実話を元にした二人芝居の濃密なミュージカル『Hundred Days』が、2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝)にシアターモリエールで上演されます(2020年3月4日(水)~3月8日(日)の中野ザ・ポケットでの公演は新型コロナウイルスの影響で中止になりました)。ショーン役の藤岡正明さんのインタビュー後半です。『Hundred Days』の中で演奏される曲についてのほか、2019年9月に開催された「ヴォイストレーニングワークショップ」などについても伺いました。
――アビゲイル役の木村花代さんとは初共演ですか?
コンサートイベントで一緒になったことはありますが、お芝居としては初めてですね。
――木村さんとは、作品についてなにかお話をされましたか?
取材のときに話したりしてました。まだ正直、具体的な内容まではいけてないですけど、台本を読んだ後に、花代さんに会って顔を見たことで「そっか、この人がアビゲイルか。こういうこと言うんだな」とか、彼女の中の「闇」みたいなものをイメージしていったり、っていうのはありましたね。
アビゲイルという女性は15歳の時に親を失っているんです。それで誰かと出会って恋に落ちたりしていく中で、普通だったらその人と結婚をして、ということになっていきますよね。それを「嬉しいな、素敵だな」ではなくて、でも、これも両極端に誰しもが持っている感情だと思うんですけど、“この人を失ったらどうしよう” という考え方、この考え方が強すぎるんですね。アビゲイルの言葉で言うと「私は夢と呼ぶんだけれど、そしてその味はすごく塩味なんだけれども、すごくよくその夢に苛まれる」と。
つまりどういう事かというと、その人を失うということの悪夢みたいなもの、それがよぎってしまう。思い込みだけれども、それが彼女のずーっと抱えてきたトラウマであり、闇であり、恐怖であり、傷なので、それをぬぐい去れないんですね。それを「じゃあ、どうする?」 ということなんです。ただし、作品のテーマの中には、もっとより大きなものがあって。さっき言ったように、いつかは失うんですよ。いつか別れが来る。人間は100日というと「もうちょっとしかない、どうしよう余命3ヶ月だ」ってなりますけど、じゃあ「あと50年」と言われると、それはリアリティがないですよね。
――たしかに。
でも「5年生存率0です」と言われたら「5年か…!」ってなるわけですよ。5年生存率が50パーセントって言われても「うわぁっ!」ってなるわけですよ。人は勝手に50年、まだあと40年、あと30年、って考えていますが、実際には必ず、そのカウントダウンがかかって誰しもが生きているわけです。だからどういう希望を持って、どういう風に生きていくのかということを、作品のテーマとして掲げているんだろうなと思います。
※こちらはミュージカル『Hundred Days』公式サイトに掲載されている「HUNDRED DAYS PV#2:HUNDRED DAYS」動画です。
※アイデアニュース有料会員限定部分には、『Hundred Days』の中で演奏される曲について、藤岡さんが2019年9月に開催された「ヴォイストレーニングワークショップ」についてのお話などインタビュー後半の全文と写真を掲載しています。
<有料会員限定部分の小見出し>
■恐怖や、不安、闇に向き合いながら、カラッと笑い飛ばせるかどうか
■ギタリストとして、まこちゃんと一緒にコラボしてやれるというのは楽しみ
■「ヴォイストレーニングワークショップ」。もし僕が、少しでもヒントになるなら
■『Hundred Days』、“大事な人に会いたくなるルンルンなライブを観た” 気分に
<ミュージカル『Hundred Days』>
【東京公演】2020年2月20日(木)~2月24日(月・祝) シアターモリエール
(2020年3月4日(水)~3月8日(日)の中野ザ・ポケットでの公演は中止になりました)
公式サイト
https://www.consept-s.com/100days/
シアターモリエール
http://www.moliere.co.jp/theatre/
中野ザ・ポケット
https://www.pocketsquare.jp/the-pocket/
<キャスト&スタッフ>
【THE BENGSONS】ショーンとアビゲイルがフロントマンを務めるバンド
藤岡正明、木村花代
桑原まこ(音楽監督/Key)、遠藤定(Ba)、長良祐一(Dr:2/20~21、24、3/4~8)、小久保里沙(Dr:2/22、23)、石貝梨華(Vc)
【STAFF】
板垣恭一(日本語上演台本・訳詞・演出)
<関連リンク>
conSept 公式 Twitter
https://twitter.com/consept2017
藤岡正明公式サイト
https://fujiokamasaaki.officialsite.com/
藤岡正明公式ブログ
https://ameblo.jp/fujioka-masaaki/
藤岡正明 Twitter
https://twitter.com/Tsukune_Toro
