ミステリー小説を緻密に舞台化、宝塚花組『マスカレード・ホテル』開幕

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

宝塚歌劇花組の梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』(脚本・演出、谷正純)が2020年1月5日(日)に開幕しました。今作は東野圭吾氏原作の長編ミステリー小説「マスカレード・ホテル」を舞台化した作品。「マスカレード・ホテル」はシリーズ累計発行部数360万部を超える「マスカレード」シリーズの第一弾で、2019年1月に公開された映画も大ヒットした人気作です。連続殺人事件を解決するため、ホテルマンとして潜入捜査をする警視庁捜査一課の刑事である新田浩介役を務めるのは、瀬戸かずや(せと・かずや)さん。そして、新田の指導係であるホテルのフロント担当の山岸尚美役は2019年11月11日付けで花組へ組み替えとなった朝月希和(あさづき・きわ)さんが務めます。緻密に計算された伏線が随所に散りばめられ、その謎が解き明かされる瞬間には頭の中がスカッとする爽快感が得られる作品。 開幕前日の2020年1月4日に行われた舞台稽古を取材・撮影しましたので、アイデアニュース独自撮影の写真と共にご紹介します。

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

都内で不可解な連続殺人事件が発生。警察は残された暗号から次の現場はホテル・コルテシア東京であると推測します。そして、警察は犯人逮捕のためホテルへの潜入捜査を実行することに。そこでフロントクラークに扮するよう命じられたのが、物語の主人公である警視庁捜査一課の刑事、新田浩介。風貌も立ち振る舞いも、まるでホテルマンらしからぬ新田。そんな新田の指導係を担当にすることになったのが、フロントクラーク係の山岸尚美です。ホテルマンという仕事に誇りを持っている山岸は、たとえ潜入捜査の一環として一時的にホテルで働くだけとはいえ、新田に対してホテル・コルテシア東京のホテルマンとして相応しい立ち振る舞いを求めます。一方、新田は捜査が出来ればそれでいいという考え。そんな異なる主張をぶつけ合う二人は、当然ながら衝突を繰り返すばかりでしたが、一緒に働いていくなかで次第にお互いの能力を認めるようになり、強い信頼関係で結ばれていくように。ホテルでの潜入捜査を続けるなか、訪れる宿泊客たちが引き起こすさまざまな騒動に翻弄されながらも、新田たち警察は事件を無事解決することができるのかーーー。

新田浩介役を務めた瀬戸さんは、冒頭、ロングコートを身にまとい颯爽と登場。ジャジーなメロディが印象的なナンバーをしっとりと歌い上げ、その伸びやかな歌声を存分に披露してくれます。そのあとのホテルマン姿やスーツ姿もビシッと着こなしてしまうスタイルの良さはもちろん、時折見せる背中からは大人の色気を漂わせ、数々の作品で培ってきた男役としての魅力を体現。最初はホテルマンとは思えない立ち振る舞いで山岸を困らせていた新田が、ホテル・コルテシア東京のホテルマンに相応しい人物へと成長していくまでの過程も、歩き方やお辞儀の仕方などの細かな仕草を通して表現していたところも印象的。映画版の木村拓哉さんを思わせる、鋭い目つきや荒っぽい口調もうまく取り込みつつ、どこか艶やかさが感じられる瀬戸さんならではの新田に仕上がっています。

新田の指導係である山岸尚美役を務めた朝月さんは、新田の指導係になるのも納得の所作や佇まいで、快活な役どころの山岸を好演。キビキビとした口調で、ビシバシと新田を指導をする姿には、清々しさが感じられ、山岸のホテルマンとしての責任感の強さがわかりやすく伝わってきます。一方、フィナーレでは清らかな白の衣装を身にまとって瀬戸さんにぴったりと寄り添い、物語とは違う二人の関係性を披露。瀬戸さんの低音と、朝月さんの高音が調和するナンバーでは、劇場内に響き渡る二人の美しいハーモニーに注目です。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、レポートの全文と公演写真3カットを掲載しています。

