2019年9月7日に大阪のフェスティバルホールで開幕するミュージカル『ラ・マンチャの男』(宮城、愛知、東京公演あり)で、ドン・キホーテの従僕、サンチョ・パンサを演じる駒田さんのインタビュー、後半です。おなじみの役となった『レ・ミゼラブル』のテナルディエや、『ミス・サイゴン』のエンジニア、来年40年になる役者人生について話を聞きました。
――『レ・ミゼラブル』のテナルディエは2003年から演じられ、今年で11度目となります。テナルディエはひどい人物であるように見えますが、どう思われますか。
フランス革命時の貧困の時代で、テナルディエは下水道の死体から遺品をかっぱらって生きている。実をいうと、あの時代は皆、やっていることなんです。テナルディエが特殊ではなく、アンジョルラスが特殊なんです。ジャベールは偏狂すぎますが。テナルディエ夫婦があのころの市民の代表だと演出家に言われました。「銀座で石を投げてごらん、ジャン・バルジャンやアンジョルラス、マリウスには当たらないよ。テナルディエにはいっぱい当たる。生き延びるために何でもやる市民がたくさんいたんです」と。
――なるほど、そうですか。
あの作品の中で、マリウス&コゼットと、テナルディエ夫妻以外は皆、死んでいるじゃないですか。だから最後のシーンのエピローグでは、天に召された人だけが歌う。自殺すると天国に行けないから、ジャベールも出てないんです。
――キャラクターに善人が多いからこそ、テナルディエ夫妻の悪人ぶりが際立ちます。
際立たせるために、ああいう風に描かれたんでしょうね。作品が重くて暗い中で、テナルディエ夫妻はお客さまの心を和ませる役割もあるんです。あの作品の中で、第4の壁(編集部注:観客と舞台の間にあるとされる透明な壁のこと)を破って、お客さまと対等に会話をしているのはテナルディエだけなんですよ。
――『ラ・マンチャの男』のサンチョもそうですね。
そうです。二人とも生き延びるために必死に生きている。『ミス・サイゴン』のエンジニアもそうです。製作・プロデューサーのキャメロン・マッキントッシュさんも同じことを言っています。エンジニアは人を傷つけてまでして生き延びる。人を利用してアメリカに行きたい。でも、エンジニアも第4の壁を破りお客さまと対等に話す役なんです。
※アイデアニュース有料会員(月額300円)限定部分には、『レ・ミゼラブル』の公演前に毎日行っているミーティングの様子や、『ミス・サイゴン』のエンジニア役について、駒田さんが来年、役者人生40年を迎えられることなどについてうかがったインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■『レ・ミゼラブル』は毎公演始まる前に「こうしてみよう」というミーティングがある
■『ミス・サイゴン』のエンジニアは、いけてない派のドブネズミ。でも熱い血が通っている
■(伊礼彼方さんと東山義久さんが新たにエンジニア)意識しないと言ったら嘘になります
■『ラ・マンチャの男』、歴史ある作品で、楽しんで演じています。ぜひ見ていただきたい
<ミュージカル『ラ・マンチャの男』>
【大阪公演】2019年9月7日(土)~9月12日(木) フェスティバルホール
【宮城公演】2019年9月21日(土)~9月23日(月) 東京エレクトロンホール宮城
【愛知公演】2019年9月27日(金)~9月29日 (日) 愛知県芸術劇場大ホール
【東京公演】2019年10月4日(金)~10月27日(日) 帝国劇場
公式サイト
https://www.tohostage.com/lamancha/
大阪公演特設サイト
https://www.umegei.com/lamancha/
<関連サイト>
駒田一オフィシャルブログ「駒田一の酔いどれときどき日記」
https://ameblo.jp/hajipyon/
駒田一:Victor Music Arts
http://www.victormusicarts.jp/hajimekomada_pro/
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■『レ・ミゼラブル』は毎公演始まる前に「こうしてみよう」というミーティングがある
――今年の『レ・ミゼラブル』の大阪公演は大好評でした。本当に舞台が年々進化していますね。
進化しなければやる意味はないですね。『レ・ミゼラブル』は毎公演始まる前に、「あのシーンはこう感じた。今日はこうしてみよう」というミーティングがあるんです。毎日、同じことをやっているわけではない。歌詞を伝えることや、一つひとつの微妙な間を動かすことを日々考えています。
――駒田さんは、2019年の『レ・ミゼラブル』は大阪公演で千秋楽を迎えられました。
達成感がありますが、ああしておけばよかったと反省点もいっぱいあります。でも目標を自分で掲げて、稽古場から作っていくことはできました。次はこうしようといつも思っています。それは、どの作品もそうですね。
■『ミス・サイゴン』のエンジニアは、いけてない派のドブネズミ。でも熱い血が通っている
――『ミス・サイゴン』が来年、東京で再演されます。エンジニア役は駒田さんも市村正親さんも続投ですね。