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■恐怖や、不安、闇に向き合いながら、カラッと笑い飛ばせるかどうか
われわれがやろうとしていることは、暗いお話を創りたいわけでもなければ、誰しもが抱えたことのある恐怖や、不安、闇というのに向き合いながら、やさしく寄り添って向き合いながら、ただ、カラッと笑い飛ばせるかどうかっていうところかなーとは思っているんですね。じゃないとこれロック・ミュージカルにする意味がないんですよ(笑)。
――たしかにそうですね。では、先程おっしゃっていたとおり、ライブに来ました、という感覚の方がいいですね。そして無意識のうちに物語に引き込まれていく感じで。
本当に、まさにライブに来ました、でいいんです。お芝居の部分に入っていくのも、わりとゆっくりなんですよ。スローに、ずーっとMCみたいに歌を歌う。ストーリーというか「あのときはこうこうこうで~」みたいなことをやって、お客さまに、伝えていって曲が進行していくんです。もう、普通にライブのMCだと思ってもらった方がいいですね。これがお芝居だと思って観ていると「説明台詞ばっかりじゃん!」ってなっちゃう。そうじゃなくて「ライブのMCです! だから説明してるんです」ということだと思ってもらった方がいいのかなと。それが少しずつリンクしていって、過去というか、思い出しているところでお芝居としてのやりとりがあったり。舞台は生物(なまもの)なので、その場で本当に起こることがあったり、さまざまあると思うんですけど、なによりライブを観るという感覚で来てもらいたいなと思います。
■ギタリストとして、まこちゃんと一緒にコラボしてやれるというのは楽しみ
――音楽はロック以外にも、フォーク、パンクといろいろあるのですか?
結構ジャンルとしてはリズムの感じとかが、フォーキーだったり、カントリーっぽかったりしますね。アメリカンフォーク・ロックというか。
――前作『いつか~one fine day』に続いて桑原まこさんが音楽監督ですね。「現人 うつしおみ」を、4月末ご自身のコンサート「M’s Musical Museum vol.5」で歌われていましたね。
いや、やっぱりもうね、まこちゃん、作曲家としても素晴らしいし、もちろんピアニストとしても素晴らしいし、センスも、才能も、また力もあるミュージシャンだなと思って。この間、ミュージカル『In This House』を拝見させてもらったんですけど、『In This House』は、桑原まこが創った曲ではないわけですよ。そうなんですけど、不思議なもので、彼女がピアノ弾き始めると彼女の世界になるんですよ。だからそういった意味では、ピアニストとしても一級のピアニストだなぁと思っていて。
そんなまこちゃんが今回ロック・ミュージカルで一緒にやるというところで、元々クラシックの人だし、もちろんポップスをいろいろ通ってはいると思うんですけど、比較的大味な伴奏なので、彼女がそういうのが得意かどうかというと、そうではないと思うんです。でもある意味、それはそれで化学反応かなとは思っていて。僕、逆に言ったら、その大味なの得意なんで(笑)。そういう意味では、僕自身もいちミュージシャンとして、ギタリストと言えるほど上手くないんですけどギタリストとして、まこちゃんと一緒にバンドメンバーみんなとコラボしてやれるというのは楽しみだなと思っています。実はアコギ持ってる感じなのかなとも思ってるんですけど、これライブなんだから、エレキギター持ち込んでいいかなと思ってるんですよね。
――ロックやパンクというと、なんとなく…。
なんかこの感じだと、エレキギターあった方がよさそうだなと思って。アコギ1本だと逆に僕もシンドイんですよね(笑)。
■「ヴォイストレーニングワークショップ」。もし僕が、少しでもヒントになるなら
――2019年9月に「ヴォイストレーニングワークショップ」を開催されましたが、今までワークショップというのは?
1回もやったことないです。
――どのような思いでこのワークショップを企画されたのでしょう?
いままでも実はヴォイストレーニングというものに関して、ヴォイストレーナーとまで言っていいのかわからないですけど、ヴォイスアドバイスみたいなことはしたことがあったんです。本当に内々というか、横のつながりで関係している方や、会社から頼まれたときだけ、その期間で僕自身のスケジュール的にできるときだけやったことはあったんですね。ただ、それを請け負うときというのは、完全にマンツーマンでしかやらなかったんですよ。教える相手の声を聴きながらやるということしかやってなかったんです。だからそんなに数もできないし、僕自身も、ヴォイストレーナーとして生活をしていきたいわけではないので、あくまでタイミングが合えば、ということだけだったんです。そういうことは、実は二十代の半ばぐらいのときからずっとやったことはあったんですね。そうだったんですけど、なんかやっぱり年齢とともに、いろいろ考えるようになったし、実はここ5年くらいかな、少しずつなんですけど、僕の中で自分自身が思っている歌が歌えなくなってきている感じがしていて、自分のパフォーマンスがすごく落ちているなぁと。
――それはフィジカルな面で?
