「言葉にできない苦痛を」、『僕はまだ死んでいない』内海啓貴インタビュー(上)

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

VR(ヴァーチャルリアリティ)技術を活用し、演劇ならではの臨場感を360度の映像でオンラインで楽しめる形にしたVR演劇『僕はまだ死んでない』が、2021年2月1日(月)から配信されます。新型コロナウイルス感染症が拡大するなか、もし身近な存在の人が倒れたら、家族や友人、自分は何を想い、何を選択するのか。VR演劇『僕はまだ死んでいない』は、病に倒れて体を動かすことができなくなった人とその周りの人たちの人間模様を描いた作品です。アイデアニュースでは、主演の内海啓貴さんにインタビューし、収録の感想や作品への思いなどを伺いました。

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

――撮影はどんな風に?

僕は劇場での収録だけでなく、海辺でロケもしました。黄色いブランコをロケ地に持っていって、海辺でブランコをしながら、錦鯉と一緒に芝居をしました。

――撮影を終えられて、VR演劇についてどう思われましたか?

舞台でもあり、映像でもある、新しい演劇です。舞台でお客さんの生のリアクションがあるのとはまた違って、どういう仕上がりになるのかわからないということが、ひとつの答えでもありますね。どこから観られているかわからないので。

――360度ですもんね。

今回は僕主観のVRなんです。お客さんが舞台上にいる感覚になれることって、なかなかないと思います。観ていてどういう風に映るのか、僕もまだわかりませんが、普通の舞台よりも、お客さんが僕に感情移入しやすい作りになっていると思うので、細かいところまで楽しんでいただけたらいいなと思っています。

――作品の物語について、どう思われましたか?

僕の役は、意識はあるけれど体が動かなくなってしまう病気になってしまうんです。ロックトインシンドローム(閉じ込め症候群)という症状で、ヨーロッパの有名雑誌編集長が、その状態になったあと瞬きだけで小説を書いたという実話もあります。誰もがなる可能性のある病気なので、もし自分だったらと考えました。寝そべって、何もしゃべらずに目だけのお芝居もしましたが、自分の思いを言葉にできないってこんなに苦痛なんだと思いました。その苦痛、自分が動けないことを突き詰めていくと、自分に残っているものは自分の過去の記憶や想像しかなくて、そこに逃げ込むしか生きるすべはない。僕の台詞にもありますが、想像の世界で生きている感覚があるんです。難しかったですが、本当に繊細に作っていこうと思いました。

病室のセットが開いて、黄色いブランコが出てくるシーンがあるんですが、お客さんがもしこの病気になってしまったら、こういう風に想像の世界で生きていたりすることになると思います。僕の芝居で何かを受け取ってほしいなと思いました。

コロナ禍の中でこの作品をやることは、絶対に意味があると思います。今は病院に面会に行くこともできないですし、なかなか演劇も体験することもできないですよね。この時代に、生死に関わる作品を創ることは大事なことですし、命の大切さを大事にしながら創っていきたいと、プロデューサーの方々と話していました。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、演じる側にとって通常の映像作品とVR演劇がどう違うのかや、内海さんが今回演じた白井直人役と自身が似ている点や、今回の作品で見せたいと思った部分などについて語ってくださったインタビュー前半の全文と写真を掲載しています。1月31日(日)掲載予定のインタビュー「下」では、作品についてのほか、内藤さんに1年前に『アナスタシア』出演でアイデアニュースのインタビューに初めて登場していただいてからの1年などについても伺ったインタビューの後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>

■VR撮影は10分・20分の長回しで、噛んだら最初から。緊張感が…

■子どもに対する思いなど、役として新しい挑戦もたくさんありました

■あの症状で、どういう風になったら自分は幸せなのかと考えながら

■「俺は想像の世界で生きやすくなったんだよ」という変化を見せたかった

VR演劇『僕はまだ死んでない』
VR演劇『僕はまだ死んでない』

<VR演劇『僕はまだ死んでない』>

原案・演出:ウォーリー木下
脚本:広田淳一
音楽:吉田能

出演:内海啓貴 斉藤直樹 加藤良輔 輝有子 渋谷飛鳥 瀧本弦音 木原悠翔

配信チケット販売: 発売中~2021年2月28日(日)23:59
閲覧開始:2021年2月1日(月)18:00 より
閲覧期間:7日間

VR演劇『僕はまだ死んでない』 公式サイト
https://stagegate-vr.jp/

<関連リンク>
内海啓貴オフィシャルブログ
https://ameblo.jp/utsumi-akiyoshi/
内海啓貴|サンズエンタテインメント
http://www.suns.fm/akiyoshi-utsumi/
内海啓貴Twitter
https://twitter.com/utsumi_akiyoshi

