2021年2月20日(土)に 渋谷 PLEASURE PLEASUREでコンサート『I Live Musical! 5』(アイ・ライブ・ミュージカル! 5)を開催する中井智彦さんにインタビューしました。このコンサートには岡幸二郎さんがゲスト出演し、PIA LIVE STREAMでライブ配信も実施されます。インタビューは上下に分けて2日連続で掲載し、5 度目の開催となる『I Live Musical!』について、2020年6月にリリースしたアルバム『I Live Musical!』に収録されたミュージカル曲にまつわるエピソード、中井さんにとってミュージカルとは何なのか、ミュージカルを志したきっかけや歌への想いなどをお話いただいたほか、2月16日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、先日まで出演されていた『Play a Life』について、ライフワークともいえる「中原中也」などについても伺いました。
ーー『I Live Musical!』の第5弾が、2月20日に開催されます。
『I Live Musical!』というシリーズは、劇団四季を出てからずっと、僕の軸になっているコンサートなんです。ミュージカルを再現するのではなくて、1曲1曲でつなげられる「ミュージカルの物語」をコンセプトに毎回作っています。ミュージカル本編を思い出していただけるような曲ももちろんありますが、コンサートだからこその表現を届けられる場にしたいんです。僕は、ミュージカルと共に生きてきました。ミュージカルがあるからこそ、僕は歌の世界を作ることができた。僕が生きてきた人生の「ライブ」と歌の「ライブ」を重ねて、『I Live Musical!(アイ・ライブ・ミュージカル!)』というタイトルにしています。ミュージカルへの感謝を込めてお届けするコンサートです。
プログラムはある意味ミュージカルをぎゅっと凝縮したいいとこ取りのラインナップなので、ミュージカル好きの方に楽しんでいただけることはもちろん、これまでミュージカルをあまりご覧になったことがないという方にも、「あ、この曲ってミュージカルだったんだ!」と 、興味を持っていただける機会になれたら嬉しいです。
そして今回、念願叶って、尊敬する俳優の岡幸二郎さんをゲストにお迎えする予定です。
ーー岡幸二郎さんがゲストに!
そうなんです。今回のコンサートでは、もちろんアルバムの曲も歌いますし、ミュージカルの本編ではできない女性の曲も歌いますが、岡幸二郎さんは『I Am What I Am ~私はアタシ~』というミュージカルの舞台に生きるヒロインのナンバーを歌われたアルバムをリリースされていて、もうそのアルバムも絶品なんです。ですので、岡さんにも女性の曲を歌っていただこうかと考えています。
そして、ミュージカル『レ・ミゼラブル』『オペラ座の怪人』『ファントム』『美女と野獣』そして『CHESS』『サウンド・オブ・ミュージック』などなど、たくさんの作品から曲をピックアップして、ミュージカルの素晴らしさ、物語の切なさをお伝えできるようなプログラムにしたいと考えています。
今回は、ライブ配信もありますので、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいですね。
ーーこういう時代ですから、ライブ配信はありがたいですね。今回のコンサートは2020年5月の開催予定がコロナで延期されたものですが、2020年6月3日にリリースされた最新のCDのタイトルは、ずばり「I Live Musical!」でした。
大好きな曲ばかりを選んで入れさせていただきました。念願の「ミュージカル曲のアルバム」ですから、絶対に悔いのないアルバムを作りたかったんです。ミュージカルアルバムを作る機会が来るなんて思っていなかったですから。本当に悔いのないように自分が好きな曲を選びました。自分が「物語」として感動した曲たちですね。選曲は他に『南太平洋』や『キスミー・ケイト』『アスペクツ・オブ・ラブ』や『ルドルフ』等々、惜しまれながらカットになった曲がたくさんありました。
ーー収録曲についてのエピソードを教えてください。
初めて観たミュージカルが、『ジキル&ハイド』なんです。高校生の時、テレビをつけていたら、「時が来た」という曲が流れてきて。日生劇場で公演中というテレビCMだったんですよ。こんなに素晴らしい曲があるんだ!って感動して、実際に劇場に観に行きました。拍手喝采が鳴り止まないショーストップの感覚や、1曲1曲の見せ方に、ミュージカルってすごいなって思いましたね。
ーー初めて観たミュージカルが『ジキル&ハイド』。