おそらく。自分自身が思っていた音が出なかったりしている。ちょっともどかしさみたいなものを感じるようになったんです。でも、そのときに「でも、そらそうだよな」と思って。僕、実は2年くらい前にちょっと指も病気になって、人差し指だけ曲がってるんです。ヘバーデン結節っていう、女性に多い病気になって、正直ギター弾くのが結構キツくなってきてるんです。ピックって人差し指と親指で持って弾くんですけど、ピック持って弾くのがもう痛いから、いま中指と親指で持って弾いてるんですけど、どうしてもやっぱりリズムが上手くいかなかったり、自分が思うプレイができなくなったりしていて、痛いから曲がんないところとかは、そのプレイ自体ができない。去年やったツアーでも、僕がギターで、ベースとドラムしか入らない3ピースで廻ってたときに、リハーサルでやっぱり痛いから、ギターをピアノに変えた曲とかが結構出てきたりしたんですね。
なんかそういうことがあったこともあって、要は「自分の肉体っていうものに、少しずつやっぱり支障が出てくるんだなー」と思ったんです。それは指だけじゃなくて、喉もそうだし。で、そういうときに、何かもし、これから音楽のこともそうだし、もちろんミュージカル界のこともそうだし、もし僕が、なにか少しでもこれからの人たちのヒントになるんだったらいいなっていう思いから、ちょっとやってみようかなって思ったんですよね。ただ、やっぱり1対1でやっていると、数が増えないので。どれくらいだろうなって思って、だから20人とか限定にしたんです。
――実際やってみていかがでしたか?
やっぱり教えるのって難しいなと思いましたよ。1対1で教えてると、やっぱりじっくりやっていけるところもあるし、その人に合わせたことをやっていけるんですけど、やっぱり短い時間の中で、しかも1回しかない中で様々なことをとにかく伝えていく、っていう時間なので、すごい難しいなと思ったし、逆に言ったら参加してくれた人たちに対しても、なんか置いてきぼりみたいになってしまっていたら、本当に申し訳ないなって気持ちもあります。
――アシスタントなしでお一人でされたんですか?
稽古ピアノの方には入ってもらいました。
――今後もワークショップはお続けになりますか?
どうなんですかね、需要があれば。ただやっぱりそんなにたくさんできることでもないので、何年かに1回かどうかぐらいな感じだと思います。
■『Hundred Days』、“大事な人に会いたくなるルンルンなライブを観た” 気分に
――いろいろお話を有難うございました。最後にミュージカル『Hundred Days』をご覧になるお客さまへのメッセージをお願いします。
二人芝居で、どんな風に、どんな作品になるんだろうという風に思ってらっしゃる方もいらっしゃると思うんですけど、本当に肩肘張らずに、さっきも言ったように、ライブを観に来る感覚で来てくれればいいと思うんです。で、なにより「闇」にフォーカスを当てているんじゃなくて、「光」にフォーカスを当てる作品になると思うので、きっとね、“大事な人にちょっと会いたくなる、ルンルンなライブを観た” そんな気分になってもらえるような作品になると思うので、是非、劇場でお待ちしています。
※藤岡正明さんのサイン色紙と写真1カットを、有料会員3名さまに抽選でプレゼントします。有料会員の方がログインするとこの記事の末尾に応募フォームが出てきますので、そちらからご応募ください。応募締め切りは2月9日(日)です。(このプレゼントの募集は終了しました)有料会員の方はコメントを書くこともできますので、どうかよろしくお願いいたします。
歌の上手い声の良い人は世の中にたくさんいらっしゃるけれど、藤岡正明さんの声は唯一無二。とてもドラマチックで、体温と豊かな色彩を感じます。体調など心配ですが、それを含めて彼の変化を認めつつ、これからも魅せて頂きたいと思っています。
いつも率直に語ってくれる藤岡正明さんが大好きです。HUNDRED DAYS今まで見たことのない作品になりそうで期待が高まりました。
藤岡さんの記事ありがとうございました。ますますHUNDRED DAYS楽しみになりました。ワークショップについてのお話も聞くことができて嬉しかったです。