「雨の寒い日に、晴れてるねって」「暑いくらいだねと」、矢田悠祐・上口耕平(下)

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

2022年2月17日(木)から2月28日(月)まで博品館劇場で上演される、舞台『僕はまだ死んでない』で、主人公・直人役とその幼馴染・碧役を、回替わりで交互に演じる矢田悠祐さんと上口耕平さんのインタビュー、後編です。「下」では、会ったときからお互いに波長が合うと感じていたこと、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって思うこと、直人役と碧役のどちらの自分により新しさを感じているかなどについて伺った内容と、両パターンの観劇が難しい場合も踏まえた上でのお客さまへのメッセージなどを紹介します。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

ーー上口さんが、「波長が合う」とお話されていましたが、それはお会いしたときからお互いに思っていらっしゃったのですか?

矢田:そうですね(笑)。そういうのは、何で分かるんですかね? 

上口:確かにね! でも、みんなそういうものかな?矢田くんもそうかもしれませんが、まず会った瞬間の印象で、「こういう方かな?」と少し想像するじゃないですか。その中で、理由は分かりませんが、「おはようございます」と挨拶をした瞬間の感覚で、近い部分があると感じたんですね。それを今度は、そのあとの時間で、確かめてみたいと思って。これは自然なのかな。無意識に、そういうことを確かめたくなるんですよね。なので、おもしろいことが起きて、僕がおもしろいと思ったときに、ちらっと「どうかな?」と見ちゃうんですよ。

矢田:(笑)。

上口:そうしたら、もうドンピシャな反応をしているんです。少し笑いをこらえているとか。それを見たときに、最初のイメージと同じだ、「よし!」と思うんです。だから、僕は結構そういう風に見ていましたね。短いチラシの撮影の、たった1〜2時間でそれが確信に変わりました(笑)。

ーーその波長の合うおふたりが稽古をしていく中で、人となりや、それぞれの芝居などで、お互いのここが好き、自分と似ていると感じたことはありますか?もしくは客観的にご覧になったときに、ここがこの人の魅力だろうなと思うところなどを教えてください。

矢田:人となりでいうと、上口さんの方が少し年齢が上ですが、上口さんは、それを全然感じさせないんです。

上口:あはは(笑)

矢田:年齢差というか、壁がなくて。僕の方が年下ですが、上口さんをいじっても大丈夫なくらい(笑)。そういう懐の広さが、すごく素敵だなと思います。だから、普段の会話もそういう風になっていると、お芝居のことでも「ここって、僕はこう思うんですけど、どうですかね」ということも聞きやすいです。普段の関係性は、すごく大事だなと思いますね。ダブルキャストは難しいときもありますが、今回は特にめちゃくちゃプラスに働いているいい例といいますか。難しい役で、難しい題材だからこそ、ふたつの脳みそを使って作り上げる意味がすごくあるなと思いました。やさしい先輩で良かったです。

上口:僕は、もはや歳の差という事実が、少し邪魔なくらいですね。自分も年上だという感覚がありませんし、矢田くんが年下という感覚も意識ゼロです。むしろ同級生で生まれて、育ったと思うくらいの感覚なんです。人となりでいうと、僕は落ち込むこともありますが、基本的にはポジティブに物事を考えたいタイプで、そこが矢田君も同じで。あと、関西の方はちょっとした会話の中でも、何かしらおもしろそうなことを見つけたがるんですね。

矢田:広げていきますよね。

上口:それはハッピーなことで、何気ないただの挨拶から、笑顔が始まる。笑顔からスタートする一日みたいな。それが矢田くんと話しているときに多くて。しかも、それがお互い無理しているわけではなく、自然な形でできている。無理してがんばって、おもしろいことを言うわけではない。例えば、僕が結構好きだったのは雨が降っていて寒かったときに、普通は「寒い、雨だね」でスタートするじゃないですか。それで「おはよう」と顔を合わせたときに、ちょうど外だったんですが、「いや〜、晴れてますね」って言ったんですよ。「暑いくらいですね」って(笑)。

矢田:あはは!(笑)

上口:そういうところが好きなんですよね。お互い普通の会話として、笑うわけでもなく、「そうだね」「汗かいてくるよね」って。

矢田:どこまでいけるか、みたいな(笑)。

上口:お互いクスッと我慢できなくなるくらいまで、それをいかに冷静に続けるか。

ーーその時、矢田さんは、上口さんの返しは、どうくるだろうと思っていましたか?

矢田:初手でツッコむか、本当にどんどん広げるかのどちらかだと思ったんですよね。どんどん広げる方ね、と思って(笑)。

上口:矢田くんもどんどん広げるタイプでしょ?