そして大学1年生の時にブロードウェイで観た『オペラ座の怪人』の「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」。僕、今でも忘れられないんです。怪人のあの生々しさが。朗々と歌う表現ではなく、クリスティーヌに対する思いが溢れている「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」なんですよ。思いが溢れるからこそ、あの狂気になるというリアリティ! 怪人として生きる役者を観て、役者って素晴らしいなと思いました。そんな思い出の作品ですね。
そして『レ・ミゼラブル』は、僕の初舞台の作品でした。司教役で出させていただいていたので、ジャベールが歌う「星よ」は、ずっと舞台袖から先輩方を見ていたんです。こんな素敵な曲があるんだと思いながら。あのジャベールが、星に誓い始めるシーンなんですよね。空間がジャベールのためにフワッと変わるじゃないですか。舞台の表現って無限大なんだなと、感銘を受けました。
あと『サウンド・オブ・ミュージック』は、有無を言わさず大好きなんです。大自然の中で歌う「サウンド・オブ・ミュージック」やトラップ大佐の心情を表すような「エーデルワイス」など本当に名曲揃い。作品と音楽の結びつきが、これぞミュージカルという暖かさに満ち溢れている、本当に素晴らしい映画だと思います。
※こちらは中井智彦さんの公式YouTubeチャンネルに掲載されている「【最新アルバム試聴】ニュー・アルバム『I Live Musical!』全曲ダイジェスト!!」動画です。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『I Live Musical!』収録曲にまつわるエピソードや、コロナ禍の中で行ったYouTube配信、今回のコンサートの特徴などについて伺ったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。2月16日(火)掲載予定のインタビュー「下」では、先日まで出演されていた『Play a Life』についてのほか、ライフワークともいえる「中原中也」についての思いなどについて語ってくださったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。
<有料会員限定部分の小見出し>
■『美女と野獣』で演じた野獣役に僕の心情がリンク。「愛せぬならば」は今も歌いたい
■コロナ禍の中でのYouTube配信。僕は物語を届けたいのだと改めて感じました
■今回の『I Live Musical! 5』はバンド編成。準備しながら楽しくてしょうがない
■ミュージカルでは、ささやきが聞こえる。マイクがあるからこそのリアリティがある
<中井智彦コンサート『I Live Musical! 5』>
【東京公演】2021年2月20日(土)16:45開場/17:30開演
会場:渋谷 PLEASURE PLEASURE
出演:中井智彦(Vo) スペシャルゲスト:岡幸二郎(Vo)
Band: 長濱司(key)/成尾憲治(g)/村上和駿(ds)/田中啓介(b)
当日引換券:6,600円(ドリンク代600円別途)
公式サイト
https://udo.jp/concert/NakaiTomohiko
【ライブ配信】2021年2月20日(土)17:00開場/17:30開演
配信:PIA LIVE STREAM
視聴チケット:2,000円
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2169472
<関連リンク>
中井智彦 ブログ「歌日記」
https://www.nakaitomohiko.jp/contents/utanikki
中井智彦 公式YouTube
https://www.youtube.com/channel/UC3CR-gXzHTThv5IgyHN2BWQ
中井智彦 オフィシャルウェブサイト
https://www.nakaitomohiko.jp/
中井智彦 オフィシャルTwitter
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※中井智彦さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは3月15日(月)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
※ここから有料会員限定部分です。
