々のご苦労が偲ばれる。

    今回、私は11月4日の19時半公演と翌5日の19時半公演(大千秋楽)を観劇した。千秋楽はともかく、4日の19時半公演はこれまで台北で観てきた2回の台湾公演よりも客席がおとなしいなという第一印象。タカラヅカに不慣れな地元の方の中に、日本や台北から来た熱心なファンが混じっているといった感じがした。日本の地方都市での全国ツアーの雰囲気に近いかもしれない。

    男性のお客さんも意外に多い。布袋劇ファンの人なのだろうか。カップルや親子が一方が一方に何やら一生懸命説明しながら観ているカップルや親子連れの姿も目についた。

    高雄市文化中心

    「高雄市文化中心」の外観=撮影・中本千晶

    劇場入り口

    劇場「至徳堂」の入り口=撮影・中本千晶

    客席

    客席はこんな感じ。両側に字幕がある=撮影・中本千晶


    ■進化したサンファン、客席は念白にも集中

    前半の『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』は、贔屓目かもしれないけれど、大阪・梅田芸術劇場(梅芸)の初日の頃からすると隔世の感がある。今回、同行の友人は高雄公演が初観劇だったが、幕が降りるや否や「面白かったですね!!」と話していた。正直、梅芸の頃はこの反応はなかったと思う。飾りの多い衣装に殺陣の連続とあってキャストも段取りを追うのに精一杯だったし、話も原作を知らない人にはわかりにくいのではと懸念される部分が多かったからだ。

    梅芸初日の頃は「人形に命が吹き込まれて舞台上で動いている」ことに感動のポイントがあった。だが、今やみんながそれぞれの役を消化し自分のものにした上で、ビジュアルを乗せている感じで、それぞれの役者の味がその姿から透けてみえる。紅ゆずるにしか見せられない凜雪鴉(リンセツア)、あるいは礼真琴ならではの捲殘雲(ケンサンウン)になっている。逆にいわゆる「再現性」「そっくり感」のインパクトは良い意味で減ったのかもしれない。

    また、話もとてもわかりやすくなった。複雑な用語や物語の背景、敵味方の関係性を強調し、メリハリつけて伝える工夫がなされている。これは東京、台北と公演を積み重ねてきた成果だろう。

    面白かったのは、笑いのツボが日本とは全然違っていたこと。言葉の壁がある分、ちょっとした仕草や間など、非言語的な表現にウケるツボがある。それでも笑いがかなり起こっていた。おそらくキャストも客席に合わせた芝居をしているのだろう。

    凜雪鴉の言い回しも大げさになり、いちいち笑いが起こるし、癒し系の役である捲殘雲への笑いも多い。また、殤不患の通り名が決まり「刃無鋒(ジンムホウ)」と自慢げに言ってみせるところで後ろから何人かの男性の笑い声が聞こえてきたのが新鮮だった

    もう一つ、日本と違うなと思ったのが、中盤で主要キャストが勢ぞろいし、原作の主題歌でもある「RAIMEI」を歌い継ぐ場面だ。ここは原作ファンとしては最高にテンションが上がる場面であり、日本だと一番盛り上がり、手拍子も起こっていた。ところが高雄公演ではこの場面は静かだった。かといって、つまらなそうにしているわけでもない。むしろ皆が真剣に見入るあまりシーンと静まり返っている感じなのだ。

    この場面、布袋劇ファン注目の「念白」が背景に流れる場面でもある。日本人にとっては意味不明な漢字の羅列だが、高雄の観客はこれを熱心に読んでいる風でもあった。この念白も、梅芸の初日には観終わってから「あれ?そういえば念白流れてましたっけ?」というぐらいの存在感だったのが、高雄では相当見やすくなったようだ。


    ■開幕時には静かだった客席も、中詰の頃には?

    後半のショーの幕開きも、これまで観てきた台湾公演とは随分違っていた。2013年の第1回公演の頃から、幕が開いた瞬間から「キャー!!!」と遠慮ない叫び声があがっていたものだが、今回はそれがない。静かなのだ。どちらかというと呆気に取られている感じか?

    だが、中詰ぐらいからは完全に「ヒューヒュー!」と、いつもの海外公演の雰囲気になっていた。おずおずした感じが少しずつなくなり、会場の空気が温まっていくのが肌で感じられた。

    今回のショー『Killer Rouge/星秀☆煌紅』は歌だけでなく、話す場面が多いのが特徴だが、それもすべて中国語だった。たとえば、第5場の妻と娘、そしてポリスも全員中国語。ただ一人Monsieur Rouge(紅)だけが「だって言葉がわかんないんだもーん!」と言い続けていた。

    また、客席と一緒に「Killer Rouge」の主題歌に合わせて振りをやる場面も中国語で語りかけ、客席もノリノリで参加していた。私の隣の台湾人のカップルも、彼の方もちゃんとやっていたのが微笑ましかった。