<有料会員限定部分の小見出し>

■汝鳥伶は重厚な総支配人役、冴月瑠那はフロント・マネージャー役を品よく

■高翔みず希はクレーマーの宿泊客を、音くり寿は元劇団員の女性を熱演

■新田の相棒的存在は飛龍つかさ。宝塚版ならではの、お茶目な後輩の設定

■ラストにかけてスピーディな展開。仮面舞踏会などの華やかな演出も

<宝塚歌劇 花組 ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』>
【大阪公演】2020年1月5日(日)~ 1月13日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【東京公演】2020年1月20日(月)~ 1月27日(月) 日本青年館ホール

<関連リンク>
宝塚歌劇のページ
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2020/masqueradehotel/
梅田芸術劇場のページ
https://www.umegei.com/schedule/846/

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宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

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■汝鳥伶は重厚な総支配人役、冴月瑠那はフロント・マネージャー役を品よく

藤木総支配人役の汝鳥伶(なとり・れい)さんは、どっしりと構え重厚感のある総支配人を演じ、冴月瑠那(さえづき・るな)さんはフロント・マネージャーである久我役を品よく、捜査一課の係長、稲垣役の和海しょう(かずみ・しょう)さんは、現場の指揮を執るリーダーを厳格に、凛々しく演じていました。

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

■高翔みず希はクレーマーの宿泊客を、音くり寿は元劇団員の女性を熱演

栗原健治役の高翔みず希(たかしょう・みずき)さんは、クレームばかりの嫌味ったらしい宿泊客を熱演。元劇団員の長倉麻貴を演じた音くり寿(おと・くりす)さんは、熱のこもった芝居と情感たっぷりに歌い上げる歌唱で観客を魅了。そのほか、宿泊客の森川寛子を演じる鞠花ゆめ(まりか・ゆめ)さん、客としてホテルに潜入する本宮警部補役の羽立光来(はりゅう・みつき)さん、ハウスキーパーとして潜入する真淵巡査役の真鳳つぐみ(まほう・つぐみ)さん、ベル・キャプテン、杉下キャプテン役の帆純まひろ(ほずみ・まひろ)さんをはじめとする花組メンバーはホテルマンや客、刑事となり、細やかな演技で場の雰囲気にリアリティを持たせていました。

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

■新田の相棒的存在は飛龍つかさ。宝塚版ならではの、お茶目な後輩の設定

品川警察署の巡査で、新田の相棒的存在の能勢役を務めたのは、飛龍つかさ(ひりゅう・つかさ)さん。新田の後輩という点は宝塚版ならではの設定ですが、飛龍さん演じる能勢はお茶目で憎めないかわいさがあり、場がパッと明るくなるムードメーカーのような役どころ。また、事件の展開をわかりやすく解説するストーリーテラー的な役割も担い、物語に欠かせない人物の一人に。新田を慕う能勢と、それをあしらう新田とのバディ感が楽しめるのはもちろん、フィナーレでのキリッとした飛龍さんの男役姿も見どころの一つです。

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

宝塚歌劇 花組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演、ミステリアス・ロマン『マスカレード・ホテル』より=撮影・橋本正人

■ラストにかけてスピーディな展開。仮面舞踏会などの華やかな演出も

観劇前は、ミステリー小説を宝塚版の舞台としてどう描いていくのだろうと思っていましたが、幕が開けば完全にそのストーリーに引き込まれ、あっという間に感じられた2時間半。特に、ラストにかけての息つく間もないスピーディな展開から導き出される答えには、原作を読んでおらず、映画も観ていないファンであれば、「そうだったのか!」という驚きも感じられるはず。また、ミステリーというサンスペンスフルな話の展開に、仮面舞踏会などの華やかな演出が加わり、宝塚版らしいオリジナリティも楽しめる作品になっています。シアター・ドラマシティ公演は1月13日(月・祝)まで、日本青年館ホール公演は1月20日(月)から1月27日(月)まで。ホテル・コルテシア東京を舞台に繰り広げられる事件の結末を、ぜひ劇場でお楽しみください!

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