■『美女と野獣』で演じた野獣役に僕の心情がリンク。「愛せぬならば」は今も歌いたい
ーー「愛せぬならば」は、劇団四季時代に演じられた『美女と野獣』の野獣役の曲ですね。
『美女と野獣』をブロードウェイで観た時に、野獣役をやりたいって思ったんです。すごく感動的でした。もう、演出から何から…。一幕ラストで「愛せぬならば」の後に幕が降りるんですよね。彼一人だけしかいないステージでの、あの脚本の流れ! ベルを傷つけてしまった野獣は、「いや違うんだ、傷つけようとしたんじゃない。君にはわからないだろうけど」って独白するんですよね。ベルを「愛している」ということに野獣は気付き始めるんです。でも、「彼女がいない時間を生きるなら、自分はもう滅んでもいい」という思いなのに、彼女を「愛している」という確信まではたどり着いてないんですよ。これは、その心の揺らぎを独白する曲なんです。
ーー愛に気づく手前の想い。そんな葛藤の中での独白。
野獣は、自分の醜い容姿や劣等感のせいで、ベルに想いを伝えられないんです。そこに苛まれている男の独白だからこそ、心に届く歌でした。野獣という役を演じたいと、この時思いましたね。当時、僕自身の心情が、野獣の劣等感や孤独にリンクすることが多かったこともありますが。劇団四季に入る前から、この曲はずっと歌っていましたし、これからもずっと歌い続けていきたい曲です。それくらい思い入れがあります。
ーー「Anthem」は、昨年出演されていた『CHESS』の曲ですね。
『CHESS』に出たのは、昨年の1月でした。以前から僕もラミン・カリムルーが大好きで。ですので彼が歌う「Anthem」を舞台上で一緒に感じられて、とても刺激を受けました。彼自身の祖国に対する思いと、アナトリーという役としての思いがすごく重なっていましたね。彼が歌う「Anthem」だからこそ響いたのだなと感じました。
ーーこれは、ラミンさんへの思いも込められた選曲なのですね。
そうです。そして、アルバム締めは『ラ・マンチャの男』の「見果てぬ夢」。これは永遠のテーマだと思っています。「夢は実りがたく敵は数多なりとも、胸に悲しみを秘めて我は勇みゆかん」。生きていく上で誰しも必ず壁にぶち当たる時ってあると思います。いくら歩いても、壁がない道なんてないと思うんですよ。コロナも壁だと思いますし。この状況の中で、エンタメに対して実はすごく考えたんです。
■コロナ禍の中でのYouTube配信。僕は物語を届けたいのだと改めて感じました
ーー『I Live Musical! 5』が開催されるはずだった2020年の5月には、オンラインサイン会を開催されていましたね。YouTubeにも素敵な歌声がたくさんUPされていました。考えられた末の一つの答えだったのでしょうか。
今までは、配信という表現はしてこなかったんですが、コロナ禍の中、お客様に劇場に来ていただいたとして、その方の生活が壊れてしまったらどうしようとか、医療従事者の方々がこれだけ頑張ってくださっている中で、エンターテインメントの存在意味をすごく考えたんです。僕はやっぱりこの状況でも音楽は絶対に止めたくなかった。僕に今できることってなんだろうと考えた結果、YouTubeで配信をしたり、コンサートのライブ配信という形を選択しました。僕自身、歌の物語を観ることによって、元気になれるんですよ。僕のコンサートに来てくださる方々も、きっと僕が届ける歌の物語を楽しみにしてくださっていると思うので、どうにかして歌の物語を届け続けたかったんです。
ーー「表現者」として。
はい。もちろん、生が一番良いです。直接伝わるエネルギーが絶対的だとは思いますが、そうじゃない届け方も「表現者」としては考えるべきだというのが、今回僕が出した答えでしたね。今できる形でお客さまに物語を伝えるにはどうしようかと、スタッフと一緒に考えて出したのが、この答えでした。
■今回の『I Live Musical! 5』はバンド編成。準備しながら楽しくてしょうがない
ーーさまざまな思いを経ての『I Live Musical! 5』開催となりますが、今回ならではの見所はどこでしょうか?
今まではピアノとギターという編成だったんですけれども、今回はバンド編成です。僕、高校の時にバンドをやっていたこともあり、バンドサウンドが好きなんです。今回は、ギターとベースとドラムにピアノという編成で、ミュージカル楽曲をバンドサウンドでアレンジしてお届けできる喜びがありますね。アレンジをしてくださっている長濱司さんも「ここはこだわりたい」と、音を作ってくださっています。あ、それとエレキギターが泣きます!
ーー『I Live Musical!』シリーズでバンドが登場するのは、今回が初めてなのですか?