    ■紅子、世界を股にかける

    特筆すべきは何といっても「紅子さん」の大活躍だろう。日本では客席から登場して日替わりのアドリブだった場面だ。台湾ではどうなるのだろうと思っていたが、紅子さんは舞台上手から登場。基本のセリフは決まっていて字幕を出すというやり方だった。

    にも関わらず、加えてアドリブをばんばん入れてくる紅子さん! それも、英語と中国語をうまく使うから客席にもちゃんと伝わる。中国語、日本語、英語を臨機応変に使い分けてのアドリブ対応は見事という他なし。まさに世界を股にかける紅子である。

    加えて、非言語の表現もうまく使ってウケる工夫もなされていた。たとえば、紅子が礼子に日替わりのクイズを出す場面(これも何パターンか決まっており字幕が出る)、4日の夜公演の問題は「タカラヅカが海外公演をやったことがある国は?」だったが、紅子が選択肢を言うたびに、礼子が関連するジェスチャーをやって見せるという具合だ。

    1)エジプト→スフィンクス

    2)インド→「ナマステ〜」の挨拶

    3)オーストラリア→コアラ

    4)アルゼンチン→タンゴを踊ってみせた。うまかった!

    客席に「ニーハオ!」と呼びかける場面も日本だとどうしても違和感があったが、やはり台湾ではしっくり来る。台湾の客席はやはり大声で返してくれる。

    日本のタカラヅカファンにはおなじみの紅子だが、台湾ではまだ知られていないかもということで自己紹介コーナーも設けられ、紅子の苗字も初公開された。「星野小路紅子」さんだそうである(※漢字の表記は字幕に準拠)。

    また「長所は全部、短所はナシ!」だそうだが、それが高雄公演の頃には紅子の存在もすっかり定着、千秋楽には、

    紅子「長所は?」

    客席の台湾のファン「ナーシ!」

    紅子「違う!それは次でしょ!」

    というウィットに富んだやりとりまで繰り広げられていた。

    また、愛子や礼子が「可愛いでしょう?」と言う場面、高雄での紅子は台湾語で「超可愛い」の意味の「真古錐」を駆使して対抗し、台湾のファンも大喜びだった。

    紅子とツーショット

    劇場入り口には台湾のファンの皆さんが作ったこんな飾りも!
    みんな紅子さんとツーショットを撮っていた。私も失礼して…
    =撮影・外園弥生


    ■千秋楽、大アクシデントを乗り越えて

    5日の大千秋楽、最後の最後にとんでもないアクシデントが起こった。そもそもお芝居の開演も遅れ気味だったのだが、ショーの方が待てど暮らせど始まらない。やがて事情説明のアナウンスが流れたが、何と、舞台機構の故障だという。

    面白かったのは、3度目のアナウンスでついに「(対処に時間がかかりそうなので)しばしロビーなどでお寛ぎください」といった意味のアナウンスが流れた時、客席からはブーイングではなく笑いが起こっていたことだ。台湾らしい大らかさなのかなと思う。

    結局、激怒してスタッフに食ってかかっていた人を一名見かけただけで、皆さんロビーでは和気あいあいとおしゃべりを楽しんでいた様子。とはいえ、勝手のわからぬ劇場でのトラブルだけに内心ヒヤヒヤだった。結局、上演時間195分(休憩30分)ということで本来なら終演予定が22時45分のはずが、開演が22時25分をまわった。

    千秋楽には最初からヒュー!キャー!の大歓声。大幅な開演遅れにもかかわらず紅子は絶好調。「望春風」を歌う場面では台湾ファンの有志が準備したブルーのペンライトが客席で揺れた。

    カーテンコール挨拶では紅がグッと涙をこらえる一幕も…。また、客席から「悠智露!悠智露!(「ゆずる」の中国語表記)」のコールがかかったのも前代未聞のこと。まさに紅子人気の賜物だ。最後はスタンディングオベーションとなり、「タカラヅカにも来てください」の挨拶に会場も大歓声で応えた。


    ■第4回公演への期待を込めて…

    今回の台湾公演には2つの意義があったと思う。

    ひとつは台北に加え高雄まで行ってタカラヅカファンの裾野を広げたこと。そしてもう一つは、芝居では台湾の伝統芸能である布袋劇にちなんだ作品を、ショーでも客席との対話の多い作品を上演したことで、台湾のファンとの交流がさらに深まったことだ。

    これからのタカラヅカはどういう海外戦略を取るのだろうか? 次は別の国へ、たとえば、さらに大きなマーケットを求めて中国へといったことも当然考えられるだろう。

    だが、3度の公演を経た台湾には今では多くのファンが生まれている。今回の台湾公演の盛り上がりも台湾のファンの支えがあってのものだ。もはや台湾は日本国内の全国ツアーでしばしば訪れる都市と同列に考えて良いのではないか。

    せっかく台湾に生まれたタカラヅカファンの輪、これからも大切に育てていって欲しいと切に願う。そして、次の台湾公演も是非観に行きたい私だった。

    台湾の朝ごはん

    台湾は朝ごはんの店も充実している。また行きたい…
    =撮影・中本千晶


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