2014年に、初演からエンジニアを演じてこられた市村正親さんが体調をくずされて、僕もショックで悲しかった。前回、2016年の公演で復帰されたときは本当に嬉しくて。大先輩ですからね。70歳ですよ!自分が70になったとき、ああいうことができるのかなと思います。頑張らなきゃな、と見本みたいな方ですね。「元気でいてください」と言っているんですが、誰よりも一番元気なんです(笑)。
――共演者の皆さん、そうおっしゃいますね。
何食べていらっしゃるのか(笑)。
――駒田さんが2014年にエンジニアをされたときは、市村さんが降板されて、駒田さんは「役者として生き延びるために必死で、夢中だったから、次回はもう少し役を深めていきたい」とおっしゃっていました。
やっぱり初演より前回(2016年)のほうが、周りが見えましたよね。色んなことが見えて、非常に演じるのが面白くなりました。僕はエンジニアは絶対、アメリカに行けない男だと思っているんです(笑)。結末は分かんない話じゃないですか。三幕目、その後はどうなったんだろうといつも考えます。
――その後の物語は、エンジニアはアメリカには行けなかったんですね(笑)。
行けないでしょうね。簡単に行けるようだったら、もっと早く行ってるはずです。「アメリカに行くぞ、行くぞ」と歌いながら、行ったのはタイのバンコクじゃねぇかと(一同爆笑)。
―それは私も思いました(笑)。
市村さんも「まだアメリカに行けてねぇ」とセリフで言っていましたが、まさしくそれ(笑)。行けないんですよ、彼は。何かそこが人間味があっていい。エンジニアはそこまで賢い男ではない気がするんです。賢かったらあんな生き方もしないでしょ。いけてない派のドブネズミなんですよね。でも、冷酷ではなく、熱い血が通っている。人を傷つけても、アメリカに行きたいという気持ちがほとばしっている。土臭い、泥臭い男です。
■(伊礼彼方さんと東山義久さんが新たにエンジニア)意識しないと言ったら嘘になります
―2020年は、伊礼彼方さんと東山義久さんが新たにエンジニアとして加わります。若いエンジニアになりますね。
ねぇ、若くてチェッですよ(笑)。
――やっぱり、ご自身と同じ役を演じる方については意識されますか(笑)。
正直、意識しないと言ったら嘘になりますけど、意識したところで、僕は彼方や義久にはなれない。彼らも僕にはなれない。僕も市村さんにはなれない。そこを意識しても仕方ないので、エンジニアのことを考えるだけですね。自分のエンジニアを考えて、今までやってきたことを生かせば、また新たなものが見えてくる。
■『ラ・マンチャの男』、歴史ある作品で、楽しんで演じています。ぜひ見ていただきたい
――駒田さんは、来年、役者人生40年を迎えられます。やってられない、辞めたいと思ったことはありますか。
しょっちゅうあります。宝くじ当たんねぇかなとか(笑)。でも、それはほんの塵みたいなもので、これ辞めたら、何にもできないし。だって好きでやってるんですもん。「見て見て見てー。僕のお話聞いてー!」という人の集まりでしょ、役者なんて(笑)。人前で何かをするのが大好きな人の集まりですよ。でも、しんどいときはしんどい。僕はお酒が好きなので、昔のように浴びることはなくなりましたけど。
――昔は浴びるように飲んでいたのですか。
つい最近まで(爆笑)。楽しくて、デレデレになるまで飲んじゃうんですよ。舞台が終わった後は、反省会という名のもとに、喉のアイシング(笑)。冷たいのをグイーッとやると、ああ幸せ。それがストレス解消法かなぁ。
――辞めたいとかネガティブな思いは、本当に塵みたいなものなのですね。
楽しくてしょうがないですよ。そう思うために稽古場で苦しんでいるのかな。苦しまないと楽しめない気がするんですよ。楽すると楽しくない。後々苦しくなる。今のうちに苦しんでおいたほうが楽しくなる。だけどね、セリフを覚えるのは逆なんですよ。楽しようとして後で切羽詰まる(笑)。これだけ色んなことがデジタル化されているのに、役者だけですよ、こんなにアナログなのは。どこかにセリフを頭に埋め込む機械が売ってないかなと思いますね。暗記パンやどこでもドアが売ってねぇかなと真剣に考えますよ(笑)。でも必死でセリフを覚えて、それを稽古場で見せるわけじゃないですか。その日のビールは最高にうまい。共演者に「飲みに行こうよ、行こうよ。えっ、セリフ、まだ覚えてないの?」と言うのは快感です(笑)。
――そこまで役者が好きなら、死ぬときも舞台の上がいいですか。
もっと柔らかくて寝心地がいいところがいいですね(笑)。人に迷惑がかからないように。でも、役者だから、死ぬときも「見て見て、俺を見て。今からだよ」と人に見せたいのかも知れません(笑)。
――周りの人がお酒をかけてくれるでしょうね(笑)。『ラ・マンチャの男』が楽しみです。
難しい作品だと思い込むことはないと思います。チラシに相関図が書いてあるので、それを読んでいただければ分かりやすいですし、もっと知りたい方は映画のDVDを見てもらえれば、何か一つ感じられるもの、お土産に持って帰れるものが見つかります。白鸚さんが『ラ・マンチャの男』を50年されているという、非常に歴史のある作品です。僕も楽しんで演じていますので、ぜひ見ていただきたいです。
※駒田一さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは9月5日(木)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。