そうなんです。ストリングスでソロで歌っているところを、ギターとデュオで歌ってみるというアレンジも用意しています。バンドのプレイヤーが一人一人すごく実力があるので、個々のミュージシャンに注目するという楽しみ方もあります。ミュージカルだからこういう音の型でいこうという考え方ではなくて、このソロを生かすなら、こういうプレイにしてみようかという感じで、それぞれのミュージシャンが活き活きとする場にしたいです。少人数だからこそ効かせられるエッジがあると思うんです。先日リハーサルをしたのですが、もう楽しくてしょうがないです。ミュージカルの素晴らしさ、物語の切なさをお伝えできるようなコンサートにしたいと考えています。
ーー「物語」という言葉は、中井さんのブログ『歌日記』にもよく登場していますね。
僕、「歌の中にある物語」が好きなんですよ。幼稚園の頃に先生に歌を褒められて、それがきっかけで最初は「声を出す」ということがおもしろくて、とにかく歌っていたんです。でも、小学生の時に『勇気一つを友にして』という歌に出会って、「歌の中にある物語が好き」だと気づいたんですよね。太陽に向かって飛んだイカロスが気になってしまって。
ーーミュージカルへの関心の原点でしょうか。
そうかもしれませんね。本格的にミュージカルに惹かれたのは、大学で声楽を学んでいる1年生の時でした。ミュージカルって、2時間半とか3時間の作品の中で、一つの物語が作られていく。例えば3時間の世界を僕が生きたらどうなるんだろうなと。その興味が「役者」への関心にシフトしていきました。ブロードウェイで観たミュージカルの『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』が、僕の中で違和感なくすんなり入ってきたんです。ミュージカルの俳優は、歌の中でファントムや野獣という役を「リアル」に生きられるのだなと。
■ミュージカルでは、ささやきが聞こえる。マイクがあるからこそのリアリティがある
ーー表現が「リアル」であるという点も、ミュージカルに惹かれた理由でしょうか。
オペラの素晴らしさは、やはり声の響きにあるのだと思うんです。オーケストラが荘厳な音を出している中で、お客さまに届くように前を向いて歌うのがオペラの表現ですし、当然、お客さまも「良い声」が聴きたいですよね。一方で、ミュージカルには、マイクがあるからこそ伝えられる「リアリティ」があると思ったんです。
ーー「リアリティ」があるとは、例えばどんなことでしょう。
オペラで歌う時には、一つの共鳴体として前を向いて響きを持って歌うことが多くて。後ろを向いて歌うなんていうのはあまり見ないですよね。一方、ミュージカルはマイクを使うので、自由でよりリアルな表現ができると思うんです。僕、ブロードウェイで『オペラ座の怪人』を観た時、一番後ろの席に座っていたんです。なのに、怪人のささやき声が聞こえるんですよ! あの「クリスティーヌ アイ ラヴ ユー♪」という消えそうな声が。しかも、怪人はクリスティーヌの方、つまり横を向いて歌っている。そしてその、囁くような歌声が、オーケストラとマッチしているんですよね。
このシーンのように、「今ここで起きている芝居」をリアルに築く表現がある一方で、「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」を歌うシーンでは、がっつりと歌声を聴かせてくれる。そんな対比が一つの作品の中にあるということに心を奪われました。音楽の表現幅、そして芝居のリアリティという意味でも、全く妥協ってないんだなと。
ーー歌だけではなく、リアリティのあるお芝居もあるミュージカルという世界に魅了されたんですね。
はい。彼らの芝居も素敵だったんです。僕は芝居も好きなんだと思います。リアリティがないと繋がれないから、大声を出して喋るのではなくて、心の距離感でちゃんと芝居をする。そのリアリティと音楽の融合を感じた時にもう、「ミュージカルって、なんて素敵な世界なんだ」と思ったんです。「僕はこれをやりたい。やりたい」と。歌の中の物語が、誇張されることなく紡がれている世界に出会えたんです。
ーー歌と物語とリアリティ。全てが交差したのがミュージカルだったと。
例えば、二人で対話しているなら、そのリアルな距離感で愛を語れるという感覚がミュージカルにはあるんですよ。爆発的に愛を語りたい時にはもちろん、オペラみたいにバーン!って前に向かって歌う表現にもなりますし。リアルな距離感によって、演出が変わるところに惹かれましたね。マイクがあるから、ミュージカルだと至近距離の芝居ができるじゃないですか。
ーー脚本におけるリアリティは、どういう部分で感じられますか?
脚本の世界の中で生きている人間にリアリティがあればあるほど感情移入していきます。そのリアルの中で歌がハマっていくと、震えるんです。自分が出演しているいないに関わらず、そういう作品は、観客の立場として観ている時でも、脚本と歌がすごくなめらかに繋がっていくんです。もちろん、ガーッと物語が進んで、急に歌来い!というミュージカルも、ショーとしてすごく面白いと思いますよ。他方、例えばソンドハイム作品のように、すごく難解な歌がそのままセリフに移行しているというパターンもありますよね。あれ、いつの間にか、という感じで。こういう風に音楽を使われると、鳥肌が立つんですよ。観客としてでも、その世界の一部に自分がなれているのを感じたりすると、本当に幸せだなあと思いますね。
※中井智彦さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。この下の応募フォームからご応募ください。応募締め切りは3月15日(月)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。