矢田:そうですね。しばらく泳がせますね。

上口:一回乗るでしょ?

矢田:乗りますね。

上口:でしょ?

矢田:それで波が大きくなったときに、「いや、つっこまんかい!」って言います。

上口:そういうところが、すごく心地いいですね。

ーー題材がシリアスな分、そういう柔らかい感じがお互いにあっていいですね。

上口:そうですね。だから、いざというときに真面目な話もできますし、本当にぎゅっと。そういうところがお互いにあるのかなと思います。

※アイデアニュース有料会員限定部分には、久しぶりのストレートプレイ出演にあたって思うこと、直人役と碧役のどちらの自分により新しさを感じているかなどについて伺った内容と、両パターンの観劇が難しい場合も踏まえた上でのお客さまへのメッセージなどインタビュー後半の全文と写真を掲載します。

<有料会員限定部分の小見出し>(有料会員限定部分はこのページの下に出てきます)

■上口:そのときの気持ちや空気に、言葉のスピードを任せられるのがお芝居の醍醐味

■矢田:直人役では、目しか開けられない僕を見せる。何かを感じていただけるのでは

■矢田:上口さんの直人役を見ていると、ある意味少し怖い気持ちになった

■上口:両パターンの観劇が難しい場合、逆は想像していただけたら役者冥利に尽きる

<舞台「僕はまだ死んでない」>
【東京公演】2022年2月17日(木)~2月28日(月) 博品館劇場
公式サイト
https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2022/bokumada2022/index.html

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矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

※ここから有料会員限定部分です。

■上口:そのときの気持ちや空気に、言葉のスピードを任せられるのがお芝居の醍醐味

ーー久しぶりのストレートプレイということに関しては、おふたりはそれぞれどう思っていらっしゃいますか?

矢田:僕は歌がないのは久しぶりですが、ストレートプレイで歌がある作品は結構やっていたので、それほど違和感はないですね。僕は、この次に魔法使いになるので(『魔法使いの約束』第3章出演予定)。この作品から魔法使いに飛ぶので、そのギャップがすごそうだなと思いますが。

上口:それはすごいよね。

矢田:日常のリアルな役を演じるのと、まったく違う架空の存在を演じることができる。いろいろな役を演じることができるのは、役者ならではなので、今回はこういうアプローチをするんだという楽しみはあります。

上口:ストレートプレイだから、ミュージカルだからといって稽古場に入るモチベーション、状態が何か変化するわけではなく、いつも同じ演劇として取り組んでいます。ミュージカルの現場でも、歌以外のお芝居の部分も、とても大事な要素ですし、ストレートプレイはその芝居が拡大されたスタイルという認識です。でも、ひとつ改めて思うのは、ミュージカルの現場では、「尺」というルールが付きまとうんです。「この尺で」「このスピードで」が決まっていて、スピード感の調整が必要になるんです。だから今回は、その部分に関しての自由さは感じています。「この4小節の中で、この言葉を収めてください」というルールはゼロなので、気持ちがとても開放的になりますね。本当に相手や自分の、そのときの気持ち、そのときの空気に言葉のスピードや力、いろいろなものを任せていいんだなと。それがお芝居の醍醐味だなと、改めて日々感じています。

矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

■矢田:直人役では、目しか開けられない僕を見せる。何かを感じていただけるのでは

ーーおふたりのファンの方々も含めて、両方のバージョンを観たいという方が多いとは思いますが、どちらかしか観られない方もいらっしゃると思います。役替わりの部分で、特にどちらを観て欲しいですとか、どちらの役により新しいご自身を感じているかなど、もし力を入れていらっしゃることがあれば、その辺も含めてメッセージを頂けますでしょうか。

矢田:新しい経験という点では、圧倒的に直人ですね。お客さまも、僕が何も喋らずに、舞台上で目しか開けられない状態でいる姿をご覧になったとき、何か感じられるものがあると思うんですよね。今まで、そんな姿をお見せしたことがないので。ある意味、自分が知っている人がそういう状況になったときと少し似ているとも思います。この舞台は1時間半くらいの長さですが、そのほとんどの時間をベッドの上で過ごすのは、僕自身にとっても新しい体験です。

矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(右)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

■矢田:上口さんの直人役を見ていると、ある意味少し怖い気持ちになった

ーー他に、読者の方に伝えておきたいことはありますか?