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内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■VR撮影は10分・20分の長回しで、噛んだら最初から。緊張感が…

――演じる側として、通常の映像作品との違いは?

通常の映像作品とは違う緊張感があります。VR撮影のカメラは立つ場所によって見切れてしまったり、体が歪んだりしてしまうんです。だから、セリフを言う場所に気を付ける必要があります。あとは、長回しのシーンがほとんどなので、セリフを噛んだら、もう1回、場面の最初から撮影をスタートします。だからみんな、通常の映像作品とは違った緊張感を持ちながら演じていたと思います。

――そういう経験は新しいですか?

新しいです。通常なら、何回もカットして編集できますが、10分、20分ぐらいの長回しってなかなかないですよね。海外のアクション映画のようです。

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

■子どもに対する思いなど、役として新しい挑戦もたくさんありました

――このお話を最初に聞いた時はどう思いましたか?

シーエイティプロデュースさんのミュージカル『35MM:A MUSICAL EXHIBITION』に出演したときにVR配信もありましたが、観てくださった方々の反響も良かったんです今度はミュージカルではなく、ストレート芝居でやろうと。それをお客さんがどう受け取ってくれるか、すごく楽しみだと思いました。

――今回演じた白井直人役についてはいかがですか?

本当に自分のことしか見えない芸術家なんです。僕も似たところがあって(笑)。

――似たところがある?

興味を持ったことしか、頭にないんです。自分のなかで納得しなければ終われない人なんだろうなと、脚本を読んで感じました。この仕事も絶対の正解はないので、ここが自分のベストだなというところを決めるとか、共通点は意外とあったんですよね。病気になって身の回りの幸せに気づいたり、子どもに対する思いなど、役として新しい挑戦もたくさんありました。

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

■あの症状で、どういう風になったら自分は幸せなのかと考えながら

病気で闘ってきた人は、命に対する思いがみんな違うと思います。僕の母も大きな病気を患ったことがありますが、生きていて良かったなと思えるので、そういう思いも含めて、想像の世界で生きたいなと思いました。直人は、あの症状まで行ってしまったら、回復は難しいので、生きているということに対して、どういう風になったら自分は幸せなのかと考えながら演じました。本当に難しい役どころでした。

――今まで出演してきた作品とは違いますか?

違いました。病気を持っていることで、こんなに心が動かされるんだという思いは、すごくありました。

――いつそうなるかわからないという意味では、接点がありそうな世界観なのかなと。

自分がこういう状況になったら、家族とか誰が会いに来てくれるんだろうなとか、自分がどういう風に意思表示するんだろうとか。台詞でもありましたが「やってられるかバカヤロウ」と言う、この言葉をただ伝えるだけで5分以上かかってしまうことが印象的でした。実際には自分のなかで思うだけで、文字盤で5分以上もかけて言わないかもしれない。仙人になっちゃうんじゃないかなって。

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

■「俺は想像の世界で生きやすくなったんだよ」という変化を見せたかった

――この作品を演じ終えるまでに、大事にしたものはありますか?

心の変化を見せたいと思いました。病室で、以前の僕のことを「こいつはこういう人間だから」といろんな人が言うんです。だから「俺は想像の世界でこんなに生きやすくなったんだよ」という変化をすごく見せたかった。そういう人間としての感情を、この病気になったからこその心の変化を見せたかったです。何より命のことを扱っているので、僕も命の大切さを改めて知ることができました。この感情を観てくれたお客さんにも届けたいです。

内海啓貴さん=撮影・岩村美佳
内海啓貴さん=撮影・岩村美佳

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