矢田:直人は、あまり台詞がないです。主役ですが、みなさんが思っていらっしゃる主役とは全然違います。逆に、碧は圧倒的に台詞量が多いです。

上口:僕も、新しさでは、圧倒的に直人だと思います。基本的には、稽古場でどちらも演じているので、作品を引きで見ることはあまりないのですが、この間、初めて引いて見ることができたんです。そうすると、「いつも楽しく喋っている矢田くんがただそこに寝ていて、何もできない」という状態を見るだけで、すごく刺さったんですよね。

矢田:すごく分かります。

上口:分かる?

矢田:ある意味、少し怖い気持ちになるというか。すみません、僕の話で。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

■上口:両パターンの観劇が難しい場合、逆は想像していただけたら役者冥利に尽きる

上口:全然いいよ。だから、いつも僕を応援してくださっている方々は、やはり演劇とはいえ、少し刺さる部分は正直あるのではないかと想像しています。ただ、直人は寝ていても、ずっと意識は正常であるので、ずっと考えているし、全部聞こえている。だから、動きはゼロですが、全部感じているからねということは伝えておきたいです。それを踏まえて、この劇をいろいろと感じていただきたいなと思います。

あとは正直にいうと、両パターンを観ていただきたいです。演者として、全然違った形の作品になってくるので、そこはひとつの作品の可能性みたいなものをお楽しみいただけたら嬉しく幸せです。でも、もちろん1パターンだけしか観られない方もいますよね。例えば、僕が直人で矢田くんが碧の回を観ていただけたとしたら、逆のバージョンはこういう風にやるのかな、こういう雰囲気に見えるのかなという想像を、ぜひ膨らませていただきたいです。

そうやって考えていただけることも、僕にとってとても幸せなことなんです。「こういう風に言うんだろうな」「多分あそこはこういう動きだろうな」とか。観られない方でも、そうやって想像していただけること自体が役者冥利に尽きるといいますか。僕たちは想像してもらう人間で、そういう仕事だと思うので、ぜひ帰り道にでもお楽しみいただけたらと思います。

ーー観客として、とても嬉しい言葉です。ありがとうございました。

矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳
矢田悠祐さん(左)と上口耕平さん=撮影・岩村美佳

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“「雨の寒い日に、晴れてるねって」「暑いくらいだねと」、矢田悠祐・上口耕平(下)” への 4 件のフィードバック

  1. ゆみk より:

    お2人の関係性や役替わりについてや「動けない」という役への挑戦について等、知りたい事を沢山聞いて下さったインタビューでとても読み応えがありました!
    お写真もどれも素敵で嬉しかったです!
    波長が合う2人が一緒に作り上げた直人と碧だからこそ、どちらのバージョンでも幼馴染としての2人がリアルに舞台上に存在してたと思います。
    ぜひまた共演して欲しいお2人です!
    観劇してみて、直人の立場はもちろんしんどいですが、終末医療は、支える家族や周りの人たちもツラいし苦しいんだと言う事を考えさせられました。
    インタビューでお2人が直人と碧について言っていらした事は、実際に観劇した時に思い出したりして作品を理解するヒントになったと思います。
    濃いインタビューをありがとうございました。

  2. sizupon より:

    上下の盛り沢山のインタビュー、ありがとうございました。
    開幕前に読ませて頂いて、仲良しのお二人の関係がわかり、直人と碧の役について想像を膨らませることができました。
    開幕してから再び読むと、あのシーンのお話しだったのだなぁと、インタビュー内容がより理解できて、その後の観劇が一層深まりました。
    そして千秋楽を終えた今は、お稽古の最中のお二人が感じていたことが、舞台でどう表現されたのかがわかって、感慨深い想いです。
    「僕はまだ死んでない」素晴らしい作品でした。
    インタビューのおかげで、より一層舞台を楽しむことがてきました。

  3. mikilo より:

    上下たっぷりのインタビュー記事ありがとうございます。観劇前に読ませていただき、どのようにこの作品が作られているのか、上口さんと矢田さんの関係など深い部分まで伺えて、色々想像膨らませて劇場に。リアルなひとつひとつの台詞がしっかり残って、観劇後も色々な想いや考えが溢れてきます。両バージョン観劇すると受ける印象が違い、受け止めるものが広がりました。観劇後にもう一度記事に戻り、「目」での会話、舞台上での、リアルでのお二人の関係性など更に深く感じ、楽しんでいます。ありがとうございました!

  4. ショコラ より:

    2回にわたり読み応えのある記事と素敵な写真をありがとうございました。
    すごく刺さりまくりそうな舞台になりそうで、ドキドキワクワクしています!!
    両パターン観ますし、両パターンとも楽しめ、いろいろと感じ、考えさせられる作品になりそうですね。
    上口耕平さんととっても波長の合う矢田悠祐さんも好きになりました!
    これからも、舞台やステージのたびにインタビューしていただけますと幸いです♡

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